東俣ノ頭   1870 m     
 

 
2013.7.6(土)    


   曇り      単独      川古温泉より      行動時間:8H32M 

   携行品: ライトオックスブーツ


@駐車スペース4:55→(3M)→A赤谷林道ゲート4:58→(57M)→B渋沢林道との分岐点5:55→(21M)→C赤谷林道終点6:16→(37M)→D赤谷川渡渉点6:53〜7:00→(98M)→E毛渡乗越8:38〜40→(23M)→F越路避難小屋9:03→(31M)→G東俣ノ頭9:34〜49→(33M)→H毛渡乗越帰り10:22→(63M)→I渡渉点11:25→(39M)→J林道終点12:04→(83M)→K川古温泉駐車スペース13:27


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@川古温泉駐車スペースからスタート A川古温泉の先には3つのゲートが並ぶ。帰りには開いていたゲート。 大きく崩落した場所がある。 歩き出してすぐにヒルの襲来があり、渡渉点までの間、かなり悩まされた。
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荒れた場所もあるが、概ね快適な林道。自転車で入ればよかった。 B渋沢林道との分岐。細い右側のルートを選ぶ。 B「43」の標識がかかるが、分岐道標はなし。 C伝って来た赤谷林道終点地。
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焚き火跡のある幕営適地。水もとりやすい場所。 谷側に斜めになったルート。野草が覆い雨具を履かないと朝方はずぶ濡れ。 ウラエビス大黒沢の無名滝。 D渡渉点。深いところで20cmほど。歩数にして7歩ほど。
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D長靴の上に新品のスパッツ。こんな装備でも、膝付近までの水量に濡れずに対応できる。 D渡渉点から見る赤谷川本谷上流。主稜線が見えている。 右岸側に移り、滝横を巻き上げて行く。 雪渓をトラバース。左岸側の流れの強い場所を大股で越えねばならない。滑りやすい岩場。
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流れを何度か渡る。 小滝のある気持ちいい場所。 E毛渡乗越到着。川古側への道標は無くなっていた。 E毛渡乗越から見るエビス大黒ノ頭。
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E毛渡乗越から見下ろす赤谷川方面。 F越路避難小屋 右奥が目指す東俣ノ頭 コバイケイソウが咲き誇る。
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登山道が一番近接した場所から藪に入る。 手前峰はハイマツが覆う。本峰北斜面はダケカンバの中を通過して行く。 G東俣ノ頭 G木柱が立つ。その根元にはKUMOが残っていた。
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GKUMOは手縫いなので朽ちていてもすぐに判る。 G東俣ノ頭からみる万太郎山 G山頂のあちこちにシャクナゲの白花が咲いていた。 G谷川岳をバックに美生柑。今日もヤキソバパンが手に入らず。
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登山道に戻る。往路・復路ともに10分ほどであった。 この山域にはマツダランプがよく似合う。 越路避難小屋内部。曇りでもさすがにこの時期は暑い。風が無いとブユが多い。 ニッコウキスゲが咲き出していた。
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平標山側からのハイカーとすれ違う。 H毛渡乗越帰り。 乗越下からしばらくは、不明瞭な道形を追うことになる。ここ数年、刈り払いはしていないよう。途中のタイガーロープも切れたまま。このまま廃道化か。 樹林帯に入ると、道形がはっきりする。
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大岩の場所は涼やか。 ブナ林の中の明瞭な道形。 雪渓の場所。左岸側がちとややこしい。雪渓に乗り上げる場所も安全通過ではない。 I渡渉点帰り。居心地のいい休憩適地。この場所にはヒルは居なかった。
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雄滝と雌滝。雄滝の落差は1000mほどある。  J赤谷林道終点地に戻る。 渋沢林道分基点。赤谷川橋の上には、釣り師の自転車がデポ。 ヘヤピンカーブの場所の東側にはショートカット道がある。朽ちた青い標識支柱の尾根を使うといい。 
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帰路の林道歩きも、何十とくっついてきた。見ていると、時速1Kmは出していそうな速さ。 川古温泉側の第一ゲートは開いていた。(第二ゲートは閉じられていた) K駐車スペースに戻る。  



 

 「彼らの存在を忘れていた」。何故に気がつかなかったのか。良く考えれば判った筈。体験していないから・・・確かに一番の部分はここではあるが、全くの未体験ではなく近くのエリアでは体験していた。人間は忘れる動物である。私の中ではこれであった。

 

 谷川岳エリアの落ち穂拾いに出かけようと企てる。12年前のこの時期、「東俣ノ頭ってのがあるから寄っていってください」とトランシーバーを握りながら話していた。雷雨の中、夜間登山をし終えて下っていた。その夜間登山の途中にある避難小屋に居たのが、猫吉&重鎮の黄金コンビ「ドラゴンズ」だった。小屋前の通過時に、私も気配を感じたし、両名も感じていたよう。珍しいニアミスであった。私はこの後の婚礼のために急いで行動しており、判ってはいたが東俣ノ頭を踏むことができなかった。逆に、私の背中押しに「そんなとこ寄らねぇよ」なんて言っていたドラゴンズはしっかりと踏んで通過したよう。そんなこんなの曰く付きの場所でもあった。

 

 2:50家を出る。今週も週中の肉体労働が嵩み、腰が痛かったり、疲労が抜けなかったり・・・。ネクタイ労働でも健康体維持にはマイナスだが、どうにもバランスが悪い。17号を渋川から沼田の方へ向かっていく途中、前方のトラックの後につけていた黒いセダンが、スーッと左側に流れて、そのまま爆音を発して激突。2mはあろうかと言うドア下側の部品が飛んできて、ガシャッと踏んづけた。他にも細かい部品が飛散した。瞬時に目の前にテールライトの中にブレーキランプが灯る。急ブレーキもいいところで、瞬発力で対向車線に飛び出して回避。対向側が居たならアウトであった。追い越し際に運転手を見ると、居眠りをしていたような表情をしていた。反面教師、そして車間距離はちゃんと保たないと・・・。

 

 月夜野インターを過ぎたら、そのまま17号を伝い赤谷湖へと登って行く。相俣の交差点は、川古温泉の看板が樹木に覆われているので、現在は要注意。判っていても行き過ぎてしまいそうな場所となっている。右折し集落を抜けて行く。赤い橋を渡ったらT字交差点。ここを左折し、その先のトイレ舎のある変則交差点を北に進むと川古温泉への一本道。駐車スペースは小出俣沢の出合いの先の林道入口。川古温泉の駐車場も兼ねた場所。ここに車を置いて行動するのは、これで3度目。

 

 ザックの中には登山靴を入れる。渡渉点があるので、そこまでは長靴と決め込んだ。到着と同時に出発する感じであった。舗装路を川古温泉脇へと進んで行くと、最初のゲートがある。ゲート前には車が停められており、開かずのゲートなのかと判断した。ゲートはこの先二つあり、計3つのゲートが近接して設置してあった。どのゲートも自転車や小さなバイクならすり抜けられる状況。雨上がりの潤んだ林道を進んで行く。今日はどんな山旅になるのか・・・。いろんな想定をしながらスタートしたてで意気揚々と歩いていた。するとすぐに、林道崩落地があった。下に見える赤谷川には、そこから落ちたと思われる塊が見える。道幅の97パーセントが落ちてしまっていた。修復されていないところを見ると、林道が使われていない事が伺える。この先は、樹木に覆われた中の林道歩き。

 

 ちょっと小水をと立ち止まった。ほんの何十秒。そしてまた歩き出す。5分ほどしてか、何かの動きを感じ出す。まさか、ヤツらが・・・。既にズボンの中に入っているものもいた。こうなるとパニック。場所を気にせずズボンを下ろした。間違いなく蠢く1匹を発見し毟り取る。こうしていながらもズボンの外は・・・。急いであげて状況を把握。4匹確認出来た。その全てが速い事。凄まじい行動力で上にあがってきていた。「さっきズボンを下ろしたときに中に入ったのではないか・・・」こんな思考になると、千日手と同じ、どっちを確認すれば安心という部分がなくなってくる。歩きながら前方を見なければならないのだが、ほとんど下半身に視線が向いていた。一つ良かったのは白いズボンを履いて来た事。これが暗い色だったらもっと発見が遅れただろう。毟り取るときに、手に吸い付いてくるものもいる。僅かな吸い付きでも、出血が止まらなくなる。進んで行くと、血液の付着したテッシュが落ちていた。なにが起こっているか、すぐに判った。

 

 困った。非常に困った。こんな中を気にせず歩ける人などいるのだろうか。気にしながら歩いていても、これほどに上がってくるとは・・・。さらにはブユも多い。必然的に早足になってゆく。ライターを片手に、炙るようにして何匹も落とす。今日は蛭用の駆除剤を持ってきていない。的確な方法は火と判断していた。こんなことがあり、残念なことに経路の印象が薄い。日頃は余所見頻発で把握するルート情報であるが、今日の集中する先は、蠢く物に注がれていた。ヘヤピンを終えもうすぐ渋沢林道との分岐点になる。早足が良かったのか、この付近になると、上がってくる個体は見られなくなった。

 

 渋沢林道分岐点。その方向に赤谷川橋も見えていた。しかしここには特に道標が無かった。大源太山とか万太郎山とか表示されていても良いように思えたが、一切なく、あるのは「43」と書かれた数字のみだった。そのまま奥に続く登り勾配に足を進める。やや崩壊した林道がこの先ある。流れにより削られたよう。足許の野草が多くなり、一気に下半身が濡れてゆく。しばらく付着しないでいい気になっていたが、ここに来てまたくっついてきていた。吸着された後のかゆみ、傷の癒えない日数を知っているだけに、その動きに恐怖を感じる。たかがヒル、されどヒル。

 

 赤谷林道終点地到着。周辺地図と標柱には毛渡乗越の文字も見える。これらを見る時も立ち止まる事を短時間で終わらせる。立ち止まれば彼らの恰好の標的。この先に幕営適地が在り、沢も近くて心地良さそうに見えるのだが、蠢く彼らを知っていると、いつものように素直に「良い場所」とは感じられなかった。山道は谷側に勾配がある場所が多く足場が悪い。野草が茂り見えないような場所もあり、ここでも下半身はずぶ濡れとなった。進む先の対岸に目立つ滝が見えてくる。これが雄滝雌滝だろう。雄滝の方は、線は細いが落差は80mほどあろうかという大きな瀑布。ヒルが居なければジッと立ち止まって見たかったが、心理的に出来なかった。先の方に、別のしっかりとした滝が見えてくる。渡渉点に来たようで対岸に赤ペンキが見られた。

 

 赤谷川に降り立つ。上流側には残雪も見られ、流れは至極冷たい。梅雨時であり水量が気になったが、長靴なら水没しない程度。登山靴では間違いなく水没。一番深い場所での水深は20センチほどあった。対岸へ行き、藪の濃くなったルートを分けて進んで行く。先ほど見た滝の下を通過して高度を上げて行く。流れを数度跨ぐので、水場に困らない。雪渓を通過する場所は、左岸側に強い流れがあり、その左岸側に行くのに滑りやすい岩壁となっている。ちょっといやらしい通過点であった。雪渓が割れそうでもあり、空洞になっている状況下、注意せねばならない通過点。ここを過ぎるとブナ林の中に切られた歩き易い道となる。風の通る涼やかな谷を跨いだり、大岩の前を通過したり、温度差を感じる涼しい場所も待っている。

 

 小滝の場所。このルートで一番の気に入った場所となったが、小ぶりの滝のある場所がある。自然地形での窪地もあり、小さいながら居心地が良い。赤谷川の右岸側にきて、全くヒルの存在が無くなった。まだ雪のあるような場所だからだろうか、少しだけだが張り詰めていた彼らへの注力が解き放たれた感じ。ここで給水して稜線までひと頑張り。樹林を抜け出すと、ササの中に切られた道形を伝う。所々に赤ペンキが見えるが、付近は管理されなくなってどのくらい経過するのか、かなり藪化が進んできていた。渡渉時に膝上までスパッツを着けたから良いが、本来なら雨具を履いて通過したい場所であった。道形を見失い、ササを漕いで進んだ場所もあった。コバイケイソウがルートファインディングの悪さを笑っているかのよう。気づいたら、そのコバイケイソウの植生を追うように進むと、そこがルートであった。高度を上げると、さらにルートが見えなくなっていた。

 

 毛渡乗越。困ったことにヒルに代わってブユの来襲。今日は南風。そこそこ吹いてはいたが、ブユを飛ばすほどには風速がなかった。追い払っても追い払っても呼気に寄ってきては視界の邪魔をする。黒い物に寄ってくる習性、目の玉に入ってくるのは何とかして欲しい。この場合三白眼の人だったら被害は少ないのか・・・あまりにも飛び込んでくるので余計な事まで考えてしまった。西にエビス大黒ノ頭がスクンと立っている。東側には、熊穴沢を巻き込むような稜線が見える。登ってきた側を見下ろすも、そこに道があるようには全く見えなかった。水休憩をして東進を始める。

 

 ハクサンフウロ、ヨツバシオガマ、ニッコウキスゲなどが咲き誇っていた。一番目立つのはコバイケイソウの白。越路避難小屋は中を見ずに通過して行く。左(北)側には越後の山々、右(南)側には上州の山々、上越国境を歩いている感じが強くする場所でもあった。ゆっくりと登り勾配に足を添わせれゆく。進路の先右側に目指すピークも見えていた。どこから登山道から離れようか・・・。全ては現地の植生により判断する。あとは、少なからずマニアが伝っているだろうから、踏み痕も期待していた。登山道から僅かに逸れるような場所であるから、踏み入る人も多いのでは・・・。この期待は見事外れる。

 

 東俣ノ頭からの尾根と登山道とがぶつかる場所から入山する。最初は膝下の藪。ササが主体。手前峰にさしかかると、ハイマツとシャクナゲが出だす。ここは山腹東側をトラバースするように行く。最初の高みを過ぎると、その先が最高峰。下の方にダケカンバ、上にハイマツとシャクナゲが待っている。ダケカンバの中を抜け、やや南寄りに植生の薄い場所を巻き上げる。北側の方が高いようにも思える山頂部。クレーターのようになった鞍部を挟んで、その先に、木柱の立つ場所が待っていた。

 

 東俣ノ頭到着。ブユが居る他は、快適な素晴らしい展望の山頂であった。山頂にはシャクナゲの白花があちこちに咲いていた。まだ残雪が白い東側の景色。時折落石の音も響かせていた。ヒルの急襲にどうなるかと思ったが、何とか到着した。南西側には、楽しそうな谷があるが、彼らは何処まで生活圏の範囲を広めているのか。見えている景色の中に、蠢く様子を想像すると、このエリアが厳しい場所に思えてきた。人工物としては木柱が一つあるだけなのだが、そこにアルミのプレートが打たれていた。さらに根元の方を見ると、なんとKUMOが縛られていた。かなり朽ちたものだが、手縫いされている部分が見え、間違いなくKUMOと判断できた。美生柑で水分補給をしてから下山となる。

 

 戻りながら、稜線上を眺めては、誰かが歩いていないか目で追っていた。すると、エビス大黒の方から来る単独者が見えてきた。纏わりつく足許に、大きく太腿を上げるようにして進んで行く。そして登山道に戻り、高山植物を愛でながらゆっくりと西進。越路避難小屋は、曇り空ではあるが、鉄板構造物であり内部は蒸し風呂のようであった。ドアを開けていないと入れたものではなく。ブユが居るので開けているのは・・・。暑いか痒いか、「さあどっち」な場所となっていた。少し降りると、男性ハイカーとすれ違う。足許には独特のデザインのスパッツを着けていた。あまり見ないもの。この印象からどこかですれ違っている。それも新潟で・・・。記憶が呼び戻せず、背中と背中の距離は離れていった。

 

 毛渡乗越帰り。登山靴を履こうかとも思ったが、そのまま行ってしまう事にした。不明瞭なルートを分けながら伝って行く。往路に使ってきた私でさえ、復路を迷ってしまう場所もある。この状態だと伝うのは秋以降が良いようだ。今は本当にモシャモシャしている。アザミのトゲトゲが、ズボンを通り越して刺してくる。「気を抜くなよ」との山の愛情か。クネクネと九十九折を終え、樹林帯に入ると道は明瞭になる。上では少しあった風が、高度を下げるとパタッと止まり、蒸し返すような暑さを感じていた。この曇り空でこの体感。晴れていれば・・・。

 

 小滝の前を通過する時は、またまた小滝の方へ10mほど入って行き涼む。大岩の、その岩壁の前もひんやりとした空気があり涼やか。この先で枯れ沢を跨ぐが、流れがないものの、ここが一番自然のクーラーの場所でもあった。ブナ林を降りて行くと、次第に流れの音が強くなる。タイガーロープに伝わりながら微妙にヘツルように雪渓の残る沢に降りて行く。ここは小柄な女性はちと辛い通過点になろう。ここまで戻れば赤谷川の渡渉点までもう僅か。ウラエビス大黒沢の右岸側を、草を分けるようなルートに足を進めて降りて行く。当然、滝の横では間近で観瀑する。ここから見下ろす赤谷川もいい感じ。

 

 赤谷川渡渉点。付近にヒルは居ないようではあるが、この先には間違いなく待っている。本当はのんびりと流れによる風を受けて涼んでいきたいような気分であったが、立ち止まることが被害に遭うことと、今日はパブロフの犬のような思考になっている。バシャバシャと渡り、やや足の回転を速くしてルートを伝って行く。しかし、急ぐといい事はなく、3度踏み外して谷側に滑落。足場の緩い場所、見えない場所もあり、本来は落ち着いて通過したい場所なのだった。

 

 林道終点まで戻るも、被害はなかった。少し日が上がり暖かくなったからか・・・勝手に判断していた。渋沢林道分岐、赤谷川橋の上には自転車が2台デポしてあった。ハイカーかと確認に行くと、川の中でテンカラを振っている様が見られた。目が合ったので手を上げると、向こうも手を上げて挨拶をしてくれた。言葉を交わさないこれらの交流。その昔、バイカーが片手を上げあったそれと似ている。もっと言えば戦時中の飛行気乗りは、無線が使えず手話交信だった。話が逸れた。

 林道を戻って行く。しかし・・・彼らは時間帯とか暑さとか、人間が思う安易な判断とは別に、野生的に生きる為に生息しているのだった。ふと気づくと、しっかりと登ってきていた。指で弾き飛ばすように払うが、吸着して取れないものも居る。今日はヒル用の除虫剤を持ってきていない。あるのはライターと虫除け3種。ブユも土地土地で、効果がある虫除けと、そうじゃないものがあり、現地で使い分けている。その中で、ヒル下がりのジョニーと内容物が似ている一つを噴霧してみた。予想的中、何かの成分が彼らの戦力を奪ってゆく。粘性の液体を体から出しながら丸くなりポロッと落ちていった。もっと早くに気がついていれば・・・。それ以降、その虫除けを下半身に噴霧して歩いていった。それでも登って来るものは居たが、気持ち減ったような体感であった。

 

 ヘヤピンカーブの所にさしかかると、カーブの先の尾根に道形があった。何でこんな場所に・・・と思って、ヘヤピンの抜けた先を気にしていると、青ペンキを塗られた標識の支柱があるが、その脇から山道が降りていた。間違いなくヘヤピンカーブの場所のショートカット道であった。ヘヤピンの大きさを思うと断然使った方がいいだろう。泥濘地には、先ほどの2台分の轍が残っている。下を見ながら、それでも周囲の緑を愛でながら歩いてゆく。そして崩落地が出てくるとゴールも近い。そうしながらも、先ほどから長靴の上部で動かない一匹が気になっていた。停滞状態を決め込むとディフェンシブになり、体を丸くして固体化する彼ら。いろんな変態状態を観察させてもらい、次に繋げる。

 

 ゲートの場所。3つ目の川古温泉側のゲートは、なぜか開いていた。使われる林道であるのか。開けるのはおそらく旅館の人であろう。旅館に近い場所でもあり、ゲート前に勝手に停めないような工夫なのかもしれない。その旅館の脇を抜け駐車余地に戻る。さあここからが大変。温泉客の眼を気にする事無く、アスファルトの上で一気に脱いでゆく。衣服や体からは出てこなかったが、長靴の上部から出てくるは出てくるは・・・。先ほどの虫除けを噴霧してポロポロと落とす。歩行中に食いつかれた箇所が4箇所。まあ被害は最小と思うことにした。半年ほど痒いだろうなー。治らないだろうなー。傷口を見ながら今後を想像した。

 

 ほとんどヒルが主体の作文になってしまった。ここまで書くと、その存在が伝わるかと思うが、なにせ態勢がある人でもここは大変であろう。四万温泉エリアを10とした場合、この付近は8ほどの攻撃に遭った。「上州もヒルのエリア」とはっきりと把握した。この学習をこの先の行動に反映させたい。こうなると越後側が生息域になるのは時間の問題。信州なども北上が聞かれている。山遊びも大変な事になってきた。道中ずっと、携帯型駆除装置を考えていた。高電圧、熱、薬剤、本気で考えればいいものが出来そう。本気を出す時って、凄いやられたときなのだとは思うが・・・。

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