小無間山 2149.6m 中無間山 2109m 大無間山 2329.3m
三方峰 2150m 小根沢山 1922m 大根沢山 2240m
2012.10.13(土)
晴れ 単独 諏訪神社から大無間山に上がり三方峰へ、大根沢山まで北進し明神谷へ下る。 行動時間:14H9M
@田代諏訪神社前4:05 →(3M)→A諏訪の霊泉4:08〜10→(144M)→B1796.2三角点P4(小無間小屋)6:34〜39→(103M)→C小無間山8:22〜27→(38M)→D中無間山9:05→(62M)→E大無間山10:07〜11→(54M)→F三方峰11:05〜12→(77M)→G小根沢山12:29→(65M)→H大根沢山三角点13:34〜35→(3M)→I大根沢山最高点13:38〜48→(63M)→J2112.2高点14:51→(53M)→K1737高点15:44→(45M)→L1397.9高点16:29→(29M)→M林道に降り立つ16:58→(28M)→N白樺荘前明神谷線入口17:26→(14M)→O自転車デポ地(旧白樺荘入口)17:40〜41 →(33M)→P田代18:14
富士見峠ルートが崩落により通行止め、口坂本経由で大日峠を越えてゆく。 | @諏訪神社下からスタート。 | A諏訪の霊泉を汲んで・・・。 | B1796.2三角点峰に到着。P4。 |
BP4から見る大無間山。 | B市営小無間小屋。 | B小屋内部。デポザックがあった。 | 鋸歯に入り、アップダウンを繰り返す。 |
小屋泊まりの4名のパーティーが先行していた。 | ウヰスキーピーク通過。 | かなり崩落が進んでいる。淵となる場所の登山道も荒れてきている。 | 以前はもっと安全だったのに・・・。ややヒヤヒヤして登って来る。上から下を見ている。 |
C小無間山 | C小無間山三角点。 | C三等点 | 小無間山から西は快適尾根。 |
途中の崩落地から見る大無間山。 | D2109高点が中無間山。 | D中無間と手書き表示。 | 二重山稜の場所。北側の尾根に乗ってゆく。 |
途中の展望場から見る大根沢山。 | 展望場から西側。深い山塊に居る感じがする。 | E大無間山到着。 | E大無間山一等点。 |
E大無間山標識。 | 2300m付近。破線ルートに乗らず、西進している。 | 2270m付近。広い尾根。 | 2230m付近で倒木帯がひと段楽する。見える3段に重なった倒木が最後の印。下から見ている。 |
2140mでルートに乗った。 | 2130m付近に道標もあった。 | 2102東のコルから。 | 2102高点北側には大きな湿地がある。 |
2090m付近。歩き易い低いササの中を行く。 | 目の前に三方峰。最低鞍部付近から。 | F三方峰到着。好展望地。 | F三方峰から大無間山側。 |
F古い道標が落ちていた。 | F三方峰から北側。 | F最高点の古い道標標識。 | F左の絵の木が中央の木。もうそこまで崩落が迫っている。 |
2100m付近の幕営適地。 | 2127高点南2070m付近。紅葉が綺麗だった。 | 2127高点通過。 | 2100m付近で岩場となり東側にルートがある。 |
2100m付近からの展望。 | 2127高点通過。 | 1970m付近。やや痩せ尾根。 | 1970m付近から見る大根沢山。 |
1930m付近の幕営適地。 | G小根沢山。通過点のような場所。気にしていないと通過してしまう。 | GSK氏の絶縁テープが残る。 | 2127高点付近も展望地。 |
2127高点には標柱あり。 | 2120m付近も開けた場所。西側を見ている。合地山が見えているか。 | 2120m付近の様子。ザレ尾根。 | 途中十字にクロスした木がある。「シュワッチの木」。 |
2128m付近から。もうすぐ大根沢山。 | 大根沢山の展望場から大無間山側を見る。 | 2200m付近で樹林帯の中へ。 | H大根沢山三角点ポイント。 |
H大根沢山三等点。 | H標識 | H朽ちた標識。 | I大根沢山最高点。 |
ISK氏のいたずら書きも残る。 | I大根沢山最高点の標柱。 | 最高点からは北東へ進む。リボンが続く。 | 2137高点の様子。 |
2135高点西側の様子。 | J2112.2高点 | J三等点鎮座。 | J下側へ向けて「田代」と書いてあるのだが、かなり薄れてきている。 |
2112.2高点からはかなり急峻。2030m付近。 | 1903高点付近。 | 1737高点西側。 | K1737高点東峰。 |
K注意ポイントとなるか、リボンや標識が乱打。 | 1670m付近。相変わらずリボンが続く。 | 林道に乗る。しばらく進むと、右側に小尾根を置くように歩いてゆく。 | 小松のブルドーザーもあったり。ここで林道を離れ尾根を進む。 |
L1397.9三角点通過。樹林の中。 | 送電線鉄塔が見えたら、もうすぐ林道。 | 鉄塔から見る畑薙湖。 | 送電線鉄塔の北側には階段もある。 |
M明神谷林道に降り立つ。 | M降りてきた斜面。 | 林道にはかなり広い場所がある。この場所からの尾根にリボンがあり、取り付き点のようであった。 | N白樺荘前に出る。 |
N林道明神谷線入口。 | O旧白樺荘の入口付近に自転車をデポ。ここからダウンヒル。 | P田代の諏訪神社前に到着。 |
前週に続き、今週も南アルプスの同じエリアに入る。畳みかけるように一気に・・・。2000m超級の残りも2座となり、気になってしょうがない状況に、我慢弱いとも言える。
最後に残ったのは、大根沢山と三方峰。どちらもアプローチが長い場所。近接して2座あるのだが、経路を色んな場所を楽しむために、分けて登ろうかと思っていた。そんな時に、「小根沢山」が目に入った。大根沢山と三方峰の中間地点に在り、2座を結び留めるような位置にある。これをどちらの山と抱き合わせに登ろうかと思案していると、どうせならいっぺんに・・・との思考になった。
幾通りもコースが選べるので、計画段階がかなり楽しかった。寸又峡からの林道を使ってと思い、朝日山を帰りにしようか行きにしようかと眺めていたり、バラエティーに富んだルート選びが出来るので、地図を眺めながらの時間がどんどん経過していった。そんななか気になっていたのは、大根沢山への登路として使われている林道明神谷線からのルート。ここ選ぶとなると寸又峡側とは正反対の方角となるのだが、伝いたい衝動に駆られ稜線の東側を見るようになった。
こちらとなれば、大無間山へのルートを抱き合わせにするのが順当。時計回りか、反時計回りかの選択が最後に残るが、最後を楽にするには時計回りの選択。自転車を利用して南アルプス公園線(県道60号)をダウンヒル可能。実は、前週に自転車が上手く使えなかった事が汚点として残っていた。計画通り使って結果を出し、前週の苦い記録を払拭させたいとの思いもあった。
前夜、20時に家を出る。野辺山を越えて須玉に降りて、ちょこっとだけ高速に乗り、南アルプスインターからR52号をひた走る。関越道から圏央道と繋いで走れば現地まで速いのだが、このルートもストレスなく走れるので頻繁に利用している。南部町から清水市に入り富士見峠にさしかかると、新設された第二東名が横切る。乗ってしまえば速かったようだが、下調べをしておらず、1号まで出て静清バイパスを経て県道27号線に入って行く。
これまでは100パーセント富士見峠経由で井川湖に降りて行っていた。それが今回は崩落により不通となっていた。初めて口坂本経由で行かねばならなかった。慣れないルートを行く不安はあったが、189号よりは走り易いようにも思えた(幾分だが)。そして大日峠(実際の峠は別の場所)を通過時には、勧行峰の登路の存在も知り、新しく得るものもあった。その先で富士見峠からの道と合流し、見慣れた景色の中を降りて行く。
井川湖の西岸を北に詰めて行く。登山口とした田代地区を見送り、デポ地とした明神谷線を目指す。ここで私はてっきり旧の赤石温泉への下降路のある、白樺荘入口バス停の西側にある林道(林道に見えた)がその林道だと思っていた。現地に着き、何も疑うことなく自転車をデポ(1:20)して来た道を下る。本当は、もう少し先の新設された方の白樺荘前が正解であった。自転車でのダウンヒルを考慮に入れ、上り下りを確かめるように田代に降りて行く。そして田代地内での駐車スペースは、前回停めた公設のトイレ付駐車スペースが順当なのだが、僅かな距離だが行きにも帰りにも無駄がある。そこで諏訪神社前の路肩余地に停めてしまう事にした。スペースも十分あり、邪魔にならないと判断した。しばし仮眠。
紅葉のハイシーズンに入り、畑薙湖を目指すハイカーの車が多いと思ったが、意外に通過して行く車は数えるほどに少なかった。おかげで短時間の熟睡が出来た。今日は新調した靴を履く。いきなりロングコースなわけだが、どこかぶつかり痛くなるだろう・・・とは思っていた。先に言ってしまうが、それは全くなかった。靴も良くなったもの・・・。幕営装備で重くなったザックを背負い山門の方へ進んで行く。そして諏訪の霊水を汲んで参道を登りだす。二度目なのだが、この付近に道標がない。判っているものの、それでも不安を感じたりする。公的ルートがあるのであり、ちょっとした案内があってもいいようなものだが、まあこのために緊張して入山するので、いい効果とはなっているかも。
舗装林道を跨ぎ、その先で登山届けボックスがある。低い位置に取り付けられた道標を見逃さないよう、ここから斜面に切られた山道に入る。ヘッドライトの明かりを頼りに坦々と歩む。上まで閉めていた衣類のジッパーを全開放。外気温はこの辺りで12度であった。だんだんとエンジンがかかり体がザックの重さに馴染んでくる。最初はゆっくり・・・これが長く楽に歩く方法なのである。植林帯の中はひっそりと静まり返っている。独特の獣の臭いがしており、周囲に気遣いながら登っていた。1時間ほど歩くと、背中からの来光を浴び、振り返り一日の安全を御日様に願う。
尾根に乗り上げしばらく行くと、左側に造林小屋が見える。“そうそう、小屋があったんだ”と懐かしく見下ろす。長丁場、天気は靴は、自転車は盗まれないか・・・無い場合は10数キロ歩きか・・・頭の中をいろんなことが駆け巡る。左側に分かれる道はロープで塞がれていた。右の本道を進めばもうすぐでP4となる。樹林帯の尾根、一級の道であり快適そのもの。
進路前方の景色が空ける。そこに大無間山が見えていた。色づきはいまひとつであるが、秋の色をした山々がある。P4到着で、ここで小休止。経路1.5時間、いい感じで歩けている。市営小屋内を覗くと二つのザックがデポしてあった。大無間を軽荷で目指している人が居るようだ。金曜日に入山しているとなると、中高年か・・・。P3に向けて進んで行くと、前の方で3種の熊よけの音色が聞こえていた。岩部の多いこの鋸歯尾根。今日のクライミング志向に作られた靴はとても都合がよかった。いろんな登り方をしてグリップする程度を確かめる。
P2で前を行く4名のパーティーを捕まえた。うしろ3名は優しい方だったが、先頭の方の口調は刺々しかった。人の印象って・・・反面教師。P1を越えてガレ尾根の登りになるが、前回が8年前、その時に比べてかなり崩落が進んでいるように見えた。崩れやすい場所に、足を置くにも神経を使う場所も増えており、補助の為の細引きをも流されるようになっていた。崩れている場所から右側の展望はいいのだが・・・。それがどんどんと西側に侵食しているようであった。
小無間山到着。三等点前の新ハイの標識が黄色く目立つが、これは以前は高い位置に取り付けられていたもの。存在しているだけいいとしよう。この先の尾根筋は快適も快適。鋸歯で苦労した分、ここでのなだらか尾根はインターバル。2000mを越えて、グッと冷えてきている感じがして温度計を見ると7度を指していた。体感で判断しつつ視覚にも促され薄い手袋をした。2160mの展望地からも大無間が良く見えていた。左の方には朝日岳の姿もある。
2109高点が中無間山。進路が90度曲がる感じで切られている。間違わないようタイガーロープもされている。8年前は判読できたオレンジ色の道標は、今では無残な状況まで朽ちていた。手書きされたリボンのみが山名を表している。ここから10分ほど進むと二重山稜の場所となる。今ではよく踏まれておりここで間違いようがない。北側の尾根に乗り快適尾根を西進して行く。前回はガスの張った日であり、今日の出迎えはかなり嬉しかった。周囲が良く見えるって、こんなに嬉しいのか・・・。途中の展望場からは、この先に目指す大根沢山の姿がデンとあった。そこから右(東)に緩やかに延びる尾根を伝う予定でもあり、山容をよくよく目に焼き付ける。
大無間山到着。長かった経路、懐かしい場所に登頂感を強く感じる。一等点が堂々の風格で出迎えてくれる。周囲にはちらほらと幕営痕が残る。もう少し展望があればいいのだが、樹林があるが為に幕営適地ともなっているか・・・。地形図を眺め、再度この先の地形を把握する。気を抜いていたのだが、三方峰への破線ルートの分岐点をよく見ていなかった。三角点より東側から分岐しているようであるが、そちらに戻らず、このまま西に進む事にした。
西に進むのだが、15mほど続いた踏み跡は自然の中に吸い込まれていた。しっかりとコンパスを当てていないと明後日の方角へ行ってしまいそうな場所であった。広い尾根で要注意。途中から倒木帯になり、跨いだり登ったりして越えて進む。標高2230m付近でその倒木帯が終わるのだが、3本重なって横たわった木が見えたら、その先は歩きやすくなる。少し北を意識して寄せてゆくと、2140m付近で明瞭な踏み跡に乗った。大無間から乗っていれば、5分は違ったか。2130m付近には道標も落ちており、ここがルートであることを示していた。
2102高点東のコルから登りあげてゆく。気持ちのいい下草の薄い斜面に、紅葉した落葉樹がある。そして登りあげると右側に湿地が見える。これが三隈池となるか、水を湛えているエリアはわずか2畳ほどで、池というには微妙な場所となっていた。ここを過ぎると笹原の中の道となる。そのササも低く、踏み跡もしっかりしていることから快適も快適。もう少し分けるような場所を予想していたのだが、非常に優しい破線ルートなのだった。歩く人の多さは、ここにあるのかと思えた。
三方峰到着。最高点の先に黒沢山が見えてきた。ここも笹原の山頂で、西側がガレているために展望がいい場所となっていた。古い道標が二つ足許に残っている。唯一着いている道標は、ガレ斜面が30センチから40センチまで迫り、もうあとが無い状態になっていた。ガレ斜面の淵に腰を降ろし展望を楽しみつつ大休止。ちょうど経路7時間。時計は11時を回ったところ。この進度でゆくと何もなければけっこうに進めてしまう。ふとワンデイの文字が頭を過ぎる。やってやるか・・・少しユルユルしていた気持ちに、音がするような喝が入る。17時を日没として、地図を見ながら経路の時間配分をして行く。こうなるとザックが至極重く思えた。
ガレの淵を通過しながら北進が始まる。道形の濃い快適なルート。完全に予想外であった。2100m付近には幕営適地の平坦地があった。樹林帯の中、やや岩場の開けた場所。痩せ尾根。その全ての場所には踏み跡が伴っている。珍しいのだが、この尾根筋には全く同じ標高で高点をとっている場所がある。この先の2127高点がそれ。小根沢山を間にして南北に存在している。その2127高点を越えると岩峰がある。ここは尾根通しで通過できず、トラバースするように東側に道が切られている。そしてその先の2100m付近が展望地。クッキリとした山々が西側に見えている。でも残念ながら判る山が少ない。同定が苦手なのだった。
尾根を歩きながら、木々の間からは大根沢山とその手前の2127ピークは良く見えてくる。しかし1922高点の小根沢山がほとんど見えてこない。周囲の山々に同化してしまっているとも言えるのだが、進むに当たって常に追い求めるように目が先を追っていた。それでも最後の最後まで見えてこなかった。途中に1930m付近に小さなコルがある。大きな起伏が続く中で唯一狭く抉れた場所となる。ここから5分ほど進むと、またまた幕営適地がある。ここはかなり広い平坦地。大パーティーでも受け入れ可であった。1922高点手前鞍部から登り上げて行く。ここも青々した低いササで気持ちがいい。視線上部には色づいた木々があり、秋を強く感じる場所でもあった。
小根沢山到着。SK氏の赤い絶縁テープが残り、山名が記されていた。通過点のような場所で、気にしていないと普通に通り過ぎるであろう場所であった。ここで予定していた新規の山2座が踏め、残りは一つ大根沢山。南アの2000m級の集大成ともなる山で、少しばかりか感慨深く足を進める事となる。どんな場所も楽しんでいるのだが、ここはより楽しもう、そんな気分であった。この先も快適な尾根が続く。ここまでのアプローチさえ長くなかったら、もっともっと人が入ってもいいような場所。登り上げてゆくと、二つ目の2127高点となる。ここは南峰と北峰とあり、北峰の方で標高点をとっているよう。そして標石が埋められていた。
2127高点の北側で、景色がガラッと変わった。何処に例えたらいいか、ザレた尾根に変わり、至極展望がよくなる。開けた場所を歩くのは、やはり気分がいいもの。かといえ樹木が無いと紅葉も見えない。人間とは勝手な生き物。このザレ尾根を過ぎると、トウヒだと判断したが、奇形な植生がある。真横に生えている木などここくらいではないだろうか。ウルトラマンの手の交差にも見え、私になかでは間違いなく「シュワッチの木」である。ちなみに北から見ると、そんな感じはない。ここは南から見ないと・・・。さあここを過ぎれば最後の登り。
ガレ斜面を左にして植生の際を登って行くと、山頂の樹林帯に入る前に好展望地がある。ここはかなり居心地のいい場所で、景色も良ければ周囲の紅葉の色合いもよかった。山頂部から近い場所なら、ここで休憩としたが、キリのいいところまではもう少し歩かねばならない。広い山頂部に乗り、踏み跡が無ければ明後日の方へ行ってしまいそうな場所であった。ここでもしっかりマーキングが導いている。ツアーコンダクターが手招いているほどに縛られており、ちょっと人工的過ぎて・・・。
大根沢山三角点到着。三等点の頭が赤く塗られ、その脇に達筆な彫刻がされた標識が置かれていた。他にも朽ちた標識が見える。SK氏の絶縁テープは、展望場への案内をしていた。目的地はここではなく最高峰、写真撮影を終えたらもう少し足を伸ばす。三角点ポイントから最高点までは3分ほどだった。先ほどの賑やかさに対し、こちらはひっそり。SK氏の最高点表記が唯一記すもの。ここにも標石が埋まっていた。一般には三角点側で、マニアはこちらと言う事になるか。持ち上げたリンゴをほうばりながら、経路の印象深い景色を反芻する。よく歩いてきた。出発してから9時間半ほど経過している。あとどれくらいで車道まで降りられるか、日没までには降りたいのだが・・・。長居も出来ず下山に入る。
この先もなだらか尾根の上に乱打乱打であった。モノトーンの景色の中に、赤やピンクの花が咲いたように付けられている。これでいくと、よく踏まれてクッキリとした道になるだろう。広い尾根を緩やかに下って行き、僅かに登って2137高点。倒木を跨ぎつつ北東へ進んで行く。2135高点が近くなると、左(西)側の展望場となり広範囲に周囲展望が楽しめる。そして2135高点は、やや密生した樹林の山頂。東側を気にしつつ進んで行く。鹿の遠鳴きが聞こえる。野生動物に出逢おうと思い、鈴なども鳴らさず来ているのだが、残念ながら縁がない。全ての自然を楽しみたいのだが・・・。
2112.2高点には、三等点が白くニョキッと生えていた。さあここから大きく進路が変わる。このまま北東側に進んでもいいようだが、自転車を置いた場所は明神谷の方。迷う事無く進路を東に変える。ここからのしばらくが急峻であった。長らく歩いているので、本来は足の裏やつま先が痛いはずなのだが、驚くなかれ新調した靴はそれがなかった。恐るべし最近の登山靴。急斜面にも新しいソールがグリップし、鬼に金棒であった。そう、靴のおかげでも快適に歩けていた。急峻斜面は直下降ではなく、マーキングはクネクネと続いていた。そして2000m付近まで降りると斜面も安定する。
1903高点は通過点のような肩的場所であった。左(北)を見ると、畑薙湖に落ち込む尾根が見える。そして左前方には、1737高点から畑薙第二ダムの方へ落ち込む緩やかな尾根筋も・・・あそこを伝うのかと見ていた。時計は15時を回った。勝負はあと2時間。明るければ尾根筋、暗くなれば林道明神谷線に乗ってしまうことにした。1903から鞍部まで下り、次の1737高点に向け登りとなるのだが、その鞍部に先住民の落し物がされていた。鹿でもなく猪でもなくサルでもなく、黒い大きな先住民の物だった。彼らの生息域でもある。
1737項点は、地形図どおりに南北にピークが存在する。西峰に乗り上げると東峰があり、そこに到達してがやや注意。北側に降りる尾根に吸い寄せられそうになる。実際に少し降りてしまって、左に大きな尾根が並走するので、間違いに気がついてすぐに修正した。地形図には見えない3つ目の東側の高みからの下降が正解。ここには、これでもかとマーキングがされている。要するに注意箇所となる。ここからの西進は緩やかも緩やか。尾根上には点々と大木もあり、それらを楽しみながら降りて行く。奇形の木、大きな虫ようのある木等々がある。倒木もちらほらとあり、適当に除けながら尾根を伝って降りて行く。当然、時折は登りも入る。完全なる下り一辺倒ではない尾根だった。
1410mで、待ちに待っていた林道に乗った。道幅は広く5mほどはある立派な作道であった。しかし使われ無くなってから長いのだろう、直径3センチほどになる幼木が無数に生えていた。それらを分けながら進むと、その先で右にカーブした先に、黄色い大きなブルドーザーが現れた。小松製の強固な物。秋田の白瀬南極隊記念館で見た小松製の雪上車を髣髴させる。時計は16時20分。日暮れまではまだ余裕がある。ここまま尾根通しで行こうと決め、この場所から林道を離れ尾根に乗って進む。1397.9三角点は、頭が赤く塗られた点で、痛いげに2隅が割られていた。マニアの仕業なのだろうが、何度も言うのだが、割って持って帰っての自己満足って、私には理解できない。ここは樹林に囲まれた中で展望はなし。
ズンズンと降りて行くと、一箇所のみ痩せ尾根があり、急な登り上げが待っていた。なだらか地形の中でのアクセントとなる。1190高点からは北に降りる尾根を行く。植林帯の先には送電線鉄塔があり、そこからは畑薙湖が見下ろせる。4段ほどのハシゴを利用して下に降り、クネクネと残る杣道を伝って高度を下げ、最後は林道上の崖のような場所からザレ斜面を4mほど下った。やっと林道に降り立った。もう17時になる。日没も迫ってきており、何とか滑り込みであった。ここから本来は北尾根を降りればよかったのだが、何も考えずに林道を伝って進む。
広い林道で、北尾根と林道が交わる所などは、幅が30mほどはあろうかと言う広さであった。この場所に尾根上で見たリボンが降りて来ており終わっていた。どうやらこの場所から取り付くのが正解のよう。山手側に判るようにリボンが二つ縛られていて、斜面を登って行っていた。下の方にちらほらと新しい白樺荘の黄色い明かりが見えるようになった。安堵感が湧いてくるのと同時に、“オヤッ”と思った。自転車をデポしたのは白樺荘のところでなく、その下の方。ここだったのか・・・と下調べの悪さに苦笑いだった。大きく東西に振られる林道。重い木材を積載しても大丈夫なように作ったのだろう。
テクテクと降りて行くと、駐車場に居た風呂上りのバイカーが不思議そうにこちらを見ていた。林道明神谷線入口に降り立つ。本当はこのタイミングで自転車に乗って降りるわけであったが、もうしばらく歩かねばならない。畑薙第二ダムの堰堤を見て、田代第七トンネルに潜ってゆく。往来に気をつけて、前側はヘッドライト、後ろ側にはマグライトを照射するよう握っていた。その横を先ほどのバイカーが4サイクルの軽やかな音を響かせて通過して行った。一瞬の明るさの後にまた暗闇が・・・。そして旧赤石温泉の分岐を左に見たら、その先がデポ地。リムに取り付けた反射板がキラキラと光り、盗まれていないことが判り安堵する。
藪用ストックをサドル下に刺し、そこに後を向けてマグライトを絶縁テープで縛る。前方は頭に付けたヘッドライトで対応。いざ跨るが、暗くて暗くて・・・。見えなくはないのだが、快適に走る光量ではなかった。それでも歩くよりは快適。途中の登り上げも必死で漕いで行く。ここさえ頑張れば車に到着する。最後の最後まで自分との戦い。跨ってからの8割は下り、残り2割が登りだった。そしてトンネルがいくつもあるのだが、ほとんどが暗いトンネルで、足早に漕いで抜けて行く。そして八木尾又の急カーブをハンドルを寝かせつつハングして行くと、前の方に我が車が見えゴールとなった。
よく歩いた。安心して歩けると書くと語弊があるが、距離を度外視すれば楽な部類のバリエーションコースとなるだろう。おかげさまで十二分に楽しませていただいた。2000m超級が終わったと言え、未踏座はたくさん残っている。まだまだ何度も足を運ばねばならないエリア・・・。
帰宅してすぐに自転車用のライトを買った。道具は道具、焦点の合った照射で、驚くほど快適になった。以前のライトが暗く思えるほど。ライトも日進月歩のよう。