大瓢箪山   1549.1m      
   

 2010.10.16(土)   


   雨のち曇り    単独     中宮山登山口より      行動時間:6H14M


@中宮山登山口5:59→(82M)→Aやどみ尾展望台7:21→(16M)→B中宮山7:38→(98M)→C大瓢箪山9:16〜38→(68M)→D中宮山帰り10:46〜53→(13M)→Eやどみ尾展望台11:06→(67M)→F登山口12:13



 
shinryousyomae.jpg  takakurayamasen.jpg  cyuusya.jpg  tozanguchi.jpg 
中宮診療所前を北に入る。 道なりに進むと、スキー場脇で林道の道標が出てくる。 @舗装林道と駐車スペース。 @登山口の、中宮山へのコース案内。
bunnkidouhyou.jpg  bunki.jpg  1052.jpg  tenbousyokara.jpg
分岐箇所にこの道標が下がる。 分岐を東から見ている。右手から降りてきた。左にも道。 1052.1三角点付近。 途中の展望所から見る白山側。
tiger1.jpg  yadomiohyoushiki.jpg  yadomio.jpg  douhyou.jpg 
タイガーロープが流してある急峻。 やどみ尾展望台手前の道標。 Aやどみ尾展望台。生憎の天気。晴れていれば、笈ヶ岳が見えるよう。 やどみ尾展望台の先の道標。
cyuuguu.jpg  cyuuguunitou.jpg  cyuuguuhyoushiki.jpg  minamikara.jpg 
B中宮山到着。かなり広く切り開いてある。 B中宮二等三角点 B山の名前でなく、三角点名を表記した標識。 B山頂部、南から北を見ている。
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B中宮山の標識。 B中宮山から東に進む踏み跡。 踏み跡の様子。 マーキングも見られる。
taiger2.jpg cyuuguuhigashi.jpg  1278temae.jpg  kinoko.jpg 
進路をタイガーロープが塞ぐ。左に折れる。 紅葉の中でもリボンが目立つ。 1278高点手前鞍部付近。 ブナの老木にびっしりとついたキノコ。
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1350m付近 こちらは倒木にキノコ。 1400m付近。 1470m付近に池塘のような広見がある。
chitoukara.jpg  1530.jpg  oohukubeyama.jpg  komaq.jpg
1470m付近からの谷道。 1530m付近。ササ漕ぎ。 C大瓢箪山。南から北。 CコマQさんのいたづら書き。唯一山名を記す。
oohugubesankaku.jpg  ishino.jpg  noboxtutekita.jpg  oogasayama.jpg 
C角が割られた三等点。 C久しぶりに見る基準点プレート。  C登ってきた南側の様子。 C県境側。笈か大笠か・・・。
cyoxtuka.jpg  1450.jpg  1340kara.jpg  kuxtukyokuten.jpg 
山頂直下の掘れた谷形状を降りて行く。途中で左の尾根に乗る。 1450m付近。  1340m付近から大瓢箪山を振り返る。 屈曲点の様子。モシャモシャした中を分けながらトラバース。
cyuuguukaeri.jpg  yadomiohigashi.jpg  yadomiokaeri.jpg  1064.jpg 
D中宮山帰り。 中宮山の西側のブナの幼木帯 Eやどみ尾展望台帰り。 1064高点付近
1052kaeri.jpg  gezan.jpg     
1052.1三角点付近 F登山口に戻る。


  

 「大瓢箪山」(おおふくべやま)。なんともそそられるネーミングの山である。瓢箪(ひょうたん)からくる滑稽なイメージと、その用途の多様さが、奥深さを感じるのだった。この大瓢箪山は、以前は冬季の山だった。我が師匠からも、スキーで狙って途中で敗退しているとも聞いていた。それを聞いてからしばらくは、私もスキーを履いて狙うつもりでいた。そこに、石川の雄である「コマQ」さんが無積雪期に楽に踏んできているのを知った。その報告を見ると、尾根には切り開きがあったようだ。付けたのか昔からなのかは不明だが、こうなると雪に拘る事は無くなった。ただし一応は藪山。漕ぐ場所もあるようで、適季は芽吹く前か、この秋となる。

 
 当初、土日は地域行事が入っていたのだが、「運よく」出ずにも良い事になった。その代り、その二日間は家に居られない事となった。全くもって願ったり叶ったりの週末となった。完全に決まったのが金曜日の19時。喜び勇んで場所探しに入る。季節柄当然のように過去訪れた場所においての、紅葉の美しい場所を思い浮かべる。あっちこっちと浮かぶのだが、入山数がもっとも多い白山山系がやはり気になる。ここで大瓢箪山が頭に浮かぶ。さらには白山スーパー林道内にも瓢箪山があり、「瓢箪(ひょうたん)シリーズ」と題して、瓢箪と付く2座を狙う計画とした。

 1:05家を出る。そしてすぐに上信越道に飛び乗る。途中妙高付近から雨になり、しばらくワイパーが忙しく動き続ける。北陸道はいつものようにスイスイ走れ、金沢西インターで降りてR157を快走して行く。そして瀬戸野交差点からR157と別れ、中宮温泉の方へ進んで行く。360号に入ってちょうど5キロ地点が中宮大橋の交差点で、ここから北に中宮スキー場の方へ入る。しかしここからが迷う。目的の「林道高倉山線」に入りたいわけだが、中宮の集落の道は狭く、道としての強弱が無く、何処に進めばそこへ行く道なのか判らなかった。地形図を見返しながらとりあえず高い方へ高い方へと進んで行くと、スキー場脇となり、リフト施設が見えたかと思ったら、その僅か先に高倉山線の黄色い看板が立っていた。これで間違いなし。伝ってゆくと、最初に狸が現れた。次は狐が横切る。次は鹿か熊かと思っていたが、残念ながらここまで。舗装路を九十九折に沿って行く。道の舗装状態は良く、荒れた場所は皆無。コマQさんの記事からは山側斜面に梯子があり、そこが登山口らしいが、注意していても判らなかった。その代わりではないが、1005高点西側には中宮山への登山口があり、白山市で作った案内看板も設けられていた(5:35)。市が動いての山の紹介であり、この中宮山も近いうちに地形図に載るのだろう。中宮山とは1339.8三角点峰を指し、点名が「中宮」。山名の中宮山は問答無用なのであった。

 
 踏み跡があるくらいには思っていたが、登山道として公式ルートになっていたとは驚いた。これも時代か・・・。行きたい行きたいと思いつつ十数年経過したが、待っているといい事もある。6時ちょうどに入山開始となる。広い道でとても歩き易い。1005高点に僅かに上がって、すぐに下降となる。そして次のピークから緩やかに下降して行くと、「中宮山頂上」と掘られた木のプレートが掛かっている場所がある。そこは三叉路になっていて、切り開きが一本南側に下りて行っていた。これが、もしかしたらコマQさんの記した道なのだろう。周囲はまだ紅葉には早く、僅かに黄色く変化しているくらいであった。1052.1三角点の脇を掠め、少し進路が南側にずれてゆく。ここは地形図では東進させている場所だが、現在の道は高いところを拾うように南を巻いて行く。この張り出した先辺りが展望所で、晴れていれば白山が見えるらしい。今日は生憎の天気、既に雨が降り出しており、しばらくは傘で対応。この先でタイガーロープが流してある滑りやすい登りがある。軽いアップダウンが何度となく続き、うねる様な尾根の印象が強くなる。ブナの幼木も多く、芽吹いた頃のここもかなりいいだろう。

 
 歩いてゆくと、ブナの木に「やどみ尾展望台」と書かれた板が括りつけられていた。緩やかに駆け上がると、そこは1290mの顕著なピーク。東側には、先ほど見たのと同じ板が括りつけられていたが、こちらの表示は既に見えなくなっていた。登山口にあった案内では、ここから笈ヶ岳が見えるようだが、現時点で見えて100mほどの視界であった。90度方向を変えるように右(南)側に降りて行く。すると斜面側に一本踏み跡が降りて行っていた。間違って踏み込むことは無いだろうが、この場所にも中宮山を示す道標が見える。綺麗なブナの幼木の回廊の中を行く。ガスが濃くなり少しだけ物悲しい雰囲気。静かに歩いているつもりだが、私の足音が聞こえるのか、周囲で獣がガサゴソと移動している。遠くではキーンと鹿の警戒音も聞こえる。

 
 中宮山山頂。山頂一帯が伐採され、30畳ほどの空間が出来ていた。手前に二等三角点があり、綺麗な文字の標識も掛かる。これまでの広い登山道、そしてこの山頂部の広さ。集団ハイキングにはうってつけの場所となるだろう。おそらくここからはそこそこの展望もあるはず。残念ながら今日はそれを目の当たりには出来ないのだが・・・。東側に行くと、もう一つ標識が掛かる。レタリングは違うが、木の使い方と数字表記が先ほどのものと酷似している。同じ作者かも・・・。その先から踏み跡が先に進む。雨に濡れた木々であっという間に全身が濡れて行く。中宮山で雨具を着ればよかったと思っても、後の祭り。中宮山までがあまりにも良い道なので、楽に構えていたのだが、本番はここからだった。と言ってもしっかりと踏み跡があり、時折ピンクのマーキングも見える。中宮山を出て10分ほどで、目の前にタイガーロープが進路を塞ぐように流してある。真っ直ぐ進みたいところであるが、左側に刃物跡が続く。最初だけ不安になるが、10mほど進むと道形が見えてくる。ここからしばらく下降に入る。やや掘れた沢形状の中を伝って行き、その先は尾根を右に見るような感じで西側のトラバースルート。そして最低鞍部から1278高点に向け登りに入る。木々に撫でられササに撫でられ、既に雨具が雨具の役目をしていなかった。水分を塗り込まれたような状況であり、既に内部に浸透し始めていた。


 1278高点を越えると、そこには恐ろしいほど沢山のキノコが出ていた。ブナの老木にびっちりと下から上まで着いている。残念だが、これを美味しそうに見ていいのか、怖いものと見ていいのかも判らなかった。唯一の判断は、虫も食べていない・・・怖い方なのか・・・。周囲は見慣れた植生、なぜか郷里に戻ったような安心感がある。私の山のスタートはこのエリアであり、母なるエリアなのでもあった。やや痩せた尾根道を行くと地図上の屈曲点に差し掛かる。この先の1380高点に乗り上げてから東進するのかと思っていたが、尾根に乗り上げる手前で東進が始まった。と同時に目の前で踏み跡が消滅する。斜面を駆け上がっているような跡も見えるが、ここで少し足踏み。山勘を働かせながら進路を探る。どう見てもここまで続いてきた踏み跡がパタッと消えるのもおかしい。ここでの正解は東進。ササをゴッソリと分けながらのトラバース。足場が滑りやすく(ササで)歩き辛いのだが、5mほど強引に行くと踏み跡が見えてくる。すると前の方に屈曲して行く尾根が見えてくる。その地形に沿うように右に緩やかに巻き込んでゆく。標高1350mほどで、周囲の色づきが良くなってきた。先ほどのキノコポイントから進む事30分ほどで、やや太い倒木を跨ぐ所がある。ここにもびっちりと先ほどと同じキノコが出ていた。こちらは獣が食べた形跡がある。気分は一転、“美味しそうに見た方がいいのか”となった。


 1410m付近からのやや急登を登り上げると、その先で池塘のような20畳ほどの草地がある。その反対側の谷部の中に道形は続く。ピンクのリボンが道案内しているのだが、これと同時に刃物跡も続く。この谷形状の道形は尾根に対して南側をトラバースするように進路をとっている。変な方向に進ませるので、気にしつつも乗って行くと、途中で急に北進をしだし斜面を駆け上がっていた。となると、先ほどの池塘の場所から尾根を伝った方が判りやすいような。ただし藪との駆け引きがあり、皆が伝う場所が歩き易い場所となるか。少し直下でモシャモシャとしたが、最後は広葉樹の幼木の中を進み、スイスイと登る事が出来る。


 大瓢箪山到着。三等点があるが、痛いげに一角が割られていた。誰かが戦利品として持ち帰ったようだが、かなり残念な感じ。その横には大判の基石が置かれていた。縦横300mmほどのそれは久しぶりに見るもので、こんな場所にあるとは驚いた。西側の木にはコマQさんのいたずら書きがある。1年前のものだが、既にかなり薄れてきていた。西側の上の方を見ると、地面から3mくらいの位置に赤いマーキングが見えた。それを見ると、こうやって無積雪期に訪れ、三角点が拝めた事が嬉しい。東側に僅かに這い上がると県境側の稜線が見える。生憎のガスで同定こそ難しいが、傘を広げたような山容が見え、おそらく大笠山がそこにあるのだろう。いや待てよ、笈か・・・。到着後から僅かに日差しが出てきており、濡れた傘と雨具を広げ水分を飛ばす。何年越しだったか、名前に魅了されてからこの日が来るまで・・・。とうとう登頂となり、嬉しさもひとしお。中宮山までの作道により、だいぶ楽をさせてもらった。経路6時間ほどを考えていたのだが、約半分の時間で届いてしまった事になる。少し大笠山の方へ進むと、これまでの刃物跡とリボンも進んでいた。と言う事は、ここを目的にして付けたのではなく、大笠山へ行く為に付けていたようであった。少し体も乾いたところで下山となる。


 直下の掘れた道形を伝うのだが、ルートは途中で左(南)側の尾根の方にズレるので注意せねばならない。注意箇所はここくらいで、またまた濡らされながら分けてゆく。流石に下りは速く、一気に降りた感じ。そして1340m付近の鞍部で振り返ると、この日はじめて大瓢箪山の姿が見えた。この先が屈曲ポイントで、モシャモシャとしたササを分けながら滑りやすい斜面をトラバースして行く。本当ならトラバースする西側入口にマーキングでも欲しいところだが、ここ以外は乱打的に取り付けられている。“ここくらいはルートファインディングを楽しもう”とばかりにそのまま。往路の景色を逆に見ながらどんどんと高度を下げて行く。中宮山手前鞍部からの登り上げが、やや太腿に辛いが、泥濘地形に付けられた自分の足跡を拾うように登って行く。


 天気は回復しつつあり、薄日も射してきた。そして雨具が乾く頃、中宮山に到着。誰か来ているかと思いつつ居たが、またもや静かな山頂が待っていた。時間こそ経過したが、残念ながら展望は往路時と同じほど、ほとんど見えないのだった。雨具を脱ぎ、戦闘モードから自然探訪モードに切り替える。そして、持ち上げたあんドーナツを食べ遅い朝食となった。ここまで来れば、まだ距離こそあるが降りたも同然。完全に緊張感はユルユルとなる。この中宮山に居ると下界の音が良く聞こえていた。ほとんどは白山スーパー林道に向かうエンジン音なのだが、深い自然の中に居るつもりであったが、“そうでもないか”と思えたり・・・。ちょっと気分を高めるのに耳を塞ぐ・・・。下山。


 やどみ尾展望台の他にも、各標高点ポイントを気にしつつ地図を片手に戻ってゆく。起伏の少ない場所ほど迷う場合があり、地形を見ながら地図を読む練習をする。展望所からの展望は、ここでも往路と同じ。白山は全くのガスの中。残念。950mの分岐箇所は、西進してくると目立つと思っていたが、目に入らぬまま通過してしまった。いやはや注意散漫。帰りは伝ってみようと思っていたが、なにか考え事をしていたのかも。そして最後の1005高点への登り上げを終え、緩やかに下って行くと、前の方が明るくなり草地に我が車が見えてきた。


 振り返る。大瓢箪山に無積雪期に登れるとは、10年前には思ってもみなかった。残雪期になり、カンジキにしようかスキーにしようか、そんな事を悩みながら居た訳だが、憧れていた山だけに今回の登頂は嬉しい。たぶん次に訪れる場合は、冬季に雪を踏みながらの計画だろう。「あそこがここで、おお!ここがキノコの・・・」なんて歩いてみたいと思う。中宮山から先は、マーキングが続く。回収されず残されたままになっている事に微妙な心境だが、刃物跡も残り、マーキングを取ったからとて大差無しな感じ。作道は、今後も中宮山から先にも続くのか・・・。となれば、なんか寂しい気もするが、それも時代の移り変わりだろう。そして、瓢箪(ひょうたん)を「ふくべ」と読むんだ、と知る人も増える。いい事かも。

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