小中津森     1310m   
            

 
   2015.1.31(土)    


   晴れ     単独       能泉湖(荒川ダム)東岸より      行動時間:3H44M 

  


@轟家(ダム駐車場)6:46→(35M)→A林道分岐点7:21→(26M)→Bゲート7:47→(37M)→C林道を離れ取り付き点8:24→(24M→D小中津森8:48〜53→(20M)→E林道(取り付き点)9:13→(27M)→Fゲート9:40→(21M)→G分岐帰り10:01→(29M)→H駐車場10:30



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@荒川ダム東岸の轟家のところから林道に入って行く。駐車場はダム駐車場を利用。6時台に係りの人がゲートを開けていた。 林道途中には作業小屋が多い。 植樹帯の中に立派なログ構造の建物も見られた。 A地形図に見られる分岐の場所。
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A「奥仙丈」の文字が見える。おそらくは水ヶ森林道と繋がっていると思われる。 Bゲート。一般車両はここまで。冬季でも四駆ならここまで入ってこられる。ただしリスクは多い。 林道途中から小中津森を望む。 水ヶ森側の山塊。そこに新しい林道が切られている。
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C林道からの取り付き点。 Cこの表示の場所。 尾根の様子。薄い踏み跡はあるが自然に戻りつつある。 途中の林業作業場。
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滑車の基点がここに在った模様。 直下。ここまでに二つほどコブを乗り越してくる D小中津森山頂。 D小中津森から見る中津森。
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D西側に見栄えのする赤松が生える。 D西から見る山頂。 D珍しくテープを残す。人工物はこれ以外何も無い。 E林道に戻る。
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林道途中から南アルプス遠望。 林道は、ほぼ全面でアイスバーンになっていて、かなり危険な状態となっていた。 Fゲートに戻る。猟師の車が上がってきていた。 G分岐帰り。猟師の車が見える。
matuba.jpg uekara.jpg  toucyaku.jpg   
獲物が上がってくるのを待つハンター。 ダム湖駐車場を見下ろす。 H駐車場に戻る。ここもスケートリンクのようだった。




 前日、業務上のトラブル発生で、昼飯も食べずに相模原に向かった。関越から圏央道に入ってゆくと、どんどんと降雪量が多くなり、八王子や向かった現地では上州よりはるかに積もっていた。いつもは、行き先に苦しくなったら南に向かえば雪の少ない場所があると思っていたのが、これでは八方塞になった感じ。気合を入れて高みへと思うが、このトラブルがいつ直るか、何時に終わるかも判らず翌日の予定がかなり白紙めいてきた。

 
 なんとなく奥多摩に入ろうかと気持ちが動いていたのだが、高尾山付近を目の当たりにすると、車でのアプローチも容易くはないように見えた。気苦労を加味した労働を終え遅くに上州に戻ると、けっこうにお疲れモードになっていた。思考が前向きにならず、完全に守りに入っていた。こんな気持ちの時に面白そうな場所は無いか・・・。

 
 御巣鷹山と抱き合わせで中津森も踏んだ時に、経路と下山路で結構に神経を使った。危険を伴う場所があり、この時に抱合せて登ろうと思っていた小中津森は残してしまった。この小中津森は、東からのアプローチで数年前にKUMO氏が踏んでいる。確かに、この複雑地形では普通に東側から狙いたくなる。ただし降雪時なら、板敷渓谷の複雑地形を伝ってもトレースは残るので、危険度のリスクは上がるが帰路ルートを逸する事は少なるなるだろうと考えた。地形図を見ると、荒川ダムから登る林道が1062高点の南まで延びている。これを使って1062高点を経て、小中津森の南西尾根に取り付ければと考えた。

 
 考えたはいいが、大滝上流から派生する支流の流れが気になった。水線として描かれていないが、流れがあると考えるのが普通。等高線からは流れがあっても緩やかで細い想像ができるが、降雪もありどのようになっているかは現地に入らないと判らない。でも突っ込んでみよう。全ては経験。せっかくの降雪後、それを利用できる場所に入ってみる。

 
 1:30家を出る。出張疲れで、野辺山で少し仮眠を入れてから韮崎に降りた。そしてホッチ峠経由で昇仙峡に向かう。外気温はマイナス7℃、路面はツルツルでわずかなミスが許されず、緊張しながらハンドルを握って進んでいた。そして何とか金桜神社まで降りると、“帰りは甲府側に降りよう”と誓うのだった。荒川ダムの表示に従い左折してゆく。前回は野猿谷側に入ったが、橋を渡ったら右折して轟家(蕎麦屋)側に向かう。その轟家は冬季休業の案内が出ていたものの、住宅として住まわれているようで駐車場は利用できない。ダム湖の駐車場に戻るもチェーンゲートがされていた。トイレ舎がある前に3台分のスペースがあり、この場所に突っ込み仮眠とした。

 
 6:00車が背後を通過し停まる。運転手は駐車場のゲートを開けて走り去った。こんな時間に開門。それほどに人が来るとは思えないが、逆を言うと管理者の自由で開閉門がされると言う事だろう。菓子パンを齧りながら冷めたコーヒーで喉のつまりをとる。駐車場に移動するも、細かくスペースが区切られているために狭いのと、全面がアイスバーンになっていて至極滑るのだった。でも公的駐車場だから問題が起こらないのはここ。なるべく轟家側に駐車して準備をする。ザイルを持ってくれば良かったか、最後まで気になったのはこのことだった。


 6:46出発する。轟家の2頭の犬に吼えられながら林道の緩やかな坂を上ってゆく。黒くてよく判らないが、フラットコーテッドレトリーバーか、なにか侵入者な気持ちになり足早に上がってゆく。最初のターンを経て南に向かうと、使われていない林業小屋がポツリポツリと複数見えてくる。少し間隔をおいてまた。確かに従事者が多かったのだろう、周囲は枝打ちされよく管理された木が多い。昔の里山は皆このようだったのだろうが、ここにおいては林道の有無が状態をよくしているのだろうと見えた。

 978高点の北北東で林道が北に分岐している。ここには「林道 奥仙丈線」と書いてあった。地形図からは、わずかに進むと終点地となっている。地形図を広げながら歩き、そこからの進路を周囲の植生や雪の量を見ながら模索していた。
その地形図の終点地に到着するも、終わる気配は無く状態のいいまま先に続いていた。これはこの状態のまま1062高点のある尾根を巻けるかも。そう思ったのだが、すぐに道形はターンし、進む方角が南となった。ここで悩んだ。上の方を見るも、ここに続く道は見えてこない。このまま伝うとどこに連れて行かれるのか。衛星画像を見てくれば良かったと思ったし、今の今スマホで見ても良かった。でもこの迷っている状況が楽しい。外野から答えを貰って正解を出してもつまらない。


 既に足元はアイゼン必須のアイスバーンになっていた。道幅全面がそうで、その上に70mmほど雪が乗っていた。空を切るようにグリップしない場面も出てきた。これだと水のありそうなところはさらに危険か。悩みに悩んで予定を変更して林道を伝って行くことにした。最初の意気込みに対し不甲斐ないが、常に臨機応変な行動スタンスに変化無し。


 足元は一定してツルツル。南に向いていた進路が、ターンして再び北を向く。標高1120m付近の緩斜面まで進むと、とうとうここにゲートが現れた。ここまでは四季を通してマイカーで入れるよう。入ってくればと少し思ったが、体感した氷の路面では、歩いて上がってよかったと思っている。ここにゲートがあると言うことは、この先そう短距離で林道が終わるとは考えずらい。どこまで伝って行けるのか。向かう方角からして1062高点は上手く巻けそうに思えた。

 しかししかし、その尾根を乗越す場所と来ると、尾根の西側と東側は伝うには厳しい斜面だった。ちょうど等高線の密な場所で、林道を離れて北に進むにはかなりリスクを伴う行動となる。現地を見てそのまま林道を進むことにした。尾根の西側に出ると、目指す小中津森が北に姿を現す。林道は水ヶ森の西麓を通過してゆくようにまだまだ先に続いている。真新しいコンクリートを吹き付けたよう壁が、削った爪痕を隠す絆創膏のように見える。小中津森から東に続く尾根にその林道がぶつかっているように見える。あそこまで行けば・・・。こうなると、最初からKUMO氏のように東側からアプローチすれば良かったか。もっと言うと、KUMO氏の山行記録を読ませてもらえば、この林道も書かれていたはず。とは言っても、それは無積雪期に限る。


 それにしても今日は強風が吹いている。今日の雪山は高所では疲労度が嵩むだろう。コンクリートよう壁は、既に崩落している場所もある。これではいたちごっこで、頻繁にメンテが必要になるだろう。何キロ歩いただろか、歩き出しから1.5時間ほど経過し、小中津森からの尾根を林道が乗越す場所となった。尾根を大きく切り欠いた場所で、林道面より5mほど高い位置に尾根の頂部が通っている。南側から這い上がってゆく。


 尾根上は杣道が在ったであろう痕跡があるが、現在は雑木が覆い行く手を邪魔するような状態であった。藪尾根と言うほどでもないが、ここまでの林道歩きが開けた場所だったので、少々の障害物がいつも以上に負荷に感じるのだと思える。すると、前方に明るい場所が出てきて、玉切りしたような朽ちた丸太が見えた。間違いなく人の手が加わっている。こんな場所にどこから登ってくる道が在ったのか。少し先に行くとワイヤーが巻かれた木があり、滑車の基点がここに造られていたようであった。林業作業が盛んだった名残でもあり、山梨らしくたくさんのごみが雪の中から顔を覗かせていた。もうすぐ目的地。


 尾根上は3つの小高い場所があり、その西側の高みが小中津森となる。その手前からは、ややそり立つような角度となり、足場を気にして這い上がらないと危険だった。雪が無ければそれほどでもないだろうが、素直に東側を伝おうと思うと、この時期は捨て縄でも欲しいと思えた。そして登頂。


 期待して登ったものの、在ると思ったKUMOは無かった。そして人工物は一切ない場所であった。樹林に覆われてはいるが中津森側は見える開口はあった。西側にはいい形のアカマツが生え、周囲がここまで植生が濃くない時は、そのアカマツが目立つ存在だったろうと思えた。南側には顕著な尾根が見える。伝って下ってみようかと思ったが、登りならいいとして下りで二進も三進もいかなかったら辛い。林道が奥まで延びていたのも何かの巡り合せ、復路も使わせてもらうことにした。


 戻りながらそれでも、滑車が設置してあった場所では、どこからか登路が上がってきているだろうと、消去法で東側斜面を見下ろしたが、それらしいものは見えてこなかった。この尾根を往時も使ったのか・・・それにしては踏み跡が薄すぎるような・・・。そんなことを思いつつ伝いながら林道に出る。


 林道を戻ってゆく。2013年のこの時季、入野谷山に入ったときの分杭峠からの車道歩きもアイスバーンで酷かったが、それ以上にここはテカテカだった。重心の置き所を間違うと、ステンと容赦なく倒される。ザックにはアイゼンが入っているものの、ストックでバランスを取りながら敢て試練の行動をとる。無駄に筋力を使うのだが、これでいい。ちょっと今日は生温いから・・・。

 ゲートまで戻ると、真新しい轍が上がってきて戻っていた。不審者だと思って偵察に上がってきたのか、いや、待てよ、あれか・・・。分岐まで戻ると予想的中でケージを積んだ猟師の車が置いてあった。何処で猟をしているのか、それが一番に気になった。林道を降りて行くと、一台また一台と路上に置かれた猟師の車が見える。完全に猟場の中に入ってしまっているようだ。まあ、こんな場所を歩くような者は居るとは思わないだろう。トランシーバーをスキャンさせて、交信周波数を探したが判らなかった。そうこうしていると、麓側を向いて獲物を待っている猟師が見えた。そして追い上げている猟犬の吠え声も聞こえてきた。林道をターンして行くと、その狙っている中に入ってしまうが大丈夫だろうか・・・。今日は明るい服装で来ているので、猟師には気づいてもらえるだろうが、無駄に緊張しながら降りて行く。

 
 猟師の車に貼ってあったステッカーからは「天狗の会」と言う猟師グループのようであった。事故も想定して林道に置いてあった車は全てデジカメに収める。ドライブレコーダーと同じ、映像は自分を助ける。そして轟家への最終ターンをすると、猟師の姿が轟家の南に見えた。やや南側で猟をしていたようだ。猟の邪魔もしてないだろうし、危険度も薄らいだ。ただし気を抜くと、ここでも路面はツルツルだった。猟師らは当然四駆だが、場所によっては危なかったはず。

 再び轟家の前で吠え立てられる。これはここに入る儀式のような物と諦める。すると、前方にヘルメットを被った山屋が見えた。と言うより持っているアイスバイルから氷屋とすぐに判った。ここにもゲレンデが在るのかと、上を見ると、確かに白い凍った壁が見える。ただしその上や横に猟師の姿がある。私より氷屋のグループのほうが猟場の中にいる感じ。そんな近接してお互いの趣味を全うできるのか、既に下山し外野の気分で眺めていた。駐車場に戻る。

 
 振り返る。雪があるから面白いとかはなく、ただ単に負荷が増えるだけで、雪の存在が登る為の助力にはならない場所。無積雪期に水ヶ森林道からアプローチする山でいいと思う。その前に、ここまでマイナーな山に目を向ける人は少ないでしょうけど。



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