土倉山   1384m   (途中敗退
           

 2013.1.19(土)   


  雪    単独      伊折橋から        行動時間:9H44M


@伊折橋3:20→(114M)→・間違え林道引き返し地点5:14→(29M)→A橋5:43→(162M)→B標高630付近急登終わり8:25→(143M)→C990m地点10:48〜11:14→(62M)→D林道に降り立つ(橋)12:16〜23→(41M)→E伊折橋13:04


ioribashikita.jpg  ka-buno.jpg bunki.jpg  hashi.jpg 
@伊折橋北側から、林道坪野蓬沢線に入って行く。 大きくルートミスをして、往路のトレールに戻る。 橋に向かう分岐。右へ。 A橋を渡り、対岸正面から取り付く。
550.jpg  570.jpg 5702.jpg 630.jpg 
格闘中。まだ標高550m地点。僅かの標高差に50分も経過している。 スキーでは登れず、四つんばいに近いラッセル。進度が上がらず萎えてくる。570m付近。 570m付近から下側。 B630m付近で、やっと勾配が緩やかになりスキーを装着。
790.jpg  990ue.jpg  990shita.jpg  tenbou.jpg 
790m付近。快適尾根だが、時間の経過が早い。 C990mまでで、下山を決める。 C下側。 少し晴れると展望が得られた。
700.jpg  6302.jpg  syokurintai.jpg  oritatu.jpg 
700m付近。湿気の多い雪で滑りが・・・。 630m付近から急峻の下降。スキーにならず、板を外す。 林道までの植林帯斜面。ここも滑るには・・・。 D林道に降り立つ。
hashikaeri.jpg  tore-ru.jpg  modoru.jpg   
D橋の場所だが、雪に覆われ見えないか・・・。 トレールに乗ってスケーティングで戻って行く。  E林道入口到着。  



 富山は高岡で新年会が企画された。そこに託けて山を探す。願わくば1600mくらいまで上がって展望を楽しみたいが、そう甘くないのが北陸。まだ厳冬期と言えよう時期では、なかなか思うように歩かせてもらえないのは判っている。それでも、厳冬期の、1月の記録が乏しい場所に行きたい・・・。我が偏屈な欲求でもある。今回は上市の、土倉山と大倉山を抱き合わせでスキー行脚しようと企てた。剱岳の遭難事故がまだ解決されておらず、そのための経路の除雪は問題ないと判断した。やや一か八かではあるが行動に移す。

 前夜20時半に家を出て、のんびりと現地へ向かう。妙高付近は案の定の積雪量。対向側では横になった車に正面衝突している絵があり、赤色灯がいくつも回転していた。滑川を0時ちょうどに降りて、土日割引を活用する。馬場島への経路には、四駆の集団が居り、路肩に落ちてしまったジムニーを牽引して上げている所であった。6台ほど居たか、深夜に大変そうであった。手伝ってやればよかったか。単独ならそうしたが、沢山居たのでそういうことも含め楽しいだろうと・・・。

 伊折橋に到着。林道坪野蓬沢線は、完全に雪に閉ざされている。橋の袂から東に除雪があり、入って行くと建屋があり、そこで除雪が終点。これが松浪土石の敷地となるか。最初はここに停めようと思ったが、除雪車が来られて邪魔になっても失礼と、除雪しないであろう先ほどの林道前まで戻って停める(12時45分)。3時頃スタートとして少し仮眠を決め込む。通過する車は皆無であった。ここ伊折地区は、完全離村が15年ほど前だったか、人が生活していた場所が寂れてゆくことを思い、私の中では印象深い場所でもあった。

 起きたのが3時。車内でシールを装着し身支度をして外にでる。ここで、後の祭りなのだがカンジキを持つのを端折ってしまった。この日は持つべきなのだった・・・。除雪の壁に分け入るように林道坪野蓬沢線に入って行く。沈み込み量は20センチほどか、それほどラッセルの負担にはならない感じであった。ヘッドライトの明かりを頼りに、無垢の雪の上にトレールを引いてゆく。

 この先のポイントは「橋」であり、それを気にしていた。しかし、経路に橋がいくつか出てきて、「おやっ」「あれっ」とやや感覚がブレてしまっていた。さらには考え事をしていて思考が働かないなか足を前に出ていた。45分ほどで鋭角に林道がカーブする場所に到着した。暗闇の中から流れの音が強くして、寒々した気分になる場所。なにも考えずに左にターンして林道に伝ってしまった。何も考えずにと言うのはウソになるが、ここがなぜか標高570mの林道屈曲点に思えたからであった。北側に進む林道がライトの中に見えなかったのが最大のポイント。落ち着いてよくよく判断すればよかったのだが、複合的な要因が重なりミスルートに入って行く。このまま進めば、953.5の伊折三角点側に林道が登っているので、“時計回りで今日は周回すればいい”なんて思考に変わっていた。日々臨機応変に行動しているので、その時その時で行動は変えるのだった。

 西進して行くと、どうにも地形図通りの道の屈折の仕方でなく、その南にある林道のよう。進む先に黄色い明かりの伊折橋がどんどん近づいていた。「まさか・・・」と思った時は遅かった。そのまさかだったのである。進んだ分の2/3ほど戻ってきてしまっていた。ルートミスもいいところ。踵を返すのだが、トレールがあるので戻りはかなり楽ではあった。そしてカーブの場所に戻り、北側を照らすと、ちゃんと道があった。「なんだ・・・」、1時間強のロスタイムとなった。まあしょうがない。自分でしでかしたこと。4時過ぎに出立したのと同じ事となってしまった。北進して行くと、その先で右に分岐して行く道形も確認出来た。雪に覆われ視界のない中で見辛かったが、流れの音が誘ってくれていた。その方向へ緩やかに下って行くと、僅かに紅白の欄干が見える橋があった。ここがウェイポイントとして目指していた橋であった。

 橋を対岸に渡り、尾根に取り付くのだが、ここでも良く地形図を見て東側に尾根を巻き込むように進めば良かった。まともに西から尾根に突き上げるのだが、少し上がると二進も三進も行かなくなり、右へ左へ振りながら、僅かづつ高度を上げて行く。板を履きながらなので、そりゃもう足の疲れる作業であった。最初は雪崩れそうな斜面を伝っていたので、逃げるように東側に寄る。一番等高線の詰まった辺りに入ってしまったようで、この辺りが酷かった。潜るはずり落ちるは。滑落すれば数十メートルは落ちてしまいそうな場所をゴソゴソとしていた。1m、また1mと登るのだが、先ほど難儀した場所が、まだすぐ下にあり、ほとんど高度を上げていないことも目の当たりに出来ていた。”これは・・・諦めようか・・・”素直な判断であった。でも諦めない自分も居る。

 邪魔になった板を外し、根性のラッセルとなる。両手に持った板を突き刺し、時に四つんばいで分けて行く。膝をしっかり入れないと次の足が出ないような斜面。どんどん時間ばかりが経過していた。そうこうもがいている間に夜が明けてくる。予定では夜明けくらいに1座目の山頂に居るはずであったのだが、大誤算。北陸の雪は重く、そんなに甘くないのだった。あとは、カンジキがあればかなり違っただろう。降雪後でフカフカを予想していたのだが、この部分の読みも外れてしまっていた。

 630m付近で、急峻から開放され再度板を履く。橋を渡ってから2時間40分ほど経過して、まだこんな場所であった。いやはや我が力量を思い知る。それでも諦めない。傾斜が緩やかになると、滑りになりそうな斜面があり、帰りの滑りを想像すると上に進みたくなるのであった。でもでも、790m付近で、先ほどの630mからの経過時間は1時間。標高差160mを60分であるから、土倉山までを計算すると、あと4時間ほどかかることになる。これも一人ラッセルだからか・・・。全ては受け入れるが、それにしても歯痒い進度。登頂の喜びを想像して奮起して行くが、そう足の回転が変わるものではなかった。

 990m付近。この辺りもなだらか斜面。時計はもう11時に近い。この日は18時頃から高岡で行事がある。この先進んで登頂し、いくらスキーで急いでも厳しい時間に入ると判断できた。なにせ、既にスタートから7時間半ほど行動している。登りに11時間以上かけてはいけない。悔しい思いを抱きつつ「撤退」を決めた。重い湿った雪が古く撥水性の薄れたアウターをびっしょりと濡らす。立ち止まると寒くて仕方なかった。指が悴まないうちにと急いでシールを外し、白湯を飲んで温まる。そうしながらも、”もうちょっと上に行きたい”その気持ちは拭えない。無垢の雪面を恨めしく見上げる。

 さて滑走。板には鏝を当ててワックスをかけてきたのだが、なんとも滑らない。雪が纏わり着くような感じでブレーキとなってしまう。ファットスキーでないからか・・・。雪や道具のせいにするが、根本的には技術がないからなのである。ずり落ちるように滑りながら尾根を拾って降りて行く。下りになると幾分か天気が回復し、何度も立ち止まってはカメラに展望を収める。ただし、最後まで剱の姿は見えなかったのが残念。

 630m付近まで降りたら、その先は危険な急峻地形。スキーの場合はどの方向に逃げればいいのか、往路の事があるのでよくよく地形図を見たが、正解が判らずスキーを外して背負って降りて行く。この形態が正解の斜面であった。杉の植林帯に入って行くと、ピンクのマーキングが見え出した。取り付きはどうやらここだったようだ。僅かな違いだが、体力の消耗はかなり違っただろう。次回のためにしっかり情報を叩き込む。人間は学習する動物。樹林を降りて行くと下の方に林道(雪の覆われた)が見えてきた。もう少しでこの尾根から開放される・・・。久しぶりに勉強させてもらった場所。これもいい経験と思う。

 林道に乗り、少し休憩してから橋を渡り、トレールに板を滑らせて戻って行く。どなたか入ってくるかとも一縷の期待をしたが、それは無かった。この一帯はまだ冬眠期という事だろう。少し行動を先走り、敢え無く玉砕ってことであった。スケーティングをしながらの帰り、それでも楽しく気持ちよかった。登頂も大事なのだが、この山中で遊んでいること事態が楽しいのである。林道には獣の足跡も無い。全てがひっそりとしており、雪のみがハラハラと舞い落ちていた。

 前の方に車が見えてきた。登頂できないフラストレーションは大きいが、それなりに楽しめたことでヨシとしたい。このおかげで、次が楽しくなる。「前回、こんな場所までしかこれなかった」などと、横目に通過できることを期待したい。苦労があった方が、人間は考えることが多い。敗退もまた登頂(成功)への糧となる。

chizu1.jpg

chizu2.jpg

chizu3.jpg

                             戻る