奈倉ノ頭   1640 m     
 

 
2013.6.29(土)    


   曇り      単独      上の原山の家側登山口より      行動時間:3H56M 

   携行品: ライトオックスブーツ


@武尊山登山口5:50→(5M)→A林道に乗る5:55→(10M)→B大幽洞窟分岐6:05→(70M)→C名倉ノオキ7:15→(15M)→D奈倉ノ頭7:30〜31→(6M)→E1635.4m三角点峰7:37〜48→(34M)→F登山道に乗る8:22→(19M)→G大幽洞窟への分岐8:41→(30M)→H大幽洞窟9:11〜17→(17M)→I大幽洞窟への分岐三度9:34→(9M)→J林道からの下降点9:43→(3M)→K登山口9:46


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@武尊山登山口から入山。駐車スペースは8台ほど。 A林道に出合う。右へ。 B大幽洞窟への道を左に見る。 道は最近刈り払いをした様子。
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シート類が敷かれた場所を過ぎると、沢沿いの道となる。この先、草刈り機がデポしてあった。 沢を縫うように進む道。 時に水の中を進んだり。 途中で沢を左に置いて尾根側に進む。ここまでに既に胸より下は濡れ鼠。
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もうすぐ主稜線。 C名倉ノオキ。ここから鋭角に北に進む。 C奈倉ノ頭側への入口はタイガーロープで塞がれている。ここからしばらくは密藪を分ける。 尾根筋には大木が目立つ。
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薄い場所を選ぶように進んで行く。 途中から明瞭な道形が見え出した。 刃物痕もはっきりと判る。 「中田」と彫られた木も残る。
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境界標も一つだけ見られた。 D木の基部に巣穴のような大穴が見えると奈倉ノ頭到着。 D奈倉ノ頭北側。 D奈倉ノ頭南側。
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三角点峰への登り。 E1635.4m三角点峰の最高所。 E最高所には境界石柱が埋められていた。 E三角点峰から見る南側。
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E三等点。かなり時間がかかっての発見。探すには難易度が高い。 E彫られた側を下にして傾いた三角点。点名「名倉」。 下山は南西に尾根に絡むように下って行く。 上半分はササ漕ぎ。
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下の方へ行くとシダ類に変わる。 沢の途中に滝がある。「さみだれの滝」と勝手に命名。 沢の中を降りて行く。 F登山道に乗る。
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沢を右にしてルートに足を乗せて行く。 G大幽洞窟の分岐帰り。ここから洞窟を目指す。 上の方へ行くと、炭焼き釜跡などがあり、この木組みが見える。 これは帰りに撮ったのだが、上部の分岐点。分かり辛い場所であった。
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途中にはロープを流してルートを示していた。無かったらかなり不明瞭。 H大幽洞窟(中央の黒い場所)到着。 H中は整地してあるような場所もあり、25畳ほどの広さがあった。涼やかな洞内。夏場は心地いい。 H洞内から外。
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洞窟近くはタイガーロープが流してある。急峻箇所。 I分岐三度。 J林道から登山口への下降点。 K登山口到着。地元の山菜採りの方が居られた。




 日曜日は同行登山が控えている。全行程を計画した私としては、しっかりと完結したいので、この週末の気持ちのピークは日曜日にあった。ただし土曜日も動ける日であり動かない手は無い。気になっていた谷川岳の寂峰へ行こうかとも思ったが、往復10時間以上はかかるだろう場所。翌日にあまり影響するのは自分でも嫌であり、そうした場合の様子も予想できた。ここは少し負荷を落とした場所で・・・。ここで浮上したのが、上州武尊山の西側にある奈倉ノ頭。じつはここ、2011年の6月、同行登山時に狙おうとしていた場所だったのだが、ルートから僅かに逸れるその場所は、がっつりと藪であり、サッと行ける場所ではない事をこの時知った。それから2年経過。ずっと気になっていた場所となる。

 
 現地の藪を見てからは、水上高原スキー場からの須原尾根を伝って、冬季にアプローチするのが適当と見ていた。しかし、今年の残雪期は高山側に目的地をシフトしていたので、この辺りに気が回らず残したままとなっていた。そろそろ踏まないと・・・。この時期なら、断然涼やかな奈倉沢ルートに限る。限るって事も無いが、全てにおいて条件が良い。途中には大幽洞窟もあり、プラスアルファが期待できる。山名事典では、三角点峰の南側のピークで標高を取っている。でもエアリアでは三角点峰で山名を表記してある場所。両方踏むのが順当となろう。

 
 1:20家を出る。渋川市内の17号では、前日の発砲事件による検問を行っていた。事件の時間の行動を聞いてきたのとナンバーを控えたくらい。警察官も大変である。反対車線でも同様な様子があった。水上温泉地内を通過し、湯檜曽手前から藤原湖を目指す。やけに今日は眠い。週中の現場仕事の影響とは判っていた。このくらいで・・・情けない体力・・・。宝台樹スキー場の案内看板に従い久保地区で東進となる。あとは一本道。上の原山の家を過ぎると、闇夜には目立たない登山口が右側に見えてくる。舗装路はまだ先に進み、伝って行くと、スキー場施設が見える場所となった。地図と照らし合わせ現在地を把握する。先ほどの登山口に戻って少し仮眠。夜明けを待つ。

 
 4:00薄っすらと明けるが、周囲はガスだった。ロングコースではないので、様子を見てのスタートと決めた。駐車している横を2台の軽トラが通過して行く。スキー場への道のほかに、林道が奥に続いていた。登って行ったのは山菜採りなのだろう。ゆっくりと用意をして、6時に近いような時間でスターとして行く。

 
 最近刈り払ったと思しきルート。まるで緑の絨毯の上と言った感じで足の裏が心地いい。すぐに林道との出会いになり、南東(右)側に進んで行く。この分岐点には道標は無く、何も情報が無いと判断に少し迷うかもしれない。でも奥に進むことが頭にあれば、奈倉沢の遡上となる訳で判断はできる。林道を歩いてゆくと、ちらほらと木片形状の古い道標が見える。すると、緑の中に赤い目立つものが見えてきた。ここが大幽洞窟への分岐点だった。赤いものは複数人乗りのソリのようなものであった。その道を左に見送る。

 
 刈り払われた道は、相も変わらず続いている。途中で九十九折を経て少しづつ高度を上げて行く。小沢を跨ぐ場所で水場用のビニール管が敷設してあったが、流れは出ていなかった。ここで汲めずとも、この先いくらでも汲める場所がある。足許に絨毯らしき物、シートらしき物が敷いた場所がある。おそらく植生の濃い場所で、すぐに藪化してしまうのであろう。ここを過ぎると沢の中に入って行く。流れを縫うように進むのだが、入ってすぐに草刈り機がデポしてあった。その先は刈られておらず、野草の中でシャワーを浴びるが如くに下半身が濡れてゆく。雨上がり関係なく、雨具を履いて登りたい場所。

 
 沢の中の道。時折流れの中を進んだり、不明瞭な場所もちらほらとある。そのためか、マーキング類も多いように思えた。シカが居るようでサンカヨウの葉があちこちで食べられていた。美味しいのか・・・。途中から沢を左に置いて尾根に向けて登って行く。目指す場所へは、沢の右岸側に行かねばならないのだが、ここでの進路は左岸で少し遠ざかる方向。とりあえずは、名倉ノオキ到達を目指して登っていた。木の根が張る様な場所が見えてくるとその場所も近い。

 
 名倉ノオキ。ここから奈倉ノ頭側へ続く尾根の入口には、ターガーロープが張ってあった。張ってなくとも入る人は居ないであろう藪の濃さ。跨いで入って行く。最初は密藪。ツタ類もあり鎌でも欲しい通過点でもあった。我慢しながら植生の薄い場所を選ぶように分けてゆく。すぐに濡れ鼠となり、遅ればせながら雨具の上着を着込む。この尾根には、予想外に大木が多い。それも見栄えのするものが林立する。完全なる藪ルートと思って進んでいると、途中からなんと道形が見え出してきた。それでも獣道と思うようにして伝って行く。糠喜びもあるから。すると刃物痕も出てきた。いよいよこれは間違いない事になってきた。でもなぜにここ。ここにあるなら、名倉ノオキからあっても良さそうなのに・・・。

 
 道形の存在は、格段に歩くスピードを変えていた。途中のブナには「中田」と彫られた場所もあった。過去、ルートが存在したと言う事になろう。須原尾根、確かにルートをつけやすい尾根形状に見える。一箇所ではあるが、赤い境界標も在った。それでも藪化しているのは間違いなく、見通しの利かない中を進んで行く。正面に大きな木が見え、その根元付近に、これまた大きな空洞がある場所がある。獣が棲家としていそうな場所で、恐る恐る足を寄せてゆく。通過はその一部をくぐるようにして北東側に抜けて行く。じつはここが奈倉ノ頭だった。

 
 奈倉ノ頭到着。山頂らしくない、気にしていなければ通過点でしかない場所。人工物は皆無で展望もなく、「殺風景」の言葉が嵌る場所。まだ先に進む。このような場所で登頂感を得るには三角点を見つけること。道形に乗ったり離れたり、最後はササの斜面を潜るようにして平泳ぎで抜けて行く。振り返ると、ガスの中から手小屋沢源頭付近の山塊が見えていた。展望はないが、降られないだけいい。高みに到着。

 
 1635.4mの三角点峰到着。最高所は南側の樹木がある場所で、かき分けると、本当の最高点に境界標柱が埋まっていた。これが見られただけでも少し嬉しく感じる。さあ本気を出して三角点を探す。かなり難しい地形。斜面にある事は間違いなく。ササが茂り、埋もれてしまっている事も考えられる。腰を屈め、潜るようにして探し回る。可能性のある場所を次々に移動し、具に人工物の存在を追ってゆく。第一次捜査では出てこなかった。集中して10分ほどであるが、かなりの疲労感。やはり無いか・・・。でも見つけて帰るのと、手ぶらで帰るのとでは、達成感で雲泥の差が出る。「諦めない」ここは信条。

 
 第二次捜査開始。場所を絞り、空があけている最高点より北側に探す場所を絞った。すると苔生したそれが出てきた。場所を上手く言い表せないが、最高所より、5〜6m北側の濃い植生が、僅かに緩む付近。三角点は等級を彫られた側を下にして、40度くらいに傾いた状態で地表に見えていた。土が緩いのか、ネマガリの強さでこうなったのか。どうであれ見つけられた事が嬉しく、自分の努力に拍手であった。これで思い残す事無く下山に入れる。

 
 往路を戻る方法もあるが、それではつまらないので、顕著な尾根が西側に降りているので、それに絡むように降りて行く。場所を選ばないと植生が濃く、尾根のやや北側を舐めてゆく様に高度を下げていった。滑りやすい柔らかい地形もあり、ササを分けつつ、掴みながら降りていた。このササの植生が終わると、目に優しい鮮やかなシダ類の密生地となる。一帯がその色に染まる。素晴らしく気持ちのよい場所であった。ただし、足許が見えず、今度は足で分けるようにして進んで行く。降りて行くと、流れの音がしだし、滝がある事が聴覚情報から判断できた。今日はザイルを持っていない。少し緊張しながら降りて行くと、沢の中の進路ではなく、その右岸側の斜面からの滝であった。そこそこ見栄えのする滝で、その流れの様子から瞬時にして「五月雨の滝」と名前が思いついた。しばし見上げながら観瀑する。

 
 五月雨の滝の場所からは、沢の中をジャブジャブと降りて行く。やや滑りやすい場所が多いが、周囲地形からは危険度を感じるような場所はなく降りて行ける。この枝沢が奈倉沢と出合う僅か手前に少し急な場所があるが、そこには微かに踏み跡があり、それに伝うと楽に降りて行けた。登山道に乗ったら雨具の上着を脱いで、蒸れから開放される。闊歩して降りて行く。かなり早い時間で行動できている。この距離ならこんなものか。これらを想定して、このあとはケービングを組み込んである。

 
 大幽洞窟への分岐。何処にあるのか、どんな時間がかかるのか判らぬまま、道標が示す方向に大幽沢を登って行く。野鳥がかなり近い場所に居る。あまり人が入っていないのか、警戒心がない。最初の300mほどはそれなりの沢沿いの道であったが、それ以降、驚くほど藪化していた。ここは洞窟までの遊歩道が切られている場所。これでは観光客は愚か、登山者でも躊躇してしまうほど。ここ数年、管理がされていないことが伺えた。思い切り漕いで進むような場所も出てきて、進路が消えてしまっている場所も出てくる。ルートファインディング力が試される場所も出てきて、ちょっと楽な気持ちでいた自分にギヤを入れ替える。マーキングも散見できるが、遊歩道にしてこれほど多いのも不思議な場所。そして経路に道標がなく、はたして進路があっているのか・・・と心配になるルートでもあった。

 
 途中に炭焼き釜が見えた。石積みのその前に丸太構造の人工物が残る。山仕事の木組みのようであるが、朽ちていてよく判らない物となっていた。この先が注意点。伝ったからそれが判るのだが、往路は判らぬまま進むと注意していないと沢をそのまま遡上してしまう。正規ルートは途中から左斜面に曲がっている。先ほどの木組みの場所から10分以内でその場所になるので注意したい。帰りに気づいたのだが、大木の根元付近に矢印の道標が掲げられていた。往路は全く見えなかった。この分岐点から先は、ロープが流してあり、それに伝うように斜面をトラバースして行く。このロープがなかったら、ほとんど進路が判らない場所。上の方に行くと、急斜面となり、タイガーロープが流してあった。先の方に黒い口が開いている。

 
 大幽洞窟到着。奥の深い洞窟を想像していたが、意外や浅いもので、目が慣れると25畳ほどの広さが見えてきた。注意書きに氷柱の事が書かれているが、温暖化の影響か、それらは見られなかった。氷柱が常に残るような温度となると、常時0度以下となる場所。この時期にして気持ちいいくらいに涼しかった。不思議なのは洞内の地表面。均したように石畳のようになっている場所もあった。ケービングにはならない奥の浅い洞窟であった。鍾乳洞的思いで行くと、少し肩透かしかも。最終目的も達成し下山となる。

 
 ロープ場を下り、自分の通過して分けてきた場所に体を入れて行く。腕を見ると、かなりの発疹。麻疹で間違いなくイラクサにやられたよう。虫刺されであれば長引くが、これはすぐ消える。下りながらも何度も刺されたようで、さらに増えていた。折角の洞窟、そんなに時間は掛からないであろうから、刈り払いをした方がいいだろう。これでは藪屋でも躊躇してしまう・・・。でも予定外に楽しかったりする。


 分岐まで戻れば快適な林道に足を乗せてゆくだけ。奈倉沢の沢音を終始聞きながらそれに沿って降りて行く。その音に足音が消され、獣でも見られそうな谷ではあったが、逢うことはなかった。林道からの下降点で、そのまま林道を進んでスキー場側に出てしまおうかとも思ったが、おおよその事前調査は終わっており、周辺地形も把握できたので、そのまま登山口へ降りて行くことにした。下の方に人が動いているのが見える。動きの様子から山菜採りと判る。


 登山口到着。山菜採りのご夫婦と他愛もない会話をする。地元の方であった。「お勧めの温泉は・・・」と聞くも、全く返答を得られなかった。地元ほど近隣の温泉には入らないのであろう。ご夫妻は、嬉しそうに採れた山菜を種分けしていた。


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