キワノ平ノ頭 1511m 向山 1431.7m
2014.10.25(土)
快晴 単独 三国トンネル新潟側口より周回 行動時間:6H
@三国トンネル新潟側口5:38→(44M)→A長倉山下分岐6:22→(43M)→Bキワノ平ノ頭7:05〜17→(39M)→C1380高点鞍部7:56→(58M)→D1450峰8:54→(49M)→E向山9:43〜55→(54M)→F1286高点10:49→(20M)→G鉄塔下11:09→(19M)→H国道17号にでる11:28→(10M)→I三国トンネル新潟口11:38
@三国トンネル新潟側口Pからスタート。 | @登山口標柱 | 無記名の分岐箇所を右に入って行く。すぐに小沢を跨ぐ。 | 立派な道で九十九折が多く緩やか |
最初の鉄塔の場所は、岩を切り崩して立てた独特の場所。 | 岩の脇を登って二つ目の鉄塔。 | 巡視路の分岐。左から上がってきた道の方が太い。右へ。 | トラバースして鉄塔を目指す。 |
A長倉山下分岐。ここでは伝って来た巡視路へは進入禁止となっていた。 | 途中から見るキワノ平ノ頭。 | 途中から見る1450岩峰の様子。 | キワノ平ノ頭下の笹原。 |
Bキワノ平ノ頭到着。 | B標柱と、後にK大の標識が落ちていた。 | B関東平野側は雲海だった。 | B今日は山刀を持つ。経路の蔦に大活躍。 |
1470m付近。胸ほどのササが続く。 | 1470mから降りてきた尾根を見上げる。 | 1390m付近から見る1450m峰。 | C1380高点より南側。尾根東側に岩が見え出す。 |
途中から1450m峰 | 檜が出ると岩場地帯に突入。 | 植生もやや強情。 | 地形図のゲジゲジマークの場所はこんな感じ。 |
小キレット。高度感のある場所。 | 立ちふさがる大岩は右を巻いた。 | 天狗の何がしと名前を付けたいような西側の岩場。 | 西側が進めず東側を巻いた場所。 |
D1450m峰の上には目立つ大岩がちょこんと乗っていた。 | D1450m峰からキワノ平ノ頭。 | D1450m峰から向山側。 | 1450m峰からは北西に下る。下ってきた小谷状の場所を見上げる。 |
東側に3畳ほどの岩屋がある。 | 下ってきた場所を見上げる。正面左側を降りてきた。右側通過はザイルが必要。 | この岩峰は正面突破。さほど危険箇所はない。上の方がややうるさい感じ。 | 植生が密になり抜け出し憎い場所。 |
見事な岩屋を発見。15畳ほどあり、明るく居心地がいい。尾根東側。 | 最後の難関。ここはやや緊張する場所。 | 写真では感じられないが、垂直に6m〜7mほどのチムニー登り。 | 上からの写真。根の緩くなった木が手がかり。それ以外掴む物がなく、巻き道も探したが見えてこなかった。 |
難関の岩峰の上から見る向山側。 | 手前峰から向山。もう僅か。 | E向山山頂。傾いた三角点が印象的。 | E三等点。 |
E向山より1450m峰 |
Eヤキソバパンと筍山。 | 1286高点を狙って笹薮を分けて降りて行く。有視界なので良かったが、視界が無い場合は北東に下りて林道に出てしまった方がいいだろう。 | ナメ沢を跨ぐ。ツルツル。 |
1470m付近で、1450m峰からの尾根に乗る。 | F1286高点。この先、蔦類が密生。 | F1286高点から見る1450m峰。 | 鉄塔からは立派な巡視路が南東に下りている。 |
二つ目の鉄塔から巡視路は急下降しだす。 | 登山道のような伝いやすい巡視路。至極快適。 | 1100m付近は紅葉が見ごろだった。 | G国道17号にでる。 |
G53入口 | 堰堤の場所はエメラルドグリーンが見事。 | H駐車余地は、工事中もあって満車だった。 |
キワノ平ノ頭は、2012年1月スキーを履いて狙ったものの、長倉山下の鉄塔までで敗退した。嫌な場所にポツンと残してしまい、行く機会を見計らっていた。湯宿温泉を利用した時に新治山岳会のメンバーに教えてもらった、法師温泉から県境に上がる巡視路も面白いと思えたが、地図を見ても負荷がなさ過ぎて悩んでいた。こうなると湯沢側にある向山が面白みを増す。ただし悍ましいゲジゲジマークの岩峰が経路にある。その場所を越えて向こう側まで辿り着けるのか・・・。向山のみで作戦を練るなら北東側の林道をアプローチに使うのが順当となろう。岩峰通過は「やはりダメだった」と言う結果も受け入れることにして、2座を抱き合わせで狙ってみることにした。下山は臨機応変の判断とした。
1:45家を出る。現地まで100kmほどなので夜明け時間を考慮しても急ぐ必要はなかった。もっと遅くても良かった感じで、地走りでも4:00には三国峠の新潟側口に到着した。現在は付近の工事中で、駐車余地の一部はそれらの機材で埋めていた。ハイカーのものだろう品川ナンバーの車の向こうに大型テントが見える。好天の秋の日にパーティー行動のよう。ラジオを聴きながら夜明けを待つ。17号は行き交う車は多く、ひっきりなしにヘッドライトが交差していた。
なかなか白みださずにいらいらとしていた。そこに長岡ナンバーのハイエースが現れ、テントの住民を起こして周り出した。ガイドなのか・・・。動き出すようならこちらも・・・と準備をしだす。ザイルは必携と考えザックに入れる。ハーネス類まで必要なのか、逆にそこまで必要だったら地形図のゲジゲジマークを見ると引き返した方がいい判断にもなる。岩峰に不安と期待を抱きつつスタートを切る。長岡ナンバーの御仁は、挨拶を交わすと玄人山屋の雰囲気が強くしていた。
登山口の標柱を左に見て立派すぎる道形を行く。紅葉の残る落ち葉が敷き詰められ心地いい。登山口から8分ほど登ると、右に分かれる道が出てくる。分岐箇所には頭の黄色い杭が打ち込まれてはいるが、ここに道標はない。登山道を離れその道型を伝って行く。すぐに小沢の渡渉があり、その先は緩やかな九十九折が続く。緩やか過ぎるくらいに緩やかで、登山道にしてもいいような一級の道に思えた。その道が急登となると、登りきった上が鉄塔の場所で、独特の削岩された平地が作られていた。次の鉄塔もわずか先に見えており、岩場ルートを進むような感じで伝って進む。
二つ目の鉄塔下を過ぎたら、3分ほどで明瞭な道が左から上がってきており右に進んでいた。三叉路の分岐点の足元には「東」と書かれた標柱が埋まっていた。東京電力の巡視路と言うことになる。SK氏は、右から来て左の道に降りたようだ。それもそのはず、今伝っている道は薄く、左に降りる道の方がハッキリと太いから。選択的には正しいと思えた。ここからは長尾山の山腹をトラバースしてゆく道。足元を濡らすことのないよく管理された道でとても歩き易かった。
長尾山下分岐。立派な標柱が立ち、今伝ってきた巡視路へは進入禁止と刻印されていた。鉄塔が立ち懐かしい場所。ここで進退を迷い退いた場所。今日はその未踏の尾根を進んでゆく。快晴無風、そこに後ろから来光があり我が影がルート上に浮かび上がる。心地いい。日本山名事典では、西稲包山なども掲載予定であったと聞くが、載っていればキワノ平ノ頭から先にも進むのだが、今日は上越国境を伝うのはキワノ平ノ頭まで。そこが向かう先に顕著に見えている。そして進路が1447高点から西を向くと、しばらくして前方右(北)側に向山が見えてくる。実際に目に入ってくるのは、その手前にある岩峰の1450峰なのだが、ゲジゲジマークの場所らしく、それなりに威厳があるように見えていた。
キワノ平ノ頭到着。小ぶりな山頂部に立派な標柱が立ち、山頂を示していた。これが無ければ通過点。標柱の裏に割れ落ちたK大の標識があった。朝露対策に雨具を着込み、山刀も腰に下げる。藪装備を整えもう一度展望を楽しむ。南側は関東平野に雲海が広がりかなりいい感じの景色だった。山頂を後にして笹薮に突っ込んでゆく。どれほどの煩さか、少し探るように感触を確かめながら行く。振り向きつつ、戻る場合の事も考慮する。人工物が一切ない獣さえも伝っていないような場所に見えた。大木に爪痕もなく、熊もここには居ないようであった。すぐに山刀が重宝する。蔦類が出てきて進路を遮る。予想と対策がばっちり合ったとも言える。
1380高点が尾根上に示されている。ここまでは下り勾配でほぼササの尾根。先に見えてくる岩壁に、覚悟をきめるものの現地入りとなりだんだんと不安が増殖してゆく。ここまで40分、戻るなら1時間。撤退もまた進路なり・・・。突起した岩が右にそそり立っている。なにかこの場所へ入る不審者を見ている門兵のようでもあった。そこから少し水平な尾根が続き、先にヒノキが見えたら岩場ルートの本領となる。
尾根上は蔦類が多く山刀を持ってきたのは正解だった。だれも入っていないであろう場所には、これらが多い。西側の下の方を見ながら、巻道も探しつつ尾根上を突破して進む。目立つ松の場所は右を巻く、最初のピークから先はやや深めの小キレットとなっており足元が見えない状況下では高度感があった。ここも頂部を拾うように伝って進むが、西側を下巻した方が良かったとも思えた。
正面に岩壁が立ちはだかる。ここは足場が狭いが東側を巻いて行った。体が空中に飛び出す感じでちょっと微妙な通過点。進んでゆくと西側に目立つ岩が現れる。その上に上がると「天狗の踊り場」と言っていいほどの平らな場所となっていて、舞台のようでもあった。左に見つつ通過してゆく。頂稜の上に、大岩とマツが絡まるように続いている。屏風のような大岩の場所は、左が巻けず右巻きする。この付近、植生も密生してきているため進度もかなり落ちてきていた。
1450m峰山頂に立つ。手前は地面に足が着かず木の上を伝うような場所があったが、山頂には顕著な岩が乗り、この岩峰の最高所らしい場所でもあった。先を望むと平らな頭の向山らしき高みが見える。まだ距離がある。もうそこと思いたいのだが、この進度だと「まだ」と判断した方が正しい。振り返ると、キワノ平ノ頭がくっきりと見えている。東には平標山の凛々しい姿もある。今日は快晴無風、どこに入っても最高の山日和だろう。1450m峰からは北側は急峻で降りられず、北西側の小谷状の場所を降りてゆく。降りてから修正するように尾根の頂部に戻ると、東側には3畳ほどの岩屋があった。獣でも居たのではと体毛を探したがなかった。やはりここには獣が少ないよう。少し厄介な通過点が続く。岩屋から5分ほど進むと急峻の上に出る。最初西側に行ったが、こちらはザイル下降でないと降りられない。東側に行くと流れやすいが木々に捕まりながら降りられた。そして進む正面に岩峰が見えてくる。“この連続か”と絶え間ないそれ相応のもてなしに緊張が続く。
1450高点北の岩峰は、上部こそ密生した植生に難儀するが、他で危険個所はなかった。とは言っても安全通過できる場所はあまりなく、それなりに危険か付き纏う場所が続く。何が出てくるのか、ここまで来て引き返すのも苦痛。「無事抜けたい」このことが強く思えてきた。と思いつつ頂稜を進んでいると、見事なまでの空間が右下に見えてきた。岩屋とも石門とも言える場所で、その広さは15畳ほどあった。十分寝泊まりできる場所でしっかりと雨を防げる岩の天井になっていた。人工物がないかと探したが、皆無。これは立派。これが見られただけで伝ってきた甲斐があった。居心地が良すぎて長居しそうなほど。時間的な日差しも良かったのだろう。空間の中が明るく、暖かいのだった。
岩屋の先は、足元が見えない場所が多く探るように分けつつ降りてゆく。その先にはまたまた危険そうな岩峰がそそり立っている。どこを通過すればいいのか、抜けられそうな、安全そうな場所を探すも、中央に見えるチムニー状の場所しか通過できそうな場所は見えてこなかった。行くしかないか、ダメならだめで次の手段を考えればいい。岩峰の基部に辿り着くと、そこから上は7mほどの高低差があった。掴めそうな小指ほどの木があるが、掴むと根本はゆるゆるであった。その周囲にある木も全てそんな状態で、体を預けるには心許なかった。3mほど上がってしまえば太い木があり、そこまでが真剣勝負と思えた。ビブラムソールも張り替えたばかりでClimbZoneもまだ新しい。左側の岩のわずかなでっぱりに足をかけて右手をつっぱるように使い体を少し上げる。細い木を補助的に使うように掴み、次は左手を突っ張るように岩壁に押し当てる。少しずつ体を上げ、その先の太い木には飛びつくようにして掴んだ。膝をも使い這い上がり何とかクリアー。この稜線での一番の危険個所であった。岩峰の上に立つと、目と鼻の先に向山はあった。
手前峰を一つ経て、向山に到着する。傾いた三角点があり、歯槽膿漏状態でもあった。3方に周囲を固める石も置かれているが、こちらも埋まっていないような珍しい場所であった。360度のパノラマ展望があり、すこぶる居心地がいい。振り返ると、遠くキワノ平ノ頭がある。1.2キロほどの距離で通常なら近い場所だが、その距離に2.5時間ほど費やしてきた。南進する場合は最低でも2回はザイルを出さねばならないだろう。ヤキソバパンを齧りながら周囲展望を楽しみ、最後に地形図を眺める。安全通過は北東に進み林道に出るコース取り。でも今日は完全な有視界でギャンブルができる。1450峰から東に延びる尾根上にある1286高点を狙うように下ることを決めた。等高線も密ではなく問題なく伝えると予想した。最後に倒れていた航空測量用の棒を立てて山頂を最後にした。
少し1450m峰側に戻り、手前峰間の鞍部から東側に下降しだす。一面のササ斜面で、それらを掴みながらずり落ちるのを防ぐ。気持ち南東に進むように進路を決める。常に1286高点が見えているので方向を見定めやすかった。途中にナメ沢が一つ、さらに涸沢が一つあった。そのくらいで危なげなく降りて行けた。その代り密な場所もあるが、高度を下げてゆくとそれも和らぐ。1450峰からの尾根に乗り上げた場所は1270m付近で、そこからのササ尾根を分け上がると1286高点となった。
1286高点から先は、ササに没してルート取りが判り辛い。さらに蔦類もはびこり自由に動けない場所となっていた。植生が薄いのは西側で、寄りつつ北に進んでゆく。この先に鉄塔がある筈であり、それを探していた。上からはよく見えた鉄塔も1286付近では見えてこないのだった。尾根を拾うように進んでゆくと、先の方に鉄塔が見えてきた。鉄塔まで行けば間違いなく巡視路がある。近づくと刃物痕こそが在ったが、道形は皆無であった。最後の最後に尾根の末端に白いマーキングが残っていた。
鉄塔の場所は広く展望のいい場所であった。送電線に沿うように巡視路が切られ南東に続いていた。ここも足が一切濡れないほどに刈込がされ状態が良かった。二つ目の鉄塔まではなだらかで、その先から急下降しだす。と言っても、なだらかな九十九折を繰り返す道が切られ、周囲の紅葉を愛でながら降りてゆける。超一級の道で、登山道としても十分使え、伝っても楽しい場所に思えた。どこに出るのかと思っていると、1018.1水準点のわずか南側に降り立った。そこには53番とふられた黄色い標柱も立っているので、入るにも判りやすい場所となろう。
17号は工事渋滞がこの巡視路入口まで延び、その停まっている車の横を駆け上がってゆく。背中に視線を感じる登りでもあった。スノーシェッドの場所で、歩道はトンネルの外に出て車を気にせず通過できる。見下ろすとエメラルドグリーンの水を湛える堰堤があり、歩かなければ知り得ない場所でもあった。澄んだ水の中に魚影を探すも見えてこず。魚釣りと縁の遠い川なのか・・・。
駐車場に戻り、その車の多さに驚いた。満車もいいところで、場所がなく泥除けを歩道にぶつけ、折り曲がるようにまでして停めてある車もあった。早くに来て停めてよかった。工事の関係もあろうが、そもそもは秋のハイシーズン、黙っていても賑わう場所であろう。工事関係者の視線がある中、着替えて帰路につく。
振り返る。キワノ平ノ頭から向山までは、難易度は高くないもののテクニカルな尾根であった。厳密には1380高点から北を指すのだが、パイオニア的行動をするにも、いつもより疲れたのが本音。危険個所を予想はしていたが、食傷気味にお腹一杯になるほどに連続していた現地。その中でのオアシス的な岩屋は、だからこその存在価値があった。向山の山頂部は草が繁茂しておらず休憩適地だったのも印象的であった。北東側から上がっても、十分登頂感のある山頂だろう。ただここで、一帯山塊で一番高い場所は1450m峰。ここを踏むのか眺めるのかの判断は出てくるだろう。眺めるだけならザイルは不要と思う。