荒山   1344.1m              

 
   2014.10.11(土)    


  晴れ      単独      越後三山森林公園よりデトノアイソメ経由カナヤマヅルネを往復    行動時間:7H56M 

 装備:ヘルメット・ザイル20m・ライトオックスブーツ

  


@越後三山森林公園P5:26→(42M)→A十二平6:08→(62M)→Bデトノアイソメ7:10→(19M)→Cデトノオオナデ沢出合(カナヤマヅルネ取り付き点)7:29〜35→(66M)→D沢(水場)8:41→(42M)→E主稜に乗る(下降点)9:23→(6M)→F荒山9:29〜10:03→(3M)→G下降点10:06→(66M)→Hカナヤマヅルネ末端(東不動沢)11:12→(12M)→Iデトノアイソメ帰り11:24〜31→(71M)→J十二平帰り12:42→(40M)→K越後三山森林公園13:22


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@越後三山森林公園駐車場をスタート。駐車スペースの1/3は、工事用の飯場スペースとなっていた。 林道を伝うと、前方に白きカグラ滝が見えてくる。 センノ沢通過 途中、山手側の窪地に小さな小さな祠があった。旅の無事をお願いし頭を下げる。
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周囲が開け心地よい通過点。 大雪橋(モチガハナ沢出合)を渡る。 岩穴の案内。 岩穴。枯れ草が敷かれている。
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けっこうにモシャモシャしており、朝一番は露払い役。 A十二平 Aデトノアイソメへの案内。この先の分岐は山手側の道を選ぶ。 堰堤の右岸を高巻して行く。
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途中に真新しいタイガーロープが設置されていた。 淵の場所は、やや見上げるような場所へガレ地を登って行くとルートがある。 水無川へ降りて行く途中に、古いタイガーロープあり。 降り立った場所。帰路のために大岩を覚えておこう(※帰路の写真へ)。
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右岸を暫く進む。 モルゲンロートが見えだす。 右岸が進めなくなり左岸に移る。 急流の脇を岩伝いに進む。
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渡渉を繰り返しながら歩き易い場所を行く。 右岸に大きな岩穴が見える場所。左岸側のリッジ状になった岩の上を伝って進む。 再び右岸に戻り暫く進むと、どうでもいいような場所にタイガーロープが張ってあった。 Bデトノアイソメに到着。意外と広くない印象を受けた。雪で埋め尽くされると広く感じるのだろう。
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Bデトノアイソメから東不動沢側(進んでゆく方向)。 Bデトノアイソメから水無川本流側。 東不動沢の左岸を登って行くと3畳ほどのテーブル状の岩がある。舞台のような場所。 正面がカナヤマヅルネ(鉱山道尾根)。左がデトノオオナデ沢。右が東不動沢。
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Cデトノオオナデ沢出合。驚いた事にカナヤマヅルネを示す新しい案内があった。「ガナヤマヅルネ」が正式呼称なのか。 C右の石に白ペンキが見える。そこが左の写真の、左の矢印の場所。踏み跡が尾根側に入っている。 C登ってきた場所を振り返る。 デトノオオナデ沢を少し伝ったが、尾根側に行くには危険で、出合まで戻って尾根に取り付く。
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刈り払った痕があり驚く。何処まで続くのかと・・・少し期待する。 鎖場の下から見るデトノオオナデ沢。 最初の鎖。ちょっと登り辛い。 新しいタイガーロープ。コブが作ってなく、握力が必要。特に下り。
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二つ目の鎖 三つ目 四つ目 五つ目。何処までも急登が続く感じ。
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六つ目。ここで暫く鎖が出てこない。欲しい勾配が続くのだが・・・。 急登尾根の棚のような場所で少しインターバル。 東不動滝が見事!! 入道岳南の稜線を望む。
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カナヤマヅルネで唯一足に力を入れずに伝える場所。 途中から荒山。 東不動沢の雪渓。 この会が廃道を復活させたよう。上部(この先)のロープがまだ敷設しておらず、現在はザイルを持ったほうが安心。草地がかなり滑る。
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進路が西に変わる場所にはこの表示があった。 右に見える樹林側にズレる。ゴーロの中を伝ってもいいが、足場が悪い。 小尾根を乗越し、しばし西にトラバースして尾根を乗り換える。 D途中に沢があり、給水できる十分量流れていた。
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七つ目の鎖。これは千切れていた。ここを思うと、見なかった空白区間にも敷設してあったのだろう。大量の鎖がこの尾根には流されていたよう。 稜線直下。 E鶴嘴の置かれた道標の場所で稜線に乗る。 E主稜に乗った場所から見る荒山。
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F荒山到着。大展望ピーク。 F荒山から五竜岳側。 Fクシガハナ(右)と駒ケ岳(中央)。 F御月山側。
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F荒山からデトノアイソメを見下ろす。 F南側の様子。中央は桑ノ木山か。 Fヤキソバパンが手に入らず。チーズパン。 Fオカメノゾキからの狭稜。
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Fガスが上がってきたので下山開始。 G下降点。鶴嘴が鉱山(道尾根)をイメージできる。 G下降路。知っていないと、見ても道があるようには見えない。 途中の急下降地点。何度も後ろ向きで降りねばならなかった。
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沢の様子。流れは十分量。 カナヤマヅルネからデトノアイソメ。 もう僅かで降り立つ。この辺りから東不動沢の全容が見える感じ。 Hカナヤマヅルネ末端。左が東不動沢。右がデトノオオナデ沢。
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H降り立った場所から東不動沢の様子。右に大きな岩(穴)屋あり。  H岩屋の様子。かなり広い空間。 カナヤマヅルネを振り返る。 東不動沢の右岸、大岩の南を巻く道形が切られていた。
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東不動沢よりデトノアイソメ。 Iデトノアイソメ帰り。  Iデトノアイソメの右岸は草地で心地良さそう。積雪があった場合は黄色い辺りまで雪が溜まるのだろう。地形図からはそのように読み取れる。 Iデトノアイソメから左岸を10mほど下ると、岩穴がありヒカリゴケが輝いていた。
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デトノアイソメの僅か下流で左岸から右岸に移った場所。渡渉後に振り返る。 右岸の藪の中に、薄っすらとした道形が見え、そこを伝っている。 右岸を戻り、前方に岩穴が見えてきたら左岸に移る。 岩穴の様子。水面に近く使えない。
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河原歩きから山に入る場所。この岩が目印。背中側には※の景色がある。 淵の右岸では、復路はガレ場を斜め下側に降りて行く。 淵の様子。 堰堤が先の方に見えてきた。 
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分岐に戻る。バイクが2台入ってきていた。 左の写真の東側足許には、この表示があった。 分岐を河原の方に進み偵察行動。ここを進んでゆく方もいるよう。水没必至。 J十二平に戻る。
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高倉沢にはピンクのリボンが続いていた。測量中?  オツルミズ沢のオツル滝。 オツルミズ沢のカグラ滝への道標。ここから30分。 工事の様子(振り返り撮影)。山手側の伐採と掘削をしており、大量の土砂と倒木の中を通過する、危険な通過点だった。
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K越後三山森林公園Pに戻る。      



 

デトノアイソメに入りたいとずっと思っていた。名前からの興味と、やや困難となっている経路、魅惑の場所であることに違いない。北アのカクネ里にはホイソレと行けないが、こちらなら行ける。

 

八海山は五竜岳から東に延びる尾根上に荒山がある。さらにオカメノゾキを経て進むと御月山に至るが、中ノ岳を経て御月山は踏んでおり、その荒山のみが未踏になっていた。公式登山道を使うにも、何処も一度歩いており面白みがない。ここでカナヤマヅルネの旧道が浮き上がる。鉱山道尾根と呼ばれたこの場所には、以前は公式ルートがあった。時代とともに使われなくなったのか、いつしか廃道となり、最近のエアリアには名前すら載っていない事実。WEBで検索すると、今でもデトノオオナデ沢を登る岩(沢)屋さんが下山用に使っているよう。とならば僅かでも踏み痕は期待できる。そんなこんなでルートが出来上がった。

 

水無川の渡渉用にライトオックスブーツを用意し、ハーネスこそ持たないが、ヘルメットとザイルも携行した。そして往路6時間と予想し心構える。台風19号の接近で翻弄される三連休だが、沖縄付近で進度が遅く、翌日曜日も関東側の天気はいいようだ。予定を変えて山に入る人も多いだろうし、最悪は中止にした方も居られるだろう。自然との遊びは、常に自然が主体・・・。

 

1:15家を出る。外気温は18℃と相応。関越道に飛び乗り新潟に入ると、やや空はどんよりしていた。ガスが強ければ登山口を同じにしてクシガハナ側へ上がろうとも考えていた。前週の失敗があるので、サブの予定は決めておいたのだった。六日町で高速を降りてセブンに寄るも、この日2軒目のセブンにしてヤキソバパンが手に入らない。なにか新潟の空のように暗雲が・・・。

 

道標に従い車を進め、越後三山森林公園を目指す。荒山の集落を過ぎ、細い林道を行くとアスファルト上にいくつも鉄板が敷かれていた。重量車両の為の道路補強の訳だが、行く先で大々的な工事がされている事が見て取れる。越後三山森林公園の駐車場に着くと、トイレ側のところにテントが2張りあり、相模ナンバーの車を含め3台が停まっていた。パーティーでの入山者のよう。駐車場の奥に進むと、そこは工事の資材置き場と事務所があり、その前にダンプなども停まっていた。そのダンプに並ばせるよう、工事関係車両を装って停める。時計は4時を回っていた。ちょっと仮眠をする。

 

30分ほど寝たか、遅い夕飯をする。「朝食だろう」と言われそうだが、訳があって前夜から食べずに推移していた。出掛けにガッツリ食べる事などほとんどなく珍しいのだが、二食たべずに出るのは流石に怖く腹に詰めて行く。結果、なんだか身体が重い。食べない方が調子いいような・・・。人それぞれなのでしょうが。

 

外が少し賑やかになってきた。到着する車もあり、トイレ側を見るとテントが畳まれ出発準備をしていた。頭にはヘルメットを被り準備体操をしている。岩屋か・・・。同じ場所に入るのではないか、先に行って貰えば露払いをしてもらえる。そんな姑息な事も頭に浮かんだが、他人の後を追うほどつまらない事はなく、新鮮さがなく現地が覚えられないことにも通じる。先に出よう。急いで準備をする。登山靴はザックに入れて、渡渉用にライトオックスブーツを履いた。

 

5:26、準備している2パーティーの前を通過し林道に足を踏み入れてゆく。付近は工事がされており、山手側に登って行くルートに吸い込まれ行き止まりとなった。崖を駆け下りて下の林道に乗る。進む先に目立つ滝が見える。サナギ滝かと思ったが、地図を見るとそこまでは見えず、下流にあるカグラ滝だと見えてくる。緑の中に映える白い流れは見栄えがする。

 

センノ沢をジャブジャブと渡ってゆく。こんな場所でも登山靴では水没だろう。ここから3分ほど進んだ山手側に小さな祠があった。これは気にしていないと判らないもので、自然石かと思ったら人工物であり驚いた。旅の安全をお祈りする。右に水無川を見下ろし暫くは開けた地形が続く。オツルミズ沢を覗くと、僅かにオツル滝下部の姿も見えた。轟音が足の下を流れ落ちている。この水量、今日は通常より多いのか少ないのか・・・この先の渡渉が気になっていた。

 

高倉沢はよく見ると上流へとピンクのリボンが繋がっていた。上部まで測量がされているよう。林道沿いもピンクのそれが目立つ。ふと振り向くと、後続の姿は無い。若者だったのですぐに追ってくるかと思ったが・・・そもそもの行き先が違うのか。やや泥濘地形を進むと、モチガハナ沢に架かる大雪橋の上となる。そのど真ん中に焚き火の跡があり釣り師を連想させる。もう十二平も近い。足場がドロドロとして緩い中を進んで行くと、足許に黄色い石を見る。山手側にある避難用の岩屋を示しているものだった。岩屋の中には枯れ草が敷かれた状態で、なにか原始的な雰囲気でもあった。

 

十二平到着。以前はここまで車が入ったようだが、現在は入れて二輪。駐車スペースさえも見えてこなかった。足許にはまたまた黄色い石があり、デトノアイソメまで1.7kmと書かれていた。この十二平から僅かに進むと分岐がある。分岐にも足許に石が転がっており、デトノアイソメを示している。この先には堰堤があり、それを巻き上げる道が右岸の山手側斜面に切られている。川の中を突破して行く方も居るようだが、濡れるのを好む人と嫌う人で分かれるだろう。地形図の破線は右岸に見られ、基本は巻き道のよう。足を踏み入れると予期しない刈り払いが現れた。デトノアイソメまで最近に拓いた情報が無い中、間違いなく刃物跡が続く。とは言っても簡易的にされたような雰囲気があり、大々的に刈られているわけではなかった。

 

右岸に続く刃物痕を追うと、真新しいタイガーロープを流した場所もあった。この先で淵の場所となり青い水を湛えている場所。ちょうどガレ場になっており、標高差7mくらい上側に道が続いている。ピンクのリボンによりその場所が判った。ここを巻き終えると川岸に降り立つ。目の前には大きな岩が在り、この場所は覚えていたい。帰りはピンポイントでこの場所に来ないと進路が困難になる。右岸を流れに触れそうな場所を進んで行き、前の方に流れの強い場所が現れる。見るからに右岸は行けそうに無く、水深の薄い場所を選んで左岸へ移る。急流の脇を濡れた岩場に、足許に注意しながら進んで行く。ここを越えたら一度右岸に移り、再び左岸へ。この辺りは自然とそのように選びたくなる場所で歩き易い場所がそうであった。こんなときでも破線に示される場所を探していたが、見えてこなかった。

 

左岸を行くと、前方の右岸に大きな口を開けた岩屋がある。幅にして7mほどあろうか、そこを対岸に見ながらリッジ状になった岩の上を慎重に伝って行く。この上流では左岸進行が厳しくなり右岸へ、ここで再び廃道を見つける。こちらは刈り払われておらず、ほとんど自然に帰りつつあった。手探りで分けつつ進むような感じで、これなら河原を歩いたほうが早かったのかも、なんて思うのだった。藪の中から飛び出し、右岸を行くとT字路のような場所に到達した。そこが念願の場所であった。

 

デトノアイソメに到着。こんな場所だったのか、地形図で見るよりその場所が狭く感じた。地形図には雪渓が書かれており、それが為の広さを思っていたが、雪のない状況下では普通な感じ。でもここがデトノアイソメ。本流が東に、東不動沢が西に、これらをメインにして各沢が流れ集まってきている場所がここで、それなりの風格のある場所。東側に広い草地があるのだが、おそらくはその高さまで冬季は雪が堆積するのだろう、とならば広い場所となることが判る。意外や1時間40分ほどで到達した。もう少しややこしく時間がかかると思っていたが、あれよあれよで到達してしまった。渡渉、ルートファインデング、現地の景観、全てが楽しいと思えた。と言ってもまだ最終目的地でなく、この先が第二ラウンド。カナヤマヅルネと言う二つ目の課題が待っている。

 

東不動沢を登り出す。最初は左岸を伝って行く。大岩がごろごろしている中に、テーブルのような3畳ほどの平たい岩がある。ここにテントでも張ったなら・・・などと思わせる場所。デトノアイソメの観覧台のような場所とも言える。西不動沢の出合付近で、大岩のナメの上を右岸に移るのだが、結構にツルツルしているので力が入る。対岸に行くと、右岸側の突起峰(岩峰)を巻き上げるような道形があった。そこを伝い巻き上げ下ってゆくと、そこがデトノオオナデ沢の出合で、東不動沢とに挟まれた格好でカナヤマヅルネが顕著に降りてきていた。少し沢屋の真似事と、デトノオオナデ沢を登ろうとすると、尾根末端の岩に白ペンキが見えてきた。「カナヤマヅルネ」と書かれ矢印で2ルート示されていた。直登ルートと巻道か、沢を詰めてゆくと丸印をされた場所も出てくる。尾根を無視して少し沢登りを続けるが、上の方で尾根に向かってゆく適当なバンドはなく、一度出合まで戻る。ここで給水。

 

カナヤマヅルネの登行開始。尾根に取りつくと、何やら様子がおかしい。予想外に刈り払いがある。水無川沿いで見たそれと同じ。粗い刈り方だが、しっかりと道となって上に続いている。稜線まで拓いてあればかなり違う。非力ハイカーなわけで期待してしまう。あと、刈られている場所は切り口で見えるが、急峻にて野草が寝ている場所が多い。流れによるものか、これが至極滑る。

 

最初の鎖場下、ここは2畳ほど刈り広げられ、デトノオオナデ沢を望むのにちょうどいい。足がかりの乏しい場所を鎖を掴まり登る。こんな箇所が続くのか・・・。鉱夫の方々は、こんな場所を毎日重荷を背負って上り下りしたのかと思うと頭が下がる。途中、水無川沿いで見た新しいタイガーロープと同じものが敷設してあった。急峻の場所に流してあるのだが、コブが作っておらず腕力より握力が必要。コブを作ってしまおうかと思ったが、出しゃばっていいことはないと自重した。

 

高さを増してゆく毎に東不動沢の姿がきれいになってゆく。高い位置に東不動滝であろう姿も見える。そこに至るまでの曲線が美しい。最初の棚まで上がり少しホッとする。急登続きで休まる暇がない。しかしこの先も鎖場が連続する。あの危険な妙義ルートでさえ、ここまで連続して敷設していない。下側で計6か所続いていた。それほどに急登とも言える。

 

東不動滝と目線が合うほどに上がると、2回目の休憩場所となる棚がある。今日はこの棚の存在が至極うれしい。気を緩ませるとずり落ちてしまうような場所の連続、ずり落ちればかなりの距離滑落してしまいそうな場所、自ずと集中力が高まり気が休まらないのであった。それらの気の張りがフワッと抜けるのがこの棚の場所。進路右手には坊主岳からの稜線がくっきりと見えている。紅葉見ごろはもう少し後だが、十分いい景色と思えた。この先、尾根上で唯一気を抜いて歩ける緩斜面がある。この付近からは進路左側に荒山らしき突起峰を望むことができた。

 

東不動滝の滝上には雪渓が多く残っている。既に雪の声も聞こえてきているから、それらは万年雪ってことなのだろう。この尾根には坑道が在ったはずであり、それを探すように登ってきたが、まだ目にしていなかった。もう全体の中盤くらいまでは登ったのか・・・気にしつつ這い上がってゆくと、ここにきてピンクのリボンが目立つようになる。そこには「三山岳友会」と聞いたことのない名前が書かれていた。それでも会の面々により現在の旧道の復活があるのであり、感謝せねばならない。道形が在るのであり、楽だと思わねばならないが、キツイ登りのまま。帰りの事を考えると思いやられる。

 

リボンが現れだしてから5分ほど進むと、岩に白ペンキで矢印がされている。やや屈曲してルートがあるよう。その方向を見ると、15度ほど右にズレた高みにリボンが見えた。目の前はゴーロの涸れ沢があり、伝いたくなるがマーキングと道形に従う。巻き上げ、先ほどの涸れ沢に戻るように進むのかと思ったが、さらに西にズレて進み、その途中には流れのある小沢を跨ぐ。十分量の流れがあり水場とも言える。知っていれば下で汲んで来なかったのだが、ここは地図に出てこない水場と言えよう。

 

西に一つ尾根をズレた格好になるが、こちらは尾根と言うよりは斜面で、これまで以上にいやらしい草付きの急登が待っていた。足元は滑り、それを支えるために木々を掴む。下山後の筋肉痛はこれが為であった。直登するような場所が多く、ここでも滑れば20m位は楽に滑落してしまう場所が続く。道形があるが、藪の中を木々にグリップさせながら登った方が楽のような、下りは特にそうであろうと思えた。それでもゆっくりながら高度を稼いでおり、主稜の場所も近くなってきていた。五竜岳から下って1442高点があるが、その東の鞍部に飛び出すようだ。ここも3時間くらいを思っていたが、登り辛いものの、その半分くらいの時間で歩けている。作道のおかげとも言える。

 

主稜に出る。そこには石の道標があり、その手前に鶴嘴が置かれていた。そういうことか、鉱山道を示すのに鶴嘴・・・納得である。登ってきた場所を見下ろすものの、そこに道が在るようには全く見えなかった。特にこの時期、紅葉の派手さもあり同化しており判らないのだった。荒山が二つ向こうの高みとして待っている。最後の登り。少し緊張から解放されると、各所に筋肉痛を感じる。こんな短時間で珍しい。

 

荒山到着。360度の展望ピーク。標識類は何もなく、それが為の居心地の良さがあった。駒ヶ岳、中ノ岳、八海山側、どの方向を切り取っても絵になっていた。デトノアイソメを見下ろすと、少し隠されているものの蜘蛛のように伸びる支流が見え、こちらも絵になる。来てよかった。このルートを選んでよかった。天候もよく山頂で大休止とした。残念なのはヤキソバパンが装備に入っていないことくらい。代わりのチーズパンを齧りながら五竜岳側を見ると、1442高点に人が居ることが分かった。そして飛ぶように降りてくる。まあこの破線ルートに入ってくるような人なので健脚で間違いないのだが、跳ねるように降りてくるその速さに魅了されていた。あっという間に荒山に到着し、挨拶をすると上州の方で、朝5時に大倉を出たとのことであった。5時間でここまでか・・・間違いなく速いだろう。この日は中の岳避難小屋泊とのことだったが、駒ヶ岳まで進んで降りるワンデイも考えていたとのこと。素晴らしい意欲。

 

ガスが上がってきたので下山を決める。御仁に挨拶をして西に降りてゆく。そして下降点からはザイルを袈裟懸けにしていつでも使える状態にして降りてゆく。登山靴に履き替えればよかったと思うが、面倒くさいので長靴のまま、これも良くなかったと思えるが、前向きで降りていけない場所ばかり。後ろを向いて木々や草を束ねて掴み降りてゆく。これは登るのと同じほど時間がかかる。鎖が岩場でない場所にあれほどに流されていたのが理解できた。刈り払いしたものの、「使い物」にするには急登にロープを流さないとならないように思えた。あと、刈り払った木が周囲に多い。それらを誤って掴み体を預けたら危険極まりない。動くと思って掴むようにしていた。

 

それこそズリズリとずり下ってゆく。歩いて下ると言う表現にはならない。残る一つの目的の坑道の在処・・・このことを気にしつつ居たのだが、判らぬまま高度を下げて行った。ザイルを出そうと思うものの、支点になる木々が弱かったり下向きだったりして、結局使わずに推移していた。下の方にデトノアイソメがハッキリと見えてくる頃、鎖場となり掴みながら降りていける。そしてデトノアイソメが見えなくなると東不動沢が近くなり、すぐ左側に沿うようになる。あと少し。ここまでの急峻ルートも珍しい。藪尾根では有り得るが、この急登にルートを切ったことがすごい。その前に鉱物が採れたことが先にあるようだが、何が採れたのか・・・。

 

東不動沢に降り立つ。振り返り見上げると、苦労した分の感慨がある。少しオーバーめに書いたが、それほどに楽しませてもらったと言うこと。東不動沢右岸を伝い、忠実に踏み跡を伝ってみる。往路はその7割くらいを伝ったようだ。西不動沢出合で左岸に移り、大岩を乗り越えつつ降りてゆく。デトノアイソメに到着し、少し腰を下ろす。どの角度から見てもいい景色で落ち着くのはなぜだろう。パワースポットと呼ぶのは、こんな場所なのではないだろうか。天気の良さも後押ししているのだが、ずっと居られそうな場所でもあった。

 

デトノアイソメから水無川を戻って行く。左岸の山手側斜面にやや大ぶりの穴が在るのを見つける。獣でも居そうな雰囲気があり、恐る恐る覗くと、二つの目のある動物ではなく、グリーンに輝く植物が出迎えてくれた。下手をすると「ヒカリゴケ群生地」などと宣伝している場所よりたくさん生えているようにも思えた。左岸をしばらく伝ったが、先の方で進めなくなる。渡れそうな場所がなく、ほぼデトノアイソメまで戻って右岸に移る。

 

右岸をしばらく伝い、旧道の在処を探すように樹林帯が残る場所は入ってみる。崩落や削れた場所は樹林帯すら残っていない。探るように進むと、なんとなくある。いや間違いなくあった。掘れた跡が続き分けつつも伝って行ける。右に巻き込むような流れの場所をこの道形で高巻するような形をとり、その先で河原に降りる。進んでゆくと先の方に黒い口をあけた、あの岩穴が見えてくる。ここは左岸に移らないと・・・。往路の学習が復路で生かせてきている。左岸に移り、岩穴を横目に見ながら通過してゆく。穴の前は深く、魚影でもないかと探したが、気配はなかった。

 

岩穴の場所を過ぎたら再び右岸に移る。この先、大岩の横を通過したら再び藪の中に入るルートとなる。5尺くらいの直立した岩が門柱のように立っており、そこから道形を這い上がってゆく。ここまで戻れば、もうほとんど迷う場所はない。淵の上で、ガレを斜めに下り、先のルートと繋げる。判っていると進度が早い。前方に赤錆色の堰堤が見えてくる。それを高巻いて降りると、分岐箇所には2台の原付バイクが停まっていた。釣りか・・・。川沿いの道に鋭角に入ってゆき、一度川面からの堰堤の様子を見ておこうと分けてゆく。結構に水量があり、高巻で正解だと思えた。

 

十二平に戻りのんびりと林道を伝って行く。夕暮れ頃の帰還と思っていたが、予定外に早くに戻ってこれた。でも筋肉痛は既に感じており、全てにあの尾根のおかげだと思えた。でもでも心地いい疲労感。オツルミズ沢に入ってカグラ滝を拝もうと思ったが、その疲労感が行動を拒んだ。刺々しく聞こえていた往路での水無川の流れの音も、戦いを終えてそよそよと耳心地よく聞こえる。うららかな春と言うが、うららかな秋の日と言った感じ。

 

祠に挨拶をしようと気にしていたが、判らぬまま通過してしまっていた。前の方から工事の音が聞こえてくる。川の中でオレンジ色のユンボが2台、忙しそうにアームを動かしている。それに見とれて歩いていたら、山手側では伐採と掘削がされており、朝は普通の林道だった場所が、40トンほどの土砂と伐採木で埋め尽くされていた。現場監督のコールで工事中断の発声がされる。いそいそとその堆積した中を通過してゆく。しょうがないとは思うが、いいのか、こんな登山道経路で・・・なんて思ってしまう。

 

駐車場に戻ると、トイレ舎は山小屋を兼ねているようで、名前がふられていた。これならテントでなく小屋内で寝たらよかったのに・・・。すぐ前でテントを張っていた方々を思い出す。登山者らしき車は7台ほどに増えていた。あのヘルメットをかぶった方々はどの沢に入ったのやら・・・。あとの方は駒ヶ岳に向かったのだろう。工事事務所前で着替えをしていると、バリケードの向こうで作業している人の姿がある。遊べている事に感謝したい。

 

振り返る。全行程を長靴で通した。渡渉点ではだいぶ利器になったが、その先は履き替えたほうが良かったようだ。バラエティーに富んだ楽しい場所の連続であり、かなり新鮮に楽しませてもらった。渡渉点は濡れた場所は全てに苔むしており滑りやすく、カナヤマヅルネもまた滑りやすい場所の連続であった。こうなると、逆に雪が在った方が歩きやすかったり・・・などと思えてしまった。全てに大満足。

 
GPSの軌跡データを誤って消去してしまいました。カナヤマヅルネの尾根を乗り換える付近が曖昧表記です。悪しからず。
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