ミノ山     834m                
   

 2010.1.3(日)   


   雪      単独      星尾(大上)地区より入山     行動時間:1H4M


@諏訪神社前12:04→(10M)→A林道終点12:14→(10M)→B尾根に乗る12:24→(6M)→Cミノ山12:30〜40→(21M)→D林道終点帰り13:01→(8M)→E諏訪神社に戻る13:09


  
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@諏訪神社前 A林道終点から山道(途中であやふや)を伝う。 植林斜面を這い上がる。 B尾根に乗る。800mピークとミノ山との鞍部付近。
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Cミノ山山頂。中央の岩が見える場所が最高所。 Cおなじみテプラ標。 C「フジオカ TK」さんのリボンも見られる。 B山頂東側から西を見る。
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800mピークに残るテプラ標ハイカーのマーキング。写真中央付近の木陰にハンターが居た。 猟犬(日向奥古新田犬系)が獲物を追い上げている姿。 D林道終点に戻る。 E諏訪神社に戻ってくる。だいぶ雪が強くなってきた。


  

 西上州は南牧村、山名事典と地形図に掲載される山で未踏なのはミノ山のみとなっていた。エアリアマップには、南の勧能地区から破線ルートが描かれており、薄らいだルートが伝う事ができるようだ。ここで地形図を見ると、山の北側にある星尾地区からの林道が目に入る。林道の先は破線ルートが書かれ、尾根まで上がっている。尾根に乗った所から山頂までの標高差は僅かに30m。麓の神社からは標高差230m。短時間で狙う場合においては、これを使わない手は無い。勧能地区から入ったとて、標高差は330m。まあどっちもどっち的なコース取りである。

 
 南牧村に入ると雪が舞いだし、荒船山の岩肌も薄消しのスクリーン越しに見ているような景色となっていた。現地の神社マークの場所は「諏訪神社」で、ちょうどお正月なので御開帳してある状態であった。田舎らしく、周囲では頬を赤くした子供が走り回り、祖父母なのだろうか一緒に凧揚げに興じている姿もあった。何十年前にタイムスリップしたかのような目の前の風景に、「これぞ日本の正月」と思えてしまった。

 
 車は神社の脇に駐車。いざ靴を履こうと思ったが、残念ながら忘れてきてしまった。正月早々・・ってやつである。やむなくスニーカーで入山となった。地形図にはかなり広い林道のように書かれているが、軽四サイズの車がちょうどいいほどに狭い幅で奥の方に延びていた。畑の中に延びる道であるが、しっかりとコンクリート舗装されていた。途中には、荒船山塊を猟場とする地域では有名な猟師たちの車が置いてあった。率直なところ、“参ったなー”と思うのであった。猟期だから文句のつけようがないが、向こうからしてみると、文句を言いたくなるだろう。おそらく持ち場持ち場で、10人近くは入山しているはず。そこで場合によっては私一人が猟を停めてしまう事になる。まあしょうがないと言えばしょうがないが、「邪魔しやがって」と思うのが順当だろう。銃を持っている人は、警察に認められた素性の正しい人。という見方があるが、どこまでどうなのか。自然の中ではあるが、銃器を持ち歩いている人が近くに居ると思うと物騒過ぎる。

 
 雪の乗った林道を、グリップの効かないタウンシューズで登って行く。林道終点にも1台停まっており、雪が無ければ、普通乗用車でも終点まで入ることが出来る。終点から先は谷形状になっており、堰堤がちらほらと見える。入山している猟師の踏み跡を追うと、上手い具合に不明瞭な杣道に乗って登って行っていた。流石に地元の猟師と思えてしまった。谷には倒木したスギの木が折り重なるように堆積しており、排除されないままになっていた。それらを右に見ながら急登斜面を這い上がってゆく。上の尾根はすぐで、何処かに猟師が居るはず。里山のこの標高なら上から追う事はしないはず。下から犬で追い上げて上で待ち伏せするのが順当。そう思って注意深く尾根上を木々の間から舐めるように見る。すると紺色の影が動いた。やはりそこに猟師は居た。私の方が早く気づき、猟師が後になった。見ていると、こちらに気づくとやはり銃口をこちらに向ける。習性なのか習慣なのか良く判らないが、とりあえず獲物だと思って向けるのだろうか。どう犬が動いているのか判らないので、144Mhz帯をスキャンする。すると145.26
Mhzでそれらしい反応があった。かなり近いのか145.24Mhzでも同じように入感してくる。すぐさま小さな八木アンテナに切り替えて発信機の方向を探る。犬は複数頭居るようで、里側からこちらに上がって来ているようであった。猟の邪魔をしたくないし、こちらも山行の邪魔をされたくない。尾根に居る猟師は無視をして、ミノ山に向けて植林斜面を這い上がってゆく。

 
 尾根に乗り上げると、そこには一筋の踏み跡が続いていた。どうやらこれがエアリアの破線ルートらしい。ただそこに乗らずとも、尾根上は快適な下草の無い場所。落ち葉を踏みしめながら気持ちよく歩いて行ける。ミノ山の山頂部は東西に長い形状をしており、標高点を取っている場所には、石が集中して乗っているので良い目印となる。先だって品塩山で見たばかりだが、ここにもテプラ標がネジ止めされていた。それから最近行動がアグレッシブになってきた「フジオカ T・K」さんのリボンも縛ってあった。書かれている日付から、氏が登頂してからひと月も経っていないようであった。登り易さと静けさから言えば、達筆標識が有ってもいいのだが、地形図に載っていないのだからから無いのは無理もない。トランシーバーからは相変わらず発信機からの音がしている。どう音を拾っているのか、首輪に結わえられている鈴の音も入感していた。

 
 下山は往路に戻る。ちょっと猟師が気になったので、様子拝見とばかりに向かって行く。西にある800mピークにも、テプラ標に付けられていた荷紐のマーキングが見られた。テプラ標設置者は、エアリアの破線通りに登って来ているようであった。その800mピークから下りこむと猟師が居た。私が寄って行くと、やはり銃口を向ける。本人は意識していないのだろうか、パブロフの犬のような感覚なのだろう。私が黙って指を南と北に向ける。勘のいい猟師なら猟場を指で示すが、それは無かった。銃の場所を知りたかったので「どのように分散しているのですか」と問うと、「この一帯に沢山入っています」と返って来る。さらに「猟場は山のどちら側ですか」と聞くと、「山の北側です」と。「えっ、登ってきて、降りて行くほうじゃないですか」と言うと、「じゃー皆に無線連絡しましょうか」と言う。「いやそれはけっこう、注意しながら降りますから」と言って猟師と別れる。

 物静かな猟師であまりギラギラしている部分は無かった。注意しながら降りると言うものの、注意するのは猟師の方で、無線連絡してないからこそ猟師にとってはより私の存在が怖いはず。私は猟師に背を向けて歩く事になるので、背中側から撃たれたのではたまらない。それがあるので猟師側に精神的不利な体制に持ち込んだのであった。と言っても、私の存在を一人の猟師が気づいているだけであり、危険度が何分の一かに減っただけであるのだが・・・。それでも「無線連絡しましょうか」と言った時点で、私の存在は皆に周知されていなかった事になり、猟はそのまま進められていた。と言う事は、そのように判断をするグループであると判断できる。私の往路で既に、入山者が居るのを気づいているのだから、とりあえず伝えればいいのに・・・。結局のところ、連絡したからとて、誰が私が猟場から降りたのを確認するのか、時間での判断くらいであろう。それどころか猟犬は獲物を追っている進行形の状態、撃たれては困るが、猟を停められるのも気が引ける。丸腰であるが私も破天荒な鉄砲玉、同じ自然で遊ぶものとしての意地があったのだった(危ない目に遭わないと判らないタイプ)。

 下って行くと、小型犬が3頭、そして厳つい中型犬が1頭吠えながら斜面を登ってきていた。少し立ち止まって様子を観察する。斜面を舐めるように匂いを嗅ぎながら登って来ている。追い込みと言って、時折吠える事を忘れない。良く訓練された犬だと見て取れた。トランシーバーのS
メーター(Signal strength meter)は振り切れ、発信機が目の前にある事が判った。しばし様子を伺いながら、犬が私の高度を上回った事を確認し、下に降りて行く。そして林道終点に降り立ち、そそくさと雪の林道を下って行く。

 きな臭いと言うか、火薬臭いと言うか、嫌な時間を過ごした。精神的な苦痛と言うか・・・。猟師に配慮し、一歩譲って鈴などを鳴らさずに歩いていたのだが、猟師の対応が悪ければ、鳴らす行為にも出ただろう。ここほど低い里山なら、鳴らした時点で猟が停まるであろう。猟期に里山に入るリスクをヒシと体感し、雪に打たれながら諏訪神社に戻る。神社前では、まだ凧揚げに興じている元気な子供がいた。降雪もなんのそのの元気な山間部の子供、その様子に元気を貰う。

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