朝日岳 1826.6 m 熊平沢ノ頭 1398m
2013.1.4(金)
晴れ 単独 寸叉峡橋から朝日岳、栗山沢ノ頭から熊平沢ノ頭経由下山 行動時間:6H8M
携行品: 30mザイル 12本爪
@寸叉峡橋6:55→(1M)→Aゲート6:56→(24M)→B登山口7:20→(85M)→C合地ボツ8:45→(82M)→D栗山沢ノ頭10:07→(12M)→E朝日岳10:19〜21→7M)→F栗山沢ノ頭帰り10:28〜36→(63M)→G熊平沢ノ頭11:39〜47→(36M)→H927高点12:23→(23M)→I630高点付近12:46→(14M)→J林道に降りる13:00→(2M)→Kゲート13:02→(1M)→L寸又峡橋13:03
@朝日トンネルを抜け出、寸叉峡橋のたもとからスタート。夜中は明るい場所。車通りは煩い。 | Aゲート。正面上、もしくは川側を巻いて通過するしかない。 | 歩き出してすぐの大崩落地。林道上のCPが何本も倒れていた。架線は川側に垂れ下がり・・・。 | ターガーロープが見えたら、正規ルートに乗る。 |
B登山口。立派な案内板があり安心。 | 1020m付近、肩の場所。 | C合地ボツ 墓石のようなレリーフのような石が印象的。 | 第二展望台から見る不動岳側。 |
D栗山沢の頭。山の斜面で、「沢の頭」と言う部分での場所であろう。 | Dこちらの場所の方が傾斜が緩く休憩適地。 | E朝日岳到着。針葉樹に覆われた山頂。この時期、日が入らず寒い場所。 | E本川根町の標識と、おなじみお団子標識。 |
E北北東側に富士の姿もある。 | Eお団子標識にキャップ標も在った | F朝日岳山頂部では寒いので、栗山沢の頭まで戻って休憩。 | 栗山沢の頭からの南東尾根には、この形のマーキングが色とりどりで続く。 |
急峻が終わり1720m付近。雪が無くなり楽になる。 | 1470m付近。痩せ尾根に入る。 | 稜線を木漏れ日ハイカーがゆく。 | 大木に菌類が蔓延る場所。 |
1410m峰の南東側のガレ。 | 最後の1400m峰の南側のガレ。かなり進行が進んでいて北側の地面はどんどん崩れている。亀裂も多い。 | 途中から見る風イラズの稜線。 | G熊平沢ノ頭到着。標識なし。 |
G最高点付近にある図根点。 | G朽ちたマーキングしかなく、黄色の絶縁テープを巻いておく。(注:巻いたのはここだけ。尾根に在るのは赤い絶縁テープの色の抜けたもの) | G朝日岳側を見ながらヤキソバパン。 | G熊平沢ノ頭からの南西尾根の最初はなだらか。 |
1300m付近。頭大の石がごろごろしている。アセビが多くなってきたら、東側に寄った方が無難。 | ≒1220m付近でモノレールが現れる。下側から最終地の上側を見ている。 | 1100m付近。けっこう傾斜が強い。 | H927高点付近。周囲に伐採木が多い。 |
790m付近。急峻地を振り返る。 | I630高点手前で、モノレールは西側に進路を変える。 | Iモノレール屈曲点の書き物。 | モノレール麓駅。 |
もうすぐ林道。最後で気を抜かぬこと。足場が悪い。 | J林道に降り立つ。 | Kゲート帰り | L駐車風景 |
2013年が始まる。当初は元日もしくは2日から出かける計画であったのだが、大晦日から元日になってすぐに八方尾根スキー場で事故が発生し、現地入りをせねばならなかった。そのために予定が全てリセットされてしまった。天気から追うと、出かけなくて良かったのかもしれないが、予定通り行動できないのもまたフラストレーションが溜まる。
元日、夕刻に家に戻り、深夜からの行動に疲れ果てそのまま布団にくるまった。翌2日、何とも煮えきれない目覚め。出かける元気なし。せっかくなので年間の計画をしてみよう(初めて)と、50座ほどの場所を拾い出し、今後の予定とした。こうしてあれば、いつものように帰宅後に山探しをしなくても済むわけで・・・。
3日。前日に調べた南アルプスの深南部に行くことにした。日本海側は荒れ続き。高みを目指したいが、途中敗退では年頭の一発目としてスッキリしない。標高もそこそこあって、何とか頑張れば踏める場所と寸又三山を目指すことにした。珍しく移動時間を日中として、昼頃家を出る。雪雲が覆った八ヶ岳を見ながら野辺山を抜け、R52号で清水へ南下して行く。余裕を持って燃費運転したら、驚くほど燃料計は減らない。やればデキルもの。エコとは、その気持ち次第なのだろう。新清水ICから新東名に乗って静岡SAのスマートETCで降りる。現代らしく共に無人ブースであった。
清水側に戻るようにしてR362に乗って寸又峡を目指して進む。接岨峡への道を右に見て寸又峡へ進んで行く。朝日トンネルを潜ると、出た先が寸又峡橋。そのたもとから北に林道が入っている。今回はここをスタート場所とした。翌日の下見と、一度寸又峡温泉街の方へ行き再び戻る。18時、こんな時間に到着することなどなく、一人宴とばかりに後部席に移りアルコールを交える。至福の時・・・。
極大になる「しぶんぎ座流星群」を夜な夜な狙ったが、トンネルのナトリウムランプの明かりがあり、動きを見ることは出来なかった。場所的に空が狭い場所でもあった。抱き合わせで何でも楽しもうと思っても出来ないものである。外気温はマイナス2度。恒温なトンネル内がある為か、出口付近は暖かいようにも感じていた。
6時半、ゆっくりと起きだし夜明けを待ってのスタートとした。夜明けを待ったのは装備の判断の為に周囲の山が見たかったのだ。その周囲にはあまり白いものが見えない。予想外にも積雪は少ない様子。アイゼンだけザックに入れ、カンジキとピッケルは車に残す。ただしザイルは持つことにした。今日はバリエーションルートを交えている。
出立するとすぐにゲートがある。山手側は塞がれ、通過できるのは川側。空中に身体を出すようにして林道内に入って行く。林道の崩落は、遠巻きにもハッキリ見えていた。道幅半分くらいから大きく崩れ、流してある電線が黒く下の方にぶら下がっていた。それに引っ張られたのだろう、電柱が何本もなぎ倒されている。自然には人間は勝てないのだと強く思う。重機も置かれ工事もいたちごっこな感じもあるが、千頭ダムへの林道も然り、崩壊が著しい。しばらく行くと林道正面をタイガーロープが横切っていた。その先が、下から上がってくる現在の正式ルート。伝ってきた林道は言わば非正式・・・。とりあえず正規ルートに乗った事となる。
林道を離れ山道に入って行く。一級の道で九十九を切りながら緩やかに上がって行く。ふと見ると先行者が居た。この時期にこことは玄人か。やや追うように力んだが、全く距離は縮まらず。御仁も気づいて加速したようだ。なにか2日からの箱根駅伝の駆け引きを思ってしまうのだが、先行する御仁は大きなストライド、こちらは細かいピッチでガサゴソとゆっくり・・・勝敗は既に見えている。
1020mの肩の場所で、御仁は休憩していた。話を聞くと前日は前黒法師岳に入ったとのこと、雪とアイスバーンにアイゼン歩行だったと情報を貰う。とても真摯な山屋であった。御仁がパンを貪る横を通過して行く。この先は大きくルートが西にズレ、何処に導かれるのかと気になるほど。その先、合地ボツとなり、ここから尾根筋に乗っての一本道。この合地ボツであるが、墓石のようなオブジェがあり、周囲が暗く少しドキッとしてしまう場所であった。花台にサカキのようなものが入れられていたせいもあるのだが・・・。
1370m付近で、最初の展望地がある。不動岳側が見えているようであるが、いまひとつ同定がし難い山容にも見えた。さらに二つ目の展望地があり、こちらの方が遮る物はない。進む先に大きな山腹が見えている。もう少しであるが、まだ先とも言える。右側の谷から鹿の警戒音が聞こえる。そういえば周囲にササがあまり見えない。鹿は木の肌を食べていると言う事か。糞も少ないので餌が少ない場所であろうと読み取れた。
栗山沢の頭はピークではなく、完全なる傾斜地。沢の源頭部という意味合いに読み取った。下山はここから南東側尾根を下る予定で、一応目配せをしつつ山頂を目指してゆく。雪はやや多くなり、それでも少ない方か、15センチほどをツボ足で進む。標高から予想して、もっと雪にもがくのかと予想していたが、意外に少ないのであった。夏道はクネクネと進むが、雪があるので、ほぼ一直線に尾根上を伝って行く。
朝日岳到着。先ほどの栗山沢の頭は明るい場所であったが、こちらは樹林の中の山頂。休憩は栗山沢の頭の方がこの時期は適地。手短に写真を撮って戻って行く。山頂からは流麗な富士山の姿も見えていた。木漏れ日は入るが、寒々した山頂、すぐに踵を返してトレースを伝って戻って行く。その途中、先ほどの御仁とすれ違う。三脚を片手に、完全防寒装備。栗山沢の頭で撮ったと言う事となると、どこかでブログを開設しているのかと勘ぐった。
その栗山沢の頭に戻る。日差しを浴びながら白湯で温まる。僅かなお湯の温度が、内側から体を温めてくれる。一口で生き返るような、冬の魔法。少し休んだら栗山沢の頭から下降開始。ストックリングのようなマーキングが、色とりどりに続いている。やや間隔があるので追えるのは天気のいい日に限る。視界が無い場合は、ちと迷うであろう尾根の最初であった。さらには、ザイルが背中に入っていて良かったと思える急峻。場合によって凍ってでもいたら、即座に出したいような場所も見られた。広い斜面が終わると、痩せ尾根となるが、最初の辺りは西側がガレて落ちている。よって気にするのは右手(西)側。地図上に見える、ポコポコとした三つのコブを目で探すのだが、進む先の直線上に並んでいるので、その存在はよく判らない。それでも、登り勾配となると、身体と頭の中の情報が一致し、居場所が把握出来る。“ここが最初のコブか・・・”
コブ地帯に入ると、先ほどと一転して左手(東)側がガレてくる。大きく落ち込み、踏み外せば怪我では済まされないような場所。ただし負の要素ばかりではなく、そのおかげで展望が良い。魅力的な風イラズの稜線がクッキリと見えていた。あそこも歩かねば・・・。二つ目のコブを越え、最後のコブに上がり振り返ると、円錐形の綺麗な姿で朝日岳が見上げられた。この1400m峰を前後して、地面にクラックが入っている場所が多かった。霜のせいもあるだろうが、日々崩落しているようにも見えていた。さりとてそれが進んで歩けなくなるかと言うと、反対側の西斜面は緩やかに広がり、安全な場所に見えていた。最後の緩やかな登り。
熊平沢の頭到着。なにか標識でもあるのかと思ったが、朽ちたビニール紐が垂れ下がっているだけであった。少し東に行くと真っ白な図根点が見える。もう一度最高所に無い物かと探すと、樹木の下に同じ物が埋められていた。久しぶりに黄色い絶縁テープでマーキング。通過点のようで寂しい場所が、その一巻きにより、少し山頂らしくなる。2013年最初のマイナーピーク。ヤキソバパンをほうばりつつ、登頂感をも味わう。息を整えたら、南西側に下って行く。
南西尾根の最初は、至極なだらかな快適尾根。日差しを正面に受け、ぽかぽかと気分の良い場所であった。それがだんだんと頭大の岩が転がり出すようになる。石は密集しておらず散見できる場所で、どうしたらこのようになるのか不思議でもあった。そして開けていた進路方向にアセビが多くなる。どの方向が正解か判らず、やや右(西)側寄りを降りていた。すると西側の尾根に入ってしまいそうで慌てて左(東)側に修正。するとそこにはモノレールのシルバーに光る人工物があった。少し登り返すように頂上駅の場所を確認しようとすると、おおよそ1220m付近にそこは在った。この先はレールに伝うように降りて行く。
人工物があるおかげで安心材料だが、こんな事で安心している自分に情けなさを感じる。自然と遊びたくて山に入っているのでは・・・。人工物に喜んでいるようでは・・・。でもこの場所は通過したい尾根筋にそれが通り、必然的にしばらくはランデブー状態。寄り添うように下って行く。在っての救いは、かなりの急峻地形であり、モノレールの支柱に足の裏を置くようにし、ブレーキをかけながら降りることが出来る。もし無かったら何度か転んでいたであろう、足場の悪い急峻地形が続く。
927高点は、顕著な場所ではなく、肩でもない棚のような場所。周囲には伐採木が多く見られた。この先が一番の急峻地。ゆっくりと降りて振り返ると、下から見ると獣道か作業道か、九十九を切っている痕が見えた。上からはそれが見定められなかった。この先の注意ポイントは、高点を取っている標高630m地点。そこからの進路は右に取りたい。その前にスタートしたてで見えていたモノレールが、今寄り添って居るものの終着点とするならば、どこかで屈曲しているはず。どこで西側に下降し出すのかと気にしつつ追っていた。
モノレールの屈曲点は、630m高点の少し手前であった。杉か檜かよく確認しなかったが、立木に「BP」と書かれていた。“もうすぐ林道に降りられる”なんて思って伝うのだが、ここからがしんどい斜面。スキーでもしているように足元が流れる。ボーゲン、シュテムターンなどが出来そうなザレ斜面で、ここもモノレールの支柱に足を引っかけるようにグリップさせながら高度を下げて行く。少し九十九折りにでもなるのかと思って居たが、問答無用の直滑降だった。モノレールの場合、勾配は気にならないようだ。レール下側のラックが大きな意味を成していると見えていた。
降りて行くと林道が見えてきた。その手前にモノレールの真新しい駅舎がある。単管パイプ構造で、その中には遊園地に置かれてもおかしくないような新しい乗用台車があった。思わず跨がりたくなったり・・・。大人げないので我慢。林道への最後がややガレて居る。グリーンのクレモナロープが流されており、それに伝って降りて行く、そして最後はアルミハシゴ。下り一辺倒で、筋力が落ちているのか、非常にバランスが悪くなっていた。よろよろしながらステップに足を起き、何とか着地。これでもう着いたも同然。
寸又側の流れを右に見ながら林道を戻って行くと、目の前にゲートが現れる。最後にゲートの溶接構造が割れたら・・・なんて思いつつ、身体を空中に出しながら川側を通過して行く。自転車をも入れないようにしてあるゲート。ここまでするには、なにか事故でもあったのだろうか。管理側の責任を問われる・・・。無事到着。
振り返る。反時計回りであれば、冬期でもザイルは不要であろう。時計回りの場合、状況によっては持っていた方が安心であり、出す場合もあるやもしれない。無難なのは無積雪期であり、急峻地形がそう邪魔をしないであろう。あの場所に雪が乗っていたら・・・そりゃもう大変だと思う。雪を求めての場所選びであったが、ほどほどで助かった。翌日、黒法師岳側から熊平沢ノ頭から下の尾根筋を眺めていた。遠目にも急峻で、前日が脳裏に甦った。