藤平山 1150m 守門岳 1537.3m 袴越 1527m
青雲岳
1490
2010.04.03(土)
晴れのち雪(暴風雪) 単独 田小屋地区除雪最終地点より入山。 行動時間8H15M
@横根地区6:01→(66M)→A大池7:07→(78M)→B藤平山8:25〜28→(77M)→C守門岳9:45〜55→(23M)→D袴越10:18〜20→(24M)→E守門岳再び10:44→(11M)→F青雲岳10:55〜56→(14M)→G守門岳三度11:10〜15→(78M)→H藤平山12:33→(38M)→I854高点東下降点13:11→(23M)→J大池帰り13:34→(42M)→K除雪終点14:16
※G〜H間はホワイトアウトの中でのコースタイム
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| @横根地区除雪最終地点。駐車スペースは4台ほど | 左岸側の谷(550m地点)より振り返る。 | 600m地点より南東側の展望。 | A大池。水面は全体の1/5くらいだけ出ている。 |
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| 854高点への尾根。 | 左の写真の場所から振り返る。 | 854高点からの展望。先ほどの池が下に見える。 | 854高点から先はナイフリッジ(東側ほど鋭利)が連続する。 |
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| 伝って来たリッジを振り返る。 | 960m付近。尾根が安定して歩き易い。 | 1010m付近からの広い地形。ここは下山時注意箇所。 | 1027.5高点から守門岳(中央)。 |
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| 1027.5高点から越後駒側。 | B藤平山(東峰)から守門岳。 | B藤平山から浅草岳。 | B藤平山から越後駒・八海山側。 |
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| 1250m付近。 | 1340m付近。 | 1460m付近。 | 山頂直下のエビの尻尾。 |
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| C守門岳山頂。 | C守門岳から袴越。 | C守門岳から青雲岳。 | C守門岳から藤平山側。 |
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| 袴越へ下降開始。最初から急下降。その先はナイフリッジの連続。 | ナイフリッジの頂点北側を掠めてゆく。 | ちょうど中間峰から見る袴越。 | 中間峰から見る守門岳。 |
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| 3/5ほど進んだ辺りから見る袴越。 | D袴越山頂。東西に長く、あまり広さはない。 | D袴越から浅草岳。 | D袴越から守門岳。 |
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| D袴越から烏帽子山。こちらの尾根も数箇所ナイフリッジが見える。 | D大雲沢側。 | E守門岳再び。 | F青雲岳から大岳側。 |
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| F青雲岳から守門岳。左が袴越。 | 青雲岳と守門岳間は、アイゼンの刃が入らないほどにガチガチの場所が多かった。 | G守門岳三度。到着後1分も経たずにホワイトアウトに。 | G同定盤が雪面と同じ高さに。 |
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| H藤平山帰り。視界ほとんどなし。 | 藤平山から下りだし、やっと有視界で歩けるようになる。 | 下側から藤平山側を望む。やはり上の方は濃いガスの中。 | Iナイフリッジの尾根に戻る。適当な場所から大池を目指して下降開始。 |
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| 降りて行く斜面。雪が腐り、ダンゴが出来やすい状態だった。 | 上から見る大池。池の右側を通り抜けた。 | J大池。また雪が強くなる。池の脇(池の上)を通過して行く。 | 十二神社の鳥居。 |
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| 除雪最終地点に近づき振り返る。往路は写真中央(ど真ん中)の谷を駆け上がった。 | K除雪最終地点の駐車の様子。 |
決まったはいいが、金曜日はかなり風が吹き荒れていた。土曜日も少し尾を引くようで、雪の状態が気になった。スキーで行きたいが、おそらくガチガチだろう。そして今回は前回の保久礼小屋のルートは辿らず、大原か田小屋地区から入ろうと考えた。しかし大原からだと、スキー場が4日まで動いておりゲレンデ通過に際し自由度が無い。となるともう田小屋からのルートしかなくなった。そして袴越への鋭利な稜線を思うと、ここはスキーは諦め冬季の完全武装で挑む事にした。アルミアイゼンでなくSCM材の重いアイゼンを準備。最後まで迷ったのがピッケル。守門岳まではまず使うことが無い。その先の僅かな距離の為に持つのだが、重量タイプを持つか、軽量タイプを持つか・・・。何となくでの判断でしかないのだが、後者を選んだ。そして緩斜面が多いコースなので、足許はスノーシューとした。
2週ほど前から軽い気胸になっていたのだが、木曜日くらいから少し状態が悪くなり、肺と肋膜との隙間により、気持ち悪いほどにゆらゆらと肺が揺れている。「馬鹿は死ななきゃ」の類であるが、いつものように山で治癒させるために安静とはならない。3:25家を出て関越道の小出インターを目指す。谷川岳SAに水を汲もうかと立ち寄り、自販機でコーヒーをドリップする。運動前なので少しでもカロリーをと、珍しくクリームと砂糖たっぷりの物とした。ただ、こんなものでさえ胃に詰めると、肺を圧迫する違和感がある。「まあ行ける所まで行こう」と言う気分になる。
小出で降りて17号から252号に入り、前回は二分地区から入山したが、そのまま入広瀬駅の方へ進む。今回の入山場所は田小屋地区としていた。しかし346号から林道に入ると、50mほどで除雪は終わっていた。その先は雪の壁が2mほどある。周辺に適当な駐車スペースが無く、この為に横根地区側にズレて行く。横根地区から大池に向かうように林道を進むと、地形図の422高点付近まで除雪されており、その除雪終点地がかなり広くスペースが設けられていた。道路上ではあるがゆったりと停めさせていただき、急いで準備をする(5:45)。準備をしながら脇の雪を触ってみると、かなり締まっている。それによりスタートはつぼ足を決め込み、スノーシューはザックに結わえた。
ストックを両手に持ってスタートする。しかし林道の道形は全く判らない。田んぼの中を少しづつ高度を上げてゆくと、右手に沢が出てきた。その上流側に小さな対岸に行く橋も見えていた。そしてその左岸側には尾根も見える。と言う事は見えている橋は、地形図の実線表記の橋という事になる。しかしどうしても林道の道形が判らない。ここで林道を当てにせず、地形を見ながら進む事にした。左岸側に移ると、上流側に大きな堰堤が見える。これも地形図に書かれているので判るのだが、林道は対岸の右岸側にあるようだ。もう戻るつもりは無く、尾根西側の谷を詰めて行く。途中で、ガリガリの斜面となり、スノーシューを装着し、その爪に物を言わせて上がって行く。
途中こんな何の変哲も無い場所であるが、ここの通過点に標高600mのちょっとした高みがある。こんな場所であるがかなり気持ちがいい。毛猛や未丈側の山波がすばらしい陰影を織り成している。ただ、ここを伝うのは地図上では最短ではあるが、地形的な高低差の面ではマイナスで、その先で大きく下らねばならなかった。かなり急斜面で下を向いては降りられず、蹴り込みながら後ろ向きで降りる。降りきって林道に乗った形となったが、こうなると最初から林道を伝った方(判らなかったのだが)が無難であった。この付近になると林道の道形は良く判った。兎の足跡を追いながら、硬い雪の上をガリガリと音を立てながら進んで行く。
大池手前の九十九折は、そのほとんどがショートカット出来、直線的に登り上げてゆく。そしてその大池は、池があるであろう窪地の北側に、全体の1/5くらいの広さで水を湛えていた。さあここから目の前の急峻尾根に上がらねばならないのだが、見える斜面は何処も厳しい斜度がある。夏道の場所も判っているが、その有るであろう辺りにはデブリも多くみられる。こうなると、田小屋から入って1027.5高点から南西に派生する尾根に乗ってしまったほうが良かったように思えたのだが、ここからどうにかして進まねばならない。等高線の緩いのは尾根末端側の西側斜面。そこを狙うように這い上がる。斜度が緩いとは言え、スノーシューにとっては辛い斜度で、蹴り込みながらグリップさせて足を上げてゆく。そして尾根に乗った形となるが、そこから東を見ると、この尾根の薄っぺらい事。854高点に上がると、その先はナイフリッジの連続であった。その代わり、ここからの展望は頗る良い。東進してゆくのだが、少し気合をれて足許に注意しながら渡って行く。危険箇所の距離は60mほど。少し雪の崩れた鞍部まで行くと、その先は広い尾根に変わる。
雪面はアイスバーンに近い硬さがあり、それが朝日に反射し眩しいほどに輝いていた。1010mほどで、かなり広い地形の中に出る。ここは少し複雑地形。今日は視界があるのでいいが、視界が悪い時は注意箇所となる。南北に2つの尾根があり、今伝って来たのは南側の尾根であり、帰りに北側に乗ってしまうとNGとなる。ただ夏道は、こことは違うかなり北側の谷を通っているので、「冬季の場合」とご理解いただきたい。弧を描くように南から巻き上げるように進むのだが、周囲はブナの幼木が多い。すると1027.5高点から派生する尾根に乗ると、そこにスキーでのトレールが薄く残っていた。
1027.5三角点峰は、360度の展望がある場所で、かなり気持ちがいい。その代り風当たりも強い。ここに来て少し風が強く感じられるようになった。目指す先に藤平山が見える。そしてその先に真っ白い無毛の守門岳が待っている。雲一つない青空で、快適そのもの。冬季であり、もっと苦労するはずと、少し行動時間をプラス気味に計画していたが、夏道を辿るほどに順調に進んで来られていた。越後駒も、それとすぐ判る山容を見せ、そこを中心に周囲の同定をしてゆく。藤平山までの尾根は少し複雑に続いているように目視できるが、伝ってみるとあまり複雑さは無く、容易にルート取りしてゆける。
藤平山の事典からの情報では、3つの峰から形成されている事になっている。最初に登りあげるのが西峰。次に本峰で、その先が東峰なのだが、いまひとつその東峰の存在が良く判らなかった。ここからも息を呑む展望と言ったらいいか。「すばらしい」の一言に集約される。それから地形図では1144として標高点を取っているが、山名事典では1150mと表記されているので、その標高を使わせていただく。もしかしたら地形図の改訂がされていないままなのかもしれない。目指す守門岳側は、広いすばらしい尾根が続いている。この時、スキーで来なかった事を後悔していた。風は冷たいものの、暑いほどの日差しを受けている。ここ何週か、天気に味方され、「今日もまた」と思ったのだが、このあと酷い天候になるのであった。
1400mを越えると尾根上に沢山のクラックが入っていた。そこに落ちぬように気を使いながら行くのだが、東側に雪庇があるものの、その重みで割れてきているとは思えないほどに西側にもあった。それらは雪の下に隠れている場合もあり、2度ほど股まで落ち、ドキッとする。そしてもうすぐ山頂と言う場所には、エビの尻尾が7センチほどまでに育ったものが散見できた。風もどんどん強くなり、あらゆる隙間から体の中に忍び込もうとしていた。
守門岳山頂。順調すぎるほどの経路時間での登頂であった。雪の状態が硬く、その為に舗装路を歩いているかのように早く進めた感じがある。それにしてもジッとしているのが辛いほどに寒い。次に行く袴越側を望むと、その間には予期していたナイフリッジが続く。これを見て、前回ガスに巻かれた中、無理にここに来たとしても踏めなかっただろうと思えた。そして袴越の最後の斜面は、こちら側からは垂直の壁のように見える。この天気の良い今日であっても、かなり恐ろしく見えていた。今日は南西の風、東側に逃げたくとも、守門岳の北側は切り立っていて寄って行けない。東に僅かに進むと、棚が出来ており、そこでスノーシューから12本爪にスイッチ。ストックもピッケルに持ち替えた。スノーシューをデポするにも、そのままでは風に煽られて吹き飛んでしまいそうであり、ストックと供に雪の中に埋めておいた。
さあ東進開始。爪の効きを確かめるように雪の上に刃を立てて行く。15mほど下ると、すぐにナイフリッジとなる。ここは頂点の1mほど北側をかすめて通過して行く。スピードは全く上がらない、一歩一歩を確認するような歩みであった。その一歩一歩の間には、ちゃんとピッケルを打ち込む動作も入る。突風が来た場合、北に足が滑った場合、南に足が滑った場合、同じように南北によろけた場合、ありとあらゆる想定をして、瞬時の対応が出来るように身構えていた。中間峰に到達するのだが、その先がさらに鋭利な刃になっていた。さらにさらに袴越の最後の壁が、より垂直に見える。山頂の北側には少しブッシュが出ているから、何とか巻き上げたいが、上にあがったらザイル下降せねばならないようにも見えた。ザックに入っているのは10mほどの簡易ロープ。折り返して使っては全く足らず、15mほどの壁にどう対応しようか。最悪は直下までで引き返すことにして、さらに東へ進む。すると、どんどん近くなると、その壁には適度な勾配がある事が判った。半信半疑のまま進んできたが、「登頂できる」と可能性が大きくなった。ただ、まだまだ足許はナイフリッジ。場所によっては平均台の上のような場所があり、東西どちらにもバランスを崩せないような場所もあり、久しぶりの真剣勝負であった。そして直下からはガチガチのアイスバーンだった。それでも登れる斜度であり、12本爪の刃がかん高い軋む音を響かせて這い上がる。
袴越山頂。念願の袴越登頂である。やや狭い山頂が、より登頂の嬉しさを増してくれる。ピッケルを突き刺し記念撮影。今日は軽いピッケルで来たが、本来ならずしりと重いタイプが適当な場所であった。守門からここまでの経路、ピッケルを打ち込まずに通過したのは2割ほど、残りの8割はしっかり入れて通過して来ていた。天気は少し曇ってきたが、ここからは360度の展望がある。東には浅草岳。そこから南に追って行くと越後の名だたる山塊が、雄姿と言える面構えでこちらを見ていた。やや風の強くなる周期が短くなってきていた。記念撮影を最短に済まし、往路を戻る。山頂からの斜面は、後ろ向きで降りるほどでもなく、前向きで降りられる斜度がある。ただしアイスバーン。往路のトレースを辿るように戻るのだが、時折耐風姿勢をとらないと落とされてしまうほどになった。両手でピッケルを突き刺し、低く身構える。谷から吹き上げた風が肩越しに北側に通過して行く。何度かそんな体勢をしながら、ゆっくりとリッジの上を戻る。往路も復路もどちらが楽と言うのは無く、往路でガクガク震えた場所は、復路でも同じように震えた。そして守門岳の斜面となるとやっとホッとする。
守門岳に再び登頂し、雪の中からストックとスノーシューを掘り出すが、風は既に15mを越える強さになっていた。残すは、青雲岳。目を凝らして大岳を見ると、4個の黒い点が見える。スキーヤーが登頂しているようだ。それとその周囲の東洋一の雪庇からは雪煙が舞いだしていた。嫌な予感。行動を急がねば。スノーシューに履き替えずにそのまま青雲岳を目指す。しかしそれは正解で、こちら側はガリガリに凍っていた。南西の風で、左頬を叩くような強風が吹いてきた。こんなに冷え込むとは予想しておらず、雨具を防寒具としていたのだが、冬用の物が欲しい状況となっていた。
青雲岳。ここからは大岳の人影が良く見える。向こうもこちら同様に風が強いだろう。いやそれ以上か、雪煙の舞い上がり方はさらに酷くなった。まだ視界があるが、ちょっとこの高度に居るのが拙いと思えるようにもなっていた。だだっ広い山頂で、360度の展望はあるものの、その縁にある雪で、少し邪魔されていた。急いで守門岳に戻る。背中を押されるように進むが、守門岳の向こうには、先ほど見えていた袴越がぼんやりとガスに覆われてきていた。オヤッと思って大岳の方を振り向くと、既にそこには大岳は無くガスの中になった。
守門岳三度。青雲岳から戻った時には30mほど視界があったが、ものの30秒〜1分ほどで、視界は1〜2m。所謂ホワイトアウト状態になった。こうなるとスノーシューに履き替えずに12本爪のままでよかった。一歩一歩が重要になり、ピッケルだけでなくストックがあることもプラスに作用する。通常なら判断はここで停滞である。スコップでもあれば雪洞を掘るのだろう。ツェルトがあるので包まろうかとも思ったが、ここで天下無敵のアイテム、「GPS様」の出番である。いつもは軌跡記録のために動かしているのだが、今日はナビをしてもらう。GPS登山は賛否両論あるが、無事帰る為のアイテムとしては、こんなに強い見方は無い。まさしくこんな時の為のアイテムなのであった。登りと同じ場所を通るので、おおよその地形は頭に入っている。気をつけるのはクラックと東側の雪庇。動いたから事故に遭うと言う事もあるのだが、降りた(動いた)方が身体が冷えなし、この(私の)場合に得策に思えた。
下山開始。右側から叩きつけるような横殴りの雪。それが目に入り、痛くて仕方ない。ストックで先を探りながらゆっくりと一歩一歩降りて行く。途中でサングラスをするも、かえって視界をなくす道具になり、レンズ面に雪が固着して見えなくなっていった。標高1500mほどだったか、瞬時に1m垂直移動した。股下が1mあるわけではないが、左足がクラックに落ちたのだった。その穴を見下ろすと、かなり深い。肝を冷し、次は無いようにと注意するが、暫くして次は右足を落とした。ここで少し停滞を思うのだが、往路で通らなかったやや西側を通過することにした。クラックは通常では春先の雪融けで起こり、雪庇の重さに起因する場合が多い。それなら雪庇から距離を置けばそれも無いだろうと考えた。尾根のやや西側にズレるのだが、視界はほとんど無い中での行動であり、GPSが無ければどうにもならない状況下であった。GPS様様と言えよう。西にズレると、ほとんどクラックはなくなり、それ以降落ちることは無かった。しかし暴風雪の強さに、尾根の下側を向いて歩けなくなり、東を向いて西に背を向けながらの、カニの横ばい状態で下って行く。二歩先が見えない登山。こんな恐ろしい状態も珍しい。起伏さえも見えず、ストックのラッセルリングが高低差を見る目の役割をしていた。それにしてもこんなに天気が一変するものか。長らく山に身を置いているが、これほどな急激な変わりようも初めてであった。やはりスキーでなく良かった。スキーであったら全く動けなかっただろう。もちろん滑って降りることは絶対に無理。ザックに結わえるにしても、強風の中であったら、スキーが風を受けて立っていられないほど。悪天ではあるが、今日の我が装備の選択に二重丸。
白く見えるが、闇夜の中を歩いているのと同じであった。全く見えない時間が1時間以上続いていた。大岳に上がったスキーハイカーはどうしているだろう。さらには周囲の山塊に入っている人はどうしているだろうかと気になった。ナビを逐一見ながら下って行くと、途中から登り勾配になってくる。藤平山が近い知らせである。いつになったら視界が開けるのか、こんな中に下るのはせいぜい2時間が限度。それ以上だったら、集中力が続かない。もしかしたらここが狭い尾根だったら良かったかもしれないが、往路にあれほどの展望を楽しんだので文句は言えない。本当に往路と復路では、天国と地獄の差があるのだった。
藤平山。ストックを突き刺し、とりあえずの通過確認写真撮影。これだけ標高を下げてもいっこうに視界が良くならない。絶対に標高を下げればよくなる確信があったのだが、そんな推測も揺らぎ始め、この辺りで停滞を本気で考えた。こんな時のために食料もガスも充分ほどに持っている。ただ風から逃げられる場所が全く無かった。皆無ではないのだろうが、往路に見ている景色範囲でないと、怖くて動けない事もあり、そう思えていた。凍りついたグローブを交換するのに、数十秒立ち止まるのだが、そんな動かない僅かな時間でも、体温が一気に下がっていくのが判る。やはり下ろう。
藤平山から5分ほど下ると、やっとここに来て視界が得られるようになってきた。それも急に。40mほど見えるようになり、このガスの濃さも極端な変化であった。ウソのように快適になるのだが、積もった雪で往路のトレールは見えず、1050mの尾根の肩的場所から、進路を北に続く尾根に取ってしまった。そのまま降りれば夏道の方へ行くのだが、途中で見慣れない景色になり、ルート修正。1027.5高点を経由して戻ってゆく。視界が無いまま、この先のナイフリッジを通過するのかと思ってドキドキしていたが、そこまでではなかった。そして854高点のあるナイフリッジを目の前にして、そちらには行かずに大池側に下ってしまう事にした。足許にはまだ12本爪が着いている。これがある事で急峻斜面も怖くは見えなかった。
しかし足を下ろしてゆくと、雪質が緩さが障害になった。数歩歩くと団子になるような状態で、3歩ないし4歩毎にストックで叩きながら下に降りて行く。シリセードでも出来る斜面であったが、途中には大木も多く、スピードがついた場合の怖さがあり避けた。そして大池の東岸に降り立つ。往路に見た大池の姿が間近にあり、それを見下ろしながら、「池の上は歩けるのだろうか」と言う疑問が出てきた。「もしも」と言う事があるので、かなりギャンブルではあったが、こんな賭けはけっこう好きであり、行ってみる事にした。12本爪では浮力が得られず怖いので、ここでスノーシューに履き替える。岸側から足を恐る恐る乗せてゆく。もし沈んでも、その足が落ちる前に次の足を乗せればよく、なんて忍者のような発想をしたり・・・。結果は問題なく渡る事ができた。岸を巻いても5分も違わないだろうから、心臓の弱い方はやらない方がいいかも。そう言えば我が肺(我が輩とかけてある)だが、相変わらず今日は肺の揺れが多い。患部が上部の部位の場合、痛みと苦しさを伴い、下部での発症だと揺れに通じる気持ち悪さが起こる(私の気胸の場合)。我が肺には幾つブレブ(原因になる穴)があるのやら。
大池の北側に乗り上げて、ここで林道に乗った形となる。道形を追ってゆくのだが、この辺りはやけに雪が腐っている。腐った上に薄っすらと雪が乗り、林道のショートカットでは、スキーをしているほどに良く滑った。アルミワカンだったら、ゴボゴボと潜って大変だったかもしれない。今日は道具の選択がかなりいい感じで的確であった。そして林道を進むと、その脇にベンチのような赤い丸太が見えた。近づくと、それは鳥居の一番上の部分であった。と言う事は、この辺りで2mほど雪があるようであった。覗き込むと「十二神社」の文字も見えていた。そのまま林道を伝って行くと、谷地形の中に降りて行く。そして往路に見た堰堤を上から見る格好になり、「こんな所を通っているのか」と、その先を伝って行って初めて林道の場所が理解できた。麓側からだと、ポンプ小屋らしきコンクリートの建物を過ぎ、大きな杉の木が2本あり、その前後に竹が並んで立っている。そこに沿うように進めばいいのであった。恥ずかしい事に、往路では全く判らなかった。
村落内では人が動いているのが見える。雪は下の方では雨となり、到着と同時くらいに強い降りに変わった。念願の袴越を踏めて大満足。そして今回は自然の恐ろしさをヒシと体感した。判断を違えれば大事故にもなり、行動出来たのはGPSのおかげであった。ただそのGPSも100パーセント信じていた訳ではなかった。もしかしたら「表示が違っている」と言う想定もしながら利用していた。どんな場合も念には念を、それが単独行の危機管理かと。
補足として、この時期に袴越を目指すなら、アイゼンとピッケルは必携。ナイフリッジの稜線は、単独だから気にせず抜けられたが、もし複数人での通過だったら、リッジの崩落が怖いようにも見えた。ザイルで確保しあいながら、距離を置いて通過した方がいいだろう。無積雪期の様子を知らないのだが、雪が無かったら、簡単に踏めたりして・・・。

