毒水沢遡上 香草温泉経由登山道出合まで     1950m                                                                                                    
  
 
 
     2019.8.17(土)


  晴れ    単独     芳ヶ平への登山道経由で毒水沢往復   行動時間:6H42M


@第6駐車場4:56→(9M)→A入山口5:05→(54M)→B毒水沢出合5:59〜6:11→(18M)→C大滝6:29→(17M)→D香草温泉9番湯6:46→(59M)→E源頭部で登山道に乗る7:45→(1M)→F1950m地点標識の場所で引き返す7:46→(57M)→G香草温泉8:43〜9:56→(36M)→H登山道出合(毒水沢)10:32〜38→(32M)→I五郎次清水11:10→(28M)→J駐車場11:38


   
@天狗山ネイチャーセンターのある駐車場から出発。 A芳ヶ平への登山道入口。 林道分岐。帰路は林道を左に降りた。この分岐からわずか下ると水場がある。 常布ノ滝への下降点。しばらく不通のまま。
       
石仏に挨拶をして・・・ B登山道が毒水沢を跨ぐ場所。 B公式には・・・。 B沢装備に。沢靴ではなく古風にもワラジが滑り止め。
     
B毒水沢遡行開始 1570m付近 まだ新しいタイガーロープが設置してある。これが1850m付近まで続く。 足の置き場所を示すように細かく白ペンキがフラれていた。
       
1590m付近。心地いい優しい沢の印象。 1600m付近。釜地形が続く。 右岸に道形とタイガーロープ。 1600m付近の高巻きの先。
       
両岸に白ペンキが見られ、何処でも歩ける感じ。 タラタラの沢で流れの中を進む。 1650m付近。白く沈殿している場所は、泥濘地形で足を取られる。 1650m付近。やや深みのある釜。
     
奥に大きな滝が見えてきた。白ペンキに従い右岸を通過。 C大滝の流れは冷たくなく飛沫が温かい。滝の右岸側にチャツボミゴケが見られる。 C滝下から見上げる。 C滝の左岸にハッキリとした道形がある。
     
C刈り払われた道形。 大滝の落ち口 階段状の地形。見た目構えてしまうが、危なげなく伝って行ける。 左岸に長いタイガーロープが垂れており岩場を直登する。足場はいい。
   
源泉地が現れだし硫黄臭が強くなる。もうこの地点で香草温泉でいいだろう。 左岸に垂れたタイガーロープ。 昔の固定具などが見られる。 湧出地であるが、湯殿の栓が抜かれ溜まっていなかった。理由は触ると判った。熱くて溜めても入れないからだろう。
     
ここも熱かった。 源泉沿いを登って行く。左岸にタイガーロープが続く。 滑りやすい足場の所に垂れていたりする。 手前のタイガーロープに伝って渡り、その先に手を伸ばして次のロープを掴んで進む。
       
ここは右岸に3連の垂れたロープがある(右の写真)。右岸を使わずに左岸寄りの沢の中を登った。 3連のタイガーロープ。これらを使って進むにはロープが細いので握力と腕力が必要だろう。 1730m付近 赤ペンキで「4」とフラれている。源泉ヶ所に番号を記したよう。
   
ホースが見られた。引泉していたことがあるのか・・・。 1740m付近。この釜は、ぬるく夏にちょうどいい温泉温度。 8番源泉。ここは熱いが、上手く沢水が混入し調整しやすい湯舟がある。 D香草温泉の最上部の9番源泉の場所。小滝がある。
        
D写真左下に白ペンキで「9」と読めるだろう。ここにもタイガーロープが垂れ、まだ先に源泉地があるのかとさらに登って行く。ここのロープは振られるので注意。 高巻きした先にも右岸左岸にタイガーロープが続く。白ペンキは見えなくなる。 この右岸のロープの場所は少しハングしている。 1760m付近。左岸を高巻き。
       
1780m付近 1790m付近。  チョックストーンのすぐ左岸を通過。 1820m付近。やや大きく左岸を巻く。
       
1830m付近。高巻き途中から。  1840m付近。  1840m付近の長いタイガーロープの場所。ここもフラれる。 1840m付近の高巻き後の景色。
       
1850m付近  1860m付近。濡れているが中央突破。  1900m付近。このあたりは右岸側を伝い危険個所を巻いた。 1920m付近。 
       
沢に入って初めて見る道標らしきもの。「水」と「♨」が書かれている。  1950m付近。沢の源頭部の最後の小滝。ザレているのと高低差が出来ており這い上がれない。少し戻って左岸に乗る。  E登山道に乗る。  E白根側の景色。見えているのは白根の斜面ではない。
       
F白根まで0.7km。1950m地点のここを折り返し地点として再び毒水沢を下る。  F鳥居が見える。  タイガーロープの下降点から下側。なかなかスリルがある。  左岸の高巻き途中から。往路に伝っているから判るが、初めて降りてきたら進路を迷うだろう。 
       
軽くハングした場所を上から。 香草温泉を小滝上から俯瞰。 G香草温泉で入浴して行く。湯壺により温度が異なるので好みの場所で利用。手前側は熱く、上(下流)側が入りやすい温度。 G山頂ではないが目的地であったためにコロッケパンと・・・。上から数え、2段目と3段目の湯壺はちょうどいい。
       
G9番源泉は熱くて無理。季節により温度は異なり、小滝側から水を入れれば入れたとは思う。 G少し下った7番はちょうどいい温度。 右岸に3本のロープの垂れた場所。帰路は右岸下の沢の中を伝った。往路は右岸側。ロープは使わずとも通過可能。 毒水沢全景。上の方に白い筋のナメ地形の場所まで見通せる。
       
ナメの場所をアップ。  まだまだタイガーロープが連続する。 2番源泉の場所 高温の源泉が流れ込むので釜全体が深く広い湯壺になっている。夏以外は冷たく入れないだろうけど。
       
大滝帰り H登山道に戻る。沢装備を解除。  Hあとは登山道を伝うだけ。 常布ノ滝展望場の先で林道に出るが、林道側へと降りてゆく。それは・・・。 
       
I林道出合のわずか下に、五郎次清水が出ている。入山口からの給水ポイントが無いようなコースであるが、ここにある。 林道側は大岩の落石が多い。これは「蟻の戸渡」付近からの落石。 谷沢川の管轄は、ここで県と省庁と分かれている。 国土交通省側は舗装されている。 
       
谷沢川で、少しクールダウンしてゆく。  こちらの林道にはバリケードがされていた。バリケード前で涼んでいる方が居た。  J駐車場に戻る。皆当然のように木陰に停めている。 おまけ。大滝右岸のチャツボミゴケ。 




 雨続きの梅雨が終わり、前年度同様の猛暑がやってきた。そしてお盆休みに入った。高みに上がれば涼しいのはよく知っているが、休みを使い長い期間避暑に上がっているわけにはいかず短日で降りてこなければならない。平地で熱せられすぎてやや意欲減退で、このお盆は山への欲求が少し薄らいでいた。さりとて人工的な遊びは嫌いであり、同じ時間を費やすなら自然の中となる。涼しそうな沢登りをしてみよう。そこに野湯を絡めてみようと思い立った。

 
 草津白根山は、2018年1月の噴火により被災者が出て、全国区のニュースとなり知られた場所。今は警戒レベル2を継続していて火口から1km圏内は入山禁止になっている。その東麓の大沢川には3つの野湯があり、麓側から常布ノ滝下湯と常布ノ滝上の湯、そしてさらに遡上した場所にある香草温泉源泉となる。この香草温泉がずっと気になっていた。大沢川は上流では名前を変えて毒水沢と呼ばれている。香草に相対する毒水、この両極端な名前のふられた場所に強く興味を抱くのだった。幸い沢ヤより温泉マニアと言えよう好事家が多く伝っているのが見える。本職でない人が行けるのなら、そう難しくはないだろうと判断できた。

 
 1時に家を出て、須賀尾峠を越えて3時に現地に到着した。芳ヶ平への登山道に入るのには駐車余地が少し離れる。前回も前々回もそうだったが、第6駐車場に停め夜明けを待った。ここは南側に大木が並ぶので、日陰になり夏向きの駐車場なのだった。ハイシーズンであり西ノ河原側の駐車場はキャンピングカーの品評会のように大混雑になっていたが、こちらに停まっているのは3台のみであった。しばし仮眠。

 
 到着する車もなく、騒音に目を覚ますことなく100分ほど熟睡ができた。用心のために20mザイルを持ち、我が行動の中で初めてお目見えする沢装備もザックの中で出番を待っていた。これは山の大先輩から戴いた一式であった。沢以外は何となくオールマイティーにやってきたが、「そろそろお前も沢をやんなよ」と譲ってくれたと理解し、どこかで使わねばと常々思っていたものであった。それらを寝かしに寝かし、やっとお披露目であり、どれほどにグリップ力があるのか楽しみでもあった。

 
 4:46天狗山ネイチャーセンターのある駐車場をスタートする。谷沢原の草津高原ゴルフ場側へ進んで行くと、この時間にして散歩している女性の姿が見られた。そして「早いですね」と声をかけられる。「あなたもね」と言いたかったが喉元で堪えた。10分ほどで芳ヶ平への入山口に着き、山道へと入って行く。緩やかな一級路で、疲れ知らずで伝って行ける。静かに歩いていたら周囲の笹原からゴソッと音がした。小動物でも居たようであった。

 
 この谷沢原のルートは、以前は今あるルートの南側を伝っていたようで、掘れた道が並走するように見えていた。屋根のみ残る祠に挨拶をして通り過ぎると蟻の戸渡の場所となる。ここは南側から奇怪な音が断続的に続いていた。その訳は帰路に判ることになる。大型獣でも居るかのように聞こえ、少し緊張しながらやせ尾根を渡って行った。ここは以前より整備が進んだような印象であった。林道にぶつかるが、下へ行く道は相変わらず立ち入り禁止と出ていた。常布ノ滝の観瀑は端折り先を急ぐ。相変わらず滝への下降点も塞がれていた。管理している自治体の責任回避のための封鎖であるが、上手く整備すれば人を呼べる場所なのにもったいない現状だとは思う。

 
 大周りを経て左手に弁財天のような石仏が見えたら毒水沢はもうわずか。大沢川には湿気を含んで滑りやすくなった木橋が架かっており、そこからの上流側には立ち入り禁止のロープが張られていた。常布ノ滝同様に、ここからは自己責任となる。力王の足袋にワラジを履く。ネオプレーンのすね当てを着けたら、下半身だけ見たら一端の沢ヤになった気がした。

 
 毒水沢を伝いだしオヤッと思った。両岸の岩の上に白ペンキが続く。温泉マニアの仕業かと最初は思っていた。これらは景観を邪魔するほどに大きくなく小さな点で続く感じであった。でもそれは、しっかり足を置く場所を示しており、的確にホールドのいい足場の場所にフラれていた。そしてまだ新しいタイガーロープが流してある場所もあり、このロープとペンキは途切れることなく香草温泉まで続くのだった。

 
 歩き出してしばらくは両岸を伝って濡れずに歩くことができる。ただ濡れて進んだ方が楽に歩けるとの判断となり、水を避けることは無くなる。もっとも今日はそんな装備なのだから・・・。ワラジがしっかりグリップしてくれ、ここまで食いついてくれるものかと感心したりした。

 
 1600m付近で、右岸にマーキングがあり高巻き路が切ってあった。巻いた先はナメ床で、そこにタラタラと流れがある。こぶし大の小石を敷き詰め、そこにコンクリートを流したような場所が続く。このナメの区間を過ぎると浅い釜の場所が現れる。付近の白く堆積した粒子の細かい地層に足を置くと、泥濘地のような踏みごたえであった。1650m付近でやや深い釜が見られドボンと飛び込みたくなるような場所も見られた。こんな場所にも相変わらず白ペンキが続いていた。

 
 大滝に到達する。通常滝下なら飛沫で涼やかな場所となるが、ここでは生暖かい雰囲気温度であった。滝の右岸にはチャツボミゴケが発色よく見られた。立ちはだかるような滝ではあるが、左岸に立派な道が切られ、近年刈払いされている痕も見られた。巻き上げてからは、一応滝の落ち口を観てから先に進んで行く。滝の上は階段状の地形で、ここは左岸にやや長いロープが垂れている。足場が悪ければフラれるロープの長さだが、グリップがいいのでロープが適当なサポートになっていた。ここを抜けた先でももう一本下がっている。足元を見ると錆びた丸棒が石に打たれていた。昔のもののようだが、強い酸でも融けていないのでそう古いものではないのかもしれない。このすぐ上流左岸に、最初の湯壺らしいくぼみがあり、流れ出る場所には塩ビパイプが押し込まれていた。ただし湯壺底の栓が抜いてあり沢に垂れ流しであった。ちなみにと触ると、こんな湯温では溜めても入れないと感じる高温だった。だから溜めていないんだと理解した。沢水も引けない場所であった。このすぐ上にも湯壺があるが、似たような高温が溜まっていた。

 
 源泉沿いの滑りやすい岩斜面を登って行く。そこにタイガーロープが無ければ別の登り方をしたような場所であるが、あるがばかりにルートと思って伝って進む。ワラジのグリップを都度確かめながら足を出していた。岩屋のようになりハングした場所に長短二本のロープが垂れていた。手前のを掴んで登ったら、その先で次のを掴んで進めってものであった。

 
 抜けた先で、今度は右岸側に同じような施しのロープがあり、こちらは三本連なっていた。ここはそれらに触れずに、反対の左岸側寄りの流れの縁を登って行く。硫黄臭がやや強くなり、進んだ先の左岸側に赤ペンキで「4」と記された場所が出てきた。この場所の沢の中央部には、白い90φほどのパイプが見られた。引泉したのか、何かが在ったのは間違いないようであった。すぐ上に小滝がありやや深めの釜が見られた。その上に「8」と白ペンキがフラれた源泉があり湯壺があった。その上にさらに二つ湯壺があり、最上部の源泉には、同じく白ペンキで「9」と書かれていた。

 
 香草温泉に到着したと思いたかったが、9と書かれたすぐ右側に、ここにもタイガーロープが垂れており上に誘っていた。まだ先にも源泉地があるのかと判断できるものであった。掴みながら這い上がって行く。この次にあるロープはチョックストーンのような岩に結わえてあるもので、あまり頼らずに登って行く。次は右岸側にややハングした岩があり、そこにロープが流してあった。ここまでは白ペンキが確認できたが、フェードアウトするように気づいた時はいつしかそれらが見られなくなる。ただしタイガーロープだけはさらに続いていた。

 
 地形図に読める1810m付近の二股からは、北の沢にも水線が引かれているが、10mほど入ってみたが、この時季は涸れ沢であった。1820m付近では狭いゴルジュとなり左岸側を高く巻いた。巻いた先でまた川床へ降りる。1840m付近には、左岸側にこれまでで最長と思しきロープが垂れていた。まともに握って直登は厳しく、地形に沿って左に巻くように登るか、反対にロープの右側にもバンドのような地形が在った。どちらも伝えるようなロープの長さになっているようであった。ここを抜けると少し開けた地形となり閉所から解放され心地いい。

 
 1900mとなり、右岸側を少し長く伝う場所もあった。道形がありそこに古いマーキングも見られたのだった。1920m付近で沢の中に戻ると、沢の中央にある大岩に、黒ペンキで「水」と「♨」が記してあった。この沢に入り、源泉地以外で文字としての道標らしきものを見たのはここが初めてであった。水場を示しているモノなのか。温泉記号は草津温泉のことなのか香草温泉のことなのか・・・。そしてこの表示は誰のために何のために。白ペンキもタイガーロープもそうだが、毒水沢の現状はルートがあるようになっているのだった。

 
 1950m付近で向かう先に鼠色の壁が見え、高低差は1.3mほどの小滝になっていた。壁は垂直で周囲はザレ斜面で乗越すことができず、15mほど戻って北に上がると、そこに登山道が走っていた。北西を見上げるとザレた白い高みがある。たぶん水釜南の高みが見えているのだろう。南側を遠望すると鳥居と祠が見えていた。白根明神だろうか。何か目標物は無いかと探すと、白根まで0.7kmと書かれた道標が立っていた。ここを最終地点として再び毒水沢を戻って行く。芳ヶ平に進んで登山道を戻ろうかと思ったりもしたが、本日の目的は香草温泉であった。そして「9」番以上の場所に源泉地は無いのだった。

 
 上流から沢を伝う場合。登りよりかなり難しく見えた。タイガーロープは探せても、高巻きする場所の踏み跡がハッキリと見えてこないので戸惑うことになるだろう。伝って1時間も経過していない私でさえ、少しまごついた場所が在った。高低差のある場所もあり、判っていればヘルメットを携行してきたが、この時は持っていなかった。ロープに体を預けないようにして、ほとんどの場所で岩溝に指を引っかけるようにしながら降りてゆく。さりとて、一切ロープが無かったら、それはそれで心許ない事になり、在ってありがたいロープではあった。

 
 香草温泉は9番源泉の場所まで戻り大休止となる。蚋や虻との戦いと予想してきたが、一切の刺し虫が居なかった。これも酸性成分が強い為であろうか。衣服を日干ししつつ温泉に浸かる。一番上は熱いので、2段目で寝そべる。横になって体の三分の一が外に出るくらいの水深だった。夏なのでこれはこれで気持ちよく長湯となった。次に3段目は熱い湯が流入しているものの沢水も入ってくるので、温度調整が可変であり、熱い湯を楽しんだりぬるくしたりして利用した。ここは水深が300mmほどあり全身を沈めることができた。

 
 この後に予期しないことが起きた。指が皴になるほどに入ったので湯から上がりクールダウンしようとしたら、体のあちこちがピリピリしだした。そうだ強酸性泉だった。ここまでの湯は初体験で、沈んでいる時はいいが、湯から出るとこれを繰り返した。そして飛沫が目に入る。万座の湯どころではない刺激の強さであった。一滴での効果が凄いこと。よって、痛みの怖さを知ったら顔などは洗えなかった。快晴の空であったが、少し雲が多くなってきていた。1時間ほど湯を楽しんで衣服も十分乾いたので源泉地を後にする。人懐こいキベリタテハがやってきては目の前に留まって綺麗な姿を魅せていた。温泉地の上流側には烏帽子岩と呼べよう岩が見える。北アの白馬鑓温泉の湯壺と烏帽子岩の位置関係に似ていると思えた。

 
 源泉地を戻りながら左岸側の窪みを気にしてみていたら、タイガーロープと料理用のボウルがデポしてある場所があった。たぶん湯壺の砂利を掻き出すのに使いロープは湯壺の土嚢の流れ止め用であろう。各湯壺温度を確認しながら降りてゆく。「7」の場所も適温であった。

 
 右岸にロープが3本垂れる場所は、帰路も使わずに左岸側を下った。登りとは違った景色が下りにはあり、どちらかと言えば下りの方が景色の広がりがあり好みであった。展望の良さに気を緩めずに、両手両足は常に緊張感を持ちながら毒水沢の岩壁を降りてゆく。2番源泉下の深い釜は、30℃くらいだったろうか、浸かって心地いい水温で溜まっていた。この流量がここまで温くなるのだから、その上左岸側にある源泉温度の高いことが判る。往路に確認した、栓の抜いてある場所であった。

 
 大滝まで降りたら、再び滝下まで行って飛沫を浴びる。源泉は強く沁みたが、ここではそれほどでは無かった。ここからの下りは、マーキングやロープを無視して沢の中をジャブジャブ通過してゆく。折角沢装備をしているので最後の水遊びと言った気分であった。誰か上がってくるとも思ったが、温泉マニアの姿は無かった。立入禁止の赤い札が見えてきた。沢装備解除。

 
 登山道を戻ってゆくと、大周りの所で若い女の子二人のパーティーとすれ違う。一人は既に暑さに参っているようで、もう一人が綱を引っ張るような視線でその彼女を見ていた。疲れるような勾配では無いとは思うが、なにせ暑く熱中症になりやすい条件ではあった。その先で老齢の夫妻が歩いていた。てっきり芳ヶ平よりの帰りかと思ったら、聞くと常布ノ滝を観に来たが、道が荒れていて引き返してきて、時間が余ったので芳ヶ平側へと進んでみたようだった。滝が諦めきれず「道はどうですか」と執拗に聞いてきていた。チェーンの様子などを伝えるのだが、引き返してきたと言う事が全てなんじゃないだろうか。地形の感じ方、危険と感じる度合い、各々違う。奥方が旦那に向けて「私ここで待っているからあなた一人で行ってきて」とも言うので、「それだけは止めましょう」と強く伝え別れた。

 
 観瀑台のところの分岐からは、立入禁止の林道側へ進んでみる。衛星画像で下見すると、崩れている場所も見え、あらかたどうなっていて不通なのか見えていた。それより、ここを僅か下ると美味しい水が出ているのだった。それが目的であった。分岐から2分ほどで五郎次清水の場所で、こんこんと流れ出ており美味しい水であった。林道上は山手側からの崩落で大量の土砂が押し出されていた。そこに登山道のように道形が続いていた。通さないようにしているが、伝っている人は居るようであった。特に危ない箇所は無いが、崩れやすい地形で間違いないだろう。短距離ではなく長い区間で山手側からの崩落が見られた。

 
 谷沢川を右に見ながら下り、管轄が国土交通省の場所となると、そこから舗装路に変わる。以前はもっと広い道の印象であったが、今は季節柄かかなり両側の野草が茂ってきていた。途中谷沢川に入って足を冷やしてから戻って行く。するとあの往路で聞いた音が近くなってきた。谷沢川に架かる橋下に設置してある導水管が破損し、12mほどの噴水を出していた。その流水による水圧による音がしていたのだった。

 
 林道を進んで行くとバリケードがあり、その前で男性が涼んでいた。停めてある車は山口ナンバーであった。遠くから来ていながらいい場所を知っていると思えた。水質改良施設を左に見たら、わずか先で駐車場となった。少し増えて10台ほど停まっていた。

 
 振り返る。香草温泉まで、予想外の白ペンキが導き、かなりの場所でタイガーロープが設置されていた(こちらは1900m付近まで)。誤って沢筋に入る人が居るので、遭難防止用としてか、なにか管理用としてのものか・・・。誰でも入渓できると言いきれないが、優しい沢登りが出来る場所であった。ただ設置されたものに頼る場合は握力や腕力がいるかも。沢靴を履けば気持ちよく歩けるだろう。登山靴で濡れずに抜けるのは、ちょっと難しいかもしれない。もう何度か行きたいいい場所であった。













 
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