東前掛山        2450m          
         
                                  
                                 
                                                                                                      
  2021.1.9(土)


  雨    単独     峰の茶屋から     行動時間:3H33M


@峰の茶屋4:48→(23M)→A馬返し5:11→(118M)→B東前掛山7:09〜13→(14M)→C行者返し7:27→(35M)→D馬返し8:02→(19M)→E峰の茶屋8:21
                       


 
@峰の茶屋から A馬返し 小浅間山側への案内は多いが、浅間側への物は皆無。 A馬返しから小浅間山。 A観測設備舎の北側から斜面を這い上がる。
       
登山道に乗る。 1650m付近 振り返る。小浅間山頂上と同じくらい。 道幅を区切るロープが残る。
   
この辺りが森林限界。 ブル道を登る。トレースは見当たらない。 斜上路 スキーアイゼンが落ちていた。
       
残り標高差200mくらい。暴風雨となり進退を迷う。 B東前掛山登頂 B最高所に杭が打たれている。 Bヤキソバパンと
       
B晴れていればここに浅間が見える。 C行者返しの分岐点 C行者返しの分岐点を麓側から見る。 D馬返しの標識。樹木に隠れ見えなくなってしまっている。
     
D西側から見る馬返し側。 D東側から見る浅間山への登路入り口。 登山道は沢のように。 E峰の茶屋に戻る。




 百名山の浅間山。山麓に広がる群馬側4自治体と長野側4自治体、そこに各省庁が加わり火山防災協議会が立ちあげられ、通年で火口から4km以内は立入禁止となっている(災害対策基本法63条第1項)。ただし噴火警戒レベルにより4km圏内の登山道にも入ることが出来る。8月6日に噴火警戒レベル2からレベル1に引き下げられ、火口から500m圏外までは登行できることになった。最良の場合でも500m以内には近づけないので、百名山信者で”百名山に登った”と言っていても浅間山に登っていない人は多い。

 
 御嶽山の噴火後も似た措置が取られ、登山者の登山欲求と、安全、自治体の観光収入とかを鑑みエリアを決め登山ルートを開放している。この御嶽の場合は、レベル1で火口から0.3km圏で封鎖している。対する浅間は0.5km。200mの差異に、安全に対するマージンのとりかたが異なっているのが判る。山体の形状が、浅間の場合は被害を広範囲にもたらすってことなのだろう。あとは御嶽は地獄谷が火口なので、浅間とは少し状況が異なる。浅間に置き換えるならば草すべりが火口のような感じだろう。御嶽の規制には、浅間における通年「4km以内の立入禁止」縛りの部分は「1km」で設定されている。この円が小さいので、噴火警戒レベルにより行動可能範囲が都度可変となり分かり易い。ここは後発の御嶽に浅間も倣った方がいいような気がする。浅間の規制範囲図を見てみよう。浅間山荘からの長坂はコース外。トーミの頭からの中コースもそう。どちらも黄色線で塗られてないのでレベル2でも1でも立入禁止と解釈できる。4km縛りがあるので、マダムが花摘みに、ちょっと登山道を逸れただけでも立入禁止違反となる。中コースや長坂を伝い、どれほどの人が違反しているのか。罰則金は10万以下。規制がスマートでない感じ。

 
 浅間山の登山道は、メインルートが峰の茶屋からだったが、上記の理由からエアリアマップからも国土地理院の地形図からも破線路は消し去られてしまった。那須山岳道路(通称自衛隊道路)も通行禁止の後に地形図から抹消されてしまった。ただし今はどちらの道も衛星画像で現地が見られ、浅間山東麓にはハッキリと判るブル道が存在する。那須も浅間も、それらの道を時折好事家が歩いている。公的には、西の前掛山を浅間山として登らせている。西が良くて東がダメなのは風向きなのか、ハザードマップを見ると、西の前掛山も高濃度の火山性ガスが広がりやすい範囲になっている。御嶽の規制状況は理解できるものの、浅間の場合は良く判らないでいる。

 
 浅間山は1999年に峰の茶屋から登頂している。抱き合わせで前掛山も東からアプローチし、下山がてらに小浅間山も踏んだ。この時に浅間山の下山時か、前掛山からの帰路で東前掛山を踏んでいると思うのだが、東前掛山をあまり意識していなかったので全く記憶に残っていなかった。もう一度登らねば・・・。剣ヶ峰も牙山も、天狗の露地の旧道も指定コース外。バカ尾根もそう。だいぶ禁を破って登っている感じであるが、通常は地形図をベースに登山をしているので4km縛り情報を最近まで知らなかった。でも知らなかったでは済まされないのが法律。今回はせめても噴火警戒レベルは準拠しよう。これにより許容される範囲が違えるのだから。待っていたレベル1になった。

 
 お盆の登山客を思ってかたまたまなのか、お盆休み前にレベル1に引き下げられた。それを知ったのが発表翌週の11日。その週末土曜日は雨予報であったが、すぐに実行することにした。今年の2月、レベル1になったと思ったらすぐにまた3月にレベル2になったことがある。火山は生きている。山は動かないのではなく、山は常に動いている。のんびり構えていたら登れなくなることがある。焼岳もそうだし、最近では本白根山がいい例。

 
 2:15家を出て、1時間ほどで峰の茶屋に到着。相変わらず東側のトイレ舎のある方の駐車スペース入口はロープが張られていた(下山時に見たら、日中も閉じられていた)。西の東屋のある登山口脇に停める。車道側を前に向け停めたら、峠を行き交う車のヘッドライトで眩しいこと。ちょうど嬬恋側も軽井沢側も坂になっていて、さらに登山口側が頂点のようなカーブになっている。光が集まる場所に停めてしまったのだった。避けるようにすぐさまシートを倒して仮眠に入る。雨はシトシトと降っていた。外気温は14

 
 雨は時間の経過とともに粒が大きくなっているようだった。車を覆う木々から落ちる雨粒の音に、目を瞑り身体を休ませているくらいであった。周囲が白みだし雨具を着込み迷犬にも着せ、4:48峰の茶屋登山口を出発する。前回ここを伝ったのは、小浅間山に登った時で、その時は細かいタカラダニが発生しており、馬返しまでたくさん見られた。その記憶があるのでトラウマになり、まだ暗い中でも足元を気にしてしまう。動物には害を与えないと判っていても、その赤さと量は目に刺激的だった。一級路を淡々と伝い馬返しに到着する。

 
 馬返しには小浅間山へ導く白ペンキが3箇所見られるが、浅間山側へのそれらは無い。道が無いことになっているのだから当然だろう。以前は目に入った「立入禁止」の紅白の看板も薮化して見えなくなってしまっていた。22年前はここから道を伝って浅間に上がったが、禁止看板の場所から入山するのは後ろめたさが強いので、さらに北に進み観測小屋の北側から藪漕ぎで西に登りだす。植生は濃いが、比較的歩き易い藪漕ぎで、すぐに斜上してゆく登山道に乗る。最近は用途が無いのか、ブルドーザーが通ったようなキャタピラーの跡は無くなっていた。

 
 最初の登りが終わり樹林帯から抜け出し視界が開けてくる。振り返ると小浅間山の頂上部の高さとなっていた。向こうだったらもう登山は終了していたことになる。細かい軽石を踏みながら進む。等間隔で木の角柱が埋まっているが、たしか距離が書かれていた記憶がある。今はベースの白ペンキも剝がれてしまっていた。時折明るさも出て、若干の期待をしてしまうが、雨が止むことは無かった。風は緩く南西から吹いていた。

 
 行者返しには小さなケルンがあり、浅間山本峰への道が右に進み、左が東前掛山へ進む。足元にプルタブが落ちていた。こんな物でも人の気配を感じ嬉しかったりする。さらに高度を上げると、スキー用のクランポンが片方落ちていた。積雪期にはスキーヤーが多く入るのを聞いているが、この斜面の広大さなら滑っての気持ちよさが判る。また壊れて落ちたとすると、ガチガチに凍る場合もあるのだろう。クランポン一つに、優しい浅間と厳しい浅間が見えたりもした。

 富士山の砂走を登ったことが無いので、完全な比較はできないが、向こうは人の多さからステップが出来ている。こちらはそれは無い。迷犬も歩き辛そうに、自ら九十九を切るようにして何度も切り返して斜上してゆく。動物の本能が見え面白かった。山頂まで残り200m付近になると、途端に暴風となった。雨が降っているので正確には暴風雨で、左前方から雨が吹き付けていた。どうしようか迷うほどの強さで、少しでも陰に入ろうと北側に巻き込みつつ上がって行く。そこでも当然足許は変わらないので、九十九を切りながら登って行く迷犬であった。目と鼻の先に山頂があるのに、ここで撤退にはならない。それを分っているのか、日ごろの行動で慣れたのか、迷犬は山頂を目指して先を行く。雨具のフードを被れないので、叩かれる眼が少し赤くなっていて可哀そうだった。

 
 東前掛山登頂。標識は無く、唯一の人工物の杭が打たれているだけであった。道はそのまま北側へと進んでいる。浅間は当然見えない。指先はふやけ若干悴み気味だった。動きの悪い手でヤキソバパンの封をあけ記念撮影。あまりの悪天に撮影は止めようかと思ったが、二度と登らないだろう場所であり、デジカメの中にヤキソバパンと黒犬の姿を残す。天気が良かったら最高だったろうと思うが、足元が湿っていてもなおこの歩き辛さ、乾いていたらもっとズルズリとしただろうと思う。

 
 逃げるように下山に入る。踵を入れながらのグリセードーで、積雪期のように大きなストライドで降りて行く。迷犬も下りなら快調だろうと見ると、足が流れグリップしないことを怖そうにしている。ここの地質だと、足の裏で地面を掴めないから怖いのだろう。でもそんな中を降りるしかない。そして迷犬にとっても経験は糧になる。行者返しまで下ると、ブル道の北側を伝っていた迷犬。北の方がザレていないようだった。

 
 ブル道の中にプルタブがまた落ちていた(往路とは別)。なぜにプルタブなんだろう。あと、コーラの瓶が割れて残っている場所や、ガラス片が落ちている場所もあった。みな規制発動後のものだろう。標高を落とすと風は収まり雨の負荷だけとなった。既に全身びしょ濡れで雨具が雨具の役目を果たしていないほどだった。小浅間山も望むことも出来ずに樹林帯に入って行く。

 
 馬返しの分岐に近づくと、分岐点から10mくらいはかなり薮化していた。道の北側には昔から建てられている立入禁止の看板が見える。多分、グリーンシーズンだと目に入らないのではないだろうかと思う。よく踏まれている小浅間山側に対し、西側一帯は自然に戻りつつあった。一般道に戻る。

 
 馬返しからの登山道は、水路となり沢の中を歩いているかのようだった。こうなるともうタカラダニの心配など無用になり、ぐちゃぐちゃぬちゃぬちゃと進んで行く。さすがにこれだけ降りが強いと入山者は居ないようで、我々以外の足跡は登山道に残っていなかった。峰の茶屋登山口に戻る。

 
 車のリアハッチ下で着替えるのだが、吹き込む雨に屋根が無いのも同じだった。この状況下でのすぐ脇の東屋は、屋根が大きく非常に重宝した。屋根から落ちる雨水で汚れた雨具が洗えるほどの水量だった。在ってありがたかった東屋。地面は土だけど・・・。バイカーが中でテン泊するのか、北側にロープが張られ立入禁止のようになっていた。




 
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