神奈山    1909.0m                     

 
   2015.5.30(土)    


  晴れ    単独       関温泉より   行動時間:4H36M 



@関温泉スキー場スキー学校前5:22→(35M)→Aリフト頂上駅5:57→(82M)→B八方睨7:19→(34M)→C神奈山7:53〜8:17→(23M)→D八方睨帰り8:40→(52M)→Eリフト頂上駅帰り9:32→(26M)→F麓9:58


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@関温泉スキー場スキー学校前よりスタート。見える軽トラは山菜採り。 ゲレンデをひたすら登る。経路に道標なし。 途中から振り返る。 Aリフト頂上駅。リフト小屋の鍵が付けっ放しであった。
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Aリフトトップより山道に入る。 雪が残る谷は雰囲気が涼やか。 渡してあるロープが切れていた場所。ステップを切ってトラバースをトライしたが危なすぎ、高巻きで通過。復路ロープを繋ごうと努力したが、危険で中止。 三つ目の雪渓はやや長い距離トラバース。往路は何とかトラバースしたが、危なすぎで復路は高巻き。
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ツバメオモト イワカガミが日に輝く。 シラネアオイがここでは花季中盤を過ぎた感じ。 B八方睨
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B八方睨から妙高山 この雪渓は緩斜面で無問題。 山頂直下まで北側には雪渓が残る。 C神奈山到着。
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C東端に三等点が埋まる。 C標識 C山頂から野尻湖側 CM大の標識も残る。
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C山頂部のタカネザクラが満開。 C美生柑を持ち上げる。 C雪渓があると涼やかで快適。5月にして暑すぎる位の気温だった。 ムシカリは上から見る花。下から見上げてもあまり綺麗ではない。
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雪渓の残る上の尾根が八方睨。 D八方睨帰り。 大ブナ林。雪渓の状態では、ここから尾根通しで藪を進んだ方が安全に思えた。 サンカヨウ
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雪が腐れば通過可能だが、ガチガチに堅い。高巻きで通過。 快適なブナ林。 Eスキー場に出る。 急峻の場所で道が流れている場所がある。
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麓の様子。スキー場内の林道脇は側溝の工事をしていた。 F駐車位置が曖昧だが、スキー学校に寄せて停めるのが正しいよう。    



 

 週中、昼に夕刻にとチェーンソー作業を行った。その結果、週末の余力が残っておらず思考が藪に向かなかった。金曜日にも1t程を積みおろしし、こんなことをしているから腰が悪くなる一方だった。本来は体力づくりの意味もあるのだが、度を越えてやるもので・・・。

 

 スキーで上がろうと残していた場所であり、この時季であればだいぶ負荷が減るので、下山後は惣滝も併せて観瀑することにした。かなり楽な気持ちで、雨も降らないし、残雪もあるだろうがそれほどは難しくないだろうと予想した。でも、実際は・・・。

 

 1:00家を出る。急ぐことが一つもないので地走りで現地へ向かう。金沢在住時、高速が繋がっていない時には頻繁に使った国道18号、野尻湖付近は見慣れた景色のはずが久しぶりに通り懐かしさを思ってしまう。それほどに高速を利用し下道を使っていない事が言える。関・燕入口より国道を離れ公園線を登ってゆく。5キロをも続く直線道路はここならではの道であろう。そして関温泉地内に到着し、オフシーズンになったスキー場の余地の停める。

 

 スキー学校前には運転手の乗った軽トラが既に到着していた。ここも漁場なのだろうとすぐに察知した。私が車から降りると、触発されたようにすぐに降り身支度を整えスタートして行った。笹薮に入るために暑くても雨具を着こんでいる。背中には小さなザック。理に適った姿に見えた。こちらは小水をしたら、少し仮眠とした。情けないがすぐに出発する元気がなかった。既に夜が明けているが、出発を5時頃と予定して30分ほど睡魔に身を委ねる。

 

 天気は快晴。この天気に他に登山者が来るかと思ったが、まだここはオフシーズンなのかスキー学校前は静かなものだった。重い体をほぐしつつ準備をする。既に気温が高い。羽織っていた長袖シャツを脱ぎTシャツとなる。山菜採りのおじさんはすでに汗だくだろう。向かう経路のどこかでゴソゴソやっているのだろうが、こちらを山菜採りに見えたのなら申し訳なく思う。そして作業道に足を踏み入れてゆく。

 

 スキー場内の作業道は側溝の改修中で、曲がったそれらを一つ一つ取り外しては定位置に戻す気の長い作業がされていた。乾いた土埃が舞う登山道、芝の生えた場所を拾うように登ってゆく。進路右手にヒュッテがあり、そのまま横目に通過し場内の北端に行く。そこからその北端を伝って高度を上げてゆく。道標らしきものは皆無だが、明瞭な道はここしかないので迷う事も無い。しかし、途中でその明瞭だった道が正面の崖地形に吸い込まれる。土の場所に踏み跡が残るのでルートと判るが、ここのみルートが流れていた。だからと言ってう回路を作道するでもなく利用者に任せた感じであった。振り返ると鍋倉高原側の山々が見えてくる。広大ないい景色であった。

 

 リフト頂上駅に到着。よく見ると係員の入るブースに鍵が付いていた。近寄って捻ると簡単に開錠し開けられてしまった。経路の避難小屋にもなるが、ただ単に忘れてしまっているのだろう。さてここから山道に入る。ここまで上がって初めて道標が出てきた。ブナの新緑の中を走る一級の道を伝って行く。暑かったここまでが一瞬にしてオアシスの中となる。そのブナの中を通過してくる風の気持ちいい事。特に雪渓が残る谷の所は雰囲気温度が数度下がり心地よかった。最初の小谷の雪渓は3歩ほど踏む程度、大ブナ林の表示の先で、二つ目の雪渓が現れる。

 

 二つ目の雪渓は向こうまで7mほどだった。わずかな距離と思うものの、滑りだせば下に長いのも見える。そして最初の一歩を蹴り込む。しかし入らない。ゼロではないがいつものように2〜3度の蹴り込みでも、思うようなステップにならなかった。その一歩目に我慢しつつ片足を乗せ2歩目もやってみる。堅い・・・薄く雪が削れるのみ。ここはロープが流されていた場所だが、無残にも切れぶら下がっていた。これが結ばれていればよかったが、ピッケルもアイゼンも持っていない状況に、ドキドキの通過点になってしまった。一度引き返し呼吸を整える。渡渉するかのように上に下にと行けそうな場所を探すが、どうしても見えてこない。やむなく高巻きをしズボンをドロドロにして通過してゆく。この先もこの調子か・・・完全に舐めていた。標高からしっかり判断すれば良かった・・・。

 

 3つ目の雪渓が現れる。斜行した先に夏道が見えており、先ほどの3倍はありそうな距離に見えた。ここは大ぶりな雪渓で高巻きするにも面倒そうに見えた。ちょうどクラックが横に走っていたので、そこに左右4本の指を突っ込みつつカニ這いの様にトラバースをしてゆく。下りも使うので、何度も何度もけり込んでステップを刻む。こんな時、アイゼンの有難さを痛感するのだった。ここもひとたび滑れば見える範囲でも50mほどは滑落する場所であり、見えない先どのくらいあるのかは判らなかった。一瞬の気の緩みが大事故になる。こんないい天気に痛い思いはしたくない。気持ちいい日には気持ちいいままに・・・。手の指先、足先に神経を集中させ、じわりじわりと雪面を征服してゆく。そして最後の2mほどは飛び移るようにして雪のない登山道に飛び移った。

 

 苦労したご褒美とばかりに、この先は夏の花が咲き乱れておりカメラを向けながら愛でながら通過してゆく。いつしか樹林帯から抜け出し、日の当たる尾根歩きとなる。こうなると雪渓の心配は無くなるかと安堵するが、先に何があるかわからない。まだ緊張の糸はつないだままとし、先ほどの雪渓を下りはどう通過しようかと既に考えていた。今日は樹林帯以外ではほとんどの場所で妙高山が見えている。まだ雪を纏ったその姿は疲労を抑える清涼剤でもあった。

 

 八方睨到着。尾根上の展望地で、名前が言うようにいい展望がある。ここからは立ちはだかるような正面地形だが、ここまで来れば目標地点も近い。コシアブラが時折姿を見せ、自ずと柔らかそうな葉を目で追っていた。尾根右となる北斜面に多くの雪が残る。その付近になると一気に涼やかになる。太陽熱に負けない冷気となろうか。この分だと、山頂でも雪に有りつけそう。高度を稼いでゆくとルート上にも雪が残る場所が出てきた。滑りやすいものの緩斜面で問題なく通過してゆく。ミネサクラがちらほら見え出すともう山頂部。

 

 神奈山登頂。先の方に標識が見え、乗り上げた東側の肩に三等点が埋まっている。居心地がいいのか、汗臭いのが登頂したからか、羽虫が周囲に多く払うようにしつつ休憩となった。少し戻れば直下まで雪があり、そこでの涼しい休憩も可能であった。唯一の持ち上げた食材である美生柑を食べつつ、下山路を考える。少し進んで大倉谷を下ろうか・・・その方がコースとしては面白い。ただし谷ルートでもあり、この日の往路がトラウマになっていた。危険個所は2ヶ所。そこを高巻すれば問題ない。もう一つは、大ブナ林の場所から尾根伝いで藪漕ぎすれば雪の心配は無くなる。二つの策が考えられ、往路を戻る事とした。

 

 それにしても体が怠い。日差しの強さと気温の高さからか、ビタミン補給してもシャキッとしなかった。それほど疲労か嵩んでいるのか、今日はここで良かった事になる。年々疲労が取れづらくなっている。この事を判って労わって行動せねばならない。そんな中でも楽しみはある。ネマガリタケがあり、コシアブラがあり、スキー場内にはワラビがあるのだった。下山開始。

 

 下界を見下ろしながらの下降はこの上ない気持ちよさ。足で降りているものの、飛行機にでも乗っているかのような展望があった。山頂に着いたときから続く破裂音が北側の谷に響く。そう言えば北には自衛隊の演習場があったはず、付近の山を机上で登った時のことを思い出した。そう判断できると、破裂音の質に納得が出来た。途中でコシアブラの脇芽を適量頂戴する。さらに、ちらほらと顔を出すネマガリの新芽も少々。小さなビニール袋が地産により膨れてゆく。

 

 上から見下ろす八方睨の尾根も雪を擁して綺麗であった。相変わらず破裂音が続く。だんだん、“この暑い中に訓練も大変だなー”こう思えてきた。八方睨を経て20分ほど下ると大ブナ林の所となる。尾根伝いには獣道のような踏み跡が見える。冬季ルートと判断した方がいいと思えたが、その薮ルートに行こうか行くまいか迷う。そしてこの日は薮を避けた。降りて行き斜行した雪渓の場所となる。迷わず高巻きをする。足場は寝たネマガリが多く、木々を掴んでいないと雪の上とそう変わらないような場所もある。慎重にゆっくりと足を進め雪の南側に向かう。スパッツはザックの中にあるのだが、出し惜しみをしたもので、足元はドロドロになってしまった。姿恰好・装備は大事だったりする。

 

 降りてゆくと鈴の音がしてきた。誰かが上がってくると普通に思ったなか、音が近くならず不思議であった。そしてロープの切れた雪渓の場所まで降りると、そこを高巻きして戻っている男性が見えた。こちらには全く気付かず一生懸命に木を掴みながら進んでいた。それならと、ロープを掴んでトラバースを開始する。腕力頼みで進まねばならないのだが、滑った時に腕力が持つか信用は無く、トライしたが戻る事となった。往路との時間差は2.5時間ほどだが、硬いままの雪であった。男性は上の雪渓で撤退を決めた様子で、上も高巻きで通過できることを告げると、再チャレンジするとばかりに下りかけた足を山頂に向けた。その時、嫌な話を聞いた。「ここ蛭が居ますね。さっき足元を見たら着いていました」と。高巻きをするのに藪の中に入るのだが、これを聞いてからは別の心配をせねばならなくなった。と言っても、彼らを逐一発見するのは至難の業であり、着かれぬよう気持ちは急いで、行動は慎重に通過してゆく。背後に鈴の音が遠ざかってゆく。

 

 危険個所が無くなり快適なブナ林の中を降りてゆく。周囲からは夏本番の虫の音が聞こえる。この異常とも言える気候に自然界は対応できるのだろうか、健康的な登山も罷り間違うと体に良くない行動に思えてしまう。スキー場に出て日差しが強くなると、それを強く思うのだった。ワラビを積みつつ降りてゆく。重曹で灰汁抜きしようか、もっと簡単な方法は無いかとスマホで検索すると小麦粉でのやり方を知る。現地に居ながら調理までをも判ってしまう便利な世の中、柔らかいワラビが重さを増してゆく。

 

 登山道幅から林道幅となりスキー場を降りてゆく。麓側から重機の音がしていた。側溝の工事がされているのか、そこが見える場所まで来ると、ユンボが下っているところであった。スキー学校の場所には、これから出発する男女のパーティーが見える。ここまで陽が上がってからの出発は私にはできない。すれ違いざまに「アイゼン持たれてますか」と尋ねると、察したようで「まだありますか」と返してきた。さらに奥方らしき人が「私ここで滑落したことがあるので、行ける所まで行って引き返してきます」と言う。行かないのではなく行ける所まで行く前向きさ。素晴らしい。

 

 車に到着し、すぐに燕温泉側に上がってゆく。惣滝に向かうのだが、雪融けからの整備がされておらず、妙仙橋も横板が外してあり対岸からの道も荒れた状態だった。その代り、この時季ならではの雪解け水での惣滝を見ることが出来、それはそれは大迫力であった。河原の湯と黄金の湯に浸かり、ここでの一日を終える。

  

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