シンセン尾根1236高点        1236m        
 (シンセン岩峰:山名事典)
   

                    
                                                  
                                      

   2018.6.30(土)


  晴れ    単独   シンセン尾根を1236高点まで登り、北の谷を下り一ノ倉沢に降りる    行動時間:4H26M


@土合口駅1F駐車場4:21→(24M)→Aマチガ沢4:45→(11M)→Bシンセン尾根巡視路入口4:56→(12M)→C鉄塔930m5:06〜14→(81M)→D1230m峰6:35→(11M)→E1236高点峰6:46〜58→(41M)→F一ノ倉沢7:39〜55→(11M)→G往路の取付き巡視路入口8:06→(37M)→H土合口駅8:43→(4M)→J1F駐車場8:47


   
@谷川ロープウェイ土合口駅1階駐車場からスタート。 資料館前の車止め Aマチガ沢通過 マチガ沢側から望む1180m岩峰。下からの見た目と異なり。現地はリッジになっていた。
       
新道には4張りの大型テントが見られた。 最初の巡視路入口にはアングルの道標が立つ。通過。 Bシンセン尾根末端の巡視路入口。指示道標は無く道形があるのみ。 タイガーロープを流してある場所もある。
     
C930m鉄塔下。 C鉄塔から一ノ倉尾根 C鉄塔の西側の様子。尾根への入口のようになっていて、その先、20mくらいはマーキングが見られた。 940m付近でシャクナゲが現れる。
       
1010m付近。藪尾根のオアシス。角の立った岩がゴロゴロしている。 1130m付近。シャクナゲの密薮を分けて進む。 1150m付近。この木が見えたら尾根が極端に痩せ、北側は地形図では読めない急斜面となり、尾根から北へは逃げられなかった。 1150m付近からマチガ沢側。
       
1155m付近。見えないが痩せ尾根で大岩混じりのルート。特に北側は抜け落ちている場所もあるので、南寄り通過がいい。 1160m付近。大岩混じり。手がかり足掛かりは多い。 1165m付近。やや大ぶりの壁がある。この少し手前で段差のある岩があり、乗り越えるのにコンパスの短い人は大変かもしれない。 1180m岩峰の上からマチガ沢。最高所付近は藪で、地形図に読めるような岩峰の雰囲気はない。
     
1180m岩峰の西側は、岩壁の北側から獣道が上がってきていた。リッジを通れないので、獣は北を巻いて登っているよう。 1230m峰は北側が伝い易く。巻いて進むが、西に行くと藪が強くなり、結局頂部を伝う。 D1230m峰最高所。 E1236高点峰。西と東に高みがあり、高点をとっている場所は西側の高みのよう。挟まれた鞍部は背丈ほどの笹藪。
     
E少し西側にズレると西黒尾根が見えるようになる。 Eマチガ沢コースをハイカーが登っているのが見えた。 E同化しており分別し辛いが、手前にクライマーが呼ぶシンセン岩峰(濃い緑の山稜)がある。 E一本だけ檜の大木が生えている。幹直径は500mmくらい。
   
Eここでヤキソバパンが撮影された最初であろう。 北北西へと降りてゆく。最初は胸丈だが、下に行くほどに深くなる。マダニがやや多い。 1150m付近から見る一ノ倉尾根 1050m付近で谷の中央部に入る。道形のような筋が出来ていた。残雪によるものだろう。
     
1050m付近から上側。早くに谷の中に入った方が楽だったよう。 980m付近。少し植生が盛んな場所があるが、谷地形をずっと伝ってゆける。 F一ノ倉沢の広見を、トイレの上から見下ろす。
Fトイレ舎の右脇を降りた。擁壁の高低差が2.5mほどあり、取付く場合は登り辛い。
       
F一ノ倉沢から 往路の巡視路入口 ゲート通過。 G土合口駅に戻り、駐車場への階段を降りる。
       
H駐車は東側が断然いい。横との車間が大きく切られゆったりと停められる。      




 コンサイス山名辞典から日本山名事典となりシンセン岩峰が新たに掲載された。しかし書かれている座標が、岩ヤの呼ぶ場所と合致していないことがずっと引っかかっていた。一ノ倉沢は一ノ沢の源頭部1520mの場所をシンセンのコルとして、その東側でシンセン岩峰と呼ばれている。マチガ沢側からアプローチして右俣経由で登る人もまたシンセンのコルに突き上げ、シンセン岩峰を東側の場所として記録している。それに対し事典は1236高点峰で座標を取っていた。

 
 瑞牆山南の天狗の鼓の座標は、谷を挟んでの北と南とでの取り違え誤記と発表された。よって間違えと思った北側の初踏の場所が正解だった。登り直しの記録を読んだ地元の方が指摘してくださり、間違えが認識され結果大本営側を動かした。シンセン岩峰も、もしかしたらそうなのではないか・・・と思っていた。

 
 谷川岳自体。元々は爼倉の場所を谷川岳と呼んでいた。オキノ耳、トマノ耳の場所は後発で、このことの例もあるので、座標や呼び名が動き易いエリアなのかもしれないとも思った。あとは地形図の「茂倉岳」担当者の解釈と表記による影響も大きいかもしれない。マチガ沢と一ノ倉沢に挟まれる尾根は「東尾根」とのみ表記されていること。

 
 余談が続くが、山の大先輩であり谷川の岩壁で鍛え上げ現在に至っているN氏が登っていない。N氏なら庭のような場所で楽に登れる場所であるはずなのに登っていないと言うことは、やはり座標は誤記なのだろうと解釈してしまっていた。とりあえず目指さず保留にしておこうとなった。6月29日にこの落ち穂を拾おうと再考するも、やはり実施に移せなかった。

 
 諦めかけたその時、群馬県の谷川岳遭難防止条例の中に見える地図を見てハッと思わされ。ハッどころか後頭部を殴られたような衝撃を受けた。東尾根と解釈していた尾根筋を東西に二分してあり、西側高所を東尾根。残る麓側をシンセン尾根と表記している。おそらくは国鉄時代からの地図のようにも見えるが、1236高点のある場所は間違いなくシンセン尾根上であり、本当は、昔からこちらがシンセン岩峰なのではないかと思えた。岩ヤの呼ぶ現在のシンセン岩峰の連なりは、一ノ沢に沿う形で北側に向いている。遭難防止条例図のシンセン尾根に乗っていないような・・・。消えかかっていた火に油が注がれ、一気に燃え上がったように登頂意欲が沸いてきた。

 
 KUMO氏に、5年ほど前だったかに相談したこともあった。「座標がどうも違っているような気がします」と投げかけたメールに、多くを語らず「そうですか」程度に返信があった。そっけない返答に当時はなぜだろうと思っていたが、氏はすべてを知っていたのかもしれない。私が気付くのが遅すぎたのだった。

 
 最初は、一ノ倉沢の一ノ沢東の谷を登ろうと考えていたが、シンセン尾根の名前が判ってからは、林道とぶつかる末端から登りたくなった。ちょうどそこに鉄塔があるのが見えるので、そこまでは巡視路が期待できるのだった。問題は1180m付近の岩マークの場所。南には逃げられないので、北にうまく逃げられるかどうか。そのさらに北側にも二つの岩部が描かれており、その間を抜けてもいいと逃げ道を用意しておく。一応ザイルとヘルメットは持つことにした。

 
 1:00家を出る。地走りで向かい、ロープウェーの土合口駅には3時を少し回ったくらいで到着する。すでにヘッドライトでスタートしてゆく男女も居られた。釣られスタートしたくなるが、仮眠を入れ慎重に出発することにした。駐車場の一階の東側は、駐車スペースが広く特等地であった。監視カメラも見張っていた。


 4:21スタートする。アッと思って引き返し確認するのだが、地形図をハードコピーしたのに忘れ持ってきていなかった。今日はスマホで見るしかない。土合駅から登ってきたのか、若い男女6名ほどのパーティーが勢いよく前を通り過ぎる。ヘルメットを持っていたので一ノ倉沢へ入るのかと思ったら、西黒尾根に取り付く人がほとんどであった。

 
 マチガ沢からはシンセン尾根上の1180mの岩峰がこんもりと見える。あの場所を抜けられるのか・・・。岩肌の場所が多く簡単そうには見えなかった。新道の下降路を見下ろすと、オレンジの大テントが3張りと、もう一張りグリーンのテントが見られた。山岳会と言うより学生のワンゲルのように見えた。進んで行くと、山手側にJRの巡視路道標が現れ、そこから山道が登っていた。ここはパスして、この先にある道標のない山道の場所から入山する。

 
 九十九を切りながら進む道は、急峻箇所にはタイガーロープも流されていた。少し野草が茂る場所もあったが、雨の後でありながらそう濡らされることなく鉄塔のある930m地点に着いた。ここからは一ノ倉尾根や、その向こうの蓬峠への連なりがよく見えていた。ここで雨具を履きスパッツを装着する。前夜の降雨に対しては雨具を着た方がよかったが、暑さに耐えるより上半身は濡れた方がまだましとの判断となった。鉄塔の西側にスロープのようになっている地形があり尾根の上側に向かっていた。

 
 鉄塔から先は、3本ほどのマーキングが見られたが、見えていた踏み跡はすぐに無くなった。これは鉄塔工事の時のものだろうと思えた。笹が出だし、まだこのくらいならいいと思っていたらすぐにシャクナゲが現れる。尾根の北側を伝うようにして登ってゆくが、あまり有効的に使えず頂部に戻って分けて進む。

 
 尾根上の密生が少し収まるのが1010m地点で、角の立った岩がごろごろしており、土がないので下草が少ないようであった。その先はすぐに笹とシャクナゲが現れる。ここまで伝って少し気づいたのは、マダニが多いこと。実はヒルにも気を使い谷川岳東面ならこの時期OKと判断して実施していた。そのヒルは大丈夫であったが、腕に何度もマダニが着いているのを見ることになり、都度払い落としていた。服を着ていたら気づかなかったかも。生身だったので、這われるくすぐったさで気づくことができていた。本当は皮膚を出さないってのが正解とは判っている。

 
 1130m付近はシャクナゲの密生体で逃げようがなく突っ込んで行く。そろそろ岩の下になるころであり、向かう先右側には岩壁が見えており、進む先に同じような場所があったら引き返すしかないと思っていた。そして尾根から北にズレようとも思ったが、現地のその場所は傾斜が強く、況してや土の見えない岩肌で確保なしには進めないような場所であった。尾根上が進めなければ今日はここまでとすることとした。

 
 1150m付近で、上部の枯れた奇形のマツが現れる。この付近からリッジ状の痩せた地形となる。植生が強く足元が見えないので、特に北側に注意しながら登る。大岩混じりの植生となり、人間なので何とか伝ってゆけるが、獣は伝うことはまず無理であった。手がかり足掛かりは多く何とか伝って行ける。一番の気になっていた通過点はこれで何とか越えられそうと判った。やや大きな岩壁の場所は、尾根の北側に回り込み登るのだが、腰丈くらいの段差を這い上がるので、背丈の低い足の短い人は難儀するだろう場所となっていた。

 
 1180m岩峰に上がる。地形図に読める岩の上ではあるが、植生が濃く岩の上にいる印象が全くなかった。西に進むと、岩の北側を巻いてきている獣道が見られた。当初予定していたように、獣は伝える場所を知っているようであった。その薄い踏み跡が、1230m峰の北を巻いていたので伝ってゆくが、進む先が笹に阻まれ、結局1230ピークを通過するようにして進む。やや痩せた尾根筋で足元が見えないので神経を使う。

 
 1236高点は、東と西に高みがあり、高点を取っているのは西側であった。南側は切れ落ちており地形図通りではあるが、あまり展望がよくない。少し西に進むと、西黒尾根側がよく見え、登山道を伝っているハイカーの姿も確認できた。そしてこの尾根続きの先に岩ヤの呼ぶシンセン岩峰がある。何度も地形図で読んだのでそこにあるのが見えるが、目が肥えていないと谷川岳の主稜と同化して分別の難しい色合いをしていた。休憩は展望がないものの西側がいい。足場が安定している場所が西側のみで、頂部は木々に乗る場所ばかりで地面に足が着かないのだった。西側には檜の大木があり、このピークの主のような存在感があった。

 
 この先、もう少し尾根を伝って谷の源頭まで進もうと思っていたが、緩斜面になると足の着かない場所が続くのが見えたので、1236から直接北西側に降りてしまうことにした。往路を戻ることも考えたが、下り利用だと2度3度とザイルを出したいような場所だったので、面倒なので進路を変える。北西側に下って安全だとは伝ってみないと判らないのですが、地形図に見える地形からは危険個所はないと判断できた。

 
 最初は腰丈のササで、それが下るにつれだんだんと深くなってゆく。ちょっとルート選びを間違えたかと思い、この際だから谷のど真ん中に入ってしまおうと西側を気にして進んで行く。するとその谷の中には歩道のように見える筋が通っていた。雪崩でできるものなのか、残雪が遅くまで残るのでできるものなのか、登山道が廃道になった場所のような感じで続いていた。これを見て、早くに谷の中に入ればよかったと思えた。

 
 1000m以下の緩斜面で少し筋が消える場所もあるが、何となく伝ってゆくと麓側に再び現れていた。そして900m以下では完全な緩斜面で適当に進み、出た先はトイレ舎の上であった。トイレ横の擁壁の高さが2mほどあり、飛び降りるにはちょっと高さがある。ここは水抜きのパイプを足掛かりにして慎重に下る。一ノ倉のベンチには人生の大先輩が4名おり、今日ここでホルン演奏があると教えていただいた。しかし聞かされたその時間までには2時間以上ある。先輩らは待つことを厭わないのだった。沢で汗を拭いのどを潤す。雨具とスパッツも必要はなくなり、マダニの確認をしてから林道を戻ってゆく。

 
 マチガ沢でも沢水を飲んでみたが、断然一ノ倉沢の方がおいしく感じられた。冷たさが大きく違うのであった。まだ時計は朝の時間。入山してゆくハイカーがちらりほらりとすれ違う。ゲートを越え資料館前では、この日のイベントに向けスタッフが蟻のように動き回っていた。一応、「一ノ倉沢でホルン演奏を楽しみにしている人がいるから急いであげて」と言ったが、一ノ倉で聞いた開始時間は10時だったのだが、スタッフに聞かされた開始時間は11時だった。エッと思うと同時に一ノ倉の4名の顔が浮かんだ。

 
 ロープウェー駅に着き、6階から1階まで階段で降りてゆく。暑い時期に、ここのような屋内駐車場があるのはありがたい。それもワンコインで利用できるのだから言うことはない。その昔は野天に駐車した記憶もあるが、懐かしい過去の話になってしまっていた。谷川岳の危険地区外で遊んだので、条例に対する事前の届け出は不要で、思い立ってすぐに遊んでくることが出来た。

 
 振り返る。座標のいろいろは、このように報告することでまた後から判るだろう。1236高点を目指す場合は、一ノ倉沢のトイレ脇から入山して、谷を伝ってアプローチした方が楽だろうと感じた。後半は清水トンネルの破線辺りを伝い鞍部に乗り上げる形でいいだろう。多分そこにも地形図に描かれない掘れた沢筋が上がっているだろうと思う。一方シンセン尾根の直登した1180m岩峰だが、1140m付近からはリッジ尾根側に進まず、北西に振って上を目指した方が安全なのかもしれない。マダニを思うと、暑い時季より涼しい時季の入山がいいのかもしれない。



 谷川岳遭難防止条例の地図。これはネットでも見られる地図。

                           

 西側を東尾根。東側をシンセン尾根と表記している。地形図で読める東尾根位置にシンセン尾根と表記。





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