京丸山 1469.1m 高塚山 1621.1m 竜馬ヶ岳 1500.9m
岩岳山 1369.3m
入手山 1212m
2014.7.12(土)
晴れ 単独 春野町石切 石切川起点(石切林道出合)より時計まわりで周回 行動時間:12H35M
@石切川起点(石切林道出合)3:41→(10M)→A通行止め工事現場3:51→(38M)→B林道分岐(ゲート)4:29→(20M)→C登山口4:49→(57M)→D林道に乗る5:46→(49M)→E林道終点6:35→(61M)→F京丸山7:36〜40→(127M)→G高塚山9:47〜57→(77M)→H竜馬ヶ岳11:14〜19→(61M)→I岩岳山12:20〜25→(39M)→J入手山13:04〜09→(65M)→K春野岩嶽温泉下車道14:14→(66M)→L春野山の村薪割り場15:20〜25→(41M)→Mたつはら橋(石切川を渡る)16:06→(10M)→N石切川起点に戻る16:16
@道しるべのある分岐点が基点。ここから大周回。 | Aユンボが林道を塞ぐ。 | A重機のすぐ裏側から通行止め。崩落地の復旧にはだいぶ時間がかかりそう。 | 途中の作業小屋(林業) |
B林道分岐(ゲート)。右へ進む。 | 洞木沢橋から下を覗くと、けっこうな高度感がある。 | 11.5Kmポストが見えたら登山口は僅か。ここまで4.5Kmほど林道を歩いて来た。 | C登山口。左に見えるバンドが登山道。 |
C掠れてきた登山口表示 | 登山道の様子。急峻だが上手に切られ疲労度は少ない。 | ウインチが設置してある場所。ヤンマー製のディーゼルエンジンがいい感じ | D林道に乗る。左へ。 |
山の神に挨拶をして・・・。 | 「姫娑羅のみち」 | 林道途中、1035高点北側の展望地。 | 展望地にはベンチがあり、休憩には最適。かなり居心地がいい。 |
E林道終点。写真右側の方に踏み跡がある。 | 1305高点 | F京丸山到着。樹林の山頂で夏は涼やか。 | F三等点 |
F判読が怪しくなってきた標識。 | F東から西を見る | F京丸山から東へ向かう。 | 1388高点東の様子。 |
1416高点西側の肩に乗ったところ。この先は広い地形。 | 1416高点の最高点付近 | 1414高点付近 | 奇形の木がある。ナツツバキかシャラか。かなり目を引く形をしている。命名「力こぶの木」(笑)。 |
急登が始まる | 山頂直下。おおむね歩き易い植生。 | G高塚山。陽射しの入る夏は暑い場所。展望はない。 | G新しい標識が掲げられていた。 |
G川根本町製(越境?)。300名山の標識。 | G二等点 | Gお約束でヤキソバパン | G高塚山から登ってきた西側へ降りて行く。 |
1510m付近。適当に降りて行く。 | ガレ地の上から見る竜馬ヶ岳。 | 広い尾根から一気に痩せ尾根に入る場所。ピンポイント。 | 1314高点南付近。 |
H竜馬ヶ岳。ここも展望のないピーク。あまり広くない凸点。 | H標識 | HHM氏の標識 | H三等点 |
H竜馬ヶ岳の南側はなだらか地形が続く。 | 1460m付近。相変わらず下草なしで快適。 | 岩嶽神社。1361高点 | 1361高点の南の峰にも祠あり。 |
痩せ地形にはタイガーロープが張り巡らされている。 | 木橋が2連で続く場所。 | I岩岳山。ベンチが在り涼やかな山頂。 | I三等点 |
I二つの標識 | I岩岳山から南に下る。 | 崩落地上もタイガーロープが流されている。 | 途中、東側斜面に大きな熊を見る。 |
入手山北側。雰囲気のいい尾根筋。 | J入手山山頂。 | JJR東海製標識。 | J入手山から南へ |
1208高点でT字路のようになっており、90度西に進路を変える。 | 植林帯斜面をタイガーロープに倣って降りて行く。 | 林道に出る。この先に送電線鉄塔が右に出てくる。 | 鉄塔の南側に踏み跡が下に向かっており伝って降りて行く。 |
再び林道に乗り、岩岳山登山口への道標のある分岐点に出た。降りてきたのは上の道。 | 714高点北側のゲート | K春野岩嶽温泉前には、この先に駐車場がないことを示す看板が並ぶ。岩岳山往復7時間と記されている。 | 途中でハクビシンと遊ぶ。側溝に入り込み、行ったり来たり・・・。 |
L春野山の村の薪割り場前分岐。544高点東側。見えるゲートの先を北に入る。 | L薪割り場とブルーベリーの農場。 | 野営場の炊事場 | 炊事場の先に展望場があり、ここは意外と居心地がいい。山座同定が出来るようになっている。 |
J棟を見たら、道なりに林道を降りて行くと行き止まりになる。途中から「山の村境界」と書かれた小道に入って行く。 | 途中で道が消え、藪斜面を200mほど降りて車道に出る。 | M石切川をたつはら橋で渡ってゆく。 | 石切川の流れ。雨の後だからだろう濁っている。思いのほか太い流れ。 |
N分岐点に戻る。駐車余地は1台(詰めて2台)。 |
大きな山行をするとき、月齢はかなり気にしている。「月明かり」は間違いない山行の助けになり、長駆をするときの安心材料になる。そして7月12日はスーパームーンの日であり、週末と重なったこの日は願ってもないお膳立ての日でもあった。
しばらく深南部はご無沙汰になっていた。ホイソレと出向けない場所なので、そんな位置づけなのだが、ホイソレと行きたいほどに良い場所が多いのもこのエリア。気になっていた、京丸川を中央にした周回をしてみることにした。以前は高塚山だけ踏めればと蕎麦粒山側からしか見ていなかったが、以北を見ると楽しく歩けそう。そして歩いている人が居る。しかしこの7月という時期はあまり報告があがっていない。ヒルが発生する場所のようで、それが為のシーズンオフのよう。逆を返せば静かに歩ける時期ともなる。もっとも、マイナーな場所なので、そもそもの登山者数が多いところではないようだが、この部分では深南部全体に当てはまることか。
地図を見ながら、うまい一筆書きはどうすれば良いか考えて居た。まず時計回りか反時計回りか。前半に高い場所へと行ってしまうのは反時計回り。ただしこの場合は基点をどこにするかが問題になる。石切地区と春野岩嶽温泉エリアとではだいぶ標高差があり。疲れた後半を楽にするには石切出発が妥当。一筆書きをトレースすると平面距離27kmほどの行程が完成した。さあ決行。
前日は19:30に出発する。これほど早くに出られる日も珍しい。いつものようにR52号で新東名まで南下し、新東名は島田金谷で降りて川根本町経由でR362を伝って現地に向かう。これはクネクネ道が多く狭く、疲労度が嵩む選択であった。浜松浜北まで新東名に乗って現地入りした方が楽だったよう。全ては後の祭り。石切地区の現地に到着したのは出発から7時間後の2:30だった。まあ下道を混ぜているからこんな事になるのだが・・・。全線高速で繋げていけなエリアでもあることに違いない。
石切地区のバンガロー施設から先の林道に入ってみる。通行止めの案内が2箇所見え、その先で大きなユンボが道のど真ん中に置いてあり、ここで林道は完全に崩落していた。その崩れようから復旧までだいぶ掛かりそうに見えた。適当な駐車場所が見いだせず。バンガロー施設の敷地にも置きづらい・・・。少し下って、小俣川沿いに続く林道に入ってすぐの余地でエンジンを切った。流石にすぐに動き出せず仮眠を決め込む。山中には本当にヒルは多いのか・・・想像しむずむずしながらの眠りでもあった。
停めたのは草の上、暗い中に外で準備をしていたらヒルに這い上がれてしまうのではないかと車内で全てを済ませた。そして3:41スタートをする。生活の跡のある、いや現在進行形のような民家が左に見える。暗い樹林に覆われた中をゆくと、後からジムニーの排気音が上がってきた。改造マフラーの音でそれとすぐに判る。私の脇を通り抜け、すぐ先のユンボの前で止まった。そしてUターンして降りてくる。窓が開き「どこへ入るんだい」と助手席の浅黒い男性に問われる。「入る」という言い方は山屋でまちがいない。「京丸山です」と返すと、「根性あるねー」と言う。通行止めを見てUターンしたのは間違いなく、「折角だから行きましょうよ」と誘ったが、「うちらは根性無しだから・・・」と言いながら車は下っていった。
崩落地は、本当に大きく抜け落ちており、山手側に細い歩道がつけられており、そこが唯一の現在の通過できる巾。この場所以降で危険な場所は無かったのでピンポイントで崩れたようであった。進んで行くと、暗い中に水の音が強くし出す。白い見栄えのする滝がいくつも出迎えてくれる。しかしそれより足元から来るであろうヒルに注意が行っていて、観賞どころでは無かった。早く夜が明けてくれないか・・・。1匹見つけ指ではね飛ばす。
進路右側に小屋が見えてくると、その先3分ほどでゲートの場所となる。崩落がなければここまでは入れるのが通常のよう。分岐する左の道を見送り、右の道へ入って行く。ゲート脇はスペースがあり二輪でも通過できる隙間でもあった。バイクを持ち込めば省力は可能。ただし今は崩落があるので・・・。洞木沢を高い位置で跨ぎ、その次の正木橋を渡るともう僅かで登山口となる。なにせ目標は「11.5Km」ポストのある場所。スタート地点が7Kmポストがあったので、最初に4.5Kmのアルバイトでもあった。
11.5kmの看板が見えると、山手側を気にしているとバンドが見えてくる。自然に同化した「→京丸山登山口」と書かれたものが唯一の道案内でもあった。落ち葉の堆積したバンドを上がって行く。勾配が強いものの九十九を切りながら上がって行く道は、そう負担なく伝って行くことが出来た。夜が明け、木々の間から見える景色により、高度をどんどん上げて行くのが判る。これから暑くなる。どこまで体力が持つか・・・。今日はアクセルとブレーキの多用で既に右足が疲れている。この事からも往路での山道の選定はミスしてしまったことになる。学習したことを次回に繋げないと・・・。
登山口から50分ほど登ったところで、人工物が見えてくる。林業作業のウインチ類が残された場所で、それらは昭和を感じさせるものでもあった。完全に過去のものとなり、現地に同化しつつあった。ここからルートは廃林道を辿ることになる。尾根に対し右手に進んでゆくと立派な林道に出合う。「林道 近道→」とあるが、これは下りに対しての案内のようであった。山手側にもう一つ道標があり。「←京丸山」と書かれていた。
再び明瞭な林道歩きが始まる。すぐに山の神の祠があり、本日の旅の安全をお願いする。10分ほど伝うと「姫娑羅のみち」と書かれた標柱なども見られ、こんな場所にして管理された道のよう。だんだん日差しが負担になってきたが、それは展望が良い場所を歩いていると言う事にもなる。荒れた路面ではなく、足許は快適で負担がない。歩きながら、登山口から取り付いたが別の場所から林道伝いにここまで来られるのだろうと思えた。
1035高点の北側は、ベンチまで設置された素晴らしい展望地になっていた。ここを最終到達点にしても良いほどの場所であり、これから進む下山路となる尾根筋が真ん前に見えていた。さらに先に進む林道を行くが、ここまで来ると林道もたんだんと疲れてきている様子が見える。九十九折りの途中が崩れだしている場所も見られ、展望地から先は車の進入は危ぶまれる林道になっていた。
林道終点地に着く。特に道標はないが薄い踏み跡が斜面を登っている。どこでついたのか二匹目のヒルがウエストあたりに這い上がってきていた。またまたはじき飛ばす。暑いからだろうか、水上で体験したヒルより活発ではない。エゾハルゼミだろうか、声とともに小さな姿も見える。既に3時間が経過しているが、まだ最初の高みまでも到着していない。少し安易に思いすぎていたか、既に構想では着いている時間であった。
1305高点は顕著な通過点であった。その先へ進み、登り一辺倒になると最後の方は大根沢山の南斜面のような雰囲気のある場所で出迎えてくれた。一番多いのはピンクの荷紐のマーキング、かなり乱打的に打たれていた。少し外した方がと思うが、まあ在って助かる人も多いのだろう。時計は経過時間を4時間を刻もうとしていた。やっと最初の目的地に到着。
京丸山。木々に覆われた山頂だが、かなり居心地がいい。静かな深南部の秀峰な感じのする場所であった。三等点は黒く文字が塗り込まれ、人為的にされたものだが嫌いではない。さあここから進路を東側に変える。高塚山まではいくつもの高点が待っており、アップダウンの多さは地図から見ての通り、もっと言うと、高塚山からの下山でも大きなアップダウンが続く。こんな時は何も考えずに「ただ進めば良い」と決め込む。
東進を始める。最初こそ踏み跡が見えるが、次第に散らばり、どこを歩いてもいいような場所が多くなる。今日は有視界だからいいが、ここからはガスに巻かれたら嫌な通過点になるだろう。結構広い尾根筋が続く。そんな中を跳ねるように日本シカが跳ねて行く。面白いことに集団行動ではなく単独行動の場合が多かった。季節柄か、ここでの通常なのか・・・。
1416高点は、肩に乗り上げてからが長く広い山頂部であった。山頂部にサッカーのグランドができるのではないかと思えるほどの広さだった。この山域も笹枯れなのか食害なのか、高さ300mmほどの枯れたササが覆う。1414高点も地図を見ずともそれと判る高みであった。ブユが顔の周辺に舞うものの負担になるほどではなかった。意外と夏にいい場所なんじゃないの・・・。
ナツツバキだろうか、途中に一本だけ目立つ奇形の木がある。この稜線での唯一のオブジェな感じで生えている。“なんでこんな形になっちゃったんだろう”そう思いつつ足を停めてしまう場所となっていた。1426高点を過ぎると、これまでに対しやや急峻な登りになって行く。斜行する踏み跡を拾うようにして高度を上げて行く。登り切ったと思ったら、まだ先がありもうひと登り。途中、竜馬ヶ岳側へ降りて行くルートを見ながら登ったが、ハッキリと判る道形は見いだせなかった。
高塚山到着。二等点が鎮座し、ここも居心地のいい山頂であった。ただし夏は暑いほどに日差しが入る。経路が樹林で涼しかったからそう感じたのかもしれない。そして展望はない。立派な真新しい標識もかけられていた。流石300名山の山頂。破線があるとおり、正規ルートは北からのアプローチとなろう。でも自然を楽しむには道はない方が楽しい。誰か居るかと思ったが、やはりこの時期は避けられるのか、静かな山頂で願ったり叶ったりであった。時計はまだ10時前、時間十分ではあるがこの先も長く続く尾根筋が待っている。下り一辺倒ならここまで思わないが、アップダウンに気力は続くかと思うのだった。
さて下山開始。左(南)側を気にしながら降りて行くが、それらしい踏み跡が見えてこない。京丸山からのことを思えば、同じような雰囲気だが、南の尾根筋にはもう少しハッキリと残っていると思っていた。途中からやや西側に寄るように進むと、崖地形が現れ、その縁を通過して行く踏み跡が現れた。尾根の西側に踏み跡は在るのであった。それに伝うように行く。明瞭な場所もあれば薄れた場所も多い。
痩せ尾根への入り口が下山時での注意点か、当てずっぽうで降りていたが痩せ尾根に上手く繋がることが出来降りて行けた。そして1314高点を越えた先が、高度差のある登りとなる。ほどほど嫌になりながら、“まだかまだか”と思いつつ足を上げて行く。右足に違和感を抱く、繰り返すが車の運転で右足しか使っていない疲れが加味されているのであろう。木々を掴みながら上がって行く。振り返ると良い形の高塚山がある。もう少し・・・。
竜馬ヶ岳到着。三等点とHMとイニシャルの入った標識が見える。このイニシャル、どこかで見ているが思い出せない・・・この地域で見ているはずなのだが・・・。今日のここまでの3座のピークはどこも展望がない場所。それにしては居心地がいい。植生とか山容とかがそう思わせるのだが、静けさも一因していると思えた。このあたりではもうヒルとは無縁で個体を見ることは無くなっていた。さらに南進して行く。
緩やかな勾配を降りて行く。もう少し高度を下げて欲しいが、このくらいの傾斜が心地良いのはまちがいない。この先に神社が在るはずであり、どこに安置されているのかと人工物を探すように先を見据えて歩いていた。そしてやっと出てきたのは1361高点のところで、この場所にして解説板も設置され謂われを学ぶことができる。暑い日であり、水分補給の前に石像に水を掛けてやった。山に遊ぶもの信心深く山に守られたい。鳥居を潜り降りてゆくと、次のピークにも祠が安置されていた。こちらも先ほど同様にお参りして進んで行く。
途中下山路と書かれた標識がある。その作道は右に降りて行っていた。小俣川沿いの林道へと続くのか、楽をしたく誘われそうにもなるが、残り2座を踏まないと予定が完結しない。下山路を右に見て尾根筋をゆくと、岩の痩せ尾根、木橋などがあり、ややこれまでに対し危険度が増すが、濡れてさえ居なければどの場所もしっかりグリップする場所ではあった。時季にはこの周辺はアカヤシオが綺麗らしいが、残り花も在るわけで無し、全くその様子は伺えなかった。
岩岳山到着。ここは立派なベンチが持ち上げられ、疲れた身体にはちょうど良い出迎えであった。この山頂にもHMのイニシャルの入った標識があった。“どこで見たんだっけなー”まだ思い出せずに居た。さあ次が最後の目的地。この頃になると地図をかなり眺めつつ下山路を模索していた。車の置き場所に最短で戻る方法。計画段階で決めてはいるが、臨機応変に変更するのもいつもの順当手段。少しルーズにしたほうが、決まりきっていないほうが行動が楽しい。これまで同様にこの山頂でも展望はない。
岩岳山の南にも崩落地形が在りタイガーロープでガードされていた。途中から東側に下草のほとんど無い枯れ葉で茶色しか見えないような地形が広がる。そこに何やら動くものを発見する。大きい。黒い。間違いなくクマだった。大人のようで150Kgとかありそうな体躯をしていた。こちらに気がついていないようで、いつもの姿なのだろうゆっくりと歩いて進み、何の木だろうか根元を囓りだした。その距離20mほど。こちらは嬉しくてたまらなかった。久しぶりのクマ、それも大物。音を立てながらバリバリと食んでいるのが見える。よく見るのは縦についた爪痕、ここのクマは、横に爪を入れていた。繊維に対しその方が正しい。少し進化したクマがここには居るのかも。邪魔をしないようにと先へと動いた次の瞬間、一目散に東側に転がるように駆けていった。本当に臆病なのだと判る。もう少し気づかれないよう進めば良かったと反省する。こちらがアウェイ、彼らが(の)ホーム。
入手山が近くなると、線の細い植生が続く。独特の風合いがあり好きな風景でもあった。そして入手山に到着。JR東海製の標識がポツンと立っている。目標地とするには、やや達成感がない感じであり、計画するなら岩岳山、さらには竜馬ヶ岳などまで進みたいと思えた。ここも展望のないピーク。経路では、やはり林道途中の展望場が群を抜いて最高の場所であった。これで全て踏み終えた。これまでに輪を掛けて地図を眺める。隙あらば省力したい、非力なハイカーは常に楽を選ぶのだった。
南に降りてゆくと、1208高点に乗り上げる。ここはT字分岐になっており、90度西に進路を変える。ここまでに特に悪い足場は無いように感じた。岩岳山の北側には、「悪路につき・・・」と注意書きがあったが、どこのことを言っているのかと確かめるように歩いていた。植林帯の中に入ると、急下降の九十九折りを繰り返し、タイガーロープに繋がるように降りて行く。この先も至極急下降の場所があり、そこを降りるとなだらかすぎるほどの緩斜面が続く。そうこうしていると右側に林道が現れた。そこに乗る。
進む先右側に送電線鉄塔が立っていた。その鉄塔の並ぶ先に向かえば小俣川があり、巡視路を思うと上手く右岸へ渡れるのではないかと思えた。地形図に見える渡れる箇所は、破線でしか示されておらず、渡れない場合を思うとギャンブル性が高かった。それでも鉄塔の南側に巡視路のような道形があり、伝っていってみる。途中で有耶無耶になるものの下を走る林道に出た。そして南に進んでゆくと、「岩岳山」と書かれた分岐点に降り立った。途中で見た下山道=登山道であり、その場所へ連れて行く道標で間違いなかった。色々模索していたら、こんがらがってきて、最後はスマートに実線路を進もうか・・・となった。そして送電線の下には巡視路は無いことも判った。
分岐から高度を下げるように、林道を南進してゆく。717交点北にはゲートがあり、越えてゆくと春野岩嶽温泉のロッジ下となった。ここには岩岳山まで往復7時間と書かれた看板が並ぶ。右の方に広い登山者用の駐車場が見える。向かいの施設には1台の車が停まり、誰か居るようではあったが、なにせ閑散としていた。温泉は営業を止めてしまっているようで、下山後の風呂として期待していた私には残念で仕方が無かった。
林道に小型動物が現れた。鼻のところが白いハクビシンであった。側溝から道を横切る溝に入り、下からこちらを見上げたりしている。追ってゆくと反対に移動し、さりとてここから逃げる気配もなく留まっている。呼吸の仕方からして脅えている様子もなく、適当な遊び相手をみつけて遊んでいるふうにも見えた。アスファルトの上をどんどん進んでゆく。途中何度も山の村の散策路の入口がある。迷路のように張り巡らされているのか、あちこちに見えた。伝って行けば北に進むようであり、気にはなったが全てを見送る。
送電線を再び潜り、544高点の西側で舗装車道とダート林道との分岐点となる。ここの北側は山の村の薪割り場となっていた。その中にもこれまでと同じような刈り払いされた散策路があったが、ゲートされているダート林道に入ってすぐの北に進む道を降りて行く事にした。するとその先には野営場(炊事場)があった。“こんな場所に・・・”素直にそう思えた。野営場の所には展望場が設けてあり、山座同定絵図もあり、ベンチも置かれ景色の良い場所であった。そこから続く下に向かう道を行くと、ログコテージの大きなものが2棟在った。ここでも、こんなところに・・・と言いたくなるようなものだった。明瞭な林道を行くが、行き着いた先は植林帯で行き止まり、少し登り返して途中にある「山の村境界線」と書かれた所を入って行く。この道は丸太を並べて階段を作ってあり、最近の作業のようで新しい。これで上手く下まで行けるのかと思ったが、途中で道は無くなってしまった。下の方を見ると舗装路が見える。距離にして200mほどあろうか、急下降ではあるが戻る選択はなく降りて行く。
林道に乗る。車で通過した見覚えのある林道。杉峰からの林道で間違いなかった。往来する車は1台も無く山中同様静かなまま。石切の集落が廃村しているから尚更なのだろう。進むに連れ川向こうの集落跡もちらちらと見えるようになってきた。石切の集落である。しかし大きな九十九折りが待っており、なかなか高度を下げて行かない。静か過ぎるほど静か、付近から人が去るとこうになるのか・・・。
たかはら橋を渡って行く。見下ろすと石切川の流れがある。雨のせいだろう濁っており川幅いっぱいに流れがあった。右岸側に移り東に進んで行く。廃村からどのくらい経ったのか、消防小屋の後ろには薮の中に見え隠れする家も在った。まだ綺麗に花を咲かせている庭を持つ家もある。のどかなゆっくりと時間が流れる場所。自然淘汰とも言えるが、今の時代に大事な場所とも思える。流れを右に見ながら進んで行く。少し雲行きが怪しくなり雷鳴が聞こえてきた。そろそろ空が泣き出す頃か、ままタイミング良く降りられたようだ。
分岐まで戻ると、じっと待っている車が見えた。毎回何時間も放置され、その待つ姿が健気でならない。そしてまた足となって家路に向かって行く相棒なのだった。車に到着し、最後のヒルのチェック。動きの悪いのが一匹出てきただけで、今回は吸着される被害はゼロだった。
振り返る。岩嶽温泉側に自転車を置いておけば、ほとんど漕ぐことなく石切側に降りられる。かなり省力になるだろうし時間的には1時間、いや1.5時間ほどほど短縮できたのではないだろうか。判っては居たが「歩き」に拘り全線歩き通した。逆周りであったなら、後半の登り上げで負荷がだいぶ違うだろうと思えた。やはりここは時計回りの選択となろう。また、最初の京丸山のみでも、十分に達成感のある山でもあった。車でのアプローチが近かったら良いのだが、遠いがために鈍行列車のような歩みになってしまった。