硫黄岳    2760 m         


 2013.7.27(度)    


   晴れ     同行者あり      本沢温泉ゲートより      行動時間:5H44M 

   


@ゲート5:00→(46M)→A本沢温泉5:46〜52→(4M)→B分岐から雲上の湯5:56〜59→(37M)→C夏沢峠6:36〜43→(44M)→D硫黄岳7:27→(8M)→E三角点ポイント7:35〜37→(8M)→F硫黄岳山頂再び7:45〜8:00→(37M)→Gヒュッテ夏沢8:37→(34M)→H雲上の湯9:11〜50→(4M)→I本沢温泉帰り9:54〜57→(43M)→Jゲート10:44


ge-to.jpg saikousyo.jpg  honzawa.jpg notenbunki.jpg
@ゲートまで車を入れてスタート。 A本沢温泉到着。 A本沢温泉前。早朝スモーカーで空気が悪かった。 B野天湯へ偵察に。
huro.jpg  natuzawatouge.jpg  seito.jpg  ioudakehe.jpg 
B一人のみ居られた。 C夏沢峠のヒュッテ夏沢。 C200名ほどの生徒が集団登山中だった。 ケルンを拾いながら硫黄岳を目指す。
kakou.jpg ioudake.jpg  hyoushiki.jpg  hokora.jpg 
絵になる火口縁。 D硫黄岳到着。 Dお団子標識 山頂一帯で一番趣のあったものがこれ。南牧村側を向いていると言う事は、東側から上げたものか。
kakouen.jpg  husagu.jpg  santou.jpg  sankakutengawakara.jpg 
火口縁を東に進む。 途中でロープで塞がれている。崩落が進み、足場が怪しい場所が多い。 E三等三角点 E三角点側から見る最高点側。
shitagawa.jpg  huchi.jpg  komakusa.jpg  hinagoya.jpg 
E下側 E高度感抜群。 ポツポツとあるコマクサの風合いがいい。 F最高点に戻り避難小屋。
naibu.jpg  goryoukyoku.jpg  tengugawa.jpg nigiwau.jpg 
F避難小屋内部。やや湿気が強い。扉がないため。 F御料局の三角点がある。残念ながら割られている。 F天狗岳側。 F賑わう山頂。
hyuxtute.jpg ru-to.jpg  bunkikaeri.jpg  huro2.jpg 
G夏沢峠帰り。生徒らはオーレン小屋側へ降りて行った。 本沢温泉へのルート。 野天湯への分岐帰り。 H雲上の湯にじっくりと浸かってゆく。先客にお酒を戴いたりした。
honzawakaeri.jpg kurinsou.jpg  isoucyuu.jpg  ge-tokaeri.jpg 
I本沢温泉帰り。 クリンソウはほぼ咲き終わり。 小屋主が荷揚げをしていた。 Jゲート帰り。トラックでもここまで上げられる。





 金曜日、二男坊から急に帰省する連絡が入った。これにより、車中泊で2日を使って・・・などと思っていた週末の予定が変わる。前週はグアムに居た彼、キャニオニングをして滝つぼに飛び込み、スクーバーダイビングで熱帯魚と戯れ、4500mからのスカイダイビングを楽しんだと言う。蛙の子は蛙以上なのだった。間違いない遺伝を感じたり・・・。ここで、彼に「山に行くか?」と訪ねると、予想外にも「行く」と返答があった。彼と登った最後は2004年と記憶している。「親父と登ってもいい」と言う年になったということであろう。

 
 大晦日。電撃的な電話で叩き起こされ八方尾根に走った。なにを隠そう、事故の当事者は二男坊であった。左足の脛を開放骨折。骨が7センチほど外に飛び出すほどの事故となった。この事故から約7ヶ月が経過。先に書いたとおり、遊べるほどに回復した。当人がそれなりにリハビリ努力をした成果となろうが、それにしても半年ほどでここまで回復するとは思って居なかった。「行く」と答えたことに対し、こちらの方が半信半疑となってしまうが、行くからには楽しませたい。本音は、赤岳を踏ませて感動を与えようとも思ったが、どうしても本沢温泉を組み入れたかった。本沢経由だと赤岳まで5時間。さすがに10時間行動だと足に負担が大きいと思い、手ごろな所で硫黄岳を最終目的地とした。硫黄岳にしたところで片道3時間。これが彼の足にどのくらいのダメージを与えるのか、連れて行く方も読めなかった。ただ、コースの緩やかさは念頭において選んだつもり。段差の少ない場所を。

 
 前夜は、焼肉を食べたいと言うので、またまたマッコリで乾杯となった。ちょっと飲みすぎ感を持ちつつ翌日3時に出発する。松原湖側経由で入れば判り易いが、前回辿った海尻駅からの道を行く。稲子湯への道から本沢温泉への林道に入る。ここは前回は70センチほどの雪があり、車での走行はさながらラッセルだった。前進後退を繰り返しながら進んだ場面もあり、懐かしい場所であった。本沢温泉へのダート林道入口には、マイカーが8台ほど見られる。置いてあるのは四駆でない車。この先は四駆が本領発揮する場所。前夜の雨の後、少し滑りやすい路面にタイヤを転がせて行く。うねる路面、横切る水路、相変わらずの状態。これで対向車でも来ようものなら、ほとんどアウト。それでも無きにしも非ずと慎重にアクセルに足を乗せてゆく。

 
 前回は手前の余地に停めたが、今回はゲートまで入れてしまうことにした。入って行くと、ゲート前には軽トラが1台あるだけだった。林道には歩いている人は居らず、動き出しているのは我々だけだったよう。到着時の外気温は15℃。今日は午後、夕刻からの予報が良くない。気持ちよく遊べるのは午前中と判断した。ササッと準備をし、水は本沢温泉で汲む事にして歩き出す。

 
 ゲート出発。最初はなだらかな道。次第に勾配出てくるが、二男はしっかりと付いてきていた。歩行の様子に違和感はない。ややスピードを上げたが、それでも問題はないようだった。相手は若者であり、あまりノンビリでもフラストレーションが溜まると、ややスポーツ的に「快足」を決め込んで足を出してゆく。シラビソが甘く香る中を二人の地面を蹴る足音がザクザクと響く。周囲にはややガスが垂れ込め、遠望は残念な日となっていた。コールタールを塗った補修されたアプローチ道。登山者だけでなくお風呂マニアも訪れる場所、より歩きやすいように手が加えられている。

 
 クリンソウは終わり花であった。付近から水の出ている所が多くなり、本沢温泉が近いことが判る。テン場には二張り見られ、足音に気づいてか中から顔が出てきて朝の挨拶。建設中の小屋を左に見て九十九折を上がると本沢温泉到着。生憎、早朝の一服を楽しむ人が二人おられ、小屋前の空気は悪かった。プラティパスに水を汲み、小休止のあと上を目指す。ここまで45分。いい感じできている。

 
 野天湯の分岐からは、まずは湯を覗いてゆく。一人の男性が利用するところで、さすがに早朝であり空いていた。それを見届け夏沢峠を目指す。緩やかな快適な道が続く。すると、前方で賑やかな声がしだす。尋常ではない人数が居るようで、それが声の量で判る。子供連れのパーティーが居るのか・・・最初はそう思って追うように足を出していた。目指す硫黄岳は荒々しい姿を見せ始めている。下の方からだと緑に覆われた姿だが、本沢を過ぎると、景色の中での赤さがどんどん強くなってゆく。爆裂火山火口壁。その言葉と現地が合致する。

 
 夏沢峠到着。声の主は中学生の集団登山だった。早朝の硫黄岳登山を終えて、どんどんと降りてくる姿があった。先生と話すと、5クラス入山しているとの事。先生の数も10名以上居る様子。ゆうに200名は集団として居るだろう。不思議なのは、山小屋の二階には、涼しい顔をしてこちらを見下ろしている女生徒が居る。歩いている者、二階で寝てる者、何となく意味合いが理解できた。点呼を取り始めるとヒュッテ内から泣きながら出てきた生徒も3名。こちらも何となく予想でき玄人先生が対応していた。元気に歩いている一方で、ちょっとグレーな部分が見えている。これが現状。降りてくる集団に少し間隔が開きだした頃、硫黄岳を目指して行く。しばしここで足踏みだった。

 
 元気でいいのだが、本音は辛いのは挨拶。こちらは全ての生徒に対応せねばならない。何十回「おはよう」と言っただろうか。それでも彼らのためにも元気に挨拶を返す。集団の最後に、教職においても山においてもベテランらしい先生が居た。顔を見るなり、「ご迷惑をかけてすみません」と言われる。出来た配慮である。ガレの中の石畳を登って行くと風がかなり強くなり、外気温を見ると10℃を示していた。二男はたまらず上着を着込む。こちらは山屋の意地を見せて薄着のまま。ケルンを追うように高度を上げて行く。夏沢峠まででも一人追い抜いたが、硫黄岳までにも単独のお年を召した女性が3名居た。話しかけるとその全てで品が良い。心も懐も余裕のある方々のよう。たまたまなのかもしれないが、このエリアに入山する方の質の良さを感じたりした。

 
 硫黄岳到着。前回登頂が2004年の2月。エビの尻尾がびっしりとあった山頂は、今は夏。赤岳側はガスが濃く、茅野側も雲が発達してきていた。予報通りの天気になるよう。二男に足の調子を聞くと、少し違和感が出てきたようで、天気やらそれらを加味しても、ここまで。火口縁を東に進んで三角点だけ拝んでいこうと考えた。緑のロープで歩ける場所が決められている。北側は怖いほどにクラックが入っている場所があり、凍結での膨張、積雪、強雨などで侵食と崩落が進んでいる場所のようであった。途中に祠があり、草原地形の中にポツンとある風合いがとても印象深かった。ザレた地表にちらほらとコマクサも見えている。淡いピンクの色合いが、疲れを解してくれているよう。

 
 進んで行くと緑のロープは向かう先に対し縁が結ばれ通せんぼとなっていた。植生保護か、もしくは危険防止か。足元の花株があるかと注意してみると、特に見られない。後者か・・・。少し逸脱して三角点を拝む。ひっそりと立つ三等点。三角測量するには申し分のない場所であった。こちらから見る硫黄岳最高所側の絵もいい。登山道下の火口縁は堆積した溶岩と、その上のケルンとで、面白い造形美を見せていた。静かな三角点側から、賑やかな最高点側に戻る。先ほどの女性が声をかけてくれる。「何処に行ってきたの」。「あっ、三角点までです。この先には進まないのですか?」。「ええ、ここまででオーレン小屋に降ります」。極めて優しい会話がされた。

 
 ザックを降ろし、保温ケースから取り出したそれのプルタブを起こす。年月が経過し、いつしか息子と山頂でビールが飲めるようになった。やや寒く、350を開けたものの半分くらいでいいような気温であったが、いろんな意味で美味しく飲み干す。横岳側から赤岳鉱泉側から、続々とハイカーが登ってきて山頂が賑やかしくなってきた。さあ次は野天風呂。気持ちはそこに向いていた。混んで居なければいいが・・・。

 
 夏沢峠に向かって降りて行くと、まだ生徒集団の姿が見えた。やはりあれほどの集団行動になると、ひとつ行動をするにも時間を要すよう。それでも見下ろしている間にオーレン小屋の方へ降りて行った。本沢温泉側へ降りていったらどうしようと思っていたが、早々に混雑する登山道は回避できていた。どんどんとカラフルなハイカーが上がってくる。ハイシーズンを体感する。

 
 ヒュッテ夏沢内では、中学生を送り出したスタッフが遅い朝食をされていた。大人数に対応であったからさぞ疲れたであろう、そんな表情があった。休憩を入れず本沢温泉へ降りて行く。二男は少し足に違和感が出てきたよう。先ほどのアルコールがいけなかったか、アルコールを飲むと如実に関節に悪さをする。それより下りということが大きいか。少し距離がありすぎたか。でも守りに入って歩かねば、膝の周りの筋肉は発達しない。愛の鞭的荒療法でもあった。それにしても緩やかなルート。

 
 野天湯への分岐から降りて行く。女性を含めた3名が入浴していた。狭くして申し訳ないとは思ったが、上がるまで待っている時間はなく、かまわず入って行く。ぬるかった以前の記憶がウソのように暖かく快適。こんなに良い湯だったとは・・・。静かに入っていると先客の3名から、「良かったら飲みません?」と日本酒を戴いた。二男と分かち合いながら、雲上の極楽湯を楽しむ。見上げると、硫黄岳の上空の雲が早い。風も強くなっているよう。そうこうしていると、ご夫妻らしき方が来られ、待機しだした。混浴なので入ってくればいいと思うが、この狭さはやはりハードルが高いのか・・・。気持ちよく入れたのでヨシとして場所を明け渡す。

 
 硫黄泉後のスッキリさが、清涼飲料水を飲んだ後のような爽やかな気分となった。そよ風もあったせいかもしれない。本沢温泉に立ち寄り入浴料金を支払おうと声をかけるが姿なし。小屋前にはこれから硫黄岳山荘まで向かう親子が居た。柔道家の吉田秀彦さんそっくりの方だった。子供は小学生低学年くらい。こっちの子供はかなりでかいのだが、どちらの親も同じように楽しそう。山荘を後にする。

 
 降りて行くと、建設中の場所では大工さんが働いていた。往路で見た煙草を吸われていた方であった。地元の方であろうが、麓には降りず、出来上がるまでここで寝泊りして仕上げる事になろう。汗をかかぬ程度のスピードで、まったりと戻って行く。テン場を通過時に見上げると、そこに居た人は野天湯でお酒を下さった人が居た。頭を下げつつ通過して行く。

 ガスがだいぶ垂れ込めるようになり、湯川を挟んだ対岸は全く見えないほどとなった。何時に出発したのだろうか、登って来る人も多い。温泉目的なら、別段遅い事にはならないのだが・・・。家族三世代だろうなんて集団も見え、微笑ましい限りのすれ違いもあった。ゲートが近くなると、前方からエンジン音が上がってきていた。本沢温泉に荷揚げするキャタピラー付きのカーゴであった。時速1.5キロほどで、本沢温泉まで行くには1時間以上はかかるように見えていた。でも、ヘリでの荷揚げはしていない場所、これなくして成り立たないのだろう。カーゴの上にはダンボールが30ほど積まれているのが見えた。

 
 ゲートに到着。駐車スペースの車は5台になっていた。なかには工事用のダンプトラックも上がってきており、その走破性に驚いた。途中で行き合ったガテン系の方が運転手のようだったが、建築中の建物に関わる人だったよう。歩き慣れない山道を作業用のニッカボッカをたなびかせながら大汗をかきながら登っていた。無事予定終了。火口壁を見上げ、火口縁を歩き、野天湯に浸かり、そしてしっかりと避暑が出来た。結局、自分が一番楽しんだのかも・・・。

 

chizu1.jpg

chizu2.jpg 
                          戻る