シシゴヤノ頭 2075m 七ッ小屋山 1674.7m 冬路ノ頭 1590m
大源太山 1698m
2010.10.9(土)
暴風(雨) 単独 大源太山登山口より反時計回りで周回 行動時間:5H55M
@大源太山登山口6:00→(12M)→A謙信ゆかりの道分岐6:12→(24M)→B水場6:36→(72M)→Cシシゴヤノ頭7:48→(35M)→D1544高点8:23→(30M)→E七ッ小屋山8:53→(3M)→F分岐8:56→(18M)→G冬路ノ頭9:14→(30M)→H分岐帰り9:42→(44M)→I 大源太山10:26〜27→(67M)→J北沢渡渉11:34〜36→(10M)→K謙信ゆかりの道分岐11:46→(9M)→L登山口11:55
G〜H間で5分ほど休憩
@旭原地区からの林道を詰め、登山口。 | 足場パイプ構造の橋。 | Aシシゴヤノ頭への分岐道標。 | A入ってすぐの道の様子。しばらくたおやかな道。 |
B水場。撮影背中側に大岩のベンチあり。 | Cシシゴヤノ頭 | C山頂標柱兼道標。 | Cシシゴヤノ頭三等点。 |
Cシシゴヤノ頭から望むコマノカミノ頭(西側)。 | C北側。中央の禿げた場所が加山キャプテンコースト。 | シシゴヤノ頭から東進開始。ガスがとれれば綺麗な紅葉がある。 | D1544高点。ここで馬蹄形に乗る。物凄い風。やっと立っている感じだった。 |
暴風雨の中。体を東に傾けながら、踏ん張りつつ進む。 | E七ッ小屋山 | E七ッ小屋山三等点 | F大源太山への分岐点。 |
G冬路ノ頭到着。 | G冬路ノ頭西側。 | G冬路ノ頭東側。 | H大源太山への分岐点に戻る。 |
分岐点から下って行くと紅葉の濃い場所が・・・。 | 最低鞍部から大源太山側を見上げる。 | 最初のタイガーロープの流してある場所。 | 最初の鎖場。 |
2回目の鎖場を終えると、その先に山頂が見える。 | I大源太山到着。 | I大源太山北側。 | I大源太山南側。 |
岩場のトラバースを終え振り返る。雨に濡れ至極滑った。雨天時通過は鎖がありがたい。 | 途中から弥助沢側の紅葉。 | 尾根を外れ北側の斜面に入った場所。 | ブナ林の中を降りて行く。新潟らしく、ブナに無用な(イタヅラ書き)切り刻みが多い。 |
J北沢渡渉点(右岸から)。ここも雨に濡れツルツル。 | Kシシゴヤノ頭への分岐点に戻る。 | L登山口帰り。路肩駐車の様子。 | L駐車場。こう停められると、後が難しい。 |
秋の三連休は、生憎な天気の滑り出し。「秋雨じゃ、濡れて登ろう」などと悠長な気持ちでいる人は少ないはず。山岳会などは、中止を含め予定を切り替えるのには大童だったろう。その点においての私は、決定が遅い分、天気を反映させながら場所選びが出来る。と言っても今回ばかりは何処へ行っても雨模様。そんな中でも新潟方面は少し良さそうで、谷川岳周辺の未踏座を踏みに行く事にした。
向かう先は、湯沢の「大源太山」。そして馬蹄形の上に山名事典に新規掲載された「冬路の頭」があり、抱き合わせで狙う事にした。さらには「シシゴヤノ頭」に突き上げる新ルートも開削された様子であり、楽しめそうな周回コースが出来上がった。ルートがある場所であり、降られてもそれなり歩けるだろうという判断でもあった。しかし、4日(月曜日)から季節柄の気胸発症。キリキリと肩が痛み、肺胞がぐらぐら揺れる症状。“マイッタな〜”息苦しさはさほど無いが、この揺れが酷く気持ち悪い。胃に例えるならば、水っ腹の状態な感じ。それが肺にあると思ってもらうとぴったりと嵌る。そんなこんなで、あまりロングコースは選択できない訳でもあった。適度に歩ければ・・・それが今回であった。
1:35家を出て、関越を湯沢インターへ目指してゆく。今回は湯沢インターからアプローチも近く、その点でもお気軽ハイクの気分であった。関越トンネルを出で土樽に入っても路面は乾いていた。“ヨシヨシ”この調子。湯沢インターを降りて、経路のセブンに寄るのだが、なぜか最近ヤキソバパンが置いて無い事が多い(どこのセブンも)。大事な山を楽しむアイテムなのだから、置いてもらわないと困るわけで・・・。もっとも、深夜に惣菜パンを置いても売れないから、ただ単にタイミングの問題なのだろう。週末のこんな時間しかコンビニに寄らないので、平日を知らない訳でもあった。
道標に従い「大源太キャニオン」の道標に導かれ進んで行く。途中から「大源太山登山口」の道標も現れだし、ナビ要らずだった。旭原地区から青少年旅行村へ続く道を左に見て、右に入る林道にハンドルを切る。波状の面白い舗装がされた林道で、クネクネと詰めて行く。周囲は最近刈り払われたのか、刃物跡が残る。伐採されたばかりの杉の丸太が山積みになり、周囲は林業作業がしばらく続くよう。そのまま舗装路を伝い詰めて行くと、大源太山登山口に到着する。既に1台の車があり、車中泊の様子。この駐車場は長細い敷地で、そこでの置き方が微妙。タイガーロープで車1台分でも仕切ってあるとそれに倣うのだが、既に停めてある1台に対し、どう停めてよいのか迷ってしまった。迷っている時間が勿体無く、少し林道を戻って路肩に停める。そして後に移動し、しばし仮眠。
4時頃だったか、ポツポツと屋根を叩く音が聞こえたと思ったら、しっかりとした雨粒が当るようになり、1時間以上降り続いた。“ここもダメか”と思ったのだが、5時40分になり、先着していた方が登山口から雨具でスタートして行った。こうなると悩んでいる暇は無い。飲みかけのコーヒーでコンビニで買ったサンドイッチを流し込み、雨具を着込んで準備をする。ただこんな食事でさえ、胃が膨れると肺が痛い。“くそーこの体”と苛立ちも・・・。最後に防水スプレーを吹きつけ準備完了。登山道に足を乗せてゆく。
登山口にはしっかり登山届けのボックスがある。それを左に見ながら水平動を伝って行く。右から沢の流れの音を聞きながら、左手にはここにも広範囲に刃物跡が残っていた。すぐに最初の橋があるのだが、周囲の石が濡れていて良く滑る。慎重にグリップさせながら左岸側へ渡ってゆく。そしてこの橋を渡って間もなくで、シシゴヤノ頭へ突き上げてゆく道の分岐がある。そこにある道標には「謙信ゆかりの道」とも表示してあった。もう少し判りづらい分岐なのかと予想していたが、気にしてなくとも目に入ってしまうような、判りやすい分岐点となっていた。
メインルートから外れた訳であり、道が怪しいのかと思ったら、ここからの登山道はよく管理された歩き易い道。しばらく水平に進んだら、クネクネと九十九折をしながら高度を上げてゆく。その途中には水場もあり、水場の前には大岩でのベンチも敷設してあった。嬉しいほどの配慮。この水でプラパティスを満たす。歩きながら、稜線から見える馬蹄形の紅葉を考えていた。そう、まだこの時は馬蹄形が荒れ狂っている事など梅雨知らず、暢気に歩いていたのだった。ただガスに覆われ視界が無いことだけは気になっていた。途中からコマノカミノ頭の山容も見えてくる。ちょうど良い色づきに、しかと秋を感じる。肺の痛みを堪えながら、口を結んでの鼻呼吸歩行。当然のんびりハイクとなっていた。どれだけ九十九折を繰り返したか、かなりクネクネとした道で、その分緩やかとも言える。先ほど「謙信ゆかりの」とあったが、謙信とはどんな関わりがあるのだろう。無知な私は全く想像がつかなかった。帰ってから調べよう。黙々と歩きながら、頭はいろんな事を考えていた。殊に雨に打たれた日は、帰りの温泉場を何処にしようかと思う時間が長いのだった。
1350mを越えた辺りの時間帯から、非常に風が強くなってきた。雨具のジッパーを首まで上げて、身を屈めるように歩いてゆく。低気圧に伴う風である事は間違いないが、少し想定以上の状況であった。そして歩いて行く切り開きの先に、標柱が見えてきた。シシゴヤノ頭に到着。もの凄い風。その風に煽られて、周囲のガスの移動が速い。おかげで少しだけ紅葉が楽しめる。ここでの風速は15m/sくらい。何とか立っていられるくらい。少し外気温が高いようだが、それでもじっとしていると寒い。僅かに立ち止まっただけで馬蹄形に向けて尾根を進んで行く。高度を上げるに伴い、どんどんと風が強くなる。南からの吹き上げの風で、体を右に傾けながら進んでいた。けっこうに真剣勝負。風との押し競饅頭なのだが、「♪おしくらまんじゅう、押されて泣くな」の節ではないが、実際に半泣きになって歩いていた。一方、もう一人の自分が居て、“イッヒッヒ、この風おもしれぇ”なんてスリルを楽しんでいた。気を許すと北側の谷に落とされそうで、踏ん張りながら背を丸く縮め、背中の上を風が通過させるよう歩く。それでも何度も立ち止まってしゃがむ事もあった。しゃがみながら、“今日は降りようか”と何度も思うのだが、立ち上がると足は七ッ小屋山側へ進んでいた。当然カメラは懐に入ったまま。なぜかこのように追い詰められると肺の事などどうでも良くなり、今の今をどう切り抜けるかに頭が働いていた。ちょっと趣味を越えた命がけだったり・・・。
1544高点で馬蹄形に乗る。いやはや凄い風。普通に20m/s吹いているだろう。気を抜ける暇など皆無。唯一、登山道がやや北側にある場所は、地形により風が遮られていた。ザックカバーは何度となく着け直したが、次の瞬間には剥ぎ取られ、無駄な努力と理解した。途中に池塘があり、登山道は木道に変わる。当然のように足を乗せるが、雨に濡れた木道と吹き続く強い風は、そこをスケートリンクのように体感させてくれた。足を乗せると風下に向けてツーっと滑るのだった。“怖い!”申し訳ないがここでは木道の脇を歩かせてもらった。尾根上の鞍部が強い風の通り道のようで、そんな場所では恥ずかしげもなく四つんばいで通過して行った。そうしないと通過できないからでもあった。連続するその風に、“いつか止んでくれないのか”と願うばかり。耐風しながら進んでいるわけでもあり、疲労度も大きい。
七ッ小屋山通過。本当に通過で、立ち止まっているより歩いて温まる方を優先させた。この先、尾根の北に行けば風は納まるのは判っていた。でも目標地はもう少し清水峠側に進まねばならない。分岐にザックをデポしようかとも思ったが、ザックの重さでさえ飛ばされてしまうのではないかと思えるほどの風であった。冬路ノ頭を目指して下って行く。相変わらずの風、しかし、途中に二つ小さなピークがあるのだが、道が完全に北側を通過して無風の場所があった。嬉しい避難場所確保。帰りにここで休憩する事にして、もう少し・・・。
冬路ノ頭山頂。標識類は何もなく、気にしていなければただの通過点。ここを山頂として目標に掲げる人はごく僅かであろう。東に進むと広い休憩適地が見えているが、今日のそこは、適地=風の強い場所となる。急いで先ほどの避難場所へ急ぐ。そこに入ると、パタッと風が止み暖かい。ザックに腰を下ろしながら持ち上げた湯を啜ってあんパンを齧る。甘いアンパンが、こんな時には本当に幸せに感じる。甘さは体に活力を与えてくれると共に、心を落ちつかさせてくれるようであった。そしてテルモスをザックに仕舞おうと、中の方を覗くと、下の方にザイルが見えた。“えっ”と一瞬思ったのだが、前週の準備のまま入っていたわけで、今日山行には無駄な重荷。“はぁー”とため息。当然ため息は一瞬にして風に吹き飛ばされ、悠長にそんな事を思ってはいられなかった。5分ほど登山道上で休憩をして、再び七ッ小屋山へ登り上げてゆく。その斜面には、僅かだが九十九折がある。こんな僅かな体の方向の変化でも吹き飛ばされそうになっていた。分岐の到着し、少し足早に北に進んで行く。高度も下げて行くのだが、ウソのように風が収まってゆくのだった。「天国と地獄」。ここの通過は、まさに天国に思えた。
軽快に高度を落として行き、最低鞍部に到着。全くのガスで、すぐ手前にある岩峰しか見えていない。最初にタイガーロープが流してあり、次に鎖場がある。ここで少し腕力を必要とする。濡れているから尚更なのだが、鎖が無かったら、やや厳しい登りとなった感じ。さらに上にもう一つ鎖が流してあるが、ここは掴まらずとも左に寄って通過して行く。登り上げると、その先の岩峰の上に標柱が見えるもうすぐ山頂であった。ただここに来て、風に対しての障害物が無くなった感じ。10m/sほどの風が吹き付けていた。
大源太山山頂。標柱の他に、登山道整備用のタイガーロープと鎖がデポされていた。残念だが展望は無く長居は無用。すぐに西に降りて行く。急下降の場所は滑りやすく、ゆっくりと足を下ろす。岩場のトラバース箇所には鎖が流してあるのだが、ここでもそれがある事で助かった。滑りやすい濡れた岩場は、鎖を掴みながらのへっぴり腰での通過であった。高度を落として行くとガスも取れ、次第に周囲の紅葉が鮮やかに見えてくる。最盛期は来週とか再来週だろうか。やや焼けた茶色が多く見えるのは、この夏の猛暑からなのだろう。尾根から外れ、ブナの樹林帯の下りになると、そこはタイガーロープの連続する場所。足場は赤土の滑りやすい場所が多く、ロープを補助に降りて行く。すると前の方から大人数のパーティーが登ってきた。話し言葉は標準語。聞くと17名のパーティーの様子。関東の方はお淑やか、相互に譲り合いながら品良くすれ違って行く。最後のリーダーらしき方に聞くと、大源太山のみのピストンらしい。中高年のパーティーであったが、あの風の中、この人数で山頂に居るのも大変だろう。すれ違って僅かに進むと、見覚えのある後姿が見えた。本日1番に出発した方であった。話を聞くと、今日の入山者で、2パーティー4名が風により敗退したとのこと。そんな風なのであった。
北沢に降り立ち、左岸に渡る。やや増水していて、最後は靴を濡らしながら渡りきる。濡れた岩の上の通過で、ここでも敷設されたタイガーロープに助けられていた。渡渉用のロープが張られているので間違えることは無いだろうが、地形図での破線登路は右岸にあるが、現在は左岸に登路が付いている。ややゴロゴロとした岩を踏みながら、緩やかに高度を落としながら進んで行く。すると目の前に「謙信ゆかりの道」への分岐が現れた。これで一周。あとは橋を渡り、水平道を大股で登山口を目指す。
登山口の駐車場にはマイクロバスが置かれ、ナンバーを見ると房総からであった。途中のパーティーのものであることに間違いなく、前々から決まっていた会山行だったのだろう。決行か中止か迷っただろうが、今回の風に上でどう思っただろうか。とても難しい判断だったろう。
次回は、中里スキー場から足拍子岳経由で藪尾根を繋げてみたい。まだまだこのエリアには楽しそうな遊び場が沢山残っている。