日景長戸岩   1411 m(1416高点基準で実測)

 (同定に関しては、山塊のピークとして相応しい場所とした。西峰、中央峰、東峰とあるが、中央と東は同高度。これとは別に1416高点は、山頂らしい高みであり登頂感がある。)    

 

 
2013.7.15(月)    


   晴れ      単独      葡萄橋から      行動時間:3H23M 

   携行品: ライトオックスブーツ  20mザイル


@葡萄橋5:40→(6M)→A標高950m尾根に乗る5:46→(35M)→B1150m展望場6:21→(31M)→C1370m峰東6:52→(16M)→D日景長戸岩東峰7:08〜11→(13M)→E1416高点7:24〜32→(10M)→F東峰再び7:42〜8:00→(4M)→G中間峰から北尾根に8:04→(40M)→H日影ブドー沢に降り立つ8:44→(3M)→Iブドー沢林道支線終点地8:47→(16M)→J葡萄橋(ゲート)9:03


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@現在は御巣鷹の尾根側には新道がつけられている。旧道側に入り、葡萄橋前の余地からスタート。 @立派な銘板がかかる。 橋を渡り、尾根末端付近から取り付く。 A尾根に乗った場所。下草の無い快適な尾根。
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このテープが乱打されていた。ちと残念。 1130m付近で大岩が尾根上を塞ぐ。南巻き。 さらに上にもう一つ城塁のような岩が・・・。 B1150m。上にあがると展望地であった。
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1150mポイントの先から苔生したやせ尾根となる。あまり人が入らない証拠。ここまで育った苔を踏まないよう通過したい。 1220m付近。 腰掛けるのにちょうどいいサルノコシカケがこれほどにある。 1370m峰は、北側を獣道でトラバースして行く。
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C1370m峰東側の気持ちいい場所。ここに薬莢が落ちていた。季節に入るとそういう場所となる。 C1370m峰は岩峰。 中間峰(現地山頂部に3つのピークがある)への登り。 復路下降点とした中間峰。
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東峰に向かうと、倒木にこれらが並ぶ。 D日景長戸岩東峰。ここが一番、山塊の山頂らしい場所。個人的にここを山頂と同定。 D岩の上には可憐な花も咲く。それほどに岩の上が踏まれていないことになる。リスの出迎えもあった。 D日景長戸岩から南。高水の頭辺りが見えているのか。
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東峰の東側に危険箇所が待っている。通過して振り返る。 ここからがもっと危険になる。通過するにはザイルは必携。ザイルが無い場合はやや北側に降りて行く。 臨場感がないが、これが危険箇所全容。倒木の付近を降りて行く。 チムニー状の中を降りて行く。とても足場が悪く。こちらにしても安全通過はザイルを垂らしたい。
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通過してきた危険箇所。右側の立木と岩の間を降りてきた。復路は左側の立木の辺りをクライムアップ。 1416高点を下から見上げる。 E1416高点に到着。展望はないが山頂らしい場所。 E北側に一連のマーキングが降りていた。地形図に描かれる林道終点と結びつけたのだろう(現在の林道終点は、日向ブドー沢出合付近)。
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危険地帯帰り。脆い岩が有り、場所を選ぶ。 チムニーの場所はややハング。力量によりコースが選べる場所。 チムニーの北側を登った。登りきり上から見下ろす。 土の乗るバンドで安全地帯となるが、ここもちと安心できない足場。
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F日景長戸岩東峰再び。 F1416高点で高度計を補正し、東峰で測位。1411mを示す。 F今日はヤキソバパンが手に入る。 G中間峰から北尾根を下る。
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1260m付近。下に行くほどに岩が出てくる。 ここは左(西)巻き。 1210m付近。大入道岩的大岩がある。付近はササ枯れ。シカが付近に少ないよう。 1070mで尾根上に大岩が現れる。
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大岩の東側へと斜面を降りて行く。 H日影ブドー沢に降り立つ。地形図ではここにも林道が在るはずだが、見ての通りの自然地形。 I沢の先に土盛が在り、その先から林道が続いていた。 I本谷ぶどう支線終点。写真の奥に土盛が見える。
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沢を左にして快適な林道歩き。少し崩れている場所もある。 サワグルミがあり、季節には嬉しい食材も・・・。 小滝で涼を得られたり・・・。奥、手前と二段の滝。 養蜂もこのように。
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J葡萄橋のゲート到着。このゲートは解錠しているが、崩落箇所等あり林道に車は入れないほうが良い。      



 

 日景長戸岩が地形図に掲載された。昔から表記されていたが、以前は右傾斜体ではなかった。それが昇格したのか、晴れて周辺の山名と同じく表記されるようになった。これまで見てみぬふりをしていた場所が、これにより魅力的な場所に変わる。西上州はほぼ登り終え、少し足が遠退いていただけに、嬉しい1座でありワクワクするのだった。アプローチは必然的に周囲林道からとなり、順当に葡萄沢出合よりの尾根を登りに使うこととした。

 
 三連休であったが、1日目を終え中日を休養日とした。自転車事故での両手からまだ膿が出ている状態で、硫黄泉にて療養をして傷口が乾くのを待っていた。この前にホノザルベなどを塗ったが、これは湿度を保ちすぎで、傷口が乾かないので今回は都合が悪かった。やはり自然治癒。と言いつつ、夕刻から焼肉をつつきつつ、マッコリで乾杯などとやっているので、本当に治す為の努力をしているのか・・・。たんぱく質補給と言う意味ではいいとは思うが・・・。

 
 下仁田経由で湯の沢トンネルに潜って久しぶりの上野村に入る。浜平温泉の奥多野館を左に見ながら、新しく敷設された上野ダムへのトンネル道を進んで行く。半分は日航の補助もあるのか、この道はあの「御巣鷹の尾根」へ向かう道。ただし今は、崩落によりルートは通行止め状態。もう僅かしかない日取り(慰霊祭の日)に、急ピッチで工事がされているようであった。中止の滝の案内表示を見たら、その先で分岐点がある。ここで右へ行く道が新しい道。左が旧道。ここは旧道側に入る。落石も多く、除けながら進めねばならないような通過車両の少ない道。ようはこちらは管理されていない道となる。進んで行くと葡萄橋があり、この手前に7台分ほどの余地があり、ここからスタートとする。

 
 葡萄沢を詰めて北尾根を使って登るコース取りも出来るが、北西尾根がこれほどに素晴らしいので使わない手はない。妙義の大黒岩で学習しているので、ここも「岩」とつく場所であり、ザックには20mのザイルを入れた。一応居ないとは判っているがヒル対策もした。外気温は涼しく20度。ここ最近の平温が35度以上であり、この15度差は涼しく感じるのだった。そよそよと風が吹いており、雰囲気的には秋の様相でもあった。苔生した葡萄沢の流れ、歩かずしても気持ち良い場所であった。

 
 葡萄沢に沿う本谷ぶどう支線を左に見送り葡萄橋を渡る。右に小さな小屋があり、その前にはシオジの種子の飛散観察をしている旨の表示があった。獣道だろう踏み跡に乗って尾根に向かって斜面を駆け上がる。そして標高950mの尾根上に乗る。下草の無い快適な尾根がこの先続く。早朝に入っても足許が濡れない山登りも久しぶり。途中には赤い絶縁テープのマーキングも残っていた。周囲の緑を愛でながらゆっくりと足を上げて行く。不思議と体が震える。日航の事故以来、このエリアに入る時はいつも同じ感じを抱く。御巣鷹の尾根とは違う御巣鷹山を狙ったときも同じであった。それだけセンシティブなのか・・・。

 
 1130m付近で大岩が前方に立ちはだかる。ここは南側に踏み跡が続いている。一つ越えたかと思ったすぐ先にまたまた城塁のような大岩壁が見上げられる。これも大きく南側を巻き上げる。上がった先はルート上で唯一の展望場だった。休憩適地であるが歩き出して間もないのでそのまま先へと進む。ここは1150mほど、この先から痩せ尾根となり、そこが綺麗に苔生している。人も獣もほとんど通らないからであろう。石に足を置くようにして、苔を踏まぬよう注意して進んで行く。それほどにいい感じの緑の絨毯の尾根筋であった。

 
 1200mを越えると、やや急峻地形が出てくる。それでも下草の無い快適さは最初と変わらない。途中に立派なサルノコシカケが多数見られる場所がある。座るにもちょうどいい高さ。これぞサルノコシカケと言えよう物であった。だんだんと植生にブナが混じるようになり、付近の緑が鮮やかな緑色となる。地面にはブナの実も多く落ちている。熊は少ないのか・・・。前夜のアルコール分が汗として出てきている。山に行く前には飲まないことが多いのだが、飲んだ場合の翌日の汗は、それとはっきりと判るものである。

 
 1370m峰は、マーキングは頂部を進んでいたが、獣道に従って北側山腹をトラバースして進む。落ち葉の中のフカフカとした道。巻き終え尾根に乗ると、なんとも気持ちいい場所が待っていた。ふと光るものがあるので手に取るとウインチェスター製の薬莢であった。猟期には、銃を持った人がここで蠢くようだ。1370m峰を木々の間から見上げると綺麗な岩峰であった。東に進みながら、この先の各ピークで高度を確かめながら進む。往路は高度調整せず、表示されたまま読んでゆく。復路は1416高点で補正してから読んでいこうと考えた。往路復路での標高差を確認すればより測定精度が上がると考えた。これには、地形図には日景長戸岩山塊として名前がふられているが、標高が書いてあるのは1416高点。ここを山頂としてもいいとは思うが、「岩」としたらちと違うようにも読み取れる。山名を記述してある側で、最高点を拾おうと考えていたのだった。

 
 地形図参照。「日」表示の北側のピーク(西峰)に対し、「長」表記の北側のピーク(中間峰)は27m高かった。その西側「岩」表記の北に岩の乗るピーク(東峰)があり、ここが中間峰と同じか1mほど高く出た(少し微妙でニアリーイコール)。現地の感じとしては、東峰で最高峰としたい。岩が乗り、それらしい雰囲気のある場所でもあった。リスがおり、こちらを見ながら木の上で逃げ場所を探していた。南を見るとミミヅク沢を挟んで高水の頭らしき山塊が見える。なにせここの高度をはっきりさせたい。そのためには地形図の高点を取っている1416m峰まで行かねばならない。少し休憩したのち東進して行く。


 少しややこしい岩場があり、この程度ならと思っていたら、その先に少し本気にならねばならない通過点が待っていた。南は絶壁で逃げられない。北側を逃げるにも容易でなく、東側を何とか通過していかねばならない。通常の安全通過はザイルを垂らしたい。それでも垂らさないでいける場所はないのか・・・。少し時間をかけて右往左往と動いてみた。クライミング要素十分の場所で、やや北にバンドがあるが、少し伝えるがその下が無理。さらに北にズレ、下に大木の枯れ木が縦に引っ掛かっている場所がある。このチムニーがいけそう。ただし足場が緩い。ここで滑れば20m以上は落ちてしまい、斜面の傾斜からして停まらない場所。慎重に手掛かりを探りながら体を降ろしてゆく。ややドキドキしながらの下りで、岩壁の下に降り立った時はホッとした。危険箇所の高低差10mほどか、緊張を伴う通過点であった。


 この先は危険箇所なく尾根を伝い。ちょうどお日様が頂部に位置し、「ダイヤモンド1416高点」となった高みに這い上がってゆく。少し南に膨らむように巻き上げると容易に上がる事が出来る。静かだった山塊にシカの警戒音が聞こえる。今日は涼しい為に蝉の鳴き声もない。夏にしては不思議な日とも言える。この標高を狙ったならば、汗みどろになると予想していたのだが、全くそれはなく快適なのだった。もう僅かに進めば滝谷山。雪の上を踏んで到達した日のことを思い出す。


 1416高点到着。展望はないが、到達しての登頂感が伴う場所であった。北側の尾根を見下ろすとこれまで続いていたマーキングが降りていた。地形図に見る葡萄沢に添って見える林道とぶつけたコース取りのよう。周回ルートなら大きくとりたい。伝ってみようかと少し食指が動いたが、それより先ほどの岩場を登りたい気持ちのが大きくなっていた。あの場所は、登れる場所をしっかりと把握しておかないとならない。この場合は、日景長戸岩の中間峰まで戻り、北尾根を伝うこととなる。事前に数候補シュミレーションしてあり、確認のために再び地形図に目を通す。そして復路に。


 問題の岩場。見上げると南側にカンゾウなども黄色く咲いている。優しい表情がある一方で、斥候に登ると脆い事も体感できる。場所を選ばないとならない。西上州らしい岩場で、ゴツゴツとはしており手がかり足がかりは多いのだが、それ相応のテクニックは必用。3箇所ほど登れそうな場所を見出す。もっとも往路に伝った場所を登る方法もあるが、土が流れやすく上からザイルでも残置しておかないと危ない場所に見えた。登ったのはチムニーの右(北)側のリッジ状の場所。岩壁の刃先を懐に抱くようにして上がって行く。4mほど上がれば、右側からバンドが降りて来て危険地帯からは回避される。ただ、このバンドも落ちやすい土が乗っており、安全通過とはならない。登り上げれば先ほどの東峰山頂。


 日景長戸岩(東峰)再び。1416高点で高度計を補正し、ここでの高度を見ると1411と表示した。往路の測位結果と照らし合わせると、1410m寄りの1411mなのかと思う。少し大休止。ヤキソバパンを出して登頂感を増幅させ、美生柑で喉を潤す。この岩の山頂は、少し怖いのだが南側に行くと眼下の眺望の良い場所がある。ちょうどいい岩が在りちょっと腰掛ると、あたかも天狗になったような気分になる場所となっていた。ブユも居らず、なんていいコンディションなのだろう。当然、ヒルなど皆無。汗がひいた所で下山行動に入る。


 中間峰まで西にずれて、そこから北尾根を降りて行く。ピークでの高度計は1410を示したが、次の瞬間1411となった。こちらにはマーキングは一切無い。上の方は少しシャクナゲがあるが、抜け出すと快適尾根になる。高度を下げてゆくと、13
00m付近から尾根上に岩が目立つようになり、立ちはだかる場所も出てくる。1270mの岩峰は西側を巻けるが、せっかくなので頂上を踏んで進んで行く。ここも登頂感のあるピークであった。付近はササ枯れが進んでおり、乾いた景色が広がっていた。シカの糞が少ないのが頷ける。1210m付近のそのササ枯れの中には「大入道岩」と言いたいような目立つ岩も見える。それを右に見ながら斜面を降りて行く。先ほどの1270m峰から北に進む選択もあったが、尾根を長く進もうと判断し、北西に延びる尾根を選んでいた。


 こちらの尾根も快適尾根。苔が綺麗な場所では、足を止めてカメラを近づける。1070mまで下ると、予定外の大岩が現れた。このまま尾根伝いに・・・と思っていたが、岩の上まで8mほど高低差があり、登るのも面倒なので北(東)側に大岩の壁沿いに降りて行くことにした。流れやすい柔らかい斜面に踵を入れながら降りて行く。下の方に流れが見えるが、林道らしき道形が無い。不思議に思い広範囲に見るも、やはりない。そうこうしているうちに流れに降り立った。ここが日影ブドー沢。気持ちいい清らかな流れがあり、涼やかでとても気持ちの良い場所であった。


 流れの中を降りて行く。踏み痕こそないが、適当に降りてゆける場所。すると途中に大きなヒューム管があり、流れがそこを通っていた。その先に土盛りが見え、さらに先に明るい場所が目に入って来た。土盛りを乗り越えると、明るい場所は林道と判った。そこには「本谷ぶどう支線終点」と書かれた標柱が立っていた。これらの事から、現在は地形図表記とは違う場所に終点があるようであった。ここからが気持ちいい林道歩き。入る人が少ないからであろう、林道の上は緑の絨毯のようになっている。進路左側には清らかな流れ、苔生した中を白い流れが伝う様を見ているのはなんとも涼やか。管理されなくなって長いのだろう、数箇所で崩落地を見るも、車が入ってこないことを思えば気にならない部分でもあった。


 小滝が見える場所もあり、丸太構造の養蜂巣箱も見える。後者は人工物ではあるものの、完全に自然に同化している。蜂の様子はどうかと近寄るも、彼らは不在であった。この辺りには轍があったので車が入ってくるようであった。進んで行くと先の方に朝の景色があり、我が車が待っていた。ゲートがあるのだが、よく見ると解錠してあった。朝もこのままだったのだろう。自由に開閉できるが、崩落の様子からは、入れて300mほどだろう。その先に進んでも危険が伴うだけ。それよりも、この林道は歩いた方が幸せな気分になる。途中サワグルミもあったので、美味しいお土産も戴けたりする。


 周回終了。1416高点に行かねば、少しぬるい山旅であったが、あの岩場があったことで、楽しいアクセントとなった。1416高点に行く方は20mザイルは必携。南に落ちたら死んでしまうし、北に落ちたら30m、いやもっと落ちてしまうだろうと見えた。そのうち誰かが残置ロープを垂らすのだろうが、そう思うと今が楽しい場所(時)とも言える。北西尾根も構成としては登山向きのいい尾根であった。あと林道も気持ち良い林道。北西尾根のピストンだけでなく、林道も織り交ぜる事で、この山塊を十二分に楽しめる事になろう。


 帰りはしおじの湯に寄って汗を落として行く。しおじの湯は奥多野館からの引泉をやめてしまったよう。淋しい限り・・・。


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