竜ヶ倉(竜ヶ岳・岩岳) 1410.5m
2010.5.10(月)
晴れのち曇り 単独 県道53号滑川林道ゲートより 行動時間:3H32M
@滑川林道入口ゲート9:50→(16M)→A林道分岐10:06→(16M)→B登山口10:22→(27M)→Cヒカリゴケ洞穴10:49〜53→(40M)→D尾根に乗る11:33→(6M)→E竜ヶ倉11:39〜47→(6M)→F尾根からの下降点11:53→(40M)→G林道登山口12:33→(20M)→H林道分岐12:55→(27M)→I林道入口ゲート13:22
H〜I間:山菜採りのみちくさを10分ほど含む
@県道53号から滑川林道に入って行く。すぐにゲートあり。 | A滑川林道分岐。道標に従い左に進む。 | 滑川橋 | 滑川の様子。 |
林道途中から見る竜ヶ倉。 | Bヒカリゴケ洞穴への登山口。 | 最初の渡渉点。 | 2回目の渡渉点。大きなケルン有り。 |
登山道に入り、経路に唯一ある行政の標識。 | C笹塒山のヒカリゴケ洞穴付近全景。 | C洞穴内部のヒカリゴケ。見事なまでの蛍光グリーンの発色。 | 洞穴の先、谷を進みたくなるが、右手(北)の尾根に乗ってゆく。 |
九十九折の続く緩い斜面。 | 途中で笹を分ける。 | もうすぐ尾根に乗る。 | D尾根に乗った場所から西側。 |
猛禽類の羽が落ちている。 | E竜ヶ倉山頂の祠。 | Eご存知「G標」 | E長期存在する大きな標識。 |
E三等三角点。 | EKUMOもある。 | E山頂から浅間隠山側。 | E山頂から笹塒山側。 |
F尾根からの下降点。 | ヒカリゴケ洞穴の上側尾根にある標柱。 | エンレイソウが咲き誇る。 | G林道まで下る。 |
林道脇はキスミレが乱れ咲き。 | H林道分岐帰り。 | Iゲートに戻る。 | 。 |
ゴールデンウィーク最終日は、生憎の出勤となった。その貯金をこの月曜日に当て込み休暇をとった。要するに三連休。長旅も出来たのだが、ゴールデンウィークに大いに遊んだので、今週はそのインターバル。土曜日は尾瀬で遊び、日曜日に一拍入れての月曜日。今日も天気がいい。夕方には雨になるようだが、そんな感じを微塵も見せないような太陽が見えている。ふと、“山菜が食べたいなー”なんて思いが出てきた。それには土曜日に食べた山菜のてんぷらに起因しているのだが、最近はほとんど山菜採りをしていない。たまには採る楽しみを味わおうか・・・。当然、抱き合わせで観光と山を当て込む。
南斜面でコシアブラやタラノキがありそうな場所。西上州近隣を地図で探ってゆくと、旧倉渕村の竜ヶ倉が目に留まった。二度上峠周辺は、山菜の宝庫。その近くならと収穫の方も期待できた。そして経路にはヒカリゴケの景勝地もあり、そこを観る適期でもあった。かなり遅いスタートとなったが、のんびりと現地へ向かって行く。日曜日とは違った車の流れ、やはり今日は月曜日。少しだけ優越感がある。
二度上峠に向かって行くと、鷹ノ巣トンネル東側に新開地区がある。ここを注意していると、右側に「笹塒山のヒカリゴケ」の案内看板があり、そこから林道が始まっている。生憎、林道入口にはゲートがされ入ることができない。道の南側にチェーン脱着用の余地が設けてあり、そこに車を停める。既に山菜採りが入っているのか、林道東側敷地の門扉前に5台の車が置かれていた。今日は山登りと言うより山菜採りがてらの散策。長靴を履いてスタートとなる。
ゲートを越えると、そこから30mほど先に、もう一つ壊れたゲートがあった。何があったのか、猛スピードで突っ込んだような曲がり方で、バーが脇に残っていた。舗装路を進んで行くと、山手側斜面にタラの木が見える。だいぶ採られている様だが、これだけ場所が良ければ当然だろう。ゲートが有り、車が来ない事が判っているので、こんな林道歩きもけっこう好きなのだった。
伝って来た滑川林道が、1.2キロほど進んだ場所で分岐している。直進方向にもゲートがあり、なにかこの林道はゲートだらけのように見えていた。道標に従い西にルートをとる。すると、林道脇に大量の水が流れているのだが、どうも様子がおかしい。長年通っているような水路でなく、かなり人工的。疑問を抱きながら伝って行くと、途中で道を跨ぐ土管から水が流れ出ていた。造られた水路のようであった。
滑川橋の所から見る滑川は、その名の通りの滑岩で構成された沢で、なにか伝ってみたくなる場所となっていた。林道脇には、タチツボスミレやキスミレ、春の花が小さく足許に見える。“なかなか登山口に着かないなー”なんて思っていると、正面に大きな山塊が見えてくる。間違いなく竜ヶ倉である。名前からすると、鋭く尖った山容を思っていたのだが、目の前に見える形は、ボテッとした形。なにかそのギャップが微笑ましい。周囲にはちらほらとタラノキがあるが、そのほとんどは摘まれていた。本気で採りに来ている人には適わないと言う事になる。そうこうしていると、林道からのヒカリゴケ洞窟に向かう登山口となった。ここまで車を入れられれば楽だが、止めているにはそれなりの訳があるのだろう。ただ、タイヤの轍もあり、散弾の薬莢なども落ちていた。一部で入っている車はあるようだった。
さて山道に入る。沢を右に見ながら薄い踏み跡を辿ってゆく。この踏み跡の薄さは、やはり訪れる人の少なさを示している。マイナーな景勝地と言えよう。その斜面にはトリアシショウマがあり、最初の沢を渡渉すると、その先でヤブレガサなどが見える。今日は微妙に山菜が気になる。2回目の渡渉点では、サワガニを探したりもした。今日は完全に里山を楽しむモードになっている。そしてこの2回目の渡渉した先に、残り250mの最後の経路道標がある。周囲は新緑、そこに聞こえる沢の音が耳心地いい。春の山歩きにはもってこいの場所のように思えた。
周囲を気にしながら登って行くと、右側に直立した大岩が現れた。だんだんと洞穴の存在が近くなってきている。するとその先の同じ右側斜面に、鉄格子のフェンスが見えてきた。“なんだ、洞穴の中には入れないのか”と思いつつ、そこに向かって続く道を進む。しかし近くなっても洞穴の存在など見えてこない。“なんか拍子抜けだなー”などと思って、鉄格子からその先にある僅かな隙間を覗くと、なにか、宝を探し当てたかのような輝きが見えてきた。思わず「わーっ」と声に出したくなったが、そんな強いインパクトのあるヒカリゴケが目の前にあった。神秘的なその緑色に、しばし時間が止まったように吸い込まれる。格子を両手で掴みながら、両膝を地面につき、食い入るように眺める。この景勝地をなめていた事も有るのだが、こんなにすばらしいヒカリゴケが見られるとは思わなかった。“いやな鉄格子だな〜”と思っていた部分は、このおかげでこの美しさが保たれていると理解でき、「的確」と180度考えが変わっていた。暫く自然の造形美を楽しんでから上を目指す。
ヒカリゴケから先は谷に入るような道で、その谷の右岸側には標柱が立っている。あたかもそちらに進むように見えるが、左岸側斜面にマーキングがあり、進行方向右側に導いている。この先、暫く植林帯のような針葉樹の中を直線的に上がって行く。そしてそれが終わる頃、雑木斜面に切られた緩やかな九十九折を辿る。緩やか過ぎるほどに緩やかで、もう少し直線的に高度を上げて欲しいと思えてしまうほどであった。このまま尾根に乗り上げるのかと思ったら、その前にササの繁茂する中を通過して行く。ここは朝方、もしくは雨上がりだと、全身ずぶ濡れになる場所である。道形はしっかりしているので、下を見ながら両手で分けて進む。進行方向の空が開けて来て、尾根が近い事が判る。しかし尾根が近くなると、またまた踏み跡が薄くなる。薄れたり、ハッキリしたり、この強弱がこの登山道の面白みかも。
尾根に乗り上げると、そこにはマーキングが沢山縛られている。下降点の目印と言う事だろう。尾根上の踏み跡は薄く。ここから南西に向けて進む。進む先に黒い大きな浅間隠山も見えている。ちらほらとマーキングが続き、それらを拾うように進んで行くと、途中に猛禽類の羽が落ちていた。「竜」に「鷹」かと、なんとも愛称もいいような。手に取りつつ歩んで行くと、その先に祠が見えてきた。
竜ヶ倉山頂。この山名は山名事典を引用する。現地にかかる標識には「竜ヶ岳」と表記されている。おやっと思ったのは、ここにG標があった。確かGさんは地形図に載る山を追い求めていたはずであり、地形図に載らないここに標識が有るとは思わなかった。それと、祠の西側に下がったオレンジ色のマーキングは、なんとKUMOであった。三等三角点が中央に鎮座し、樹林の中の山頂だが、居心地はなかなかいい。どこか展望がある所と、南東側に下るも、樹林は切れず。どうも西側に行った方が良かったようだった。緑色のペンキで
「岩岳」と書かれた標識は、獣の仕業か、周囲に割れた状態で散らばっていた。踏み跡は浅間隠山側にも続いており、笹塒山とを繋げて歩く人も居るのだろう。
下山は往路を戻る。尾根下降点から笹を分け、九十九折を下り、針葉樹尾根を下って行く。そろそろヒカリゴケ洞穴の場所になる頃、登山道は鋭角に西側に進ませる。ここで少し尾根上を伝ってみた。するとそこには「文化財境界」という見慣れない石柱が続いていた。途中から北側斜面を下り、洞穴の前に降りる。降りながら後悔したのだが、斜面の崩壊が進んでいる。景勝地でもあり、ちと拙い行動をしていたようだ。再び鉄格子を掴みながら中を覗き込む。数時間の違いだが、周囲の明るさが違うと、中の発色が違って見える。天気が晴れから曇りになりつつあったのだが、少し暗い日に行った方が綺麗に見えるようだ。エンレイソウも大きな葉を広げ、白く咲き出している。ヤブレガサを数本摘みながら降りて行く。山菜は採り過ぎてはダメで、和の心、嗜む程度でいい。渡渉点を渡り、トリアシショウマも少々。ビニール袋の中が、こぶし大に膨らんだ。
林道に降り、あとは山菜の王様を狙う。今でこそ王様の地位をコシアブラに取られてしまっている様だが、タラはタラ、日当たりの良い斜面を睨みながら、林道を戻ってゆく。往路に見ているので、既に採られて無いのは判っている。タラは坊主か・・・と思いつつ、林道分岐を54号線側に戻る。するともうすぐゲートと言う前に水源施設があるのだが、その北側斜面が植林帯になっている。ここにちらほらとタラノキが見えた。当然のようにここも採られているのだが、ここは藪慣れしている私に運が向く。周辺のイバラを分けながら斜面をゴソゴソやると、採られずに残っているものがいくつか見える。ニコニコしながら山の恵を採取する。10分ほど寄り道をしてから舗装路を降りて行く。
ゲートに到着すると、出がけにあった車は無くなっていた。まず間違いなく山菜取りだろう。いつもここに来ているなら、在り処を知っているはず。ピンポイントで現地に入り、サッと採ってきてしまうのだろう。チェーン脱着所まで戻ると、サラリーマンが食事中であった。こんな山村でも営業か・・・。はまゆう山荘にでも仕事に来たのか。それを見て、またまた平日を感じるのであった。
竜ヶ倉。ヒカリゴケ+山菜で、とても楽しい山歩きが出来た。ここは夏でもなく秋でもなく冬でも無く、適期は春と言えよう。ヒカリゴケの発色が一番いいのがこの時期であり、山岳会などでのパーティー行動には、とても楽しい場所になるであろう。もっと陰湿なマイナーな場所かと思っていたが、マイナーであるが明るい楽しいルートであった。沢の流れもづっと沿っており、水を持たずとも適当に給水が出来るのがいい。春を過ぎて夏場でもいいかも。ヒカリゴケに対し大人がこれほどに喜べるのだから、子連れで出向いたら、さぞかし楽しいだろう。