小沢峰 1157.0m
2016.6.11(土)
くもり時々晴れ 単独 小沢橋よりピストン 行動時間:2H42M
装備:20m ヘルメット くくり
@小沢橋4:46→(7M)→A尾根に乗る4:53→(1M)→B壁4:54→(42M)→Cリッジ5:36→(13M)→D1110高点5:49→(9M)→E1120m峰(屈曲点)5:58→(13M)→F小沢峰6:11〜21→(10M)→G1120m峰帰り6:31→(10M)→Hリッジ帰り(懸垂)6:41〜51→(26M)→I小沢に降り立つ7:17→(11M)→J小沢橋に戻る7:28
@小沢橋から見る尾根末端。南側と西側からは取り付けず、東側から入る。 | @廃林道入口。入って10mほど進んですぐに尾根に取り付いた。 | @林班の表示があり、植林作業用の道が小沢沿いに在ったよう。現在は使用不可。 | 取り付いた斜面。 |
A尾根に乗った場所。大ぶりのマツが立つ。 | Bこの壁(礫岩)が衛星画像で見える壁であろう。直登はチムニーの中となり岩登りとなる。西側を巻く。 | Bやや下側を巻くと、上の方にタイガーロープが空中に通っていた。ルートは崩落して居るよう。行き詰った辺りからそのまま西を巻くとロープの場所に出るだろう。 | B岩壁の西側の様子。バンドになっているが足を置ける巾が狭く滑落の危険が終始伴う。二人で確保して通過するのが無難に思う。 |
Bさらに北に進むとタイガーロープが出てくる。連続して敷設あっても間違いではないような場所が続く。 | 危険地帯が終わり最初のコルの場所。 | 尾根上で最初に展望が開ける場所。 | 尾根から濁川を挟んだ西側の様子。 |
見るからにヤバい崖の上。しかも足元が緩い。 | 崖から下側を望む。見えるは435号線。 | 1020m付近。たおやか。 | 1050m峰の西側も壁がある。危なげなく西巻。 |
コップ状の谷を西に見て巻いて進む。 | C25mほどあるリッジ(礫岩)。流石に通過は厳しい。手がかり足がかりが乏しい。ここも西側を巻く。 | C途中にあったタイガーロープ。 | Cこの場所は2mほど下側にさがって通過。 |
C西側が進めなくなり直登に変える。1110高点真西付近。 | 直登して行く。勾配が強い。 | D1110高点 | ここに来て尾根上に杭を見るようになる。 |
1110m峰東側(屈曲点)に残る軍手 | E1120m峰に縛られたビニール袋。屈曲点 | 伐木も残る。 | サルノコシカケ |
尾根の西側に道形があるように見えるが、伝ったが自然地形ですぐに消滅。 | 熊に齧られた杭も見られる。 | 小沢峰直下。 | F小沢峰 |
F北から南を見る。 | F三角点の様子 | F三等点 | Fヤキソバパンここにあり |
Fザックを違えたら絶縁テープを忘れてしまい直にいたずら書き。すぐに消えてしまうだろう。 | 藪の様子。あっても胸丈くらい | G1120m帰り。右利きの人が縛ったと判る。 | 熊の爪痕も残る。 |
軍手の場所には地面にこの杭があった。 | Hリッジの帰りは懸垂して降りて行く。 | H安全通過は50mほど欲しい。20mしか持たず、1ピッチをやや西に振り足場のある側へと降りる。 | H途中から。やや右(西)側に下りる。見える右の草地まで上から11mほど。 |
H西側からフリーハンドで降りて行く。ここには支点が取れる場所は無く・・・。よってザイルは50mほどは欲しい。 | H途中にあった綺麗なコケ類。 | 崖の上帰り。 | 崖の上のコンクリート。乗ると動くので要注意。 |
I小沢に降り立つ。尾根を最後まで伝うように進んだほうがよかったような・・・。 | I小沢から見上げる往路の壁。 | 小沢の様子。上流側。大岩も混じる。滑る石が多い。 | 途中護岸にコンクリート養生されていた。道が在ったと読み取れる。 |
J小沢橋脇の駐車余地に戻る。 | この日の装備。くくりは有って便利な装備だが、ザイルとヘルメットは必携の場所だった。 |
小沢峰は、以前は甌穴のある西側の橋から狙おうと思っていた。橋があるのだから、その先も人為的な道形があるだろうと予想したから。しかも最短でアプローチできそう。でも地形図に見えるその斜面は、黒く思えるほどに等高線は密になっている。ここを現地で見ると、壁と言うより樹林で、それがために掴まりつつ登れるだろうと思っていた。
しかし気にしつついたものの災害の影響で奥裾花湿地へ行く435号線が2年のあいだ閉じられていた。昨年も一度も開けられず、車道が通過できない条件においての小沢峰はとても遠い山に思えていた。封鎖ゲートから3.5kmほどなので、これを遠いと思う方が違っているのだが、通れる時があるのにそれが通れないと遠く感じてしまう。余計なアルバイトを嫌う性質なのであった。
今年も水芭蕉の咲く時期となり道が開くのかどうかと気にしていたら、またまた崩落があった。それが復旧し何とか通ることができるよう。こうなると、こういう場所はタイミングよく登っておかないと登れない場所になってしまう。再びリセットするように地形図を見、併せて衛星画像でも地形を確認する。なだらかなのは南に落ち込む尾根。そこを衛星画像で見ると、取りつき点からすぐに明るい場所が見え、さらに先にも見える。間違いなく岩が露出している場所であり、そこで万事休すになってしまうのかとも思えた。報告が上がらない山には間違いなく何かがある。まず南から入山し、岩の場所でダメであったら西側に移動しアプローチする二段構えとした。
合ノ峰の藪を体験しているので、ククリは持つことにした。そして20mザイルとヘルメット。後者は主に西側からアプローチした場合の装備であり、使わずにお守りで推移してくれれば言うことはない。予報は曇りであり標高が低くても早出すれば涼やかに歩いてこれるだろうと踏んだ。さて如何に。
1:00家を出る。18号で長野市まで上がって406号で西進してゆく。鬼無里に入って十倉口から奥裾花湿地へと435号に入ってゆく。開通しているが前日に崩落が発生しどこかで停められる可能性もあり、そのあたりも想定しつつハンドルを握っていた。奥裾花大橋を渡って右岸側の一方通行路を行くと、奥裾花橋への下降途中でも新たな崩落個所があり舗装路に多くの岩が落ちてきていた。パンクに注意しながらソロリと通過する。下手をするとこれでまた封鎖になるのか、本当に崩れやすい地形に思えた。
奥裾花橋で左岸の一方通行路に入る。この奥裾花橋とその先の小沢橋の間の尾根が今回入山する尾根。ハンドルを握りながら西側南側と見るが取りつけそうな場所がない。東側に回り込もうとすると、3台ほど停められそうな余地があった。そこに林班を表示する古い看板が見える。車を余地に突っ込み看板を見ると、小沢を挟んでの両岸に区分けした土地が読み取れ、小沢峰へ向かう尾根の東側斜面も林班の区分けされた土地になっていることが読み取れた。となるとこの先は何かしらの道があるのか・・・この場所の広さからして続く小沢右岸には道があるのかと覗くと、何となくだが道があった雰囲気が残っていた。こうなると尾根を伝うのがいいのか、しばらく小沢を伝うのがいいのかとなるが、そのあたりは臨機応変に対応しようと準備を始める。
川沿いであり蚋の襲来を気にしつつ急いで靴を履く。当然のようにザックにはヒル対策のスプレーも常備。腰にククリを結わえて、ザイルをザックに突っ込み、頭はヘルメットで保護をした。看板を右に見てわずかに分けて進むと、一人分の踏み跡があるような無いような感じであったが、藪化してしまい進むのが億劫になってしまった。すぐに尾根側に向かってザレた斜面を這い上がってゆく。この時にアザミを掴んでしまい、出だしから気合を入れられてしまう。
尾根に乗った場所には大ぶりなマツが生えていた。尾根の中央が掘れたようになっており、跨いで西側の尾根に乗る。ここから北に僅かで、待ってましたとばかりに壁が現れる。間違いなく衛星画像で見た壁で礫岩での構成で妙義山のような岩肌であった。斜度は強くフリーハンドで登れそうにはない。唯一あるチムニーに入り、草を掴みながら行けそうに見えるが、どうにも緩そうな岩壁で取りつく気になれない。ここまでかとも思ったが、先ほどの林班の看板があり、これで終わるはずはないと考える。
岩壁の東側はかなり大きく巻かねばならないので、西側に行くことにした。進めなくなった場所から7mほど南に戻り、西に降りるようにして巻いてゆく。巻き出して5mほどの場所で、上にタイガーロープが見えた。巻く方向としては合っているようだ。タイガーロープの場所は、先ほど行き詰った場所からそのまま西側を巻いた場所のようであった。ただし現在のそこは崩落しており足場がない。ロープの2.5mほど下を北に進む。足元は流れやすい斜面でかなり注意が必要であった。ロープは継続して欲しい場所だが、しばらく無い区間があり、その先で再び現れた。掴まって大丈夫か確かめながら、あまり体を預けずに、自然木や野草を使うようにして横ズレしてゆく。
ヘルメットは被って正解だった。滑落すれば最低でも大けがをする場所で、そんな場所が10分ほど続いていた。道形があるのか無いのか、正解が判らないまま適当に地形を見ながら進んでゆく。虫ようで膨らんだコブのある木の場所となったら安全地帯となる。一応これで最初の難関を通過した。帰路は壁の上から懸垂で降りればいいと思っていた。
尾根は急激に痩せ、地形図に見えるゲジゲジマークの場所へと突入する。そして入山して最初の視界が開ける場所となる。西側が切れ落ち、濁川とそこに沿う435号が見下ろせる。この先に、第二の核心部となる崩落による絶壁の上となる。嫌なことに場所によってふわふわと緩い場所がある。以前は崩落防止のコンクリートが吹き付けられていたのか、尾根上にコンクリートの塊が残っていた。ひょいとその上に乗ったら、これもまたグラッと動いて肝を冷やす。この場所はスリルを楽しむなら西側、安全通過なら東側となる。私は西を採った(笑)。
二つの危険個所を経て、その先は優しい尾根が続く。等高線間隔の広い場所の通過で地形図通り。しかし見えてこない壁も1050mピークの西に在り、ここは西側を巻いて進む。この場所はさほど危険はない。1110高点へと続く尾根がコップ状の地形を成しており、西側にその谷地形を見ながら尾根伝いに巻き込んでゆく。
1050mピークの北側、こちらも標高1050m付近で蟻の門渡りと言ってもいい25mほどの礫岩のリッジが現れる。これが第三の関門。握れそうな岩はなく、登る場合は指先をひっかけて登る格好になり難易度が高い場所であった。ここも東側は巻けないように見えたので西側を巻いてゆく。すると第一関門の壁同様にタイガーロープが流している場所があった。水平よりやや下側に進むように意識すると適切に歩けるようであった。しかしこの先の小尾根を乗越す場所で、その先が進めないように見えた。ちょうど1110高点の西に居るようで、東に向けて急斜面を直登してゆく。経路にタイガーロープはあったものの、その先のルートが何処にあったのかは判らなかった。
1110高点。距離にしてちょうど中間地点。ここまでに3つの関門があり、この先は無いことを願うが進んでみない事には何が待っているかが判らない。パイオニア的行動のリスクでありしょうがない。このピークに上がるまで境界標柱など見ることがなかったが、この高みから先では黄色い杭がちらほらと目に入ってきていた。
1110高点東の、標高1110mの肩の場所には、目印の為だろう軍手が二つひっかけられていた。確かに要所で、振り返ると迷い易いように見えた。東進が北進に変わり、再び東進に変わるのが1120m峰で、ドキッとさせてくれたのがこの場所に縛られているビニール袋であった。白く大きな人工物が自然の中から現れたので、何が居るのか何があるのかと思ってしまった。わずかに下り標高を上げて行くと、伐木された木が横たわっている場所も見られた。林班の地図通りにここでも作業がされていたことになる。しかし、これも車道の崩落の為か、作業されなくなってかなり経過した場所に見えた。
1120mから3分ほど北に進むと、尾根の西側に道形のような筋が見えてきた。何処からか上がってきているのかと伝ってみるが、完全に糠喜びの自然地形で10mと続いていなかった。歩きながら当然のように木肌を観察してきたが、あまり爪痕を見なかった。居ないのかと思っていたが、ふと足元を見ると熊の歯跡が残る杭が転がっていた。居ないはずがない・・・。
小沢峰到着。綺麗な状態の三等点が顔を出していた。ただし南東の角が割られていた。人工物は三角点以外にはなく、周囲は樹木に覆われ展望はなかった。少し北側に行くと植生の薄い場所があり休憩するにはいいかもしれない。地形図を見ると、この場所に対し北側のピークの方が、このピークより3m以上高いよう。向こうも踏んでおいた方がいいようにも思えたが、そうなるとさらに北に1172ピークがありどんどん高さが増して行く。三角点峰で満足すべきと思えた。歩いた結果、経路での難関は3つと分かった。帰りは林班の道形を見つけたいと思うのと同時に、危険個所を懸垂しようとも思った。
往路を戻ってゆく。1120m峰で目印のビニール袋を確認して南に進路を変える。この先の軍手ポイントでは、よく見ると地面に黄色い杭も見られた。直角に曲がるように西に進路を変える。周囲地形が似たような場所が続き、周囲からの現在地把握がしづらい場所が続くことから、ガスがかかった場合のこの尾根は進路取りに注意が必要と思えた。
そしてリッジの上に出る。見上げても長かったものは見下ろしても長い。太い木は上の方にあり、よりリッジに近い細い木が密集した場所を基点に取った。用意したザイルが短いので些細な苦労が必要なのだった。懸垂で降りて行く。上手くいかなかったら登り返して往路の西側通過に切り替えようと思っていた。様子を見ながら慎重にリッジを降りて行く。1ピッチで行ける場所も問題で、ちょうど伸びきった先1mほどに僅かに棚があり、そこでザイルの処理が出来そうであった。基点になる植生はなく、ここからはフリーハンドで礫岩に指をひっかけながら降りることにした。ザイルを回収していいのかどうか、引き下ろすときにはドキドキしたが、そうなったらなったで対処するのも自分の持ち味。
棚の場所から降りて行けると判断したのは、3か所ほどの窪みがあり、そこに足がひっかけられると判断したのもある。そうは言っても掴めるのは指先のみ、真剣に指先と足先に集中して降りて行く。わずかなミスが命取りの場所で、通過に10分ほど要して下に降り立った。危険な場所には可憐な花が多いのをよく聞くが、このリッジには黄色い花の咲くコケ類のような植生があった。次の壁に備えてザイルは袈裟懸けにして降りて行く。
再び絶壁の上に出る。下を通過する車が小さく見下ろせ、より高度感を感じる場所となっていた。動く場所は判っているので、木々に掴まりながら注意して抜けて行く。東側を通過すればいいだけなのだが、怖いけど見下ろしたい欲求があるのだった。次は第一関門の壁。往路は西側を通過したので、少し東側寄りに進めば壁の上に出るだろうと進むと、全くザイルの足らない壁の上に出てしまい、これでは懸垂下降にならないとさらに東に進んでみる。急斜面になり少し湿って黒光りする谷筋に入ってしまった。ここでも滑落の危険性を帯び、植生のある場所を選んで慎重に降りて行く。どう降りても危険が伴う場所のようで、東側寄りに降りたものの林班の以前が見えるような感じるようなものは無かった。
何とか小沢に降り立ち下流側に降りて行く。時折大岩も混じるが、ほとんど乗り越えられる大きさのものばかりで、さほど労せず進んで行けた。いつもなのか濡れた岩が多いので、相応の転ばない配慮は必要な沢だった。途中から右上に壁が見えてくる。降りられれば面白かったが、まあ五体満足無事にこの場所に居られることを重要視したい。壁が見えたことで、もうじきスタート地点に戻ることが判り、クネクネと渡渉しつつ伝ってきたこれまでに対し、右岸側に進路を見出すように集中する。
川面から2mほど高い場所に這い上がると廃道のような場所が確認でき、今は野草に覆われていた。山手側からの押し出しに覆われ、使われなくなった理由はそれが為のようであった。野草をククリで拓きながら進むと、途中の山手側に護岸工事をした場所もあり、間違いなく道が奥に続いていた痕跡が残っていた。まあこれらは想像の範疇なのだが・・・。奥裾花橋や小沢橋敷設のために余地として造られた道なのかもしれない。駐車余地に飛び出し無事帰還。
振り返る。登られない場所には訳があることを体感する。距離こそ短いが、ただの藪山ではなかった。判断や障害物に対する感覚に長けている人であればザイルは必要としないと思うが、絶対的安全の為には必携の場所となろうと思う。要所でのマーキングは残るが、それ以外の経路には何もなかった。そういう意味では先に入山している藪屋は本当の藪屋と思えた。ただ、残るタイガーロープは何のためか。巻道の為であることは判るが、登山か林業か・・・謎のまま。
真剣にさせてくれる、集中させてくれる点でいい山であった。そうそう、歩きながら思ったのは、大人数で入らない方が無難と思えた。2か所の巻道の場所で、荷重が多大にかかると崩落すると思える足場が多かった。大きく距離をあけての通過か、2〜3人までが適当に思えた。小粒だがピリッと辛い山であった。