丸倉山    1782m          

 
   2015.5.16(土)    


  雨のちくもり 一時晴れ、のちガス    単独       林道山之坊線で往復  行動時間:9H34M 

 装備:12本爪 ワカン ピッケル  20mザイル


@林道山之坊線入り口5:09→(7M)→A大所川第二発電所分岐5:16→(47M)→B大所川橋6:03→(5M)→C黒負山への林道分岐6:08→(51M)→Dツリコシ沢6:59→(12M)→E8.6km地点取り付き点7:11→(125M)→F第1峰9:56→(11M)→G第二峰10:07→(19M)→H丸倉山(第3峰)10:26〜48→(92M)→I8.8km地点に降り立つ(林道)12:20〜22→(74M)→J大所川橋帰り13:36→(59M)→K大所川第二発電所分岐帰り14:35→(8M)→L林道入口に戻る14:43


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@木地屋地区北、林道山之坊線入り口からスタート。土砂降りだった。 A大所川第二発電所分岐通過。 第二発電所の導水管 落石。奥に進むと10トンほどあろう石も落ちていた。
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残雪の押し出しはほとんどなく、雪を乗り越え進む場所は2箇所ほどのみだった。 根こそぎの倒木。道を塞ぐ倒木も多い。 例年の大工事の場所。今年は林道が陥没。前年度は押出しが川を半分塞き止めたよう。 B大所川橋だが、橋の上もまた川になっており欄干に掴まりながら水没しないよう進む。
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C黒負山への分岐(鋭角に曲がる場所)を右に見送る。 大所川は凄まじい流れ。 余所見でもして踏み外したら瞬殺だろう。それは別として、雰囲気のある林道。 第11砂防堰堤の上の吊橋。
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Dツリコシ沢の調整口。この付近だけかなり気温が低かった。 大岩に8.2Kmの表示。林道入口からの距離が示されている。 E取り付き点とした小沢の場所。 E林道のすぐ上側には8.6Kmの表示があった。
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小沢を入ってすぐに大きな池がある。これは季節的なもののように思えた。 910m付近。雪を拾って左右にクネクネと進んで行く。 1080m付近。この付近でも雪は切れるが、なんとか繋がりだしてきた。 1150mの緩斜面地形の肩の場所まで上がると、このリボンがあった。(2箇所のみ発見)
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1160m付近。広い地形にブナが広がる。 1270m付近。この先でアイゼン装着。 1440m付近。尾根の北側は急斜面でツリコシ沢側へ落ち込んでいる。注意しつつ進む。 1600m付近。
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1620m付近。東へトラバースして行く。 F1720m峰(仮称:第1峰)到着。展望のいい場所。 F第1峰から登ってきた側。 F第1峰から第2峰(中央右)と第3峰(中央左)を望む。
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G第2峰の南側は、強烈な藪であった。頂部は通らない方がいい。西側の通過もNo。東側に僅かにズレた場所が漕ぎやすい。 1730m鞍部から望む丸倉山最高所。 鞍部から振り返る2峰。頂部稜線は藪と判るだろう。 H丸黒山(仮称:第3峰)に到着。展望ピーク。
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H丸倉山から黒負山を望む。尾根を伝えば1時間ほどで行けるだろう距離。 H丸倉山から五輪山。 H丸倉山から第2峰側。 H丸倉山からヒワ平側。
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H珍しく黄色い絶縁を残す。 H山頂の樹林越しに赤男山。 H黒負山の東側には「ペンギン」と「ガッツポーズ男」が出現する。 第2峰へ戻って行く。
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1590m付近。やっと晴れ間が見えてきた。暑いくらいになるが、長くは続かなかった。 1150mの緩斜面に戻る。 I小沢と林道が合わさった場所に戻る。流れでアイゼンやピッケルや、雨具など汚れ物を洗って戻って行く。 Jツリコシ沢の流れも大迫力。
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Jツリコシ沢のところにはウドが多く、瑞々しく甘く美味だった。 経路にはコゴミの群落もあり、夕食用に少し拝借。 第11砂防堰堤の上は、広く見栄えのする場所。 第11砂防堰堤を上から見下ろす。凄まじい雪解け水の流れ。
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地形図にトンネル記号があるが、明るいスノーシェッドだった。 流れを見ながら戻って行く。単調だが飽きないで歩いていられる。 黒負山への林道分岐帰り。 K大所川橋。左岸側のここを往路も復路も平均台のように伝う。この林道の上側は常時流れがあるようで、コンクリート舗装部がツルツルだった。
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崩落地帰り。川の流れが下に入り込んでしまっているほど。この場所は例年損壊や押し出しがあるよう。  L大所川第二発電所分岐帰り。復路ではチェーンゲートが開いていた。 林道入口付近にはユンボが待機。5月18日より、第一発電所まで林道修繕作業開始。年間修繕総額は2千万だそうだ。 M林道入口に戻る。チェーンゲートはされたまま。




  雨予報の土曜日、登山道のある場所を選ぼうとも考えたが、まだ雪が楽しめる。雪の残る北アルプスの最北エリアに向かうことにし、気になっていた後立山の前衛座を目指す。問題は、大所川沿いを伝う林道山之坊線の状態。押出しくらいなら乗り越えられるが、崩落などがあれば、急峻地形であれば、そこで計画を諦めねばならない事も出てくる。出来うるリスクの拾い出しをし、最後にザイルをも持つことにして雪山フル装備で挑む事にした。何せ、全体的に等高線が密の山、五輪山側から狙えばそれを回避できるが、蓮華温泉側からグルッと回るほどに悠長に時間を使っていられない。もう山之坊線を使うしか見えてこない。

 1:00家を出る。上州は乾いた路面であったが、三才山トンネルから松本に降りるとフロントガラスを雨が叩き出し、大町から小谷へと向かう頃には行動を躊躇したいほどに土砂降りとなった。平岩駅の所から505号で木地屋地区に向かって行く。2009年2月以来なので6年以上が経過している。でも現地に変化は一切ない。この先もこのままなのだろう。九十九折を伝い、林道山之坊線入り口に到着する。予定通りゲートがされていた。ここから取り付き点まで9Kmほどアルバイトせねばならない。この山を狙う場合の準備運動でもあるが、この距離は普通に長く感じる。既に5時を回ってしまい急いで準備をする。一方で行くなとばかりの豪雨となっていた。何十年ぶりかレインキャップまでかぶった。

 チェーンゲート脇を通過して行く。その先には3台のユンボが置かれていた。除雪作業がされているようで、期待してしまう。すぐに大所川第二発電所の分岐となり左の道を選んで進む。発電所側へのルートはチェーンゲートされていた。懐かしい地形のなかを進んで行く。前回とはまったく違う色合いの中となるが、今日の新緑はことに美しい。これは間違いなく雨のおかげであり、発色を良くしてくれている。

 導水管の場所を通過する。この付近までは轍が見え、車が入っているのだと思っていた。がしかし状況は荒れだす。落石倒木が連続する。雪の押し出しはほとんど無いと言っていいほどだが、山手側から落ちてきている岩や木で、林道の上は賑やかであった。これだとバイクも通過不能状態。林道入口のユンボは、まずは第二発電所側で動いたようだ。大所川の轟音を聞きながらテクテクと進む。上に行き、この雨が冷たいと感じるほどになると厄介になるが、天気は回復予報であり気にしつつも楽観して雨上がりを待つのだった。でも現状は激しいまま。

 大堰堤の先の瀬の所では、林道がゴッソリと抜け落ちていた。大水で流れたようにも見えるが、これだと第一発電所まで開通するのは当分先だとも判断できた。緩い地形に慎重に足を運んでゆく。護岸工事のコンクリート壁のみが残っている形で、とても違和感のある気持ち悪さのある場所となっていた。覗き込むと川の流れも下から入ってきていた。林道の先に九十九折が見えている。すぐ先が大所川橋で、左岸に移る場所だった。

 その大所川橋だが、その下の轟音も凄いのだが、橋の上もまた流れが凄かった。林道から流れ込んでいる水のようであるが、橋の上で水深150mmほどあり、欄干を伝うようにして対岸に移った。コンクリート舗装された林道を流れが覆っている。グリップが良さそうな舗装面にも見えるが、しっかりコケが乗っていて滑るは滑るは、最初のターンする先までその状態で、何度もスリップして転倒しそうになったほどだった。たかが流れされど流れだった。

 黒負山の時に分岐した枝林道を右に見て先に進む。この先は初体験の地形。気になっていたのはトンネルの通過。水が溜まっていないだろうか、暗く通過しづらい場所ではないか、潜って進む場所に不安があった。大所川橋より上流は、川幅が細くなり流速が上がっていた。その強い流れの上空を通過して行く林道は、けっこうスリルがあり、余所見でもしようものなら、踏み外したらそのまま死でもあった。歩きながら山手側の赤ペンキが目に入った。そこには「5.4」と読め、注釈するように「県道入り口から およそ5.4Km」と書いた紙が添えられていた。この表示は適時にあり、距離を把握するのに判りやすかった。

 気になっていたトンネルは、スノーシェッドであった。上に堆積している土石を見ると怖いが、内部は明るく通過しやすい場所だった。その先、11号砂防堰堤は巨大な構造物で、ナイアガラの滝のような幅広の大滝を作っていた。その上には左岸東岸を結ぶ吊橋が架かっている。ここからなら大前山も狙えるかもしれない。この堰堤の上流側は地形が広く気持ちよい場所であった。九十九折を経て緩やかに登って行く。コゴミの群落も見られ、ここは帰りが楽しみであった。ウドも見える。登頂したら春の味を楽しもう。

 この辺りもまた落石が多い。特にツリコシ沢東側は、そそり立った岸壁が在り、そこからの落石であり通過するにも注意が必要であった。見上げるとクラックも多く、濡れている。冬季は普通に凍って石を落とすだろう。目の前にツリコシ沢の調整堤が異様な形で現れる。そしてここでの雰囲気が急激に温度低下していた。雪解け水が流れるだろう事は判っていたが、汗した体が急に冷される感じであった。

 崩落地の場所では「8.2Km」と赤ペンキが見えた。次は「8.4km」と、このあたりはこまめにふってあるよう。ツリコシ沢を跨いだ事でそろそろ取り付かねばならない。ツリコシ沢自体の遡行も考えたが、見える地形に却下。でも現地は、そのツリコシ沢左岸にリボンが登っていた。九十九折を経た先が地形図に見える緩斜面。予定ではこのあたりから取り付こうと予定していた。現地には小さな沢があり、地形図と照らし合わせると、沢の南側が1175高点に登る尾根のよう。林道のさらに先には「8.6Km」の表示があった。沢の場所から林道を離れる。

 すぐに大ぶりな池が出てくる。湿地なのか池なのかというところだが、常時水を湛えているかどうかは判らなかった。雪を拾いながら地形図に乗らない細い谷を進む。雪がなくなったら尾根に乗り、雪が溜まっているのは往々にして谷形状の場所なので、谷歩きの時間が長くなる。1000mを越えると、何となく繋がる時間も長くなり、藪を漕ぐ時間が少なくなった。このあたりは特に危ない所は無い。この先の傾斜のきつい場所はどうだろうか。背中のザイルはお守り程度であればいいが、出さねばならないとなると行動に時間を要す場所になる。なにせ情報が無いだけに想定と想像と、過去の経験から感じ取れる勘に頼る行動でもあった。

 1150mで目の前に平坦地が広がる。といってもガスがかかり、そう広範囲には見えないのだが、そんな中でも広い地形に見えた。その平坦地の中の高い場所に、ピンクのリボンが縛ってあるのが見えた。こんな場所で人工物を見るとは予想外だった。でも実際に残り、好事家が入っている。ここにあるということは、私と思いは同じくして入山したことが予想できた。5mほど離れてもう一本見られたが、往路に見たのはこの二つだけであった。緩やかな地形を楽しみながら足を進め、その先から急峻地形になる。でも思っていたほどに急ではなく、こう感じたのはよほど自分の中で構えていたのかもしれない。我慢して歩けてはいたが、1250m付近でアイゼンを装着した。

 少し雨が小降りになってきた。日差しが欲しいところだが、やや風が出てきて冷される形となった。さりとて手袋をするほどでもなくまだ耐えられる範疇。ピッケルのシュリンゲが雨を吸って重くなっている。そろそろ新しいシュリンゲに交換せねばと思いつつ何年も経過してしまっていた。完全に雪が繋がり、アイゼンも装着した事から快適に登ってゆけるようになった。丸倉山は顕著な3峰で構成されている。東側から1峰・2峰・3峰と呼ばせてもらうが、その1峰と2峰は東側をトラバースして省略して進もうと予定していた。この雪の状態なら、何も問題なく計画が遂行できるとこの時は楽に思っていた。

 1600m付近で、第1峰が近づいていると感じさせる地形になってくる。緩やかにトラバースしだす。しかし巻いているつもりがなぜか第1峰に見事登頂した。頂部を目指した方が歩き易い地形であったのは間違いない。登った第1峰は、展望ピークで居心地は良かった。南西側を見ると、第2峰と第3峰となる丸倉山の姿が望める。1峰の西側はややブッシュになっており、最初に僅かにかき分けると雪に繋がることができた。2峰まではなんて事のない場所で、相変わらず楽々登頂の予想のままであった。

 2峰の南側でドキッと鼓動が速くなる。雪が切れ、3峰との間に大きなキレットがあるかのように向こう側の3峰が聳えて見えていた。強烈な藪で、ハイマツと言うか太いマツがハイマツのように蔓延っている。頂部を伝えばいいだろうと、高い場所を行くが進むに勧めない。西に逃げるも、どうにもその方向が明るくなり、足元が切れ落ちていることが理解できた。ここに来て最後の試練。記録が乏しい場所は、なにか理由が在る場所がほとんど、これの為かとも思わされた。

 行けないのかも・・・そんな思いも脳裏を過ぎる。それでも人参を目の前にぶら下げられた状態に、ここさえ頑張れば達成感を得られる。我慢の行動で、今度は東側にズレてみる。歩き辛い事に変わりはないが、なんとか漕ぎ進むことが出来る場所があった。何となく掘れた地形があり、そこを伝うのがいいようだった。ササの間から白い雪が見えた時は、本当にホッとした。時間にしては僅かであった筈だが、人間は障害に弱いことが良く判り、些細な事で困難と判断してしまうのもこんな時。ここの通過は東寄りに通過して行くのがいい。いや東寄りしか通過不能となろう。2・3の鞍部は、尾根上の雪が笹で二分されている。東側は斜度が強くクラックも入っているので、西側に乗り換えるようにして雪に伝っていった。

 丸倉山到着。1峰や2峰と同じく。ここも西側に樹木がありブッシュとなっていた。よって、後立山側の展望がよくなく、広い山頂をやや東に寄ると、その樹林の上から主峰群を見ることが出来た。なんと言っても苦労して上がった黒負山がこちらを見据える位置にあり、伝った尾根のほとんどが見えていた。あのブリザードの中をあの場所でと、当時の様子が手に取るように判った。ここからの尾根筋を追ってゆくと、難しい場所は一切なく、1時間ほどで行けそうであり、向こうはそう急峻ではないことから復路にしてもいいように思えた。雨は幸いにして止んで、急に暑いくらいの日差しになった。ただし長くは続かなかった。ザックに腰を下ろし下山路を探る。第一発電所側に降りても面白そう。もう少し早い時期ならそう行動しただろうが、このタイミングだと緩斜面になったところでの雪の繋がりが気になった。上からガスの晴れ間に一瞬下が見えたが、ルートを目で構成できるほど長くは見させてはもらえなかった。

 五輪山の姿が凛々しい。ヒワ平側はスキーヤーが入っているだろうか。でも今日の天気だと、入山する者は限られるだろう。少し晴れると、無理しても登ってきて良かったとも思える。再び黒負山を見る。今度は雪形の中に何か居ないかと目を凝らす。すると居た。ペンギンが居た。その横にはガッツポーズしている男性の姿も発見。これは凄い。丸倉山登頂に、こんな粋な計らいがあったとは・・・。ガッツポーズ男を見て、なぜか元気が漲ってくる。ギャンブルはせず往路を戻ろう。他のルートを考えたのは、2峰の南側があるからなのだが、少し我慢して漕げば、また雪に繋がることができる。そうそう、この山頂では携帯電話の電波は入信なしであった。下山。

 2・3の鞍部から、高く足を持ち上げながら、跨ぎつつ漕いで進む。もっと下側を巻けばいいのだろうが、僅かな日照りですぐに雪が腐りだし緩くなってきていた。あまり高度を下げて登り返すのも負担に思ってしまっていた。2峰に戻り、さらに労せず1峰に戻る。斜面に続くアイゼンの刃跡を拾いながら降りて行く。すぐに雪だんごに悩まされだす。プレートを取り付けていないアイゼンのため回避できていないのか、それがあったとしても着く雪なのか・・・。ピッケルで叩きつつ高度を下げてゆくのは、けっこう歩行に負担になる。歩行のリズムが狂うからで、ぎこちない歩き。でもとらないとグリップしないで滑り出す。ここの急峻地形では雪団子は注意因子であった。

 雪に繋がりながらどんどん高度を下げてゆく。上から見下ろすと、往路に伝った場所に対し、僅かにズレるだけで快適に降りられる場所などもあり、視野の狭さを痛感させられる。尾根よりやや南側を伝った方がいいように感じた。進む先のガスの中に1150m付近の平坦地が現れてきた。進んで行くとそのガスの中にピンク色のリボンも見えた。何処かから続いているはずであり、その在り処を探してやろうかと、忠実に尾根を拾ったが見えてこない。途中、尾根の南側の小さな谷に入ったら、そこに2箇所ほど縛ってあるのが見えた。おおよそは似たようなコース取りで入山したようだった。付近は緩斜面となり、小尾根を中心に北に南に乗越しながら雪を拾って行く。最後は沢の流れの横を行く。残雪がガチガチに凍った場所もあり注意しつつ。

 林道に降り立つ。汚れたアイゼンとピッケル、そして雨具を流れで洗い、スッキリした姿で戻って行く。ザイルを使う場所が出てくると予想したが、そこまでではなかった。もう危険箇所はないのでのんびりと散策気分で林道を戻って行く。ツリコシ沢のところには、いくつものウドが顔を見せていた。ピッケルのブレードでサッと切る。間違ってもウドは抜き取ってはいけない。必要最低限で頂戴するようにしんなりと曲がった部分のみ切るのが基本と教わっている。そして齧る。もう夏に足を突っ込んでいるような下界だが、ここはまだ春。その春の味がした。水分量は豊富でジューシー。さらには甘みが強いウドであった。ウドが食べ終わったら、次はイタドリを拝借。酸い味が疲れた体に鋭気を復活させてくれる。食べ物には事欠かなかった。春の山菜が林道周囲にこれでもかと在る。大好きなイラクサも多く、柔らかい良品が多かった。

 私自身はクセのある山菜をも食べるが、持って帰って喜ばれるのがコゴミ。クセがないからである。よってお土産に少し拝借する。これは九十九折の連続する場所に群落があり、ほとんど採り放題。ただ必要最低限の山の恵を貰うルールは守る。11号砂防堰堤の吊橋を途中まで渡って大所川を見下ろそうかと思ったが、向かっている途中でも、流れの強さに下半身がむず痒くなってきたので止めた。もの凄い力を伴った流れで、濁っている為に怖い感じが強いのだった。これを世の中では「へたれ」と呼ぶのだろう。時折ウドを見つけてはおやつ代わりに齧りながら行く。

 大所川橋まで戻り、またまた欄干を綱渡りするようにして渡って行く。橋に水抜きの穴を設けたら、こんなことはなかったろうに・・・。林道崩落地を経て戻って行く。この頃はもう雨が上がっていたが、辺りは暗くガスが垂れ込めていた。落石を除け、倒木を跨ぎ進んで行くと、前の方にヘルメットを被った方が立ち、にこやかにこちらを見ていた。近くにはバイクがある。この先には障害になる場所がないので入って来たのだろうが、御仁は「採れたかい」などといっている。持っていたピッケルを見せても、理解できなかったようで、再度「山菜はいっぱいあったかい」などと聞いてきた。在ったのは事実だが、「いえ、登山です」と、いつものように答える。風体が登山者のように見えないのだろうか、もしくはこんな悪天の中に登山するとは思わなかったのかもしれない。

 御仁は週明けからの林道補修・除雪工事の担当の人で、スプレーでマーキングをしている途中であった。歩いた経路での損壊情報を告げると、「そういう情報が一番ありがたい」と喜んでくれた。まず歩かなければ入れない場所、入る人は限られる。そしてこの林道は、壊れても壊れても直さねばならない大事な林道だと知る事になる。ダムを持つ東北電力において、ここの第一と第二発電所はそれこそ東北電力の稼ぎ頭で、故障も少なく優秀らしい。そして驚いた金額を聞くことになった。年間の修繕費用は2千万。体感した荒れようからは補修費が尋常じゃないと理解はしたが、毎年その予算を計上するのも凄いし、それが毎年毎年となると天文学的数字に思えてきた。御仁は笑いながら、慣れきっていてこれが普通のような感覚であった。どんな世の中も慣れとは怖い。林道が抜け落ちていた場所では、前年度は押出しで大所川が半分埋まっていたと言う。暫く川の中を通過するような林道を切っていたらしい。毎年この状況なら作業する方も慣れてくるか・・・。これら面白い話を聞いて、山旅が充実する。御仁は行ける所まで行ってみると2サイクルの音を響かせながら背中側に走り去っていった。すぐに進めなくなることは私が一番知っているのだが・・・。

 導水管まで戻り、その次の第二発電所分岐まで戻ると、往路に閉っていたチェーンゲートは開いていた。まだ除雪作業がされているのか、上より下の方が溜まり易いだろうからその可能性もある。でもその先のユンボは動いた形跡は無かった。ガスの向こうにチェーンゲートが見え、我が車が見えてきた。20Km強歩いたか、その割には林道のおかげでそう疲れはなかった。大所川を伴った、緊張が続く林道だったからでもあろう。無事下山。

 振り返る。ポイントは数点ある。林道、雪、そして2峰の藪、この三すくみ的要素をよく熟考して狙わねばならない場所。当然林道は雪が無いほうが歩き易い。雪があればスキーで進めるが、丸倉山の斜面はスキーを持ち込むような場所ではない。よって雪融けをある程度は待つ方がよく、待ち過ぎると2峰の藪区間が広くなる。この考察から、適季は4月下旬と判断した。まあその年々で雪の量は違うとは思うが・・・。展望ピークであり、いい山であった。林道を車で入ることが出来ればいいが、それはないからこの先も遠い山のままなのだろう。

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