桂山        875.8m        
                    
                                                  
                                      

   2019.3.9(土)


  晴れ    単独     南東麓小川地区より    行動時間:3H51M


@小川地区西端5:47→(3M)→Aお堂5:50→(104M)→B770mピーク7:34→(23M)→C850m尾根の肩7:57→(12M)→D桂山8:09〜24→(21M)→E850m肩8:30→(11M)→F770mピーク帰り8:41→(57M)→G戻る9:38


   
@小川地区西側の除雪最終端に車を停め出発。 小川沢川沿いを進み、川がカーブする手前から斜面に取り付くと、その上にお堂がある。 Aお堂。地形図にも描かれている。 尾根に取り付いてからの最初は、やや急峻。270m付近。
       
320m付近。傾斜が緩む。 360m付近。尾根より谷部の方が伝い易い。 520m付近。 560m付近。前日の降雪が枝に残る。
     
590m付近。勾配が強くなる。 620m付近。緩む。 630m付近で北側が開け展望がいい場所が続く。 700mで北進から西進へ。
       
710m付近から。このコースの核心部に入って行く。ここまではそれなりだが、ここからが時間がかかった。 720m付近。左右切れ落ちた雪稜。 720m付近から後。 740m付近。こんなにうねる尾根とは地形図からは判らなかった。
       
見える高みが770mピーク。雪が締まっていればトラバースするが、新雪にもがきながら頂部を伝う。 B770mから先。右が桂山。左が850mの肩。 790m付近。雪庇が緩く亀裂が入る場所もあった。 800m付近。710mからの狭陵が終わる。兎が先行している。
     
C850m。尾根の肩に乗る。雪庇が出来ていると思い危惧していた場所だが、すんなり乗り上げられた。 C伝ってきた尾根筋。 頂上直下。 D桂山
     
D北 D北東。八海山が白い高み。 D南東。丹後山側。 D南。巻機山側。
   
D西 D桂山から見る三国川(さぐりがわ)ダム。 Dコロッケパンと巻機。 E復路に850m肩から下界を俯瞰。
     
F770mピーク帰り。 小川沢川左俣。最初はこの谷をスキーで伝おうと思っていた。幅が狭く雪崩の巣になりそう。 720mから下側。 430m付近から下側。下山は尾根より谷部を多く伝った。
       
川岸に降り立ち、降りてきた斜面を振り返る。 小川沢川右岸を戻って行く。地形図に載らない橋もある。 G小川地区除雪最終端。左(南)側も、20m進んだ辺りで除雪終了。  




 持病がある人は、季節の変わり目は注意となる。しばらく忘れていたほどで、治癒したと思っていたが木曜日に左肺と肋膜の癒着部が剥がれたようで、水風船を体内に持っているような大きな違和感と、いくぶんかの呼吸困難、そして鈍痛がおこった。初めてではなくもう何度も繰り返されるので慣れた感じではあるのですが、定常状態ではなく少なからず異常状態となってしまった。週末が近い。このままだと安静か・・・。

 金曜日には日本海側では雪であった。西上州から見える西側も雪雲が覆っており、土曜日は快晴予報。こうなると台風一過の様相でもあり、降雪後の大展望を楽しみたい。ただし体調に見合った場所にせねばならなく、ほどほどの場所。ここで南魚沼の桂山に目を向けた。夏道はなく残雪期の山。標高も高すぎず低すぎずちょうどいい。西の日吉神社から登るのがスタンダードコースのようではあるが、細尾根で藪が出ていることが多いよう。西尾根であり、北風により南に雪庇が発達するが、発達できずに落ちてしまうよう。距離は3Kmであり、もう少し短く歩けないかと検討し、南麓の小川地区からの南東尾根を伝うことにした。地形図からはそう難しい場所には見えなかった。もう一つ、小川沢川を伝い、途中から左俣に入りスキーでの谷登りも考えてみた。これは肺の状態が不完全なので却下。

 1:15家を出る。月夜野まで地走りしてから関越に乗り六日町で降りる。いつも寄っていた二日町橋のたもとのセブンは廃業していた。291号沿いにあるセブンに寄ってから三国川ダムへと向かってゆく。ちなみにですが、「みくにがわだむ」ではなく「さぐりがわだむ」が正式名称。私自身この日まで読み違えをしていた。日吉神社を左にして深沢地区まで進み、そこからの右岸側の道を伝おうと持ったが、除雪がされていなかった。233号に出て、五十沢小の所から再度右岸へ行くも、新潟ガービッチまで除雪されているが、その先東側は雪に埋もれていた。またまた233号に出て小川入口から小川神社の方へ北進してゆく。ショートカットをせずに最初からこのルートを選べばよかった・・・。

  小川地区で駐車余地を探すのだが、公的な場所と思っていた小川神社には駐車余地は皆無。地区の西に行くと、西端のお宅から50mほど先で除雪終点になっており、この袋状になった除雪最終端に停める。周囲は暗く瞬く星を見ながら夜明けを待つ。新雪の量はどのくらいだろうか。日吉神社からのアプローチの方が良かったか・・・少し気持ちがブレたりもした。知らない場所であり、予測できない部分もあり、毎週毎週が緊張感がある。これが二度目三度目の場所となるとそれが無い。毎回このように緊張感があるので、事故が少なく推移しているのかもしれない。5時半になり、民家の明かりが灯ったのを合図にこちらも準備を始める。

 5:47行動開始。民家前を通過し小川沢川の右岸を伝ってゆく。雪に乗った場所からすぐにスノーシューを装着する。この辺り、水線と等高線が山手側に一本入っている。水路があり北に等高線一本分の標高差を這い上がると、そこにお堂があった。地形図をよく見ると、このお堂が点として描かれている。お堂の北には田んぼがあるような雪の乗った平坦地があり、その先から植林帯となり尾根が始まる。ここは地形図で読める以上に急峻で、九十九を切りながら登って行く。もっと雪が締っていればここからアイゼン歩行となるだろう。MSRのヒールサポートを利用してゆっくりと上がって行く。極力肺への負担を減らすよう、呼吸量を70パーセントくらいに絞りながらとなる。ここまでして山に挑まなくてもいいとは思うが、病んでいる状態で安静にすると病んでいるとの判断で病にコントロールされる。病んでいる時に能動的に行動すれば、 病をこちらでコントロールできる。と、勝手に思っている。

 ひだのように幾重にも細かい尾根があるようで、左右を見てもそれら尾根が見える。取付きからしばらくは尾根歩きで居たが、300m付近からは灌木がうるさい場所もあり、北側の谷斜面を伝う。ここは九十九を切らず直登的に登ることが出来た。520mまで上がると、東の中ノ岳付近から来光が上がり、向かっている雪面が赤く焼けだした。周囲では前日の雪が木々に残り冬景色を見せてくれていた。

 590m付近まで上がると、登り始めての最初の緩斜面が現れる。”こんな感じで桂山まで行けるんだろう”この時はこう思っていた。630mまで上がると、途端に北側の視界が開ける。地形が滑ったのか尾根の北斜面は無毛で高倉山側が邪魔するものなくよく見え、この展望状態がしばし続く。足許は、締った雪の上に新雪が乗ったのは間違いなく、時折ズルっと足をとられる場合もあった。この辺りで300mmほど積もっていただろうか。スノーシューでの沈み込み量は200mmくらいであった。

 710mにはこんもりとした高みがあり、獣の足跡もなく無垢の白さで綺麗であった。ここで途中で北進してきた進路を西に振る。ここから少し西に尾根を進んでみると、スカイラインのような展望尾根が続くが、そこは狭陵でもあった。スノーシューよりワカン、新雪でなかったらアイゼンと判断するような場所となった。もし落ちるならどちらが無難かと、北側と南の斜面を見るも、どちらに転んでも結構に落ちて行ってしまいそうであった。運を天に任せ、いや運を雪の状態に任せシンメトリーになった頂部を踏むように進んで行く。雪の動きようで左右どちらかに寄ろうと思っていたが、やはり新雪であり何処も同じ硬さであった。このあたりは南側に雪庇が出来ると思って予想してきたが、そのようにはなっていなかった。

 710mからの10mほどのリッジを通過し、その先720m付近にも距離15mほどのリッジが待っていた。ここも鋭利で通過するにも立ち止まり躊躇した。どこかでアイゼンに切り替えねばと思っているのだが、なにせ新雪量が多く、ここではスノーシューが利器となっていた。2カ所のリッジを通過し、まあこのくらいだろうと思って歩いていたら、740m付近から見えるその先の尾根は、全く楽をさせてもらえないような表情をしていた。鋸歯のように細かい高みもあり、アップダウンも多いのが見えた。皆がここを伝わないのは訳があるって事を体感していた。

 進む先にこの尾根にして尖峰が待っていた。登れるのか巻けるのか、下手をするとここで退散となりそうな場所に見えた。急こう配をよく「胸突き」と表現するが、ここはそのまま胸が着くほどの勾配があり、流れる雪に対しもがくようにして身体を少しづつ上げて行った。ここでも締っていればトラバースの選択もあった。南斜面がいくぶんか優しそうであり、伝おうかとも思ったが、いったん滑ればその下は蜜の等高線の斜面が待っている。ギャンブルは出来なかった。何とか登り切り770mの高みに立つ。既に桂山は見えてはいるが、その手前の850mの肩までがまだ遠かった。核心部に居ることは理解できているが、その中での中間地点に居るのか、まだまだそんな場所じゃないのか、それが判らないのでもどかしかった。

 緊張を保ちながら770mの尖峰を出発する。リッジ尾根を一歩一歩確かめるように進み、現れる胸突きの急峻は、蹴り込み雪を固めながらステップを作って登って行く。幸いなのは展望のいいこと。それがために少し風当たりは強かった。790m付近では、北側に育った雪庇が、足を乗せたらひびが入り慌てて南に飛んで逃げる。ヒヤッとさせられるが一応は想定内できちんと反応できていた。800m付近まで進むと、やっと安全地形となり緊張から解かれた。当然のように振り返る。こんな尾根だったとは。それより帰りはどうしよう。往復にするとまた危険が伴う。

 850mの肩は、ここは西風により東に雪庇が出来、崩すように登る場所と想像してきたが、僅かに雪庇があるだけで容易に主尾根に登り上げることが出来た。北に灌木を縫うように進んで行く。もう僅か。間違いない大展望が待っていると期待できるので、登頂がより楽しみであった。新雪は柔らかくスキーであれば下りは楽しかっただろうと思えた。深くトレースを刻みながら最後の登り。この付近では柔らかい雪が400mmほど堆積しているような印象であった。

 桂山到着。 広い山頂で雪庇などもなく、歩き回っても危険個所は皆無。そして遮るものの一切ない360度の展望の場所であった。降雪の後であり、それはそれは見事な周囲の山々が見える。これを狙って来たわけであり、これを狙って肺痛も我慢してきたわけであった。一つ残念なことがあり、ヤキソバパンが手に入らなかった。代用と言ったら愛好者に怒られるが、コロッケパンを掲げ記念撮影とした。白湯を飲みながら下山路を探る。雪が緩いのは間違いなく、この天気だとそれも加速する。急峻は避けなるべく緩斜面で小川地区に時間をかけずに戻れるルート。地形図を舐めるように見たものの、これと言った場所が見いだせず、往路を戻ることにした。場合によってはリッジ尾根から北側の等高線の荒い斜面を降りようかとも考えた。

 山頂を後にする。850mの肩まで戻り、717高点側に進路を展開できないかとも思い見下ろすが、木々が邪魔して地形が見えずに断念。南東に降りてゆく。そしてまた核心部に入って行く。トレースを踏めば安全と思うが、勾配があるので乗せても次々と流れてゆく。そんな場所は全てバックステップで慎重に下って行く。往路に胸突きと表現した場所は、下りだと垂直の壁のようになっており距離こそ短いが一歩一歩が重要になっていた。

 770mの尖峰に戻る。ここから下はバックステップの場所は3回。強いリッジの場所も3回。ここを伝う場合は、山頂での宴会などご法度となろう。ただでさえバランスの悪い場所であり、アルコールが加わったら・・・。そして710mの屈曲点まで戻り一安心。ここからは九十九を切るトレースを辿りながら降りて行き、後半はずっと谷地形の中を降りてゆく。小川沢川の流れの音が強くなると、その手前にも小さな流れが見え、進む進路を選ばねばならなかった。

 右岸に降り立ち伝ってゆくと、地形図に描かれない小橋が両岸を繋いでいた。対岸では大木を伐採している作業者が居り、こちらを見るも気にしない風をしている。田舎であり、山に入る人(私)など普通なのだろう。集落内の橋まで戻り、西端のお宅の前を通過すると、小学生らしき子供が3人と、そのおじいちゃんらしき人が居た。その御仁は蛍光色のジャケットを着ており、見るからに猟師。「かもしかいなかったかい」と聞かれる。「いなかったです」と答えるのだが、今日はウサギの足跡しか見なかった。降った直後はあまり足跡を見ないもの。

 駐車余地に戻る。その南側の田んぼで、先ほどの子供らはソリ遊びに興じていた。土曜日であり工事関係者も動くので、ここで除雪がされるのではと危惧したが、それは無かった。先ほどの御仁が、子供らに「群馬から山に登りに来たんだって」と説明しているのが聞こえた。

 振り返る。距離が短いと楽に構えていたが、緊張感の伴う本格派と言うべき雪山であった。桂山山頂は大勢を受け入れる広さがあるが、南東尾根は大勢で通過する場所ではなく、少数精鋭で臨むべき場所だろう。まあこれも毎年の雪の様子で表情を変えるのかもしれないが・・・。私はスノーシューで行動したが、アップダウンと急峻が多いので南東尾根に適しているのはワカンの選択だろうと思う。また、新雪ではなく降らない日が数日続き、アイゼンで行動できるほどに締まっていると伝い易いだろう。もっといい選択は、距離はあるが西尾根なのかもしれない。





 
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