大津岐山 1944.7m 大杉岳 1921.4m
2010.06.26(土)
曇り 単独 キリンテから反時計回りで尾瀬御池まで、戻りは自転車 行動時間5H41M
@キリンテ5:27→(130M)→A大津岐峠7:37〜40→(3M)→B大津岐山7:43〜49→(53M)→C電発避難小屋8:42〜45→(48M)→D大杉岳9:33〜40→(41M)→E尾瀬御池側登山口10:21〜50→(18M)→Fキリンテ11:08
奥只見湖を周回している時に、綺麗な朝焼けが・・・。 | @キリンテ登山口。駐車スペースは少なく。道を挟んで向かいの林道の中が適当か。 | 登山口から8分ほど歩くと時刻表がある。 | 時刻表の所の小橋。 |
クワガタが元気に這っていた。 | 痛々しいイタヅラ書き。「星」姓なので、地元の方だろう。 | ツバメオモトが最盛期。 | 1754高点付近からの水平道。 |
もうすぐ峠。雪田が見え、視覚的に涼しくなる。 | A大津岐峠。巨大な標柱に圧倒される。 | A大津岐峠から会津駒。 | 大津岐峠から大津岐山へ向かう。 |
登山道を逸れ、三角点への藪漕ぎ開始付近。正面に見えるは燧ヶ岳。 | B大津岐山。正面のチシマザザのなかに三角点あり。 | B笹(枯れ葉)に埋もれていた三等点。 | B三角点ポイントから見る東側。山頂の雪田が白く見えている。 |
登山道に戻って、これからがお花畑。 | ハクサンコザクラ | シラネアオイの群落。 | ハクサンチドリ |
サンカヨウ | シラネアオイの白花も。 | ハイカーとすれ違う。 | 巡視路分岐 |
七入への下降点。 | 木道と避難小屋 | C電発避難小屋。一般者は利用できず。 | 途中から大杉岳(右)と燧ヶ岳。 |
キヌガサソウ | もうすぐ大杉岳 | D大杉岳 | D標柱の脇に三等点鎮座。 |
D南西側から。 | コミヤマカタバミ。茎を吸うと、魅惑な味が・・・。 | 途中で西側に道が分岐していた。地形図にもエアリアにも未掲載。 | 自転車デポの様子。 |
E登山口に降り立つ。 | E桧枝岐側へ降りて行く。 | Fキリンテに戻る。 |
梅雨真っ只中、どうにも肺が重い。左右の肺が痛むので、湿気のせいだろう。6月初旬以降大きな山行をしておらず、ここらでドカーンと歩きたいところであったが、気持ちが乗ってこない。まあこんな時は無理せず、欲張らず・・・。以前、北海道で出会った御仁が言っていた。「100名山をやろうと、北海道に渡ってきたが、急ぎ足で登頂を繰り返したら、虚しくなり面白くなくなったと」。御仁は、日に複数座登り、なんと1週ほどで道内の100名山が終わると言っていた。どれだけ裕福なのか、キャンピングカーを購入し、一回の旅で全国を回り100座登りきるらしかった。でも「面白くなくなった」と言われた時点で、こちらも羨ましさが失せていった。ようするに山も腹八分。詰め込み過ぎても駄目な訳で・・・。
そんなこんなで、今回は尾瀬の北側、会津駒への尾根途中にある高みを目指す事にした。ちょうど「オサバ草祭り」をやっていて、この週末が祭りの最終週でもあった。シャトルバスも運行しており、これを上手く使えば、登山口と下山口を変えても、難なく繋げられる訳であった。どのようなバス運行かと調べてゆくうちに、尾瀬御池から桧枝岐村中心街へ向かうR352は、完全な下り勾配と言う事も判った。こうなるとバスは頭から離れ、今度は自転車が浮上してきた。天気予報では辛うじて雨粒には遇わないようであり、久しぶりに折りたたみのマウンテンバイクの出番となる。行動は、キリンテから大津岐峠に上がり、大杉林道を下って尾瀬御池に下るルート。近くに会津駒があり行かないのは勿体無いような気がするが、目的が大津岐山であり、大杉岳であるから、このコース取りで満足なわけである。
1:20家を出る。関越に乗り小出まで進むのだが、途中で立ち寄った谷川岳S・Aでは、不思議な光景を見た。買い物篭に沢山ペットボトルを入れ汲んでいる姿が多いこと。時計は2時を回ったくらいの深夜に水汲み。異様な光景であった。1000円の通行料とガソリン代を加味しても汲んだ方が安いと言う事だろう。その篭の中に入れられたペットボトルの量を見ると、それも頷けた。買えば12リッター2000円ほど。何処から汲みに来ているのかは不明だが、30リッター以上は持って帰る様に見えた。そもそもの水もおいしいのであろうが、ここに汲みに来ているというステータスもあるのだろう。一つの趣味か・・・。前橋市内のとある喫茶店は、全ての飲料水にこの水を使っていると聞いている。大量=商売と言う見方も出来る。余談が長くなった。
小出で降りるのだが、寝ぼけていてETCゲートに入らず、通常ゲートに入ってしまった。いつもの調子で抜けようと思ったら、ブースから係員が身を乗り出し手を振って進路を塞ぐ。係員からは冷たい言葉を・・・「こちらは一般ゲートです」と。危ない危ない、これが老化の始まりか。ただ単に眠かっただけとしておきたい。でも「反省」。R352に乗って、大湯温泉手前でシルバーラインに入って行く。銀山平の駐車場には車はまばらで、5月の連休の賑わいは無くなっていた。奥只見湖に沿うようにひた走るのだが、ゴールデンウィークの山行では、我ながら良くここを歩いたものである。車で走っても長いのであった。
鷹ノ巣の先、平ヶ岳の登山口では、準備している方や歩き出している方の姿が見えた。ちょうどそんな時間帯での通過となった。駐車場は8割がた埋まっている。100名山パワーであろうか。クネクネと山道に沿ってゆく。そして尾瀬御池の手前で、会津駒へのルート、大杉林道登山口がある。駐車余地が全く無いので、急いでの行動となるが、マウンテンバイクを下ろしデポをする。登山口では目立ちすぎ盗まれる可能性もあり、15mほど登った先の草薮の中に自転車を置く。ここなら通過する車からは全く自転車が見えない。あとは、キリンテまで降りるだけ。勾配を確認しながら降りるが、七入から先が少し平坦にはなっているが、ほとんど下り勾配。8.5キロほどあったろうか、楽しいヒルダウンとなることが約束できた。そしてキリンテ到着。だが、嫌な事にここには駐車余地が少ない。周囲のキャンプ場敷地は、綺麗に草が刈られ、その敷地に被る様に車を停めるのも忍びない。でも登山口の脇の1台分のスペースしか見出せなかった。私がそこに置いた為に「駒ヶ岳」と書かれた標識が見えなくなってしまった(5:05)。いい迷惑である。すぐに準備をして周回となる。
登山口からスタート。キャンプ場脇を抜けると周囲は沼地で、そこにフキが沢山生えている。蛙が居るのが、ザワザワと動きがある。歩き出して8分ほどで小さな沢を渡るのだが、そこには会津バスの時刻表が掲げられていた。登山口にあってもいいようなものだが、道中に置く配慮は優しく感じるのであった。キリンテ沢沿いのこの登山道脇には、美味しそうなミヤマイラクサが沢山生えている。私はコシアブラやウドやタラも好きだが、このイラクサがとても好きで、影の山菜の王様だと思っている。だんだんとブナの大木が目立つようになり、その幹にはこのエリア特有(名物)の痛々しい刻みが・・・。読むと「星」姓が見られる。と言う事は地元の方(まあ児童・生徒なのだろう)の仕業と言う事になり、修学登山がここで行われると予測できるのだった。そんな文字を読み込みながら歩いてゆくと、黒い可愛いものも這っていた。それはクワガタムシであった。この標高にしては少し出没が早いように思えたのだが、道中で2匹確認できたので、どんどん這い出してきているようだ。
登山道は非常に歩きやすく。登山口から続いている刈り払いは途切れることが無い。次週の山開きの為に刈り払った様だが、いいタイミングで入山させていただいていた。その登山道脇にはコシアブラなども多く、食べごろな物もあった。あと、誰も歩いていないのか、本当に採りやすい位置にウドも出ていた。ツバメオモトが最盛期で、山菜と山野草を楽しみながら足を進めてゆく。途中から大津岐山から大杉岳へ繋がる尾根が見えるのだが、まだ白く雪田が残っている。暑い時期には嬉しい冬のお土産であった。大津岐峠が近くなると、シラネアオイが沢山見られるようになってくる。淡い紫色が、一服の清涼剤のように優しく目に飛び込んで来ていた。
大津岐峠。そこにある大きな標柱に圧倒される。こんな大きな標柱はヘリでしか持ち上げられないだろう。冬季にはありがたい大きさなのだろうが、ここまで大きくなくとも・・・。ガリバーが登山するのか・・・。周囲にはまだ沢山の雪が残り、その上に上がると冷気が上がってきて涼しい。僅か先に会津駒があるのだが、そちらには背を向け西進して行く。登山道を覆う残雪には、シカの足跡があるのみ。進む先には燧ヶ岳がスクンと立ち、僅かに残る山腹の残雪が白く目立っていた。
大津岐山は、山頂を登山道が通っているのかと思ったが、僅かに逸れて大杉岳の方へ続いていた。チシマザザとダケカンバ、そしてシャクナゲの藪漕ぎとなった。かなり濃い場所で、一瞬にして泥だらけとなる。残雪期が終わった直後は、木々に泥が乗っているのであった。登山道から逸れて35mほど進んだか。そこに円形状に雪田が残っていた。ほぼ山頂部であり、三角点は雪の下かと思ったのだが、僅かに西側に高い場所があった。細い二本のダケカンバと、その先のコメツガとのちょうど中間点、そこに三角点は眠っていた。最初に四方を囲む石が見つかり、その周囲を注意していたら、三等点がササの下に埋まっていた。天面には刻みに沿って十字に赤ペンキで塗られていたようで、剥げずに残っていた。この三角点、どれだけの人が見ているのか。僅かに登山道を逸れるだけなので、藪漕ぎ体験にはちょうどいいかも。でもかなり濃い場所もあり、よくよく周囲を見ながら足を進めたい。そして見つけ出せれば、喜びもひとしお。
大津岐山から登山道に戻るには南に下ったが、こちらはシャクナゲガ濃く、東に進んで戻った方が無難であった。登山道に戻り、大杉林道を西進して行く。その登山道の周囲は、見事なまでにお花畑。シラネアオイの淡い紫に加え、白花の姿も見える。その淡さとは対照的にハクサンコザクラの濃いピンクが眩しい。これほどにお花畑とは知らないで来ていた。何度も立ち止まってはシャッターを押す。そよ風にそれらの花が揺れ、あたかも笑っているかのよう。
1749高点の最低鞍部から、1861高点に向けての登り上げ。しばらく坦々と登っていると、前方から単独のハイカーが現れた。気さくな方で、話が弾む。このまま会津駒を踏んで下に降り、今日は宿を取って停滞し、明日は台倉高山に行くそうな。明日日曜日までシャトルバスが運行しているので、それを上手く使って遊ぶと言う。出向いた土地を十二分に楽しむ、遊び上手な方であった。
1861高点を過ぎると避難小屋を手前にして、北西側に巡視路が分岐している。この巡視路側も綺麗に刈り払いがされており、もしやこの刈り払いは、電力関係者の作業だったのかと思えてしまった。次の七入りへの下降点分岐を過ぎ、その先に電発避難小屋があった。冬季での管理を意識して建ててあるのか、非常に高床式。4mほど這い上がってやっと入口となる。ちょっと登るにも怖いほどの高さ。でもちゃっかり登ったりしてスリルを味わう。
小屋の先は木道が多くなる。と言っても朽ちた物が多く、そろそろ新しいのを敷設した方が良いようにも見えた。進んで行くと、賑やかな声が聞こえだし、先のほうから2名の女性が現れた。この方々もシャトルバスを利用して遊ぶそうで、会津駒まで足を伸ばすそうだった。登山口に置いた自転車の事を言うと、私のことを「マウンテンバイク君」などと、妙な呼び名で言っていた。よほど若造に見えていたのかも。時折出てくる雪に乗りながら、木道に伝いながら大杉岳を目指す。目指す先の向こう側には燧ヶ岳が見えている。目指す場所がそこのようでもあり、なんか高山に挑んでいるような錯覚さえする。実際は、もう下りになっているようなものなのだが・・・。キヌガサソウの綺麗な姿があったり、マイヅルソウなどの白花が目立つ。雪の上にはすれ違った3人分のトレースと、2匹分の獣の足跡。極めて静かな登山路であった。
大杉岳到着。すぐに高いところと、藪の中をゴソゴソするが、お目当ての点が無い。山名を書いた標柱の脇にダンダラ棒があり、もしやと覗くと、標柱のすぐ脇に三角点が埋められていた。もっとも三角点が先にあって、後から標柱を埋めたのかと思うが、かなり近接した場所にある。展望はほとんど無く、樹林で風も遮られる。こうなると虫の出番であり、それらを払いながらしばし休憩。ザックに入れてあった防虫スプレーを出すも、いつ抜けたのか、カラになっていた。日頃の装備確認のずぼらさが、こんなところで表に出る。ここを最後に、あとは登山口まで下山し、そのさきは楽しい自転車が待っている。重力に任せて下るだけであった。
大杉岳から下って行くと、こちらにもコシアブラが多い。同じコシアブラでも系統が違うようで、大きく育っているものと、まだまだ若芽を出したばかりのものがある。日差しの関係かと見るが、そうでもないようであった。少しだけ拝借して、今晩の夕飯に利用させてもらう。下りであるが、滑りやすいような場所もなく、極めて快適。キリンテから歩き出しここまで来るのに、喘ぐような場所はほぼ皆無。膝にも肺にも優しいルートであった。
下山口が近くなり、途中で右側にルートが分岐していた。この道を伝うと何処に出るのか。次第に車道を通過する車の音が聞こえてくる。枝折峠が冬の通行止から解除になったので、バイクも入ってきている。大型バイクのいやらしいエキゾースト音が谷あいに響く。迷惑!!と言いたいが、若かりし頃の自分も同じように・・・。そして登山口に到着。デポしておいた自転車は、どなたか(3人のうち)が触ったようで、置いた状態とは違う形になっていた。どうしようと思ったのか・・・。鍵もつけないで置いてある自分がいけないのだが、登山者ならなぜにデポしてあるのか予想がつくだろう。折りたたんだ自転車を組み立て、車道に降りる。
さあ快適な自転車の時間。キリンテまでひとっ飛び、と思いながらギヤを替えながらペダルを漕いだ。すると、ガリガリと言う嫌な音がして、フレームとスプロケットの間にチェーンが入ってしまった。なぜにここで・・・意気消沈。油だらけになりつつも、打開策を探る。前を通過する車からは「アイツ、チェーン外れてるよ」なんて無言の視線を浴びる。路肩に越し掛け、ネマガリタケの朽ちた物で、四苦八苦を繰り返す。結果はダメ。30分ほど粘ったが、直る兆しは無かった。もうこのまま下るしかない。あまりにも進展しないので、そういう判断になった。周囲のフキの葉で油まみれのてを拭い、サドルに跨り一気に下って行く。よくバイクで、「風になる」と言うが、正しくそれで、清々しい。体重移動させながらコーナーを攻めてゆく。時速40キロくらいは出ていただろうか、大型バイクを背にして、彼らに負けない走り。こんな所で負けず嫌いを出さなくとも・・・。直線になると流石に抜かれるが、それでも快走。
キリンテに戻るが、当然の如く、尾瀬御池から一度も漕ぐ事無く降りてきた。トラブルはあったが、自転車を持ち込んだのは大正解であり、非常に楽しかった。さあ次週は会津駒の山開き、賑やかな様子が想像できる。あのウドも採られてしまうだろうなぁ〜。
帰りの奥只見湖の周囲では、頑丈なマウンテンバイクに跨ったバイシクルレーサーが居た。登り坂を左右に車体を揺らしながら登っている様は、本物の方のようであった。帰宅後に得た情報では、8月にこのエリアでヒルクライムレースがあるという。その試走で有ったに違いない。シルバーラインは自転車は通れないから、枝折峠を抜けて来るしかない。すごい脚力と根性である。