真砂嶽   2400 m             御前峰   2702m

 


 2013.9.21(土)〜22(日)    


21日
  
 晴れ     同行者あり       砂防新道より真砂嶽      行動時間:10H07M 


22日

 晴れ     同行者あり       転法輪の窟経由、観光新道で下山    行動時間:6H57M。


 携行品:3日分幕営装備 9mm-40m ハーネス他


・21日

@市ノ瀬4:20〜5:00→(13M)→A別当出合5:13〜17→(40M)→B中飯場5:57〜6:06→(69M)→C甚之助避難小屋7:15〜24→(57M)→D黒ボコ岩8:21〜26→(28M)→E室堂8:54〜24→(107M)→F中宮道への分岐10:11→(33M)→G2416高点10:44→(47M)→H真砂嶽12:31〜13:51→(56M)→Iお花松原上雪渓14:47

・22日

Jお花松原5:30→(60M)→K中宮道分岐6:30→(35M)→L室堂7:05〜15→(24M)→M御前峰東ケルン7:39→(9M)→N転法輪の窟7:48〜57→(24M)→O御前峰8:21〜24→(20M)→P室堂帰り8:44〜9:18→(54M)→Q殿ヶ池避難小屋10:12〜20→(97M)→R別当出合11:57〜12:10→(17M)→S市ノ瀬12:27


jyousya.jpg  bextutoudeai1.jpg  turibashi.jpg  nakahanba.jpg
@5時ちょうど、市ノ瀬からの1番バスが出発。20分前くらいから並ぶと確実に座れるよう。 A別当出合 A砂防新道で登る。 B中飯場で休憩。
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C甚之助避難小屋も綺麗になり水洗トイレに。 Cベンチはハイカーで賑やか D黒ボコ岩到着。 D色づき始めた上層域。
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E室堂到着。 千蛇ヶ池にはたくさんの雪が残り。 F分岐からお花松原側へ 左に2416高点の岩峰が見える。
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2416へ向けてトラバース。 G2416高点 一度登山道に下りてから、細い谷を選んで真砂嶽側に登る。 H真砂嶽。一部ハイマツが切れている。
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H真砂嶽から剣ヶ峰と大汝峰。 H地獄尾根と火の御子峰。 Hその昔は竜峯とも呼ばれていたよう。 H真砂嶽からお花松原。
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H白砂のこんな場所もある。 谷を使ってお花松原に降りて行く。 I雪渓の下で幕営 I素晴らしく美味しかった・・・。
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J単独の女性ハイカーのテントも加わり賑やかに。

    
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朝焼けが見事 荘厳 Jアオノツガザクラがここでは満開であった。 J月を目指すように登って行く。
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途中で来光を迎える。 この展望があるから山に登っている様な・・・。写真の女性は、単独で中宮道を上がり、加賀禅定道を降りて行った。強い!! すばらしい景色に、どんな猛者も足を止める。 K分岐帰り。
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千蛇ヶ池は全面氷結。 L室堂に荷物をデポして、転法輪の窟に向かう。 M御前峰の東側に、大きなケルンが作られている。ここから南東の尾根筋を伝って行く。もう一つマーキングが出てくるが、標高を下げすぎないのがポイント。 最初は草地だが、次第に急峻になってゆく。
tenpourinnoiwaya.jpg  ojizousama.jpg  iwayakara.jpg  migihe.jpg 
N転法輪の窟到着。風を避けた素晴らしい展望地。 N美濃地震により内部が崩落したと言われている。 N窟から見下ろす転法輪谷 帰りは北側を巻き上げて行く。
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北側はザレた急斜面の谷。無難な通過は南側のよう。 御前峰山頂側に登って行く。 O僅かに場所を違えただけで、これほどの賑わい。御前峰山頂。 O久しぶりにご対面。一等点。 
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O剣ヶ峰側。 Oここまでの無事に感謝し拝礼。 O室堂側。  P室堂に戻る。
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P大人なジュースで乾杯。 途中から砂防新道側。 蛇塚で小休止。 Q殿ヶ池避難小屋の場所は、建て替えの為さら地になっていた。
toogaikekara.jpg  hudoudaki.jpg  bextutoudeai.jpg  ichinose.jpg 
観光新道も賑やか・・・。 途中から見る不動滝。 R別当出合に到着。 S市ノ瀬。路上に溢れんばかりの車。駐車場から下の路上は登り車線がハイカーの駐車で長く埋まっていた。



 昨年までは、一番重き目標を小槍においていた。おかげさまで登頂をさせていただき、次なる目標は白山山系の秘峰に定めた。ここでは火峰と言うのが正解なのかもしれない。福井の我が師匠も2度のチャレンジをして届かず、北陸の猛者にしても、踏んでいる人は稀。国内の記録として唯一明細に見えるのが、旧松任風露山岳会のH氏の記録。これを何度も読み返しては、頭に叩き込んだ。

 
 ここは単独ではリスクが高い場所。山中山岳会の
I氏にパートナーをお願いして挑むことにした。じつは前年度も狙ってはいたが、天気と都合により2回のアタックチャンスは流れた。今年も、8月9月と悪天により2回流れ、3度目の正直に好天に恵まれる格好になった。この間、福井の師匠が残雪の状態を下見くださったり、各情報を集めてくださった。「最初は下見程度に思い、無理はしないよう」と言われるも、これら配慮に是が非でも踏まねばならない・・・そんな気持ちも強くなっていた。登頂しているH氏とメールも出来、記録に書かれていない情報も入手する。一応は準備万端。

 
 2日で決着をつけることにして、3日目は予備日。3日分の食料と9mm40m他岩装備、3人用のテントをザックに詰め込んで見事に膨れ上がった。月齢もよろしく、ヘッドライト無しで夜歩きが出来そうなほどにタイミングもいい。自然のお膳立ても十分。太平洋岸側の台風発生も見えていたが、日本海側への影響は無し。最後の運を決めるのは、やはりヤキソバパンが入手できるか否か(←そこかい!!)となるか。

 
 前夜、そわそわしながら仕事を終え、おにぎりを助手席に置いて食べながら上信越道に飛び乗る(20:00)。さすがの三連休、やや流れも多く抜きつ抜かれつしながら北陸道に入る。トンネル群を進んでいると電光掲示板に嫌な知らせが表示された。「通行止め」。富山西から先で封鎖されているとの事。そこまでは45分くらいあり、そのうちに開くだろうと楽に思っていたが、事故処理は長引き、結局23:45に富山西インターを降りるはめになった。インター前にはズラッとトラックが並ぶ。当然、あと15分待てば休日割引料金。私も待とうかと思ったが、15分は長い。平日料金で徴収され、地走りして小杉インターから再び北陸道に乗る。こんな場合、JHの配慮とか何かならないのか・・・懐に辛い不可抗力。

 
 金沢西インターで降りるが、白山に近いのは白山インター。新たに追加されたインターチェンジ。さあヤキソバパン探し、157号沿いのコンビニに立ち寄りながら入手を試みるが、大ブームになっている(本当か?)関東に対し北陸ではブームが来ていないようで、2軒寄っても置いてなかった。最後に、日ごろは寄らないサークルK
に入り、マルちゃんから出ているヤキソバパンを入手。手に入ったものの、今日は厳しい山行になるような予感。もう完全にヤキソバパン占いになっている。手取りダムに上がり白峰に入り、市ノ瀬の登山基地に向かう。懐かしいワインディング、いつぞやは深夜でもごみ収集袋を配っているゲートもあったことを思い出す。

 
 1:45市ノ瀬到着。赤く発光する警棒を持つ二人の係員が交通整理をしていた。駐車場には30台ほどが停まっていた。静かな奥の方を選んで駐車する。窓から見える空には、星と真ん丸い月があった。それを見ながら仮眠に入る。しかししかし、人間の習性なのか、日本人の習性なのか、並んで車を停めるクセのある人が居るようで、広い駐車場において我が車の横に停めた方が居られた。そこからが最悪、私は物好きで数えてしまったのだが、車を寝台車に切り替えるのに、ドアの開け閉めを54回した。外気温は16℃、確かに涼しい気温で閉めたくなるのは判るが、迷惑千万で羊が一匹・・・と数えるようにはいかなかった。彼らが寝静まったあとに静かに車を移動。作業している途中では嫌味に思えるだろうから・・・。しかし、移動した先でも同じようなことが・・・。ここは駐車場、これが登山基地の駐車場と我慢する。

 
 奥の方に停めたのだが、警棒を持った警備員がどんどん奥の方へ移動してきた。そこで、「何時くらいから並ぶとスムースに1番バスに乗れますか」と聞くと、「20分前くらいかな」と言う。それに合わせて準備する。外で最後のパッキングをしていると、本日の同行者であるI氏がやってこられた。顔の見えない闇の中だが、声からは快調の様子が伝わってきた。氏は前夜から来ていたようだ。沢山の車に紛れて気がつかなかった・・・。


 5時始発20分前からバス停に並ぶ。ベンチに座りながら
I氏と懐かしい山談義。周囲は静かにそれを聞いている恰好。そこへ、「やぁ」と肩を叩く御仁が・・・。福井の我が師匠も駆けつけてきてくれた。師匠は今年4回目の白山、その中でも目指す地獄尾根はやはり別格の位置付け、我々のアタックに対し気にしてくださっていた。400円で切符を買う。この切符は下車するときに徴収されるので捨ててはならない。バスは定刻に出発。師匠の参加で歓談しながらバスは別当出合に向かって行く。月明かりでのシルエットが見えるのが千振尾根側、星の瞬きも見える。


 別当出合もマイカーで埋まっていた。前夜20時までに入ればここまで上げる事が出来る。バスに乗ったほとんどが軽荷のハイカー、どんどんとロケットスタートをして行く。日帰りの方もいるだろう。20Kg近いザックを背負った我々は、ゆっくりと砂防新道への吊橋に足を進めてゆく。柳谷に見える砂防工事の数々。これは人が生きている限り延々と続けられるのだろう。自然とのいたちごっこ。重い荷物に喘いでいる横を、どんどんと軽荷のハイカーが追い越して行く。そして足許は、超一級の登山道。ここほどに歩き易い登山道もないのではないか、石畳のそれに足を乗せながら3名で歓談しながら登って行く。


 中飯場で小休止。この場所も至極懐かしく感じる。このルートを飛んで上り下りした時は、一度もここで休んだことがなかったが、初めて足を止めることになる。トイレ付休憩場、至れり尽くせりで、さすがの超一級の登山道。
1時間ほど歩き、次は甚之助避難小屋で大休止。綺麗に生まれ変わったトイレ舎兼避難小屋、水洗トイレが下界を感じさせていた。ベンチでは多くのハイカーが休憩中。柳谷側の景色とハイカーと、山に来ている感が強くする。ここで師匠が栄養ドリンクを出してくれる。我々に対してのサポート意識。飲み終わった瓶は回収してくださった。山屋としてこの心、かくありたい。そして是が非でも踏まねばならない使命感も・・・。


 少し雲があるが、綺麗なブルーの空が広がっていた。陽射しも強く、周囲の植生の発光がいい。流れがちらほらと見え、それが歩きながらの清涼感に繋がっていた。水を持たなくてもいいルート、それがここ。十二曲がり途中では延命水をいただき力水とする。先の方に顕著な大岩が見える。間違いなく黒ボコ岩。このルートは適時に休憩場所があるのでピッチを刻むのにちょうどいい。


 黒ボコ岩前もハイカーが沢山溜まっていた。降りてくる方、登る方、大きなカメラを構えた方、少し前にこの場所がテレビ放映されたようで、そのための景勝地でもあるようであった。室堂までもう少し、都度重いザックを背負うときが難儀する。同行するI氏も同じようであった。木道の上を木魚を叩くような音をさせながら進んで行く。ナナカマドが色づきだし綺麗。御前峰の山頂部も見え、素晴らしい白山の出迎えであった。その途中、大ザックに、ザイルを二束持った方が降りてきた。話を聞くと仙人谷を降りようとチャレンジしたが断念して降りてきたとの事であった。ザイルが2本あって降りられない・・・ちと違和感があったが、何かが障害になっていたのだろう。今日は同じ付近を目指す。


 室堂到着。室堂も建て替えられてからは始めての訪問。集成材を使った立派な山小屋に成り代わっていた。ここで
I氏が缶ビールを入れるということで、私も便乗して胃袋に流し込む。小屋内で16℃、外に出ての陽射しの下では23℃を示していた。予報では下界は31度になるよう。この時期にして真夏のような天気となっていた。大休止の後、大汝へ向かうトラバース道に足を乗せてゆく。


 御前峰経由のルートに対し、こちらは10分ほど速く分岐まで行ける。しかし、途中で
I氏が休憩を入れた。どうも荷が重いようだ。暑さも関係しているだろうが、酷そうにしている。ひと月歩いていない為もあるだろう。師匠が持ち上げてくれた瑞々しい梨を出してくれる。暑さに対し冷たく美味しい。本当に至れり尽くせりであった。大汝下分岐まで1時間40分を要した。通常なら30分もかからないだろう。これは・・・微妙に状況を感じ取り、全体計画に対し頭をめぐらす。


 大汝峰下の中宮道への分岐で師匠は四塚山へ行くために判れ
I氏との行動になる。さあこれからが本番。ここまでは本番に入るまでのプロローグ。お花松原に向けて大きく下って行く。長い九十九折に、またここを登り返さねばならないと思うとうんざりする。お花松原まで高度を下げずに地獄尾根に入る方法を思いつつ、2416高点付近への斜面を眺めていた。そして2400mくらいからトラバース開始。ザレた、ガレた足場に、荷物の重さで体がふられる。振り返るとI氏はよりふられているようであった。足に力が入っていないよう・・・。落石をしないよう注意しながらそっと進んで行く。ナナカマドが茂り、ハイマツもお出ましになっている。そこで、I氏から、空荷で偵察との声が掛かった。このへんの慎重さはI氏の真骨頂。自分ひとりなら気にせず突っ込んで行くような場所であった。一つ一つが勉強になる。


 稜線のハイマツの上に乗ったI氏からは、一度下に降りようとの判断であった。私はそのまま2416高点である岩峰へ這い上がる。少しだけ岩登りがあるが難しい場所ではなかった。そこから見る真砂嶽までは、ハイマツが続く。それなりに泳ぐだろうが問題ないように見えていた。ただし重荷・・・一度降りた方が無難は無難。ルートに乗り、雪渓を経て、登山道がトラバースぎみにお花松原に向かっている途中、細いが顕著な谷が、真砂嶽の西側に突き上げているのが見えた。ここを入って行く。


 ガレた谷で、下の方はしっかりと踏めるが、上の方は動く石が多く、ザレ斜面となった。後から呼吸が聞こえなくなっていた。だいぶ下で
I氏が喘いでいた。温度計を見ると31℃を示していた。ジリジリと暑い。ゆっくりと上がり源頭の尾根に乗る。わずか30mほど先に真砂嶽がある。15分ほど待ってI氏が上がってきた。肩で息をしており、そのまま大地に寝転んでいた。行動は残り1kmほどの予定。ただしハイマツと危険箇所が待っている。頭の中が錯綜する。I氏の会話の中に、この先の行動は無理そうだとの言葉が混じる。真砂嶽まで登って目的地を目の前にすれば奮起するのではと、それを聞き流してジャンクションピークの真砂嶽へ向かって行く。


 真砂嶽到着。そこから降りるハイマツの海の先、遠く扇ノ御峰が見え、その向こうに赤茶けた火の御子峰があった。昭和の間でも数えるほど、平成になってはさらに少ないのではないかと思われる登頂数。申し分のない天気に、人参をぶら下げられた馬状態。一方
I氏は、表情が悪い。白みがかり疲労度が伺える。今日はパーティー行動であり、私のザックには塒も入っている。「ここまででお花松原に降りましょう」と言うと、I氏はホッとしたようであった。実際は、根性のあるI氏であり、一番この状況を辛く感じているのは本人である事を判っている。私も言い出しづらかったが、やはり「山は逃げない」となる。そうと決まれば、ここで展望を楽しむ。少し地獄尾根を空身で降りて写真撮影。2箇所ほど白砂の場所もあり休憩適地でもあった。最高点まで戻り、お花松原を見下ろしながら休憩していると、中宮道を通って行く人がこちらに手を振っていた。振り返すと呼応するように元気に振り返してくれた。存分に周囲展望を楽しんだらお花松原への下山となる。


 真砂嶽からお花松原に向けて、大きな谷が入っている。そこを伝う。降りて行くと、黒と赤のチェック柄のネルシャツが落ちていた。長袖であり冬季の通過者か・・・。登山道に乗りお花松原に降り立つ。ベニバナイチゴやサンカヨウの実を摘みつつ、ビタミン補給。ナナカマドの密生した場所を最終到達地点として踵を返す。幕営地は雪渓の下の場所とした。本来はいけない所作となろうが、地獄尾根上でビヴァークするつもりで来ているので、室堂まで戻る思考はなかった。国立公園内という事を考えると後ろめたいが・・・。


 テントを張り終えたら、すかさず雪渓にてビールを冷やしにかかる。ハーケンを打ち込むためのハンマーが、ここでは雪渓を削るために役立つ。コロコロ転がした冷したビールでとりあえず乾杯。白山にしてガスらない今日の天気に、気持ちよさも倍増。場所的居心地の良さもあった。それでも日が傾くにつれて、暑かった気温も下がりつつあった。17時近く、単独の女性が中宮道を登ってきた。大汝峰山頂で幕営予定だと言う。女性一人で幕営装備を持って・・・素晴らしい根性。前夜は、中宮登山口で幕営してここまで到達との事であった。疲れのうえ日没、行動を迷っているようなのでここでの幕張りを誘うと、便乗される事となった。男くさい場所に花が添えられ、談笑が続く。福井市からの女性であった。便乗を誘ったわりには、こちらが煩くしてしまったかと気にしたが、良い子守唄代わりになったと・・・配慮のある言葉をいただく。20時前、持ち合わせの酒が切れた頃、シュラフに包まる。素晴らしいのは、同宿した3名ともイビキをかかなかったこと。みんな、こんな山屋でありたい。


 早く寝たので、当然早くに起きる。23時、24時、およそ1時間おきに起きては時計を眺める。
I氏はなんども小キジに起きていたようだが、こちらはじっとミノムシになっていた。4時半になり横のテントからコッヘルの音がし出す。声をかけると5時半出立予定との事。こちらも急ぐ予定はないが、同調する。朝食をパンで済ましテントを出ると、大汝の上には真っ白い月、東の空は漆黒がどんどんと赤く焼けだしてきていた。自然の幻想的な出迎え。夜間は少し風があったために、テントに結露は一切なし。快適にパッキングして準備完了。その場を来た時よりも美しく整え出発となる。


 5:30予定時間きっかりで歩き出す。周囲はアオノツガザクラの群落。室堂付近では終わり花も見えないほどであったが、南と北側では大違い。朝焼けの斜面についた自分のシルエットを踏むように九十九折を登って行く。その途中でご来光。本日の旅の安全に頭を下げる。少しペースを上げるも、しっかりと女性はついてきていた。多くを語らないが経験豊富な猛者と判る。上の平坦地では、南竜から足を伸ばしてきたカメラマンが、お花松原に向け沢山のシャッターをきっていた。僅かに休憩して先に進む。


 七倉への分岐点で女性と別れる。室堂に向かって行くと、それこそ朝飯前のご来光パーティーがカラフルな雨具で歩いていた。30名ほどいたか、ガイドは全く外野を気にせず隊を引っ張っていた。他人を気にする人、しないで居られる人・・・。夜が明けたので白山は動き出した。あちこちにハイカーが見え、これぞ白山と言う感じ。室堂前まで行くと、すでに70名ほど蠢いていた。ザックをデポして空身で御前峰に向かう。ここを伝うのも久しぶり、こちらも一級の整備がされていた。もう少しで奥社というところで、東に道を外れてゆく。ハイマツの切れた間には踏み跡があり、そこを行くと、東面台地を見下ろすような場所となる。下の方を見るとケルンが一つあり、ピンクのリボンが複数巻かれていた。目指す転法輪の窟(いわや)は、この真東に位置する。しかしザイルでもない限り、直下行は無理で、現地地形に沿って、南東側の小尾根を使って降りて行く。


 上の方は優しい斜面だったが、次第に足場が悪くなる。ただし訪れた人の踏み跡は確認出来、そこに添わせてゆく。小尾根上にはもう一つマーキングがある。そこを見たら、今度は北に進むようにトラバース。ここで高度を下げ過ぎると、下の方は少しいやらしい斜面となる。全てを判っている
I氏はスイスイと足を進め、私はその背中を追うだけで現地に到達する事が出来た。知らないで探したら、かなり時間を要したかもしれない。もう少し緩やかな斜面にあると予想していたが、意外な急斜面途中にそれは存在した。


 転法輪の窟到着。ここで修験者が暮らしていたとの謂れの場所。下側を見ると、転法輪谷を見下ろす素晴らしい展望。窟の中央部にはお地蔵さんが鎮座しているが、過去その奥はまだあり美濃地震で塞がってしまった謂れも持つ。庇の出方、風の無さ、水も得られる場所。全てに環境が整っている。喧騒のある山頂側に対し、わずか150mくらいの差で、これほどの場所があるとは・・・。南側には社があったのだろう、製材した木っ端が転がっていた。帰りは北側を巻き上げて行く。しかし、こちらは容易に進める場所ではなく、ガレ斜面とハイマツが待っていた。やや難儀しながら分けて上がり、安全地帯に乗る。ここは南経由での往復が適当のようであった。最高所へ目指して行く。


 御前峰山頂。50名ほどがいた。汗臭さ、コロンの臭い、香木の臭いがする人もいる。山頂標識の前で動かない人、本当の山屋は、ここでは一握りのようであり、多くはブームに便乗した方のように思えた。三角点を拝んだら、逃げるように奥社に行き拝礼をする。少し命を懸けるような山行予定であったが、今日も五体満足で帰れるよう。感謝の意味もある。一気に高度を落として室堂に着く。


 山荘内で生ビールで乾杯となる。白山でも生が飲めるようになった事実を、喉をくぐらせながら体感する。美味しいと言う他に言葉が探せない。周囲を見ると、意外と単独行者が見える。そして彼らのカップラーメンが良く似合う。30分ほど大休止して黒ボコ岩をめざして出発。5時始発で、既に登って来る人も多い。要するに容易に登れる山が白山。黒ボコ岩からは雑踏の少ない方と、観光新道を下山路に目指す。この日は少し雲が張ってはいたが、快晴といっていい天気。観光新道も賑やかに歩かれていた。通過した昔を思い出すように噛み締め下って行く。


 殿ヶ池避難小屋は、建て替え工事真っ最中のようでさら地になっていた。そこで各々が休憩する姿がある。いい感じ。御前峰登頂を楽しんだハイカーと前後しながら降りて行く。慶松平付近で、越前禅定道を右にして左に降りて行く。登って来るパーティーも多く、中には韓国語で会話されている海外組みも居た。登山道に水の流れが絡みだすと別当出合も近い。なにせ人気の場所、数分おきに人と出会い、これほど人に出会う登山道も久しぶり。下の方に赤い屋根が見えてくる。すれ違うように、幼稚園生の様な5名が、女性に連れられ砂防新道の吊橋を渡って行く。


 別当出合到着。10分後ほどにバスが出発との事で、サッと顔を洗いバスに乗り込む。この下山バス。往路より復路の方が時間がかかった。まあ往路は一番バスなので、すれ違いの心配がないから停まることがないからだった。市ノ瀬に着くが、恐ろしいほどの車の量であった。これが白山人気か・・・と思えた。
I氏と判れ、白峰に下りてゆくのだが、路上駐車は酷いもんであった。扇沢も凄いと思うが、そこをはるかに超えていた。


 そんなこんなで下見山行となった。そしてしっかりと目に焼き付けることが出来た。「次は踏む」そう心に誓う。


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