前黒法師岳 1943.2 m
2013.1.5(土)
晴れ 単独 寸叉峡温泉Pより 行動時間:7H4M
携行品: 12本爪
@寸叉峡駐車場5:24→(36M)→A登山口6:00→(58M)→B林道に出る6:58〜7:05→(29M)→C栗ノ木段7:34→(69M)→D白ガレの頭8:43〜47→(62M)→E前黒法師岳9:49〜10:00→(31M)→F白ガレの頭帰り10:31→(40M)→G栗ノ木段帰り11:11→(14M)→H林道帰り11:25〜28→(28M)→I登山口帰り11:56→(33M)→J寸又峡12:29
@ロータリー前駐車場からスタート。 | 天子トンネル内は、夜でもライトがあり明るい。配管に流れの音があり、それが大きく不気味。 | 飛龍橋を渡って左折。 | A登山口の最初はガレている。 |
湯山集落跡を通過。この付近から湯が沸いていたそうな。確かに薄く匂う。 | B林道に出る。 | B小屋は開放的(笑)。それでも内部は綺麗。 | B僅かに下り登山道へ。 |
C栗の木段 | C三等点 | 1300m付近。南からの破線の合流点付近だが、その道形はよく判らなかった。 | 1440m付近。雪がちらほら。 |
1600m付近。雪の下がほとんど凍っており、かなり厄介。我慢して爪を着けずに這い上がる。 | D白ガレの頭。標高1640m付近。 | D進んで行く側に、スクンと円錐形が見えている。 | D白ガレの頭からの展望。 |
1830m付近。急峻地形。 | E前黒法師岳山頂。南南東側のみ開けている。 | E本川根町の標識が立派。付近山域において、その存在はありがたい。 | Eおなじみ、お団子標識。 |
Eキャップ標もしっかり。 | E三角点も顔を出していた。 | 1920m付近。雪がある場所は下山が楽。 | F白ガレの頭帰り。地面はコチコチ。凍った場所も多く、そのままアイゼンで降りて行く。 |
F白ガレの頭からガレを見下ろす。 | G栗の木段帰り。 | 栗の木段から林道までの間は、展望尾根。 | もうすぐ林道。北側はガレ斜面で展望がいい。 |
H林道帰り。 | 湯山集落最上部の石垣。 | カモシカの出迎え。 | 湯山集落中心。 |
水受けなどが残っている。 | 林道への最後は、慎重に・・・。崩落箇所、落石も見られる。 | I林道に降り立つ。 | 飛龍橋を渡ってゆく。 |
夢の吊橋。手前に渡ってゆく人が見えている。 | ゲート帰り。管理小屋には番人常駐。 | J駐車場到着。非常に狭い駐車場で出易い場所に停めたい。 |
前日、朝日岳を登り終え、寸又峡温泉に向かっていると携帯が震えてメールを受信していた。こんな山の中でも受信できる事を凄いと思いつつ、たいして気にとめず中身を見ることをしなかった。風呂上りに見ると、見慣れないアドレス・・・。開くと不幸の知らせで、葬儀の段取りが記されていた。一瞬、「見なかったことに・・・」などと思ったが、子供じゃあるまいし大人の対応をせねばならない。明日が通夜、明後日が告別式。しかし明後日は池田町(長野)にお見舞いに行かねばならないので、明日の行動がキモとなった。
寸又三山をいっぺんにと思った計画が消えた・・・。前黒法師岳と沢口山を同じ日にと思っていたのだった。でも、生きていく中にはいろんな事があり、しょうがない事。あまり使いたくはないが「山は動かじ」とも言う。実際には山は動いている。現に登山禁止になる山もあるじゃない。風呂上りのビールを煽りながら、予定をきっちり練り直す。遊び優先から時間優先で明日は行動せねばならない。13時までに降りられれば、18時の通夜時間に間に合う・・・。
アルコールで温まった何時間は良かったが、車の中でも寒さで目を覚ます。車内でマイナス5度。この山塊の高みに居た人はマイナス15度くらいを体感していただろう。4時頃スタートしようと思ったが、ブルッとしてシュラフに包まり、5時に動き出す。生姜入りのスープを飲んで体を温めた後、車をバス停のある側に移動する。昨日は100パーセントに埋まっていたその場所は閑散としており、一番出易い場所に停めさせて貰う。
5時24分。カモシカのオブジェの前をスタートする。やけに寒い。すぐに温まるだろうと思ってスタートしたが、指先も頭もジンジンとしており、すぐにフル装備で防寒をした。ゲートの先は普通の舗装路でもあるが、散策路でもあり掲示物も多い。それらがヘッドライトに反射し、そこに描かれているサルやカモシカが生きているかのように浮き上がる。天子トンネルは蛍光灯で内部は明るく、24時間明るくなっているようであった。ただし天井を這っている配管から、時々奇怪な音が聞こえる。最初は判らず気持ち悪かったのだが、どうも頭の上を流れが通っているようであった。歩きながら、帰りは時間があったら夢の吊橋を通ろうと思っていた。
飛龍橋を渡るとY字路となり、左の道を選んでゆく。湯山の集落の事前情報を得ていたので、こんな場所に住んでいる人が・・・などと周囲を見ていた。もっとも、その昔は大間ダムは無かったろうから、大きく変わってしまってはいるだろうが。そして登山口。やけにザレた入口で、この先もルートが荒んでいるのかと思えたほど。ゆっくりと足を乗せてゆく。
その先に続く登山道は一級の道であった。西に進んで小尾根に乗った場所で、鼻腔に何かが匂ってきた。これは硫黄。湯山の源泉地が近くに在るということか、西にある谷側からその匂いがしてきていた。緩やかな九十九折を行くと、目の前に「湯山集落跡」と書かれた看板が現れる。普通に、この高度のこんな場所に・・・と思えるような場所。良く例えられる言葉に、「日本のチベット」と言うが、ここもそんな場所であった。現在は乾いた景色があり、水などはどうしていたのだろうと思えた。少し上に行くと石垣が多く見られ、水受けが残っていた。谷の方からの引水か・・・。この集落跡から先は、大きな九十九折で高度を上げて行くので至極歩き易い。林道はいつになったら・・・と、なかなか現れないその場所にイライラする。ここはエアリアのコースタイムに余裕を持たしていないようで、表示同等時間で林道に飛び出す。
林道のその場所には、西側の窓が無い開放的な小屋がある。そのわりには内部は綺麗で、荒んだ様子は外見だけであった。西に少し下り、山道に入って行く。この先は尾根道。北側がガレていて展望尾根と言える場所。足元には獣よけの送電がされている。ただし過去の物。各所で壊れていた。尾根歩きと言っても、時に大きな九十九折で高度を上げて行く。やや曇っていた空が、背後から明るさを増してきていた。曇りから晴れに・・・。
栗の木段は、雑木林の斜面の一部。三等点がひっそりと立っていた。この先はブナとシャラの混合林。特にシャラの木肌の色が目に眩しい。標高1300mm付近は、南からの道との合流点であるが、いまひとつその存在は判らなかった。1400m付近で雪が出だし、1500m付近で完全にその上に乗る。この辺りは、前日ここを歩いたハイカーに情報を貰ったので、それと合致していた。御仁の単独トレースがアイゼンを着けた刃跡で続いていた。イワカガミの群生地を前後して、かなり凍った場所が増えてきており、やや危険を感じるようになる。それでも騙し騙し行ける所まで着けずに行く。
1640mで前方が開ける。ここが白ガレの頭と呼ばれる場所。覗き込むと南側がガレ落ちている。そのおかげの展望が有る場所。ここから僅かに進んだ場所でアイゼン装着。凍った登山道の上をガリガリと刃音をさせながら行く。氷の悲鳴か、はたまた刃の方の悲鳴か、ギュッというかん高い音が足を置くたびにする。この音がまた、歩いている感を増させてくれる。
1830m付近からの急峻地形。この辺りは木々に捕まるようにして足の歩行の補助をする。時計を見ると、8掛けぐらいで歩けるかと思っていた自分が情けなくなる行動タイム。相変わらずエアリアの表示時間に添っていた。帰り時間があるので気持ちが焦っているのか、頑張っているのに反して時間がかかっているようにも思えていた。1900mを越えると、積雪量は20センチほど。前日の朝日岳と比べると、標高差でほぼ比例する。帰りのことを考えつつ、足を置きやすい位置にトレースを残し、幾許かでも早く戻れるような工作をして進んでいく。
前黒法師岳到着。南南東の一部方角のみ切り開きがされていた。しかし今日のその方向は雲が垂れ込めていた。黒法師岳側への尾根へは踏み跡は皆無。さすがにこの時期だと、居ないか・・・。三角点は辛うじて雪から顔を出していた。お団子標識の横には、おなじみのキャップ標がかかっていた。「標」と言っても山頂名を記していないが、そこに見えるスマイルマークは、在って朗らかになる。下山を10時と決めて10分ほど休憩とする。連日風が無かった。外気温こそ低かったが、風の部分は味方してもらっていた。さて下山。
トレースを追うように刃にものを言わせて降りて行く。白ガレの頭まで戻り一呼吸、その先イワカガミの群生地の先辺りまで進み刃を外す。本当は木の根が蔓延るような場所もあり、刃で踏むのが憚れる場所であった。自然に優しく・・・それが基本。途中、昨日の朝日岳がデンと見える。朝方は上部にガスが乗っていたが、この時間になって姿を現したよう。
栗の木段が近くなった場所に、ふと見ると図根点の表示が在った。あまり図根点に関してのこれらは稀であるが、そこには「空中写真測量」とあり、図根点も航空測量がされることを初めて知る。そして栗の木段通過。痩せ尾根を獣よけの送電線に注意しながら降りて行く。展望尾根だと快適。やはり山は展望か。
林道に降り立つ。喉を潤し、アウターを一枚脱ぎ、だんだんと下界の人の服装に近づいてゆく。降りだすと、先のほうにカモシカのお出迎えがあった。警戒音なのだが、こちらに向かって何度も・・・。話し掛けてくれてるようでもあった。静かに距離を詰めて行く。20mほどになり彼は逃げてゆく、いや彼女であった・・・。湯山の集落跡を通過し林道への最後は、ロープに捕まりながら慎重にガレを降りる。建設用の足場が組まれているが、そのステップの一つに大きな落石が命中していた。そんな場所。林道に降り立つ。
林道に乗ったが、もう12時が近い。吊橋は端折らねばならない。13時から旅館の湯が利用できるはずであり、何も無ければ吊橋を通過すればちょうどいいような時間であったが、この先の行動は自分で決めたこと、初志貫徹で時間重視。飛龍橋を渡って戻って行く。天子トンネルを潜ると、先の方にハイカーが居た。追い抜き様に、話をふっかけるように「光からですか」などと聞いてみる。もしかしたら崩壊・崩落林道を通過する猛者が居るのではないかと思ったから。どうやら大無間からの縦走者のようであった。ややぶっきらぼうな応対で山屋らしい無骨さを感じる。背中には100リッターほどのザックが背負われていた。温泉街が近づくと、散策者の姿が多くなる。不思議と挨拶をする人が多い。山ブームで、このような場所での挨拶が定着したってことなのかと、少し嬉しく思ったりした。
ゲート前のブースには、常駐の監視員が居た。ここで出入りを見ている様子。このためだけに一日居るのも苦痛であろう。頭を下げながら通過して行く。そして駐車場に到着。前日同様に満車であった。すぐに着替えて帰路につく。途中、温泉に寄ったが、何とか予定時間30分遅れほどで帰着となった。