丸山 1554 m
2013.9.14(土)
晴れ 単独 信濃沢橋よりピストン 行動時間:3H49M
@信濃沢橋5:34→(9M)→A右岸側終点地5:43→(110M)→B1390mピーク7:33→(24M)→C丸山(行き過ぎて戻る)7:57〜8:06→(51M)→D1180尾根からの下降点8:57→(25M)→E右岸に降り立つ9:22→(1M)→F駐車スペース9:23
@信濃沢橋から信濃沢右岸を詰めて行く。 | 右岸の道形。途中崩落箇所があるため、通行止めのテープがされている。 | 先に進むと廃小屋があった。昼間でも暗い場所。フラッシュを焚いてやっと内部が見えた。 | A右岸の道形の終点地。古いタイガーロープで塞がれている。 |
山手側に上がると、屏風のような岩壁が立ちはだかる。東側を大きく巻いて登る。 | 1070m付近のガレた斜面。かなり足をとられる。 | 1200m付近で尾根に乗る。 | 急峻の尾根。 |
急峻を経てのなだらか斜面は快適。 | アセビの中の快適ルート。 | この日陰なら夏場でも涼やかに歩けるだろう。 | B1390m峰。顕著なピークがある場所。 |
ササ枯れが目立っていた。 | C丸山。人工物は一切無し。 | C丸山東側。 | C丸山でヤキソバパンが撮影されるのは初めてだろう。 |
Cシカの仕業・・・。 | C丸山からの下山側。 | 下山途中から南に見える主稜(側。 | 1350m付近に残る林業作業のワイヤー。 |
1200m付近。急峻地形が続く。 | 1180mで、伝って来た主尾根を離れ北側に進路を変える。この先はリボンが導く。踏み跡あり。 | 1130m付近の少しややこしい岩斜面。通過して振り返る。 | 下に右岸側の道が見えている。左に堰堤。ここの最後は要注意。 |
D降り立った場所から上流を見ると、黄色いテープが道を塞いでいる。塞いでいるのには意味があった。 | D降りてきた斜面。取り付き難い斜面。最初の5mほどが足場が流れる。上に行けばピンクのリボンが続く。 | 橋のたもとに出る。見えているのが中津川林道。 | E駐車余地の様子。夏は日陰で都合が良い。 |
「松尾尾根」と検索をかけても、出てくるのは鈴鹿山系の釈迦ヶ岳へのアプローチに使う松尾尾根が大半。群馬・埼玉・長野の三国境にある松尾尾根を指摘する人は、よほど昔からの山屋となるだろう。2.5万図は居倉の図内には、今でも破線で尾根をトレースしてある。改訂がどれほどされていないかの裏返しではあるが、廃道で間違いない場所。中津川林道開通の弊害とも言えるのかも知れないが、三国山が新三国峠からサッと登れるようになった今、わざわざ・・・という事になるだろう。この松尾尾根の途中にある1554標高点が、丸山となる。この名前も日本山名事典でしか出てこない名前。よって、その名前を聞いたところでピントが合う人はほとんど居ないのではないだろうか。今回はここを目指す。
8月31日、大山を踏んだ後に目指そうと思ったが、意外に大山も負荷があり、ハシゴ登山とはならなかった。そして今回踏んだのだが、当日狙わずに良かったと思える負荷を松尾尾根で体験した。下からの距離が2キロほどと舐めてかかると、意外としんどい。この丸山、以前は三国山側から「下って登頂しよう」と思っていた場所であった。それには中津川林道が不通な時もあり、そこを気にして入らねばならないのなら、新三国峠から入ってしまった方が障害が少ないと思えていたから。でも今年は問題なく通れる年。これが判ったので、下から登ってアプローチすることにした。
1:40家を出る。秩父市内は深夜でも一時停止を監視している場所がある。リスク回避で462号から299号と繋いで、志賀坂峠から林道で八丁峠を結んで中津川林道に出た。八丁峠には両神山へ登る方のテントも見られた。白井差に変わる人気の登山口になっているよう。中津川キャンプ場を過ぎ、ダート林道を土煙を上げながら進んでゆく。今日もまだセダン。最低地上高が気になるが、前回通過しているので、カーブの大きさと起伏は学習している。アクセルとブレーキを使い分け、入山口とした信濃沢出合に到着する。駐車余地は8台分くらいある。信濃沢橋を渡ると、さらに2台分ほどスペースがある。ここで夜明けを待つ。林道の場所によっては携帯が通じるのだが、この信濃沢橋付近はまったくダメであった。
5:34行動開始。信濃沢橋を渡って行き、信濃沢の右岸側に歩道がある。地形図にはこの道が破線で描かれているよう。しかし20mほど進んだところで、黄色いテープで進路が塞がれていた。その意味は先に進むと判る。道が崩落して、かなり古い木橋があるのだが、通るには厳しいほどに朽ちてきていた。タイガーロープが渡され、それを掴みながら恐る恐る通過する。薄暗い樹林帯の中を行くと、ドキッとするくらい陰湿な作業小屋が見えてくる。中から目でも光ろうものなら、引き返したくなるような様相だった。中に獣がいてもおかしく無い状態。カメラのフラッシュを焚いて中を確認する。裸眼では見えないほどの内部の暗さであった。その小屋を左に見ながらさらに進む。しかし小屋の先僅かで道形は途絶えた。
地形図を見るに、かなり急峻な場所に破線が見える。その場所を探そうと斜面を見るも、それらしい踏み跡はない。そもそも、今居る場所が、地形図に見えるその場所なのかも判らない。小屋まで来てしまうと進み過ぎているのか・・・。そう思いつつも斜面に取り付く。と言うのも、そのまま右岸を進むことは出来ない地形となっていた。それを示すように、古い古いロープが道を塞ぐように横切っていた。斜面はかなり足場が緩い。這い上がってゆくと、目の前に屏風のような大岩が立ちはだかる。バンドがあり岩登りが出来そうな場所だが、日が入らず、湿っていて滑りそうな場所に思えた。東に戻るように岩壁の基部を巻いてゆく。すると小谷形状の場所となり、そこを登って行く。ザレた岩が在り、ここも足場が流れやすい場所で、踏ん張るのに疲れる場所であった。何処でも登れる広い地形であり、適当に登って行く。途中から右に見える小尾根に乗り上げ、やや急峻の尾根をゆっくりと上がって行く。
道が在った場所であり、もう少し道形が見えている(くる)場所と思っていたが、現地はそうではなかった。既に最初からルートを大きく外しているのだろうが、そのルート入口がまったく見えてこなかった。急峻が終わりなだらかになると、本当に楽に感じるようになった。それほどに急峻だったとも言える。しばらく聞こえていた信濃沢の水音も消えると、周囲にアセビが多く見えるようになってくる。陽射しはほとんど入らないような樹林帯の中、そう思ってみると道形なのだろう跡が1300m付近から見えてくる。道が在った名残がやっと見えてきたのかと喜ぶが、見えているものに対しこれほどまで消えてしまっている事実に驚く。そう思うのは、ここは下草が無い場所。道が草に埋もれる可能性が少ない場所で、これほどに消えるものなのかが不思議に思えたのだった。
1390m付近に顕著なピークがある。人工物が一切無い中での目印の場所となる。この付近からササ枯れが目立つようになる。シカの警戒音も聞こえ、糞も見える。下草の無さは、シカとササ枯れのダブルパンチか・・・。時期的なものだろうが、かなりクモの巣の洗礼を受ける。それほどに誰も入っていないことが体感できる場所。視界が開けないので、周囲から現在地を判断することが困難な尾根だった。この点からは、やはり人気のないルートとなろう。登っていて景色が楽しめないルートは、どこにおいても廃れてゆくきらいがあるように思う。
とある高みを越えて、下り勾配になる。何となく「丸山を越えたか」とも思ったが、丸山と判断できる要素が何もなかった。高度計も出発時に合わせていなかった。降りて行き、鞍部まで40mほど高度を下げた事、そして唯一ここに来て視界が開け、県境の主稜側が見えたこと。そこに見える地形により、丸山を通過してきたことが判った。下ってきた道を登り上げる。たかが40mの高低差だが、行き過ぎて損した気分になると、辛く感じる登りであった。
丸山到着。確認のためにGPSで確認すると、間違いなく目的地を示していた。KUMOがあるかと思って予想したが、具に探したが見えてこなかった。人工物の一切無いピークとなっていた。樹木の生い茂る山頂で、西側に少し空間がある場所があり、腰掛けるのにちょうど良い木が横たわっていた。1時間ほどで着くだろうと踏んでいたが、意外にかかってしまった。ゆっくりと歩いたつもりもなく、それなりに負荷のあるルートと判る。このまま三国山まで抜けるとなると、4.5〜5時間ほどと予想できる。侮れないルートと判る。展望が無いので長居に適した場所ではなかった。ヤキソバパンを食べたら下山に入る。
下山時に感じたのは、北の信濃沢側にいくつも誘い込まれやすい枝尾根があること。ここくらいの地形なら誘われてもいいが、このくらいの往路の尾根をトレース出来ない力量も情けないと思い、しっかり主尾根を拾って行く。特に急峻地形では要注意だった。北に下る尾根の方が緩やかで、その方が歩きやすいと判断してしまう場所が出てくる。甘い誘いを断ち切り、厳しい方に足を下ろしてゆく意識がここでは必要であった。高度を下げてゆくと、林道を通過するオフロードバイカーのエキゾーストノイズが聞こえてくるようになる。林道に向かっている安心材料ではあるが、その人工的な音は、奥多摩の山に居るかのようであり、やはり山歩きの趣がなく無い方が絶対にいい。
1390m峰からは往路の尾根を左に見送り、東に進む尾根に入る。少し降りて行くと、林業作業跡のワイヤーが残る場所に出てくる。往路で見た小屋とこのワイヤーが結びつく。そして幾分か道形が判るようになってきた。尾根を薄い踏み跡に従って降りて行くと、1180m付近で、ピンクのリボンがマーキングされ、道の在り処を示していた。ここから尾根を離れ斜面の道形に足を乗せて行く。薄い踏み跡を伝って行くと、長い間隔だがリボンが導いていた。この場所が破線ルートなのか・・・そう思いつつ確かめるように伝って行く。
1130m付近。道形がぼんやりし、やや外していたのだろう岩壁の上となった。壁と言っても苔生した土も堆積しているような場所で、完全な壁と言うものではないが、やや滑りやすい岩場の危険地帯。高低差7mほどを慎重にクライムダウン。下に行くと、また踏み跡に乗った。今ほどの危険地帯の場所で、何処に踏み跡が巻いていたのかが判らなかった。しかし途中で破線とは違う場所を伝い出す。旧道に対する新道なのか、ピンクのリボンが長い間隔を置いて導いている。足元の道形は、まことに薄くすぐに外してしまいそうなほど。地形図に破線が在る事から、道を伝いたいと思うのが普通。ただしここではそれを意識すると、「難しい場所」との判断になる。道が無いと思ったほうが、楽に歩けるような気がした。
信濃沢の水音が強くしだし、下の方に右岸の道が見えてくる。クネクネと相変わらず薄い踏み跡を伝って行くと、その右岸の道に対し、残り7mほどの標高差の場所が崖のようになっている。タイガーロープがあるわけでもなく、最後の最後で慎重を要する場所となっていた。木々を掴み、岩を掴みながらクライムダウン。そして無事ランディング。伝って来た場所を見上げるも、「ここが入山口」とは思わない。じつは、往路に斜面に見えるリボンは目に入っていた。しかし急峻な場所にあり、登路を示すものとは全く思わなかった。しかしそれが登路を示すものであった。中津川林道に出ると、その前をカップルが乗る四駆が通り過ぎてゆく。このダートは四駆が似合う。
帰路、中津川温泉に立ち寄る。対岸のキャンプ場内に、20代と思しき男女が50名ほど居た。東京からの企画参加者のようであった。自然回帰か、山ガールブームもそうだが、今の若者は自然に飢えているのかも。なんて思うのだった。
ポイントは、信濃沢橋を川上側に渡ったら右岸の道形に入り、15〜20mほど進んだら左手上の斜面に取り付くこと。現在ならリボンが下がる。ここを外すと、道形にありつけない。距離こそ短いが、迷い尾根も多い。適時マーキングも必要な場所。補助用に20mほどのロープを持った方が無難かもしれない。