矢名瀬のエバタ山 1315.7m
2015.11.7(土)
晴れ くもり 青屋地区桑名洞林道より 行動時間:2H37M
@桑名洞林道途中落石箇所前6:22→(9M)→A分岐6:31→(47M)→B林道終点7:18→(32M)→C矢名瀬のエバタ山7:50〜55→(17M)→D林道に降り立つ8:12→(40M)→E分岐帰り8:52→(7M)→F駐車余地8:59
左への道にはゲートがされている。右に曲がると桑名洞林道。 | 林道入口 | @普通車には少し酷だが、何とか入ってこれる。この先は山手側からの落石があり諦めスタート地点とした。 | 落石地帯。3箇所ほどあり鋭利な石が落ちている。 |
採石場と思しき場所。 | A964.3三角点の尾根の南側にある、最初に出合う分岐を右に入る。 | 途中で右側から林道が合流する。地形図の実線どおり。 | 倒木が折り重なる場所。4〜5本倒れ林道を覆っていた。ここまでならジムニーか軽トラなら入ってこれる。 |
ススキの林道。野草の茂る夏は利用しないほうがいいだろう。 | 途中にある岩峰。1165.6三角点の北。 | 林道途中から山頂側。右の高みと見ていたが、実際は写っていない左側であった。 | B林道終点。終点の先の尾根を登った。 |
尾根の最初。 | 笹が密に生えている。 | 熊の糞も残る。 | 尾根に乗った場所。尾根上には薄っすらと道形がある。 |
尾根に乗った場所から僅かに南に進むと岩峰の上に出て、この展望がある。唯一の展望地。 | 岩峰から見る山頂(中央)側。 | 尾根上にはリボンが見える。 | 国土調査のリボンも。 |
尾根の途中。広葉樹と針葉樹と笹と。 | 図根点の標柱が残置されていた。 | C矢名瀬のエバタ山頂。広い笹原で三角点探しに難儀しそうに見えた。 | Cアサバダ山とかかれてあった。地区により山の呼び名が違うようだ。 |
C三角点の場所は、山のほぼ中央。四方を石が守るスタンダード形式。 | C二等点であった。 | C登ってきた南側。標識の付けられた木は中央の木。 | Cヤキソバパンの力を借りずとも登れるようになってきた(笑)。 |
南東側に下って行くとゴーロ帯がある。石のほとんどが動き足場が悪い。上部は深い笹。 | 途中に大岩や岩壁の場所が出てくる。コース取りは注意したい。 | 大岩の下の笹はそう密生はしていない。 | D林道に降り立つ。 |
密生したススキの中を抜けて行く。 | E一本のシラカバが目立つ分岐。往路のAの場所。 | F駐車余地に到着。 |
この山を見つけてからもう2年くらい経つだろうか、ずっと壁に山名を掲示して忘れないようにしていた。父不見山の読みの珍名座に対し、ここは二つの山名を抱合せたような長い珍名座。藪山であろうから、残雪期に狙うのが順当と思えたが、地形図には直下まで道が書かれている。それも不思議な表記で、途中は実線だが上部で二重線となっている。他からの進入路が無い為に、この作為的な表記は何を現しているのかも気になった。
ポイントは林道。入り口にゲートがあったならば、往復10Kmほどの行程になる。乗鞍の薮と言う事を思うと、ここだけでお腹いっぱいになりそうな予想もできた。逆に、林道が伝うことが出来れば、他にいくつか選んでおきたい。折角出向くのなら内容を充実させたいのは常であり、近辺の行けそうな場所をプロットし併せて検討をしてみる。
1:00家を出る。三才山トンネルを潜り松本に出て、久しぶりに158号を辿り安房トンネルを潜って高山に降りてゆく。星が綺麗な夜で、眩いばかりの夜空を時折眺めながらハンドルを握ってにんまりしていた。時折フロントガラスを水気が叩くも、そう長くは続かなかった。美女峠を経て旧の朝日村に入ってゆく。村一番の目立つ場所ではあるが、道の駅でもひっそりとしていた。ここで夜明けを待とうかと思ったが、取り急ぎ現地は見ておきたいと目的の林道に向かって行く。
御前橋の手前で左折し、その先460mの下り勾配の枝道に入る。そして橋戸橋で青屋川を渡ってゆく。山村風景がある中をどんどん先に進んで行く。辺りは凄い紅葉であった。ヘッドライトの明かりだけでもそれが判り、日の下では凄い彩だろうと予想できた。その落ち葉で滑り易くなった道を登ると緩斜面の道路になり、進む先がゲートされていた。その手前から矢名瀬のエバタ山へと続く林道が分かれていた。ゲートは無いが最初からかなりモシャモシャしている。想定はしていたが、ここで覚悟はせねばならなかった。林道は、「桑名洞林道」と言うらしく標柱が立っていた。家からの経路4時間、少し骨休めとして夜明けまで仮眠とした。
6:00うすら明るくなり、もう少し偵察と林道へ車を入れてゆく。かなり下部を擦られるが、30mほど我慢すると濃い植生は収まった。意外と状態が良く、深い轍が無いのがありがたかった。ただし、相当量の落ち葉があり、オフロードタイヤで進むような場所となっていた。落石もゼロではなく、時折底を大音量が突き上げる。さらには泥濘地も何カ所か待っていた。ややリスクのある林道で、ジムニーか軽トラが適当な林道であった。そして、この日はいいとして、もう少し冷えたら湿気が凍りややこしい路面状況になることが予想できた。林道幅が狭く、谷との高低差もあり、入る場合の季節的なタイムリミットもあるようだ。もっとも、林道入り口から歩いて入ればこれらの心配はない。
分岐点から1kmほど進むと、落石の多い場所が現れた。ここまでにも何度も底を叩かれ辟易としていたタイミングで、そろそろ車が可哀相になってきた頃であった。迷うことなく前進を諦めた。少し戻って何とか停められそうな余地があり突っ込む。突っ込むときにもゴーンと石が底を突き上げた。草に隠れて岩が見えなかった・・・。この車をオフロード車のように使っているのは私くらいなのではないだろうか・・・。すぐに準備をする。外気はひんやりとしており深谷の沢音が強い場所でもあった。獣が居るであろう場所であり、沢音でこちらの気配が消されてしまう場所では注意せねばならない。
歩き出してすぐに落石箇所。鋭利な岩が見え、進まなくてよかったとさえ思えた。大小3カ所ほどあり、通過できる車は限られる。そして右側に痛々しい山斜面が見えてくる。間違いなく採石場であり、現在進行形と言うよりは過去の場所のようであった。そこを右に見ながら進む。この先は右に分岐する道が最初のウエイポイント。964.3三角点ポイントの南に2ヶ所枝道があるので間違えないようにと気にしていた。地形の見え方は、南側からだと二つの枝道で同じように見えるはず。主たる林道が西に向いたので最初の枝林道であると判断できた。ここから実線だが、野草が生えるが四駆の軽車両なら入れるほどではあった。確かに2.5m幅以内くらいだろうから実線表記でも的確なのだろうと思えた。
右から林道幅が合流した。地形図に見える実線が合わさる場所で、寸分違わず現地と合っていた。九十九折の道を行く。この先で二重線表記の道となる。そこを楽しみに行く。合流点から6分ほどで、倒木の折り重なる場所が出てくる。現在車で入れるのはここまでで、距離にして15mほどの間で大小4〜5本の倒木が林道を塞いでいた。水線が書かれている谷には、細いがしっかりと流れがあった。上部で水を得ることも可能。
いつしか二重線の場所を歩いていた。ある場所から幅が広がった雰囲気もなく、これまで通りの道幅のように続いていた。進む先の高い位置に目指す高みが見えてくる。顕著に見えるのはやや右の高みで、あそこが山頂なのかと予想しつつ見上げていた。地形図の1080m付近、北に進んでいた道が鋭角に曲がる場所がある。地図を見て進まないと、林道の延長側の北に進み道が無くなるのでドキドキしてしまう。西側の道がススキに隠れ全く見えないのだった。潜り抜け出すと先に道が進んでいた。ここからの進む先に、見事な岩峰がそり立っているのが見える。1170m峰のようであるが、とても見栄えのする自然美であった。その下を通過するように今度は東に進んで行く。
上部に行くに従いススキの量が増してゆく。これは夏は相応に負荷になるだろう。そして朝露なども気にしたいので、天候をも気にして入山した方がいいかもしれない。廃採石場、倒木、このススキの状態、これらからして桑名洞林道はもう過去の林道なのだろうと思えた。分けながら行くのだが密生もいいところで、むせぶほどにススキの穂が垂れてきていた。
林道終点に到着。どこが取付くのに適当かと山手側を見ていた。移動して見ないとススキが邪魔をして斜面が見えてこない。東に西と見たが、山手側は何処もササが濃く見えた。林道終点の先の斜面には針葉樹が生え、その下なら幾分植生は緩いだろうと予想をつけて取付く。しかし最初こそいいが、すぐに笹の密生斜面となった。それらに掴まりながら高度を上げてゆく。ここには刃物痕も多く見られる。年輪からは20年ほど経った木を間伐しているようだが、かなり前の作業なのだろう。熊の糞も見られ、その大きさから個体の大きさを予想できた。グリップしない斜面に両腕を必死に使って登って行く。
尾根に乗り上げると、その上には薄らと道形が在った。南に少し明るい場所が見え向かう方角と反対側だが進んで行くと、岩峰の上となり大展望の場所であった。寄り道して大正解だった。ここからは目指す山頂も見え、下で見上げた山頂とは場所が違うのが判った。下からは、1270m付近の高みを見ていたようだった。
尾根の上には「図根多角」と書かれた黄色い杭が打たれていた。ピンクのリボンもあり、山ヤと言うよりは行政の動きが感じられる場所であった。「国土調査」のリボンもあり、それを強く思わせた。北に尾根を進んで行くと、黄色い杭がたくさん残置されている場所があった。作業途中なのか、工事終了で持ち帰るのが面倒になったのか・・・。まあここなら人目に触れることは無いだろう。こんな族が数年に一度くらいしか訪れないであろう場所だから・・・。
進む先にこれ以上の高い場所が無くなり、平原のような平たい山頂部に到着した。ここが矢名瀬のエバタ山か・・・そう思って三角点探しに向かおうとした時、目の前の直径300mm程の木に「アサバダ山 1315.8m」と彫刻された標識が掛かっていた。こちらから登らねば絶対に気が付かなかっただろう場所に標識があったのだ。向いている方向は南側で、南から伝う人を想定して付けられたように推測できた。まず大きく名前が違う。アサバダとエバタは似た響きがあるので、麓でも言い回しが微細に違う地区があるのだろう。行政の公式回答があって事典に載っているはずであり、当時の朝日村では矢名瀬のエバタを村として使っていたと言うことになる。次に標高だが、設置者は標高改定前の登頂と判る。一つの標識に多くの事を思う。
北に進んで行くと、山頂のほぼ中央にササの無い窪んだ場所があり、四方を守られた二等点が眠っていた。国土地理院の標柱も傍らに立ち、いい感じの三角点であった。林道のある南西側を見ると、少し窪んだ筋が見える。道が在るのか・・・下山はここを伝うことにして、持ち上げたコロッケパンで朝食とした。情けないがヤキソバパンが手に入らなかった。こんな珍名座に用意できないなんて・・・不甲斐ない。山頂は平らで展望が良いように思うが、各方面で周囲を針葉樹が塞ぎ展望は無かった。それでも空が開けているので気持ちいい場所ではあった。さて下山。
窪んだ場所は山頂の大地の上だけで、三角点の場所からの水の流れが作った場所のようであった。そこからの斜面には笹が繁茂し、ここを登るのはかなり酷に思えた。下りでもやっと顔を出すほどであり、登りならば完全に没する場所であった。強引に膝を入れながら行くと、今度は大ぶりのゴーロ帯になる。ここの石がほとんどで動き、いやらしい通過点であった。ワイヤーロープが落ちており林業作業の名残も見られた。バランスよく、いつなんどきでも動いても対処できるように降りてゆかねばならなかった。このゴーロ帯の下側で大岩が現れる。東(左)に進むにはヤバそうで、少し西(右)に振る。振り過ぎると、もっと大きな岩壁が待っていた。注意しながら様子を伺いつつ降りてゆく。下に林道が見えればいいのだが、植生が強い場所で見えてこないのも往路の通過で判っていた。それでもそろそろ。
林道に降り立つ。ブルーシートらしきゴミが青く見えていた場所であった。藪漕ぎは終わり、あとは林道歩きで特に難しい場所は無い。かなり構えて準備した場所ではあったが、この林道がそこそこ状態が良かったことで、楽にアプローチが出来た。それも計画段階での季節の捉え方が的確だったとも言えよう。てくてくとストライドを伸ばして降りてゆく。今日は暑過ぎず寒過ぎず、時折グローブはするが、暑くなり着けたり外したりしていた。
分岐の場所には川側に一本の立派なシラカバが生えている。これを目印にすれば分岐を間違えないだろう。深谷沿いを戻ってゆく。上に居る時に、工事の音がしていたので、林道に入ってきているのかと気にしたが、その様子はなかった。それでも、この林道は新しい刃物痕は残っていたので、管理する人が居て、最低限の管理はされているようであった。車に到着する。
青屋地区は紅葉の黄色が眩く。そんな中に燃えるような赤い紅葉も見られた。何せ一帯が見事だった。朝日町からは、美女ヶ池経由で飛騨農園街道を通って岩井町に出る。そして飛騨高山スキー場側へ登って行く。